エアコン購入に使える補助金とは?事業者と個人に分けて解説

企業や店舗、住宅に必要であるエアコンなどの空調設備の購入や買い替えの費用は、工事費も含めると高額となる傾向にあります。少しでもコストを抑えるにはどうすればいいか悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

この記事では、国や自治体が実施しているエアコン購入に使える補助金や助成金などの支援制度について解説します事業者や個人で使える補助金や助成金をそれぞれ紹介するので、各種支援制度の利用を検討している人は参考にしてみてください。

エアコン購入に利用できる事業者向けの補助金

事業者がエアコンの購入に使える補助金と助成金には、国や自治体が実施しているさまざまな制度があります。各補助金や助成金に設けられている申請要件を満たし、採択されることによって費用の負担を軽減することが可能です。

ここでは、事業者が利用できる補助金や助成金を一覧で紹介します。紹介できる制度は一部となりますが、全国の事業者を対象としたものから自治体の管轄する地域の事業者のみを対象としたものまで、エアコン購入に利用できる補助金が数多く存在していることがわかります。

【事業者がエアコン購入に利用できる補助金と助成金】

対象地域

補助金・助成金名

概要

全国

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者等の販路開拓等の取り組みや業務効率化の取り組みを支援する

省エネ設備への更新支援

(省エネ補助金)

既存の設備を省エネ性能の高い設備に切り替えるための用を補助する

東京都

ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業

(東京都)

都内の中小企業等における省エネ設備の導入と運用改善に要する費用の一部を助成する

北海道

省エネルギー設備導入支援事業費補助金

道内の事業者を対象に高い省エネルギー効果が期待できる設備の導入を支援する

大阪府

中小事業者高効率空調機導入支援事業補助金

府内の中小企業者が既存の空調機を高効率空調機へ更新するときの費用を補助する

港区

地球温暖化対策助成制度

(事業所用高効率空調機器(エアコン))

地球温暖化対策につながるクリーンエネルギーやエアコンの導入費用を助成する

新宿区

省エネルギー及び創エネルギー機器等補助制度

区内におけるCO2削減に配慮した省エネ・創エネ設備の導入を支援する

北区

再生可能エネルギー及び省エネルギー機器等導入助成

区内の家庭や企業を対象に、再エネや省エネ機器の導入費用の一部を助成する

立川市

中小企業二酸化炭素排出量削減事業施設改修費補助金

中小企業のCO2削減を目的とした設備改修を支援する

京都市

京都市中小事業者の高効率機器導入促進事業補助金

市内で事業を営む中小企業等における省エネ効果の期待できる高効率機器の導入を支援する

平塚市

脱炭素設備投資促進補助金

中小事業者等の生産性向上と脱炭素社会の実現を目的に、CO2排出量の削減に資する設備の導入を支援する

経済産業省が実施する小規模事業者持続化補助金は、販路開拓につながる取り組みを支援する補助金です。国が実施する補助金の多くは汎用性のある経費としてエアコンを対象外としていますが、小規模事業者持続化補助金では補助事業のみに利用するエアコンに限り機械装置等費として申請できる場合があります。

自治体が運営している補助金は、環境への配慮を目的としている傾向にあります。地球温暖化の抑制や脱炭素の実現などにつながる取り組みの一環として、既存の空調設備から省エネ性能の高いエアコンに買い替える場合に補助対象となります。

エアコンを購入することにより作業環境が改善されて業務効率化につながるほか、省エネ性能の高いエアコンに買い替えることにより環境への配慮につながります。エアコンの使用目的や事業所の所在地によって利用できる補助金や助成金が異なるため、自社が申請可能な支援制度の情報収集をしましょう。

小規模事業者持続化補助金は販路開拓につながる事業のエアコン購入に利用できる

小規模事業者持続化補助金を活用してエアコンを導入するには、販路開拓するために必要なものと認められる必要があります。小規模事業者持続化補助金の目的は、商工会・商工会議所のサポートを受けながら小規模事業者が取り組む販路開拓や業務効率化などを支援することだからです。

【小規模事業者持続化補助金の概要】

項目

概要

対象者

  • 小規模事業者
  • 個人事業主

要件

  • 小規模事業者の定義にあてはまる事業者であること
  • 商工会議所の管轄地域内で事業を営んでいること
  • 資本金または出資金が5億円以上の法人に直接、間接に100%株式保有されていないこと(法人のみ)
  • 直近過去3年分の各年または各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと
  • 卒業枠で採択され事業を実施した事業者ではないこと

補助率

2/3

(賃金引上げ枠に申請する赤字事業者は3/4)

補助額

通常枠:最大50万円

特別枠:最大200万円

※インボイス特例適用時は各枠の上限+50万円

参考:第16回 公募要領|小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金では、導入するエアコンが販路開拓につながる取り組みに使用するもの、かつ補助事業のみに使用することが明確であれば補助対象経費として申請できる可能性があります。エアコンの購入に小規模事業者持続化補助金を利用したい人は、補助事業の遂行に必要であることを示せる事業計画をたてる必要があります。

たとえば、新商品開発を行う食品製造業者の場合、新たな作業スペースにエアコンを設置する際の費用は補助対象経費として申請できる可能性があります。新商品開発は販路開拓につながる取り組みであり、温度管理が重要となる食品の製造においてはエアコンの導入が不可欠と判断できるためです。

ただし、エアコンの用途や導入の目的が、小規模事業者持続化補助金の公募要領に記載されている汎用性があり補助事業以外にも使用が可能なもの」とみなされる場合は対象外です。検討しているエアコンの使用目的が補助対象となるのか分からない場合は、申請の準備をする前に補助金事務局に問い合わせてみましょう。

なお、小規模事業者持続化補助金の対象になるかを知りたい人は無料診断をお試しください。エアコンの購入に使えるか、使える場合いくらくらいもらえるかなどが無料で診断できます。

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省エネ補助金は省エネ性能の高いエアコンへ更新する際に利用できる

省エネ補助金(省エネ設備への更新支援)は、企業や個人事業主が既存の設備を省エネ設備へ更新する際に利用できる補助金です。設備更新の目的に応じて4つの類型に分かれており、省エネ性能の高いエアコンの購入は高効率空調として「(Ⅲ)設備単位型」において対象となります。

【省エネ補助金(Ⅲ)設備単位型の概要】

項目

概要

対象者

  • 企業(条件を満たせば大企業も対象)
  • 個人事業主

要件

  • 既存設備をSIIが公表した補助対象設備へ更新する事業であること
  • 事業の継続性が認められる者であること
  • 成果報告時に、導入した設備の省エネルギー効果を報告すること

補助率

1/3

補助額

30万円~1億円

参考:公募要領|令和5年度補正予算 省エネルギー投資促進支援事業費補助金

省エネ補助金の対象となるエアコンは、高効率空調設備として一般社団環境共創イニシアチブが指定するものに限られます。導入予定設備のエネルギー消費効率が既存設備と比べて低く、省エネルギー化を図れない設備更新の場合は補助対象設備とは認められません。

省エネ補助金の令和6年度の2次公募は2024年7月に締め切られましたが、予算に応じて来年度以降も公募がおこなわれる可能性があります。省エネ補助金の最新の募集状況は、一般社団法人環境共創イニシアチブが運営する「省エネ設備への更新支援(省エネ補助金)」から確認してみてください。

エアコン購入に利用できる個人向けの補助金

事業者向けの制度のほかに、一般家庭である個人住宅が対象のエアコン購入に使える補助金もあります。省エネ家電製品買換え促進補助金や省エネ機器エネルギー源転換補助金は主に省エネ機器に買い替えることが条件です。

【エアコン購入に利用できる個人(家庭)向けの補助金】

制度名

概要

補助率/補助額

子育てエコホーム支援事業

必須工事(節水トイレ、エコキュートの導入等)と併せて行う、省エネ性能の高いエアコン設置が対象となる

【補助額】

エアコンの冷房能力により異なる

3.6kW以上:26,000円/台

2.2kW~3.6kW未満:23,000円/台

2.2kW以下:19,000円/台

省エネ機器エネルギー源転換補助金

(北海道札幌市)

暖房・給湯器を灯油から電気やガスを熱源とする省エネ機器へ転換する取り組みを支援

【補助率】

1/2

【補助額】

最大35万円

※エアコンの場合

省エネルギー家電設置助成事業

(東京都品川区)

既設の機器のリサイクルを伴う省エネ家電への買い替え費用の一部を助成

【補助額】

1万円

省エネ家電買替促進事業補助金

(大阪府和泉市)

省エネ性能の高い家電への買替え(5万円以上)に対して購入費の一部を補助

【補助額】

経費の金額により異なる

15万円以上:3万円

10万円以上15万円未満:2万円

5万円以上10万円未満:1万円

国土交通省が実施する「子育てエコホーム支援事業」は、全国の家庭を対象に省エネ性の高い新築住宅の取得や住宅の省エネ改修等を支援する制度です。住宅の新築・購入の場合は子育て世帯のみが対象ですが、リフォームの場合は子育て世帯以外も対象となり、空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置に利用できます。

また、北海道札幌市が実施する「省エネ機器エネルギー源転換補助金」は、CO2排出量の多い灯油暖房から寒冷地エアコンへ切り替える費用などが補助対象となります。エアコンのほかにもヒートポンプ温水暖房やエコキュートなどが補助対象となり、導入する機器によって補助上限額が異なります。

なお、補助金や助成金制度の中には今年度の募集を終了しているものもあります。次回公募や翌年度以降の募集がある可能性もあるため、気になる補助金がある人は各制度の公式サイトをこまめに確認してみましょう。

エアコン購入に利用できる補助金の探し方

エアコン購入に使える補助金について調べる方法を把握して、自社や家庭に合った補助金を検索してみましょう。補助金によっては、対象経費や応募期間などの公募要領が変わる場合があるため、定期的に情報を確認することが必要です。

【エアコン購入に使える補助金の探し方】

  • 地域のホームページを確認する
  • 自治体に問い合わせる
  • 補助金の検索サイトで調べる(ミラサポplus、J-Net21等)

事業所や住宅がある地域のホームページでは、実施している補助金や助成金の情報が記載されている場合があるため、サイト内検索でキーワード入力して探すことが可能です。ホームページを確認しても見つからない場合は、自治体に問い合わせることでエアコンに使える補助金の情報を聞ける可能性もあります。

ほかにも、補助対象となるエアコンを取り扱っている企業のホームページや、中小企業向けの支援サイト「ミラサポplus」、「J-Net21(支援情報ヘッドライン)」などから調べることが可能です。ミラサポplusでは、過去に実施していた補助金や現在募集中の補助金の公募要領を確認することもできます。

なお、検索エンジンを使ってキーワード検索する場合は、地域名を入力することで自身が対象となる補助金を見つけやすくなります。エアコンの導入費用を抑えるために補助金を利用したいと考えている人は、地域のホームページや検索サイトなどを利用して申請が可能な補助金を探してみてください。

まとめ

エアコン購入に利用できる補助金や助成金には、国を財源として省庁等が実施している制度や、自治体が独自に実施している制度などさまざまなものがあります。また、事業者を対象とした制度に限らず個人でエアコンを購入する際に利用できる制度もあり、エアコンの使用目的によって利用できる制度が異なります。

エアコン購入に利用できる企業向けの補助金は、販路開拓や事業所の省エネ化など、補助金の目的に沿った取り組みの一環としてエアコンを導入する場合に対象となる傾向があります。エアコンは汎用性が高いことから、補助対象外としている制度もあるため注意が必要です。

なお、補助金や助成金にはそれぞれに申請のための要件が設けられています。事業規模や所在地、エアコンの種類など補助金によって対象となる要件が異なるため、自社が制度の対象であるかどうかを確認した上で申請を検討してみてください。

LED照明で使える補助金はある?事業者向けのLED補助金を紹介

LED照明の導入に使える補助金はある?事業者向けの補助金を紹介

事業者の中には、事業所や店舗の照明をLEDにしたいと考えている人もいますよね。また、LED照明の導入や買い替えに利用できる補助金があるのか気になる人もいるでしょう。

当記事では、LED照明の導入に利用できる事業者向けの補助金を紹介します。LED照明に使える補助金を探している人は、当記事を参考にしてみてください。

LED照明の導入に利用できる補助金がある

LED照明の導入に利用できる補助金や助成金などの支援制度には、国を財源とするもののほか、自治体が主体となって行っているものもあります。自治体が実施している支援制度は、管轄する都道府県や市区町村において事業を行っていることが申請の条件となる傾向にあるため、自社が対象となるかどうかを申請前に確認しましょう。

【LED照明の導入に利用できる補助金の具体例】

運営元 制度の具体例
  • 先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金
  • 既存建築物省エネ化推進事業
都道府県
  • LED照明等節電促進助成金(東京都)
  • 省エネルギー設備導入支援事業費補助金(北海道)
  • 中小事業者LED照明導入促進補助金(大阪府)
市区町村
  • 集合住宅・事業所等LED照明設置費補助金(足立区)
  • エネルギー価格高騰対策LED照明器具導入支援補助金(川越市)

たとえば、東京都の足立区で事業を営む場合は、「国」「東京都」「足立区」が運営している補助金が対象となります。そのため、国が運営する「先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金」や、東京都が運営する「LED照明等節電促進助成金」、足立区が運営する「集合住宅・事業所等LED照明設置費補助金」を利用できる可能性があります。

補助金の情報は、各自治体や省庁のホームページに記載されています。また、国や都道府県の補助金なら「Jグランツ>補助金を探す」や中小企業向け「ミラサポ>制度を探す(制度ナビ)」から検索できます。

なお、国の補助金は官公庁だけでなく、執行団体が委託を受けて補助金の交付、審査、事務処理などを行っている場合もあります。LED照明の購入や買い替えに利用できるの補助金を探している人は、LEDの補助金を公募している執行団体の公式サイトも確認しましょう。

補助金を探すときは条件や公募期間を確認する

補助金を探すときは、補助金の申請条件や公募期間などの各補助金の募集要項を確認しましょう。補助金ごとに、募集の対象や補助額も変わるためです。

【補助金の募集要項】

  • 対象者(事業者向けか家庭向けか)
  • 対象経費
  • 補助額
  • 公募期間   など

たとえば、経済産業省主体の先進的省エネルギー投資促進支援事業では、LED照明器具と制御器具が設備費として補助対象です。一方、国土交通省主体の既存建築物省エネ化推進事業では、要件を満たす省エネ設備と工事費が補助対象です。

また、公募期間も先進的省エネルギー投資促進支援事業が「令和6年2月5日(月)~2月26日(月)12時00分」であるのに対し、既存建築物省エネ化推進事業の場合は「令和6年4月24日(水)~令和6年5月29日(水)」と時期や期間が異なります。

補助金を探している人は、自社が申請可能な補助金を見つけるため公募期間や対象経費など補助金の募集要項を確認してみてください。

なお、補助金は年度予算から下りるため、時期によっては申込が終了している補助金もあります。来年度の予算が組まれている場合は来年度にも公募される可能性があるため、申請したい補助金がある人は今年度のみでなく来年度の公募も確認してみましょう。

LEDに利用できる全国の事業者向けの補助金

全国の事業者が対象となるLED補助金は、すべて省エネ関連ですが各省庁によって補助金の内容はさまざまです。各省庁の方針に合う補助金の内容になっているためです。

たとえば、環境省では、CO2削減を推進する事業を行っています。PCBという光源が使われている照明器具を、LED照明器具に交換する取り組み費用を一部補助する事業です。

一方、国土交通省では、建築資産の省エネ化推進及び関連投資の活性化を図る事業を行っています。おもに民間事業者等が行う省エネルギー改修工事を、改修後の省エネ性能を表示することなどを要件に、費用の一部を支援する取り組みをしています。

各省庁の補助金は、募集目的によって対象者や対象経費が異なります。補助金を探している人は、自社で利用できる補助金はどれか、各公式サイトで募集の内容を確認しましょう。

省エネ設備への更新支援(省エネ補助金)

省エネ設備への更新支援は、経済産業省による「先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金」の執行団体として一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)が実施する補助金です。通称「省エネ補助金」とも呼ばれ、省エネ設備や機器の導入により、省エネ対策に取り組む企業や個人事業主を支援する制度です。

省エネ補助金は補助金の利用目的に応じて4つの類型に分かれており、LEDに利用できる類型は「(Ⅲ)設備単位型」です。

【省エネ補助金(Ⅲ)設備単位型の概要】

項目

詳細

対象者

  • 法人
  • 個人事業主

要件

  • 補助対象設備として登録されている指定設備へ更新する事業を行うこと
  • SIIが定めたエネルギー消費効率等の基準を満たす設備を導入すること

対象経費

設備費

【具体例】

  • 制御機能付きLED照明器具
  • 高効率空調
  • 高性能ボイラ
  • 低炭素工業炉

補助金額

30万円円~1億円(事業全体)

補助率

1/3以内

公募期間

2024年5月27日(水)~7月1日(月)

参考:令和5年度補正予算省エネルギー投資促進支援事業費補助金公募要領

省エネ補助金の(Ⅲ)設備単位型では、制御機能付きのLED照明機器が補助対象となります。対象範囲として「無線式調光制御設備」「有線式調光制御設備」「人感・明るさセンサ付調光制御設備」が定められており、照明機器本体のほかリモコンや制御装置なども対象です。

なお、省エネ補助金の募集は2024年7月1日に2次公募が終了しました。今後の募集に関する情報は「省エネ設備への更新支援(省エネ補助金)」の公式サイトを確認してください。

建築物省エネ化推進事業

既存建築物省エネ化推進事業は、国土交通省が行っています。既存建築物省エネ化推進事業の目的は建築資産の省エネ化の推進と関連投資の活性化であり、民間事業者等が行う省エネルギー改修工事やバリアフリー工事などを支援します。

【既存建築物省エネ化推進事業の概要】

項目

詳細

対象者

既存のオフィスビル等の建築物の改修工事を行う事業者

要件

  • 躯体(壁・天井等)の省エネ改修を伴うこと
  • 改修前と比較して20%以上の省エネ効果が見込まれること
  • 改修後に一定の省エネ性能に関する基準を満たすこと
  • 省エネ性能を表示すること
  • 改修後に耐震性を有すること

対象経費

  • 省エネルギー改修工事に要する費用
  • エネルギー使用量の計測等に要する費用
  • バリアフリー改修工事に要する費用
  • 省エネルギー性能の表示に要する費用

補助額

5,000万円以内

(設備部分は2,500万円以内)

補助率

省エネ工事費(天井・外壁・窓等)と既定の設備費等の合計の1/3以内

公募期間

令和6年4月24日(水)~令和6年5月29日(水)

参考:既存建築物省エネ化推進事業公式サイト

既存建築物省エネ化推進事業では、省エネ化につながる建築物の改修や、省エネ化とあわせて行うバリアフリー改修の費用が補助されます。過去の公募の採択事例では事務所や学校、福祉施設などにおける照明のLED化への取り組みが採択されています。

なお、令和6年度における既存建築物省エネ化推進事業の1次公募は2024年5月29日に終了しましたが、2次公募や来年度以降の公募がおこなわれる可能性があります。次回以降の応募を検討する人は、国土交通省のホームページ「支援事業」から最新の情報を確認してみてください。

LEDに利用できる地方自治体の補助金

LEDの導入に利用できる補助金には、地方自治体が独自に実施しているものもあります。地方自治体が実施する補助金や助成金などの支援制度は全国各地に複数存在するため、LEDに利用できる制度の具体例として5つの制度を紹介します。

【LEDに利用できる地方自治体の補助金】

制度名

対象者

補助率/補助額

LED照明等節電促進助成金

(東京都)

都内で製造業を営む中小企業者等

【補助率】

1/2以内

【補助額】

30万円~1,500万円

省エネルギー設備導入支援事業費補助金

(北海道)

道内に事務所又は事業所を有する法人

【補助率】

1/2以内

【補助額】

最大500万円

(コンソーシアムは最大1,000万円)

中小事業者LED照明導入促進補助金

(大阪府)

①府内で運営している工場・事業場の照明設備をLED照明へ更新する者

②大阪府の脱炭素経営宣言登録制度に基づき脱炭素経営宣言を行った者

【補助率】

1/2以内

【補助額】

20万円~1,500万円

集合住宅・事業所等LED照明設置費補助金

(足立区)

区内に事業所を置く民間団体、中小企業、個人事業主等

【補助率】

1/3以内

【補助額】

最大30万円

エネルギー価格高騰対策LED照明器具導入支援補助金

(川越市)

市内事業所の既存照明設備(LED以外)をLED照明器具に更新する中小企業者等

【補助率】

1/2以内

【補助額】

最大30万円

たとえば、LEDに利用できる地方自治体の補助金には、東京都が実施する「LED照明等節電促進助成金」があります。年度内に複数回の募集があり、節電につながる計画に必要なLED照明器具やデマンド監視装置などの導入費用の一部が補助されます。

また、LEDに利用できる地方自治体の補助金には、埼玉県越谷市が実施する「エネルギー価格高騰対策LED照明器具導入支援補助金」があります。LED以外の照明機器からLED照明へ更新する市内の事業者を対象としており、令和6年度の予算750万円に達するまで先着順での支給となります。

全国には複数の自治体があり、LEDに利用できる補助金や助成金などの支援制度にもさまざまな種類があります。中小機構が運営するポータルサイト「J-Net21」では、地域を絞り込んで支援制度を検索できるため、自社が対象となる補助金を検索したい人は支援情報の検索を活用してみてください。

まとめ

LED照明の導入に利用できる補助金には、国や自治体が主体で行っているものがあります。国の補助金は、執行団体が公募をしている場合もあるため、申請予定の補助金がある人は、各自治体や省庁の公式サイトだけでなく、執行団体のサイトの募集要領も確認しましょう。

補助金は、補助金ごとに募集目的によって対象者や対象経費が異なります。補助金を探している人は、目的に合った補助金を見つけるため、対象者や対象経費などの詳細を募集要項で確認してみてください。

国が行っている事業者向けLED補助金のなかには、今年度の募集が終わっている補助金もあります。しかし、毎年行っている補助金の場合は来年度も募集をする可能性があります。申請したい補助金がある人は、各省庁の公式サイトで次回公募や来年度の募集を確認しましょう。

補助金の採択率とは?

補助金の採択率とは?

補助金を探している方の中には、補助金の採択率はどのくらいか気になっている人もいますよね。また自身の事業状況にあった補助金に応募したい人もいるでしょう。

当記事では、補助金の採択率を解説します。各補助金の過去の採択率や補助金を選ぶ時の視点も説明するため、申請する補助金を探している人は当記事を参考にしてみてください。

採択率とは補助金の審査に通る割合のこと

補助金の採択率とは、補助金の審査に通る事業者数の割合のことです。採択率は補助金の応募者数と採択者数から算出することができます。

【採択率の計算】

採択者数÷応募者数×100=採択率(%)

応募者数が15,132件、採択数が7,745件の場合の計算例

7,745件÷15,132件×100=51.1%

※小数点第二位以下は切り捨て

採択率を知ることにより、補助金の審査に通過する難易度の参考にすることができます。採択率が51.1%であれば、おおよそ2人に1人が審査に通っていることになります。

ただし、採択率は補助金の公募回や申請枠、応募者数などさまざまな要因によって変動する可能性があります。過去の採択率だけでは補助金の難易度を一概に判断することはできないため、申請を検討する際の参考程度に留めておきましょう。

補助金の採択率は補助金ごとに異なる

補助金の採択率は、補助金ごとに違います。補助金ごとに、応募者数や採択数が異なるためです。今回は「事業再構築補助金」「小規模事業者持続化補助金」「ものづくり補助金」「IT導入補助金」を例に挙げて解説します。

【最新の補助金の採択率】

制度名

採択率

※少数点第2位以下切捨て

事業再構築補助金

(第11回)

26.4%

小規模事業者持続化補助金

(第14回)

62.5%

ものづくり補助金

(18次)

35.8%

IT導入補助金2024

(3次締切)※通常枠

75.7%

IT導入補助金2024(通常枠)の3次締切における採択率は70%以上を超え、応募者の3分の2以上が採択されています。それに対して、事業再構築補助金の第11回公募における採択率は26.4%と応募者の半分以下となっています。

補助金の採択率は、補助金の制度や公募回によって大幅に異なります。補助金の応募を検討している人は、最新の採択率が高くても公募回によって難易度が変わる可能性があることに留意して応募を検討しましょう。

事業再構築補助金の過去の採択率

事業再構築補助金の過去の採択率は、第6回の公募回まで50%未満でした。最新である公募回の第7回で、51.1%と初めて採択率が50%を超えました。

【事業再構築補助金における各公募回の採択率】

公募回

採択率

第1回

36.0%

第2回

44.8%

第3回

44.4%

第4回

44.7%

第5回

46.1%

第6回

49.9%

第7回

51.1%

第8回

51.2%

第9回

45.4%

第10回

48.1%

第11回

26.4%

※小数点第2位以下切捨て

参考:採択結果|事業再構築補助金

事業再構築補助金の採択率は、第1回から第8回までは上昇傾向にありました。しかし、第9回からは50%を下回り、第11回の採択率は26.4%と大幅に下落しました。

採択率は公募回だけでなく各申請枠によっても異なります。第11回においては、採択率が最も高い「グリーン成長枠」の採択率は31.3%であり、採択率が最も低い「大規模賃金引上促進枠」の採択率はが12.2%でした。事業再構築補助金の採択率を確認する際は、申請する枠の採択率も確認してみましょう。

事業再構築補助金の採択率は「事業再構築補助金における採択率の推移と不採択時の対応を解説」の記事で詳しく解説しているので、事業再構築補助金へ申請予定の人は参考にしてみてください。

小規模事業者持続化補助金の過去の採択率

小規模事業者持続化補助金の過去の採択率は、第1回が一番高く90%を超えています。第2回以降は、44%から69%を推移している状況です。

【小規模事業者持続化補助金における各公募回の採択率】

公募回

採択率

第1回

90.8%

第2回

65.1%

第3回

51.6%

第4回

44.2%

第5回

53.9%

第6回

69.0%

第7回

69.8%

第8回

62.9%

第9回

64.0%

第10回

63.4%

第11回

58.9%

第12回

55.6%

第13回

57.0%

第14回

62.5%

第15回

41.8%

※小数点第2位以下切捨て

参考:小規模企業支援|中小企業庁

小規模事業者持続化補助金の過去の採択率は、第1回が最も高く90.8%でした。小規模事業者持続化補助金の採択率は複数の公募回において50%を超え、2人に1人以上が採択されている傾向にあります。

しかし、第15回のように41.8%と採択率が半数に満たない公募回もあります。同じ補助金制度であっても、公募回によって採択率が大幅に変動する場合もあるため、採択率から難易度を一概に判断することはできない点に留意しておきましょう。

なお、小規模事業者持続化補助金の採択率は「小規模事業者持続化補助金の採択率と採択事例を解説」の記事で詳しく解説しているので、小規模事業者持続化補助金へ申請予定の人は参考にしてみてください。

ものづくり補助金における過去の採択率

ものづくり補助金の過去の採択率は、公募回によって30%以下から60%以上と採択率に幅があります。

【ものづくり補助金における各公募回の採択率】

公募回

採択率

1次

62.4%

2次

57.1%

3次

38.0%

4次

33.0%

5次

44.1%

6次

47.4%

7次

50.2%

8次

59.7%

9次

62.1%

10次

60.8%

11次

59.3%

12次

58.5%

13次

58.0%

14次

50.7%

15次

50.2%

16次

48.8%

17次

29.4%

18次

35.8%

※小数点第2 位以下切捨て

参考:採択結果|ものづくり補助金

ものづくり補助金において、最も高い採択率となったのが1次の62.4%です。一方で、最も低い採択率となったのが17次の29.4%であり、応募者の3割程度しか採択されていないことから公募回によって採択率の差が大きいことがわかります。

ものづくり補助金における採択数は「ものづくり補助金の補助率と採択率は?申請前の判断基準として解説」の記事で詳しく解説しているので、ものづくり補助金への申請を検討している人は参考にしてみてください。

IT導入補助金2024における過去の採択率

IT導入補助金2024では、申請者からの応募があった締切回においてはすべて50%以上の採択率となっています。しかし、IT導入補助金2024においては申請枠ごとに申請者の数が大幅に異なるため、申請者数も考慮した上で難易度の参考にする必要があります。

【IT導入補助金2024における各公募回の採択率】

締切

申請枠

採択率

1次締切分

通常枠

75.4%

インボイス枠(インボイス対応類型)

95.2%

インボイス枠(電子取引類型)

0%(応募なし)

セキュリティ対策推進枠

77.7%

複数社連携IT導入枠

50%

2次締切分

通常枠

75.3%

インボイス枠(インボイス対応類型)

94.1%

インボイス枠(電子取引類型)

100%

セキュリティ対策推進枠

95.8%

3次締切分

通常枠

75.7%

インボイス枠(インボイス対応類型)

94.3%

インボイス枠(電子取引類型)

0%(応募なし)

セキュリティ対策推進枠

90.9%

4次締切分

インボイス枠(インボイス対応類型)

94.9%

5次締切分

インボイス枠(インボイス対応類型)

94.2%

6次締切分

インボイス枠(インボイス対応類型)

94.5%

※小数点第2以下切り捨て

参考:交付決定事業者一覧|IT導入補助金2024

複数社連携IT導入枠の1次締切分における採択率は50%でした。ほかの申請枠と比較して採択率が低いですが、通常枠の申請者数は1,576件だったのに対し複数社連携IT導入枠の申請者数は2件だったことから、必ずしも複数社連携IT導入枠の方が採択されにくいと判断することはできません。

また、インボイス枠(電子取引類型)の2次締切分における採択率は100%でした。数値だけ見ると難易度が低く審査に通りやすいように思えますが、申請者数は1件のみだったことから、必ずしもインボイス枠(電子取引類型)の難易度が低いと判断することはできません。

IT導入補助金は、申請枠ごとに申請者数が大幅に異なる傾向があります。IT導入補助金2024の各申請枠について詳しく知りたい人は「IT導入補助金2024の採択率を解説」を参考にしてみてください。

補助金を選択するときは採択率以外にも概要を確認する

補助金を選択するときは、採択率以外に補助金の概要も確認してみましょう。補助金によって対象者や対象経費が異なり、申請予定の経費が補助の対象外であることも考えられるためです。

【申請する補助金を選ぶときの視点】

項目

視点

対象者

補助金の対象者に当てはまるか

申請要件

応募の際に満たす必要のある条件は何か

申請枠

事業の目的にあった枠かどうか

補助上限額

補助事業の費用に対していくらまで補助されるか

補助率

補助事業の費用に対してどれくらい補助されるか

対象経費

自身の購入したい設備やサービスが対象になっているか

スケジュール

年に何回申請できるか

次回の公募スケジュールに間に合うか

たとえば、IT導入補助金を利用してWEBサイトを作成したい場合、IT導入補助金の対象経費にWEBサイトが含まれるかどうかを確認します。IT導入補助金2024において、ホームページやECサイトなどのWEB制作関連費は対象外となっているため、WEBサイト制作に補助金を利用したい人は別の制度を探す必要があります。

補助金は申請すれば必ずもらえるものではなく、補助金の目的に合った取り組みとして認められた場合に限り支援を受けることができます。また、受け取れる金額も補助金の制度によって異なるため、申請する補助金を選ぶときには自社の希望に合った補助を受けられるかもあわせて検討しましょう。

事業再構築補助金の概要

事業再構築補助金は、経済社会の変化に対応するための事業再構築を支援する補助金です。ウィズコロナ・ポストコロナの時代に対応するため、新分野展開や業態転換など、思い切った事業再構築をする中小企業等の挑戦の支援を目的としています。

【事業再構築補助金の概要】

項目

概要

対象者

中小企業・中堅企業

(個人事業主含む)

申請要件

  • 認定支援機関と事業計画を策定する
  • 補助事業終了後に付加価値額の目標を達成する事業計画を策定する
  • 事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義該当する事業であること

公募要領から申請要件一部抜粋

申請枠

①成長分野進出枠(通常類型)

②成長分野進出枠(GX進出類型)

③コロナ回復加速化枠(通常類型)

④コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)

⑤サプライチェーン強靭化枠

⑥卒業促進上乗せ措置

⑦中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置

補助額

中小企業:100万円~1億円

中堅企業等:100万円~1.5億円

(※申請枠や従業員数によって異なる)

補助率

1/3~3/4

※申請枠や従業員数によって異なる)

対象経費

①建物費

②機械装置・システム構築費

③技術導入費

④専門家経費

⑤運搬費

⑥クラウドサービス利用費

⑦外注費

⑧知的財産権等関連経費

⑨広告宣伝費・販売促進費

⑩研修費

⑪廃業費

参考:公募要領(第12回)|事業再構築補助金

事業再構築補助金では、応募する枠によって補助額の範囲や補助率がことなります。また、申請要件も異なるため、枠ごとの申請要件について詳しく知りたい人は「事業再構築補助金の申請要件とは?枠ごとの要件も解説」を確認してください。

小規模事業者持続化補助金の概要

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓や業務効率改善を支援する補助金です。地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と、持続的な発展を図ることを目的としています。

【小規模事業者持続化補助金の概要】

項目

概要

対象者

小規模事業者・一定要件を満たす特定非営利活動法人

(個人事業主含む)

申請要件

  • 商工会・商工会議所の支援を受けながら事業支援計画書や補助事業に取り組む
  • 申請する枠ごとの条件を満たす 他

公募要領から申請要件一部抜粋

申請枠

①通常枠

②賃金引上げ枠

③卒業枠

④後継者支援枠

⑤創業枠

補助額

通常枠:最大50万円

通常枠以外(特別枠):最大200万円

※インボイス特例の該当者は上記に50万円を上乗せ

補助率

2/3

※賃金引上げ枠に申請する赤字事業者は3/4

対象経費

①機械装置等費

②広報費

③ウェブサイト関連費

④展示会等出展費

⑤旅費

⑥新商品開発費

⑦資料購入費

⑧借料

⑨設備処分費

⑩委託・外注費

参考:第16回 公募要領(P.13~)|小規模事業者持続化補助金

たとえば、現在の事業の売上向上を目的とした、販路開拓のための宣伝用のチラシの作成やWebサイトの新規作成などに、小規模事業者持続化補助金を利用できます。

なお、小規模事業者持続化補助金では、商工会や商工会議所の支援が必須です。小規模事業者持続化補助金に応募する人は、商工会や商工会議所を探しましょう。

小規模事業者持続化補助金の概要を知りたい人は「小規模事業者持続化補助金とは?対象者や活用例をわかりやすく解説」を確認してみてください。

ものづくり補助金の概要

ものづくり補助金は、経営革新や生産プロセス改善を行う際の、設備投資等に使える補助金です。中小企業や小規模事業者等が、働き方改革やインボイス導入等への制度対応で生産性を向上させる際の、設備投資等を支援することが目的です。

【ものづくり補助金の概要】

項目

概要

対象者

中小企業・小規模事業者等

(個人事業主含む)

申請要件

  • 3つの基本要件を満たしていること
  1. 給与支給総額を年平均成長率1.5%以上増加
  2. 地域別最低賃金+30 円以上
  3. 付加価値額を年平均成長率3 %以上増加
  • 申請する枠ごとの条件を満たす  他

公募要領から申請要件一部抜粋

申請枠

①省力化(オーダーメイド)枠

②製品・サービス高付加価値化枠(通常類型)

③製品・サービス高付加価値化枠(DX・GX)

④グローバル枠

補助額

省力化(オーダーメイド)枠:最大1億円

製品・サービス高付加価値化枠(通常類型):最大2,250万円

③製品・サービス高付加価値化枠(DX・GX):最大3,500万円

④グローバル枠:最大4,000万円

※従業員数によって上限額が異なる

補助率

1/3~2/3

※申請枠や事業規模によって異なる

対象経費

①機械装置・システム構築費

②技術導入費

③専門家経費

④運搬費

⑤クラウドサービス利用費

⑥原材料費

⑦外注費

⑧知的財産権等関連経費

<グローバル枠のみ>

⑨海外旅費

⑩通訳・翻訳費

⑪広告宣伝・販売促進費

参考:公募要領 18次締切分(P.7)|ものづくり補助金

ものづくり補助金は、新商品や新サービスの開発、生産管理システムの導入、海外への市場開拓などの事業で利用できます。ただし、ものづくり補助金を利用するには、どの型や枠でも税抜きで単価50万以上の設備投資が必要です。

なお、ものづくり補助金へ複数回申請することも可能ですが、過去3年以内に1回交付決定している事業者は減点対象です。また、過去3年以内に2回以上交付決定している事業者は応募対象外です。

ものづくり補助金への申請を検討している人は、「ものづくり補助金の要件とは?基本要件の詳細も解説」の記事で詳しい要件を確認してみてください。

IT導入補助金の概要

IT導入補助金は、日々の業務の効率化や自動化などの、ITツールの導入に使える補助金です。また、インボイス制度への対応やサイバー攻撃への対策、地域のDXなども支援します。

【IT導入補助金2024】

項目

概要

対象者

中小企業・小規模事業者等

(個人事業主含む)

申請要件

  • 交付申請時点において日本国内で法人登記され日本国内で事業を営む者
  • 申請者が営む事業場内の最低賃金が法令上の地域別最低賃金以上であること
  • 各申請枠の要件を満たすこと

※一部抜粋

申請枠

  • 通常枠
  • インボイス枠(インボイス対応類型)
  • インボイス枠(電子取引類型)
  • セキュリティ対策推進枠
  • 複数社連携IT導入枠

補助額

通常枠:最大450万円

インボイス枠(インボイス対応類型):最大350万円(ハードウェアは最大20万円)

インボイス枠(電子取引類型):最大350万円

セキュリティ対策推進枠:最大100万円

複数社連携IT導入枠最大3,200万円

※導入するITツールや事業規模によって異なる

補助率

1/2~4/5

対象経費

  • ソフトウェア
  • ハードウェア
  • オプション
  • 役務費用

参考:IT導入補助金2024 公式サイト

IT導入補助金2024では、申請枠によって申請要件や対象経費が異なります。たとえば、ハードウェアが対象となるのはインボイス枠(インボイス対応類型)のみであり、ソフトウェアと合わせて導入する場合に限り、補助対象として認められます。

IT導入補助金への申請を検討している人は「IT導入補助金とは?図解を用いてわかりやすく解説」の記事を参考に、補助金の仕組みや枠ごとの要件を確認してみてください。

まとめ

採択率とは補助金の審査に通る確率のことで、審査の難易度のおおよその目安となります。また、同じ補助金でも公募回や申請枠によって採択率が異なrるため、補助金への応募を検討している人は採択率の変遷や申請枠ごとの採択率も併せて参考にしてみてください。

補助金を選択する際は、補助金ごとに対象者や申請要件などが異なるため、採択率以外にも応募に必要な要件を確認する必要があります。補助金ごとの詳細は公募要領で確認できるため、応募したい補助金がある人は各補助金の公式サイトから公募要領を確認してみましょう。

事業承継・引継ぎ補助金とは?概要と申請要件を解説

事業承継やM&Aをする予定がある人の中には、関連する補助金を探している人もいますよね。その際、事業承継・引継ぎ補助金に関心を持つこともあるでしょう。

当記事では、事業承継・引継ぎ補助金の概要を解説します。事業承継・引継ぎ補助金に申請するための条件(要件)も紹介するので、事業承継・引継ぎ補助金が気になる人は、参考にしてみてください。

なお、当記事は事業承継・引継ぎ補助金の公式サイトをもとに作成しています。

事業承継・引継ぎ補助金とは事業承継や引継ぎを支援する補助金

事業承継・引継ぎ補助金とは、中小企業者等が事業承継やM&Aをする際、事業者が支払う経費の一部を補助する制度です。これから新たに事業を任せられる人や、事業統合や株式譲渡をしたい人は、本補助金を利用すると、支払う総額を抑えられる可能性があります。

【事業承継・引継ぎ補助金の概要】

概要 事業者の事業承継や引継ぎを支援する補助金
対象者 中小企業者等
補助対象事業  個人事業主  法人
  • 事業譲渡する・される
  • 株式譲渡される 
  • 第三者割当増資される
  • 事業再編されて廃業する
  • 既存事業を廃業して新たな事業を始める

(一部廃業も可)など

  • 吸収合併する・される
  • 事業譲渡する・される
  • 株式交換する・される
  • 新設合併する・される
  • M&Aで事業を譲り渡す、または事業を譲り受け、既存事業を廃業する(一部廃業も可)など

参考:公募要領等ダウンロード内の各申請枠の公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、個人事業主の場合、事業譲渡や廃業後の新事業が補助対象事業となっているので、後継者がいない経営者や事業を売りたい人は、事業承継・引継ぎ補助金の対象となります。

また、法人の場合も、M&Aによる吸収合併や事業譲渡が補助対象事業なので、他の法人と合併する人や株式を取得する人は、本補助金の対象となります。

事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継やM&Aをする事業者のための補助金です。「後継者がいない」「事業売買で話を持ちかけられている」などの状況の人は、事業承継・引継ぎ補助金の利用を検討してみましょう。

なお、事業承継・引継ぎ補助金は9次公募まで終了しており、記事更新日時点では、10次公募期間中(2024年7月1日~2024年7月31日)となります。事業承継・引継ぎ補助金の公式サイトで詳細が発表されているため、関心のある人は早めに申請準備を進めておきましょう。

※10次公募では専門家活用枠のみの募集

対象となる事業承継・引継ぎは3種類に分かれる

事業承継・引継ぎ補助金の補助対象事業は、大きく分けると、3種類に分かれます。事業承継・引継ぎ補助金に申請する際は、「経営革新」「専門家活用」「廃業・再チャレンジ」のいずれかの申請枠を選ぶことになります。

3つの申請枠のうち、「経営革新」枠と「専門家活用」枠は、さらに類型に分かれています。

※10次公募では専門家活用枠のみの募集

【事業承継・引継ぎ補助金の対象事業と類型の概要】

申請枠  類型 概要
経営革新枠 創業支援型 中小企業者等が、事業承継やM&Aで設備や従業員を引継ぎ事業開始する際、かかる事業費の一部を支援する
経営者交代型 中小企業者等が、親族内承継や従業員承継で新たに事業を始める際、かかる事業費の一部を支援する
M&A型 中小企業者等が、事業再編・事業統合等で新たに事業を始める際、かかる事業費の一部を支援する
専門家活用枠 買い手支援型 中小企業者等が株式や経営資源を譲り受ける事業再編・事業統合をする際、かかる専門家契約費を支援する
売り手支援型 中小企業者等が株式や経営資源を譲り渡す事業再編・事業統合をする際、かかる専門家契約費を支援する
廃業・再チャレンジ枠

〈併用申請〉

経営革新枠または専門家活用枠を利用する際、併用申請することで、廃業にかかる経費を支援する

〈単独申請〉

廃業して新たな事業に取り組む際、廃業にかかる経費を支援する

参考:公募要領等ダウンロード内の各申請枠の公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、事業承継をする中小企業の場合、事業承継をきっかけに新たな事業を始めるなら、「経営支援」および「廃業・再チャレンジ」に該当します。経営支援枠と廃業・再チャレンジ枠は併用申請できるので、事業者は両方の申請枠に申請することも可能です。

また、M&Aをされる個人事業主の場合、専門家契約を結び、最終契約をして成功報酬を支払うなら、「専門家活用」枠の「売り手支援型」の対象となります。

事業承継・引継ぎ補助金に申請する際に選ぶ申請枠は、「事業承継だけでなく新事業をする」「専門家契約を結ぶ」「廃業する」などの目的で分けられます。どの申請枠を選ぶべき分からない時は、事業承継・引継ぎ補助金の公式サイトにある「事例集」も参考にしてみてください。

補助される対象経費は申請の枠で異なる

事業承継・引き継ぎ補助金で補助される対象経費は、申請枠によって違いがあります。事業承継・引継ぎ補助金で申請枠を選ぶときは、自社がどのような経費を支払う予定なのかを確認してから、申請枠を選びましょう。

※10次公募では専門家活用枠のみの募集

【事業承継・引継ぎ補助金の補助対象経費】
経営革新枠  専門家活用枠 廃業・再チャレンジ枠
  • 人件費
  • 店舗等借入費
  • 設備費
  • 原材料費 など
  • 専門家への謝礼
  • 委託費
  • システム利用料
  • 在庫廃棄費 など
  • 廃業支援費
  • 原状回復費
  • リースの解約費
  • 移転・移設費用

参考:公募要領等ダウンロード内の各申請枠の公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、経営革新枠の場合、新たな事業を始める人が対象なので、補助対象経費には新しい事業での人件費や原材料費などの事業費が含まれます。

また、専門家活用枠の場合、M&Aをする事業者の専門家契約を補助する申請枠なので、補助対象経費には専門家への謝礼や委託費が含まれます。

事業承継・引継ぎ補助金の補助対象経費は、経営革新や専門家活用などの申請枠ごとに異なります。原則、補助対象経費は事業を引き継ぐ人が申請できますが、要件を満たせば、事業を譲り渡す人と一緒に共同申請できる場合があるので、覚えておきましょう。

なお、事業承継・引継ぎ補助金の補助対象経費は、事業者が採択されたあとに支払う経費が補助の対象です。原則的に事前着手申請はできず、事前に支払い済みの経費は補助されません。事業承継に関わる支払いは、交付決定を受けてから行うようにしましょう。

経営革新の補助対象経費

申請枠の1つ「経営革新」の補助対象経費には、人件費や店舗等借入費設備費、原材料費やマーケティング調査費などが含まれます。開業やM&Aなどで新たな事業を立ち上げる人は、事業承継・引継ぎ補助金の「経営革新」枠を選びましょう。

※10次公募では経営革新枠の募集はありません

【経営革新枠の補助対象経費と例】

補助対象経費の項目  例
〈事業費〉
人件費/店舗等借入費/設備費/原材料費/産業財産権等関連経費/謝金/旅費/マーケティング調査費/広報費/会場借料費/外注費委託費
<設備費>
洋菓子店が事業承継先を探しており、飲食店の承継経験のある承継者が、電熱オーブンやミキサーを導入する費用
<マーケティング調査費>
老舗で顧客がいるジュエリーショップを、IT事業者が承継し、マーケティング調査を行い、販促する費用

参考:公募要領等ダウンロード内の各申請枠の公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、事業承継で店舗を取得する人の場合、経営革新枠では事業費として人件費や店舗家賃が補助されるので、新しい事業での従業員の人件費や家賃を補助対象経費として申請できます。

経営革新枠には3つの類型「創業支援型」「経営者交代型」「M&A型」がありますが、いずれの場合も、人件費や設備費などの事業費が補助されます。事業承継や経営者交代などで、引き継いだ経営資源を生かし新たな事業を始める人は、経営革新枠を検討してみましょう。

なお、経営革新枠に関心がある人は、「事業承継引継ぎ補助金の経営革新を解説」を参考にしてみてください。

専門家活用の補助対象経費

申請枠の1つ「専門家活用」の補助対象経費は、専門家への謝金や旅費、外注費や委託費などです。弁護士や司法書士などの士業を通してM&Aをする事業者は、専門家活用枠から申請することになります。

【専門家活用事業の補助対象経費】

補助対象経費の項目
謝金/旅費/外注費/委託費/システム利用料/保険料/廃業支援費/在庫廃棄費/解体費/原状回復費/リースの売り手支援型 解約費/移転・移設費用

参考:公募要領等ダウンロード内の各申請枠の公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、自動車整備業を承継する場合、顧問税理士に相談し、株式譲渡の契約書作成を依頼するなら、顧問税理士に支払う謝金が補助されます。

また、解体業が今後を考えてM&A専門家に相談する場合、第三者への株式譲渡を依頼するなら、株式譲渡承認請求や株式譲渡契約の締結に関わる費用が補助されます。

専門家活用枠は、M&Aで買収の話を持ちかけられている場合や、これからM&Aをする場合に、利用しやすい申請枠です。専門家活用枠を利用すると、士業やM&A専門企業に支払う手数料や費用を軽減できるので、M&Aをする人は専門家活用枠の利用を検討してみましょう。専門活用枠に関心がある人は、「事業承継・引継ぎ補助金の専門家活用とは?概要と注意点を解説」を参考にしてみてください。

なお、補助対象経費の委託費としてファイナンス・アドバイザリー(FA)業務や仲介業務を申請する際は、「登録FA・仲介業者」以外の業者に委託しても補助の対象外です。委託費を申請する人は、「M&A支援機関登録制度」で登録済の登録FA・仲介業者へ委託しましょう。

廃業・再チャレンジ枠の補助対象経費

申請枠の1つ「廃業・再チャレンジ」の補助対象経費には、廃業支援費や在庫廃棄費、解体費や原状回復費があります。在庫の処分費用や建物・設備等の解体費費用も補助されるので、M&Aまたは廃業を予定している人は、廃業・再チャレンジ枠の利用を検討してみましょう。

※10次公募では廃業・再チャレンジ枠の募集はありません

【廃業・再チャレンジ事業の補助対象経費】

補助対象経費の項目
廃業支援費/在庫廃棄費/解体費/原状回復費/リースの解約費/移転・移設費用(併用申請のみ計上可)

参考:公募要領等ダウンロード内の各申請枠の公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、M&Aで事業を売り出す事業者の場合、成約に結びつかず、廃業して新たなチャレンジをするなら、廃業・再チャレンジ枠で廃業支援費や在庫廃棄費を申請できます。

また、廃業で不要となった在庫を専門業者に委託する事業者の場合、司法書士に登記申請書類を作成してもらう費用は廃業支援費として補助の対象です。

廃業・再チャレンジ枠は、単体で申請する場合が少なく、多くの場合、経営革新枠または専門家活用枠と共に申請されています。事業承継や引継ぎで、設備の解体や登記書類を作成する人は、廃業・再チャレンジ枠の利用を検討してみましょう。

なお、廃業・再チャレンジ枠に関心がある人は、「事業承継・引継ぎ補助金の廃業・再チャレンジとは?概要を解説」を参考にしてみてください。

事業承継・引継ぎ補助金でもらえる補助金額を確認する

事業承継・引継ぎ補助金でもらえる補助金は、経営革新と専門家活用では100万円~600万円、廃業・再チャレンジでは50万円~150万円です。また、補助率は事業規模や従業員数に関係なく、一律で補助対象経費の2/3以内となっています。

※10次公募では専門家活用枠のみの募集

【事業承継・引継ぎ補助金の補助金額と補助率】
補助上限額 経営革新 専門家活用 廃業・再チャレンジ
100万円~600万円以内

 50万円

※経営革新枠、専門家活用枠と併用申請する場合は、150万円以内

補助率 経営革新 専門家活用 廃業・再チャレンジ
補助対象経費の2/3以内

参考:公募要領等ダウンロード内の各申請枠の公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、経営革新枠から300万円の設備費を申請する場合、300万円に補助率:2/3をかけると200万円で、補助上限額は600万円以内なので、200万円が補助金額となります。

事業承継・引継ぎ補助金の補助金額は、事業者が申請する補助対象経費に補助率をかけた金額、かつ、補助上限額以内の金額です。事業者が支払う予定の経費がわかれば、大まかな補助金額は計算できるので、補助金額がいくらもらえるか気になる人は試してみて下さい。

対象事業者の条件は事業承継を受ける事業者が中小企業者であること

事業承継・引継ぎ補助金の対象事業者の条件は、事業承継や事業の引継ぎを受ける事業者が中小企業者の規定以内であることです。青色申告をしている場合、中小企業者には個人事業主も含みます。

【対象となる中小企業者等の定義】
業種 資本金 従業員数
製造業その他 3億円以下の会社  300人以下の会社または個人事業主
卸売業  1億円以下の会社  100人以下の会社または個人事業主
小売業  5千万円以下の会社 50人以下の会社または個人事業主
サービス業 100人以下の会社または個人事業主

参考:公募要領等ダウンロード内の各申請枠の公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、事業承継で買収をする製造業の場合、資本金が3億円以下で従業員数300人以下が定義なので、資本金1億円で従業員数が200人の会社は、事業承継・引継ぎ補助金の対象です。

事業承継・引継ぎ補助金の対象は、資本金5億円以上の企業から出資や株式の保有を受けていない、中小企業者です。交付決定後に事業承継を行う場合は、被承継者との共同申請が必須なので、これから事業承継をする人は、公募要領で共同申請を確認しておきましょう。

なお、対象事業者の場合でも、自社が申請する経営革新枠や専門家活用枠などの「申請枠ごとの対象事業の要件」も満たす必要があります。事業承継・引継ぎ補助金に申請するための要件は、事業規模にくわえ、申請枠ごとに設定されている対象事業も確認しましょう。

経営革新枠で対象の事業承継

経営革新枠で対象の事業承継は、事業承継期間内に事業承継やM&Aを行うことです。経営革新枠はさらに、「創業支援型(Ⅰ型)」「経営者交代型(Ⅱ型)」「M&A型(Ⅲ型)」の3つの類型に分かれています。

※10次公募では経営革新枠の募集はありません

【経営革新枠の対象となる事業承継】
区分 事業承継
共通 2017年4月1日から2023年10月17日に事業承継やM&Aを行う
創業支援型(Ⅰ型)
  • 事業承継対象期間内に法人として会社設立する、または、個人事業主として開業する
  •  開業のために、事業承継やM&Aとして、設備だけでなく、従業員、経営権などを総合的に引き継ぐ

※物品や不動産など物質的な物のみを引き継ぐ場合は対象外

経営者交代型(Ⅱ型)
  • 親族内承継や従業員承継等の事業承継を行う者(事業再生を含む)

※法人による事業譲渡や株式譲渡等は対象外

  • 特定創業支援事業を受ける者等、経営等に関して一定の実績や知識等を有している者である
M&A型(Ⅲ型)
  • 事業再編・事業統合等の M&Aをする
  • 特定創業支援事業を受ける者等、経営等に関して一定の実績や知識等を有している者である

※物品や不動産など物質的な物のみを引き継ぐ場合は対象外

参考:公募要領等ダウンロード内の各申請枠の公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、経営支援枠の創業支援型(Ⅰ型)の場合、2017年4月1日から2023年10月17日までに事業承継やM&Aをして、総合的に経営を引き継ぐ事業承継が対象なので、2022年10月に事業譲渡を受けて新たな会社設立をする人は対象となります。

経営革新枠とは事業承継やM&Aをきっかけに、新しい事業をする、経営者が交代する、などの新しい動きをする事業者のための申請枠です。事業を別の経営者に譲る人や、新たな事業を買収する人は、事業承継・引継ぎ補助金の経営革新枠に注目してみてください。

なお、経営者交代型の場合、申請時点で事業承継が終わっていない場合は、承継者が経営経験や実務経験をもつ証拠書類を提出することになるので、注意してください。

専門家活用枠で対象の事業承継

専門家活用枠の対象となる事業承継は、弁護士や司法書士などの専門家に依頼して行う、事業承継や第三者割当などです。専門家活用枠の事業承継は、事業を引き渡す事業者は「売り手支援型」、事業を引き受ける事業者は「買い手支援型」とで分けられています。

【専門家活用の対象事業者(抜粋)】
区分 対象事業者
買い手支援型(Ⅰ型)
  • 以下の経営資源の引継ぎを受けることにより、経営資源引継ぎの要件を満たす者

<法人の承継者>
株式譲渡/第三者割当増資/株式交換/吸収合併/吸収分割
<個人事業主の承継者>
株式譲渡/第三者割当増資/事業譲渡

売り手支援型(Ⅱ型)
  • 以下の経営資源の引継ぎを第三者へ譲渡することにより、経営資源引継ぎの要件を満たす者

<法人の承継者>
株式譲渡渡/株式譲渡+廃業/第三者割当増資/株式交換
<個人事業主の承継者>
事業譲渡/事業再編等+廃業

参考:公募要領等ダウンロード内の各申請枠の公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、買い手支援型に申請したい会社の場合、中小企業者間の株式譲渡や吸収合併が対象の事業承継なので、自社より大きな企業に株式を譲渡する会社は補助の対象外です。

専門家活用枠は、事業を受ける側も譲る側も補助の対象で、各類型や個人事業主と法人により、8のパターンに分かれます。専門家活用枠に関心のある人は、専門家活用枠の「公募要領」で見出し「経営資源引継ぎ形態に係る区分整理」の内容を確認してみてください。

廃業・再チャレンジ枠で対象の事業承継

廃業・再チャレンジ枠で対象となる事業承継は、主に廃業です。経営革新枠や専門家活用枠と併用できるので、廃業を伴う事業承継やM&Aをしたい人は、経営革新枠や専門家活用枠を申請する際、廃業・再チャレンジ枠と同時申請することになります。

※10次公募では廃業・再チャレンジ枠の募集はありません

【廃業・再チャレンジで対象の事業承継】

区分 対象事業者
共通  M&Aまたは廃業する
「経営革新」または「専門家活用」と併用申請の場合  「経営革新」または「専門家活用」で設定する補助事業期間終了日までに、M&Aまたは廃業を完了する(全部譲渡または一部譲渡含む)
再チャレンジ申請の場合  2020年以降に売り手としてM&Aへ着手し、6か月以上取り組んでいること+廃業後に再チャレンジ

参考:公募要領等ダウンロード内の各申請枠の公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、4次公募で経営革新枠と廃業・再チャレンジを同時申請する場合、2023年10月17日までに既存の事業を廃業と事業承継を完了すれば、補助の対象となります。

廃業・再チャレンジ枠に申請すると、廃業に関わる在庫処分費用や解体費などが補助されます。廃業のみの申請は受付けておらず、廃業のあとに「新たに会社を設立する」「新たな事業を始める」といった取組みをする人が申請できるので、留意してください。

対象事業者が申請したい場合はまず申請要件を確認する

対象事業者である中小企業者が事業承継・引継ぎ補助金に申請したい場合は、まず申請要件を確認してみましょう。申請要件は大きく分けて2種類あり、「12の申請要件」と「経営資源引継ぎの要件」があります。

【事業承継・引継ぎ補助金の申請要件】

12の申請要件(抜粋)  経営資源引継ぎの要件
  • 日本国内で事業をする者(個人事業主は青色申告をしていること)
  • 仕入れや雇用などで、地域経済に貢献している者
  • 事務局から質問及び追加資料等の依頼があった場合は適切に対応する者
  • 事務局から依頼があった場合は申請書類を修正して再提出する者
  • 経済産業省から補助金指定停止措置又は指名停止措置が講じられていない者
    • 補助事業期間内に事業承継を行うこと
    • 「単なる物品や不動産等の売買」「グループ内の事業再編」「親族内の事業承継」などに該当しないこと
    • 経営資源(設備、従業員、顧客等)の引継ぎが行われること
    • 原則として常時使用する従業員1名以上の引継ぎが行われること(特に不動産業の場合)

    参考:専門家活用枠 10次公募の公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、12の要件の場合、「仕入れや雇用などで地域経済に貢献する者」の要件があるので、単に保持している不動産を後継者に引き継ぐ事業では申請できません。

    事業承継・引継ぎ補助金の主な申請要件は、「国内で事業をしている」「法令を遵守し事務局に協力する」「事業承継やM&Aなどを行う」といった、基本的な内容です。個人事業主の場合は、青色申告をしていることが条件となりますので、忘れないように注意しましょう。

    なお、申請要件は公募回ごとに異なります。10次公募は専門家活用枠のみの申請枠となるため、「12の申請要件」と「経営資源引継ぎの要件」が設定されていますが、公募回によっては他の申請枠での公募も受け付けている可能性があるため、公募回ごとの公募要領を参照し、申請要件を理解するようにしましょう。

    専門家活用事業以外の申請は認定支援機関との連携が必要

    事業承継・引継ぎ補助金で「経営革新」枠と「廃業・再チャレンジ」枠に申請する場合、「認定支援機関」との連携が必要です。認定支援機関とは、経済産業省に登録された金融機関や税理士などのことで、事業者は申請する際にアドバイスや書類作成をしてくれます。

    ※10次公募では専門家活用枠のみの募集となるため、経営革新枠と廃業・再チャレンジ枠の募集はありません。

    【事業承継・引継ぎ補助金で認定支援機関がやること】
    申請時期 やることリスト
    相談
    •  相談者と経営相談を行う
    申請準備
    • 補助対象事業の確認を行う

    -相談者の事業者要件を確認する
    -補助事業の内容を確認する
    -補助事業計画書を確認する
    -補助対象経費の内訳を確認する

    申請 確認書を発行する
    補助事業開始 補助事業のアフターフォローをする

    たとえば、認定支援機関と申請準備をする場合、認定支援機関は事業者が行おうとする補助事業の要件や内容を確認するため、事業者がひとりで申請するときと比べ、公募要領のルールに沿った申請ができる可能性があります。

    事業承継・引継ぎ補助金で計画革新枠または廃業・再チャレンジ枠に申請する人は、認定支援機関へ相談しましょう。認定支援機関は全国に約3万4千機関以上あるので、認定支援機関を探す際は、「事業承継 認定支援機関」のようなキーワードと共に検索してみましょう。

    申請方法はj Grantsを使った電子申請となる

    承継・引継ぎ補助金の申請方法は、経済産業省が運営する電子申請「j Grants」からの申請です。J Grantsから事業承継・引継ぎ補助金に申請するには、GビズIDプライムアカウントが必要です。事業承継・引継ぎ補助金へ申請したい人は、早めに取得しておきましょう。

    【事業承継・引継ぎ補助金の申請方法】
    jGrants のURL jGrants
    GビズIDプライムアカウントの取得URL GビズID

    たとえば、事業者が事業承継・引継ぎに申請する場合は、j GrantsのURLにアクセスし、GビズIDプライムアカウントでログインしてから、事業承継・引継ぎ補助金の申請ページを探します。

    経済産業省の行う補助金は電子申請による申請方法が増えています。事業承継・引継ぎ補助金もj Grantsによる電子申請のみ受付けられます。GビズITプライムアカウントを取得するには2週間~3週間かかり、印鑑証明書と登録印が必要なことを留意しておきましょう。

    スケジュールを把握して申請する公募回を決める

    事業承継・引継ぎ補助金に申請する際は、スケジュールを把握してから申請する公募回を決めます。事業承継・引継ぎ補助金はいつでも申請できる補助金ではないからです。

    【10次公募のスケジュール】※10次公募では専門家活用枠のみの募集

    項目

    スケジュール

    申請受付期間

    2024年7月1日(月)~2024年7月31日(水)17:00まで

    交付決定日

    2024年8月末~9月初頭(予定)

    事業実施期間

    交付決定日~2024年11月22日(金)

    実績報告期間

    2024年8月29日(木)~2024年11月25日(月)

    補助金交付手続き

    2024年12月下旬以降(予定)

    参考:専門家活用枠「事業スケジュール」|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、事業承継・引継ぎ補助金の10次公募の場合、申請受付期間は2024年7月1日(月)〜7月31日(水)17:00です。10次公募に申請したい事業者は、7月31日(水)17:00までに、公募要領の確認や必要書類の準備など準備を済ませたうえで、申請を完了させる必要があります。

    なお、10次公募における募集枠は「専門家活用枠」のみですが、複数の申請枠を募集している公募回では申請枠ごとに各締切が異なる場合があります。申請を検討している人は、かならず申請する枠のスケジュールを確認しましょう。

    事業承継・引継ぎ補助金の平均採択率は57.3%

    これまでの事業承継・引継ぎ補助金の平均採択率は57.3%です。事業承継・引継ぎ補助金の公式サイトでは、申請者数と採択者数は公開されているので、計算すると各公募回での採択率がわかります。

    【事業承継・引継ぎ補助金の採択率】

    公募回 採択率 申請者数 採択者数
    1次

    52.5%

    1,033  531

    2次

     51.3%  631 348

    3次

    55.8%  626  354

    4次

    55.0% 810 446

    5次

    59.8% 799 478

    6次

    60.6%  862 523

    7次

    59.4% 839

    499

    8次

    60.5%

    730

    442

    9次

    61.1% 853 522

    ※小数点第2以下切り捨て

     参考:1次~4次採択結果、5・6次採択結果、7次~9次採択結果|事業承継・引継ぎ補助金

    補助金の採択率は「申請者数÷採択者数×100」の計算式で求めることができます。たとえば、1次の採択率の場合、申請者数1,033人を採択者数531人で割ると52.5%なので、採択率は52.5%となります。

    また、事業承継・引継ぎ補助金のこれまでの公募において、最も高い採択率となったのは9次公募の61.1%でした。一方で、最も低い採択率となったのは2次公募の51.3%でした。

    事業承継・引継ぎ補助金のこれまでの採択率は、50%~60%前後を推移していています。今後の採択率に関しては、申請者数の増減も影響するので、あくまで目安として覚えておきましょう。

    なお、他の補助金の採択率を知りたい人は「補助金の採択率とは?」の記事も参考にしてみてください。

    まとめ

    事業承継・引継ぎ補助金とは、中小企業者等が事業承継やM&Aをする際、事業者が支払う経費の一部を補助する制度です。これから後継者に事業を任せたい人や、事業統合や株式譲渡をしたい人は、本補助金を利用すると、支払う総額を抑えられる可能性があります。

    事業承継・引継ぎ補助金の補助対象事業は、大きく分けると、3種類に分かれます。事業承継・引継ぎ補助金に申請する際は、「経営革新」「専門家活用」または「廃業・再チャレンジ」のいずれかの申請枠を選ぶことになります。

    事業承継・引き継ぎ補助金で補助される対象経費は、申請枠によって少し違いがあります。そのため、事業承継・引継ぎ補助金で申請枠を選ぶときは、自社がどのような経費を支払う予定なのかを確認してから、申請枠を選びましょう。

    事業承継・引継ぎ補助金の廃業・再チャレンジとは?概要を解説

    事業をしている人の中には、時代の移り変わりで廃業したい人や、事業を売却したいけれど承継者が見つからない人もいますよね。その際、国の補助金「事業承継・引継ぎ補助金」の廃業・再チャレンジの存在を知ったものの、「自社は対象になるのか」「どんな経費が補助されるのか」など、事業承継・引継ぎ補助金でわからないことが複数ある人もいることでしょう。

    当記事では、事業承継・引継ぎ補助金の廃業・再チャレンジ枠の概要を解説します。不採択理由や後年報告についても解説するので、事業承継・引継ぎ補助金の廃業・再チャレンジ枠に関心がある人は、当記事を参考にしてみてください。

    なお、当記事は事業承継・引継ぎ補助金の廃業・再チャレンジ枠公募要領(9次公募)をもとに作成しています。2024年7月に実施される10次公募では専門家活用枠のみの募集となるため、廃業・再チャレンジ枠への応募を検討している人は次回以降の公募を待ちましょう。

    対象者はM&Aで事業を廃業する中小企業者や個人事業主

    廃業・再チャレンジの対象者は、日本国内の中小企業者や個人事業主で、そのうち、M&Aで事業を廃業する事業者です。廃業・再チャレンジの対象者は、4つの「廃業・再チャレンジの要件」の中でいずれかを満たす必要があります。

    【廃業・再チャレンジの対象事業者が申請時に満たすべき要件】

    要件

    補足

    ①事業承継後、M&A後に新たな取り組みをする

    経営革新枠で採択されている必要がある

    ②M&Aによって他者から事業を譲り受ける

    (全部譲渡・一部譲渡含む)

    買い手支援型に相当し、専門家活用枠で採択されている必要がある

    ③ M&Aによって他者に事業を譲り渡す

    (全部譲渡・一部譲渡含む)

    売り手支援型に相当し、専門家活用枠で採択されている必要がある

    ④2020年以降に売り手としてM&Aへの着手し、6か月以上取り組んでいる

    +廃業後に再チャレンジしている

    再チャレンジ申請をする場合の要件。

    補助事業期間内に廃業が完了している必要がある

    参考:廃業・再チャレンジ枠 公募要領(9次公募)P.10|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、親族から事業をM&Aで買い取る場合、自社の事業を一部廃業し、買い取った事業を新たな事業としてスタートさせる法人なら、廃業・再チャレンジ枠の①の要件を満たすため、廃業・再チャレンジ枠の対象です。

    また、地域に長い間貢献した事業を売却する個人事業主の場合、M&Aでの売却先の法人が対象事業を地域で引き継ぐなら、廃業・再チャレンジ枠の③の要件を満たすため、廃業・再チャレンジ枠の対象となり、補助対象経費に廃業費を追加できます。

    廃業・再チャレンジ枠で対象の事業者は、4つの要件のうちいずれかを満たす中小企業者や個人事業主です。4つの要件のうち3つは「経営革新」枠および「専門家活用」枠の要件と同じなので、気になる人は経営革新枠や専門家活用枠の公募要領も参考にしてみてください。

    なお、4つの要件のうち①と④では、認定支援機関に相談して内容を確認してもらう必要があります。認定支援機関とは、経済産業省から認可を受けた「金融機関」や「税理士」などの専門家です。認定支援機関は「認定経営革新等支援機関 検索システム」から探せるので、認定支援機関を探す段階で利用してみましょう。

    廃業・再チャレンジはM&Aと再チャレンジを前提とした廃業を補助する

    廃業・再チャレンジとは事業承継・引継ぎ補助金の申請枠のひとつで、M&A前後の廃業に関わる経費を補助します。また、M&Aを試みてうまくいかなかった場合も、事業者が新たに事業を再チャレンジするなら、廃業費の補助が対象になります。

    たとえば、法人が他社をM&Aで事業承継する場合、他社を買収する際に備品や在庫などを処分する際に、廃業・再チャレンジ枠で廃業費を申請できます。

    また、個人事業主がM&Aで事業承継を試みる場合、M&Aマッチングサイト経由で数社と連絡をとったものの、引き継ぎできる目処がつかない際は、再チャレンジをする前提で廃業・再チャレンジ枠に申請できます。

    廃業・再チャレンジ枠では、事業承継とM&Aに関わる廃業費が補助されます「事業を売却して廃業したいけどお金がかかる」「M&Aで事業承継したいけど廃業費が負担」などの悩みをもつ人は、廃業・再チャレンジ枠の利用を検討してみましょう。

    補助対象経費は廃業支援費や在庫処分費など6種類

    廃業・再チャレンジ枠の補助対象経費は、廃業支援費や在庫処分費など、廃業に関わる費用が6種類あります。「上限50万円」や「併用申請のみ」などの要件がつく補助対象経費もあるため、廃業・再チャレンジ枠への申請を検討している人は補助対象経費の内容を確認してみましょう。

    【廃業・再チャレンジ枠の補助対象経費】

    項目

    概要

    廃業支援費

    廃業に関する登記申請手続き費用

    ※上限50万円

    在庫廃棄費

    既存の事業商品在庫を専門業者に依頼して処分した際の経費

    解体費

    既存事業の廃止に伴う建物・設備等の解体費

    原状回復費

    借りていた設備等を返却する際に義務となっていた原状回復費用

    リースの解約費

    リースの解約に伴う解約金・違約金

    移転・移設費用

    ※併用申請のみ計上可

    効率化のため設備等を移転・移設するために支払われる経費

    参考:廃業・再チャレンジ枠 公募要領(9次公募)P.13|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、廃業支援費の場合、廃業に関する登記申請手続き費用が最大50万円まで補助されます。具体的には、法人の廃業時にかかる費用や官報公告の廃業公告にかかる費用を、廃業・再チャレンジ枠の補助対象経費として申請できます。

    また、在庫廃棄費の場合、廃業時に処分する在庫を廃棄する費用が補助されます。具体的には、民間の不用品処理業者や自治体の粗大ごみ回収費用を、廃業・再チャレンジ枠の補助対象経費として申請できます。

    廃業・再チャレンジで補助対象経費を申請する際は、自社の経費がどの補助対象経費に該当するかを確認する必要があります。商品在庫や備品などを専門業者や個人に売却して対価を得る場合は、在庫廃棄費は補助対象外となるため在庫廃棄費を申請したい人は留意しましょう。

    なお、事業承継・引継ぎ補助金の補助対象経費には、原則として2者以上の相見積が必要です。交付決定(採択)された場合、補助対象経費ごとの相見積を実績報告として提出する必要があるので、補助対象経費を検討する際は留意しておきましょう。

    廃業・再チャレンジ枠の平均採択率は48.1%

    廃業・再チャレンジ枠の1次〜9次公募における平均採択率は48.1%です。採択率によって審査の難易度を一概に言うことはできませんが、採択の傾向を探るための目安のひとつとなります。

    【1次から9次公募における廃業・再チャレンジ枠の採択率】

    公募回

    採択率

    申請者数

    採択者数

    1次

    55.8%

    34

    19

    2次

    42.8%

    21

    9

    3次

    44.8%

    29

    13

    4次

    35.7%

    28

    10

    5次

    45.9%

    37

    17

    6次

    62.1%

    37

    23

    7次

    35.7%

    28

    10

    8次

    54.5%

    22

    12

    9次

    56.0%

    25

    14

    参考:1次~4次採択結果、5・6次採択結果、7次~9次採択結果|事業承継・引継ぎ補助金

    これまでの公募において、廃業・再チャレンジ枠の採択率は30%台〜60%台を推移しており、公募回によって採択率が大幅に異なることがわかります。申請枠によっても採択率が異なるので、ほかの申請枠の採択率も確認したい人は「事業承継・引継ぎ補助金の採択率は?不採択になる理由や採択事例も解説」を参考にしてみてください。

    廃業・再チャレンジには併用申請と単独申請がある

    廃業・再チャレンジには併用申請と単独申請があります。「経営革新」枠または「専門家活用」枠と併用申請する場合と、廃業・再チャレンジのみで申請する場合とでは、事業者が満たすべき補助対象者の要件が変わります。

    【廃業・再チャレンジの2つの申請方法】

    申請方法

    特徴

    単独申請

    • 廃業・再チャレンジ枠のみに申請する
    • 「廃業・再チャレンジの要件」を満たす必要がある

    併用申請

    • 「経営革新」枠または「専門家活用」枠と同時申請する
    • 申請時は廃業・再チャレンジ枠ではなく、もう一方の申請枠を主体として申請する
    •  「経営革新」枠と併用申請する際は、革新的事業として「4つの要件」を満たす必要があり、「専門家活用」枠と併用申請する際は「経営資源引継ぎの要件」を満たす必要がある

    廃業・再チャレンジ枠のみで単独申請する場合は、廃業・再チャレンジの要件として「2020年以降に売り手としてM&Aへの着手し、6か月以上取り組んでいる」と「廃業後に再チャレンジしている」の2つがあります。

    一方、「経営革新」枠と併用申請する場合、事業者は廃業・再チャレンジの要件に加え、経営革新枠で求められる革新的事業の4つの要件も満たす必要があります。

    廃業・再チャレンジ枠のみで申請する場合、申請型は「再チャレンジ申請型」となり、M&Aに着手して6ヶ月以上経過している必要があります。また、併用申請する場合は他の申請枠をメインとして申請することになり、各申請枠の要件が追加されるので注意しましょう。

    単独申請の補助額と補助金額

    廃業・再チャレンジ枠のみで申請する場合、補助金額の下限額は50万円で、最大150万円までの廃業費が補助されます。事業者が受け取れる補助金額を算出するには、補助対象経費の金額に補助率をかけ、補助金額の範囲内かどうかを確認します。

    【廃業・再チャレンジ枠の補助金額と補助率】

    廃業費の補助金額

    50万円~150万円

    補助率

    補助率2/3

    参考:廃業・再チャレンジ枠 公募要領(9次公募)P.14|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、廃業・再チャレンジ枠で廃業支援費を20万円、在庫処分費を100万円で補助対象経費とする場合、「20万円+ 100万円=120万円」が補助対象経費の合計となり、120万円の2/3が補助されるので、補助金額は80万円となります。

    廃業・再チャレンジのみで単独申請する際は、廃業費が50万円〜150万円まで、補助率は補助対象経費の2/3までが補助されます。M&Aで事業を売却または購入しようとしたものの上手くいかない事業者は、廃業・再チャレンジ枠の利用を検討してみましょう。

    なお、補助対象経費が75万円未満の場合、補助率2/3を掛けた金額が下限額である50 万円を下回るため申請することができません。廃業・再チャレンジ枠への申請を検討している人は、補助対象経費の総額が75万円以上になるかどうかを確認しましょう。

    併用申請の補助額と補助金額

    「経営革新」枠または「専門家活用」枠と併用申請する場合、補助金額の下限はなく、最大150万円までの廃業費が補助されます。補助率は「営業利益率」や「赤字」などの要件を満たす場合、補助率2/3が適用されます。

    【廃業・再チャレンジ枠の補助金額と補助率】

    併用申請する申請枠

    廃業費の補助金額

    補助率

    経営革新枠

    150万円

    補助対象経費の2/3以内又は1/2以内

    ※条件を満たすと2/3

    専門家活用枠(買い手支援型)

    補助対象経費の1/2

    専門家活用枠(売り手支援型)

    補助対象経費の2/3以内又は1/2以内

    ※条件を満たすと2/3

    参考:経営革新枠(9次公募)および専門家活用枠(10次公募)の公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、廃業・再チャレンジ枠と経営革新枠で併用申請する場合、廃業費の補助金額は150万円までとなり、経営革新枠の補助率の要件である「物価高で営業利益率低下」や「直近決算期の営業利益は赤字」などを満たすと、補助率は補助対象経費の2/3です。

    また、廃業・再チャレンジ枠と専門家活用枠で併用申請する場合、買い手支援型と売り手支援型では補助率が異なり、買い手支援型と併用申請する場合、補助率は補助対象経費の1/2となります。

    廃業・再チャレンジ枠と他の申請枠で併用申請する場合、要件を満たすと「補助率2/3」が適用されます。ただし、専門家活用枠の買い手支援型と併用申請する場合は補助率の要件がなく、一律で1/2となることに留意しておきましょう。

    廃業・再チャレンジ枠に申請する際はスケジュールを確認する

    廃業で廃業・再チャレンジ枠に申請する際は、事業承継・引継ぎ補助金の公式サイトでスケジュールを確認しましょう。事業承継・引継ぎ補助金の公式サイトでは、公募されている時は実施年度の欄に「申請受付」と記載があります。

    【廃業・再チャレンジ9次公募のスケジュール】

    申請受付期間

    2024年4月1日(月)~2024年4月30(火)17:00まで

    交付決定日

    2024年6月4日(火)

    事業実施期間

    2024年6月4日(火)~2024年11月22日(金)

    実績報告期間

    2024年8月29日(木)~2024年11月25日(月)

    補助金交付手続き

    2024年12月中旬以降(予定)

    参考:廃業・再チャレンジ 事業スケジュール|事業承継・引継ぎ補助金

    廃業・再チャレンジ枠の9次公募の申請スケジュールの場合、申請受付は2024年4月1日〜4月30日までの1ヶ月間です。また、補助事業の実施期間は交付決定日から2024年11月22日までの約5ヶ月間となります。

    事業・承継引継ぎ補助金の公募スケジュールは、決まり次第公式サイトにて発表されます。10次公募においては廃業・再チャレンジ枠の募集がないため、廃業費の補助を受けたい人は公式サイトをこまめに確認し、次回の募集に備えましょう。

    必要書類には認定支援機関の確認書が含まれる

    廃業・再チャレンジ枠の申請に必要な書類には、認定支援機関の「確認書」が含まれます。申請時にはさまざまな書類が必要となるので、廃業・再チャレンジ枠への申請を検討している人は事前に必要書類を確認し、スムーズに申請できるよう準備しておきましょう。

    【廃業・再チャレンジ枠の申請に必要な書類】

    条件

    必要書類

    共通

    交付申請書(j Grantsの申請フォーム)

    併用申請

    経営革新枠)

    認定経営革新等支援機関による確認書

    <個人事業主が承継者の場合>

    • 住民票(発行から 3 カ月以内のもの)
    • 直近 3 期分の確定申告書 Bと所得税青色申告決算書

    など

    併用申請

    (専門家活用枠)

    <申請者が法人の場合>

    • 履歴事項全部証明書(交付申請日以前 3 カ月以内に発行されたもの)
    • 直近の確定申告の基となる直近 3 期分の決算書(貸借対照表、損益計算書)
    • 常時使用する従業員 1 名の労働条件通知書 など

    単独申請

    (廃業・再チャレンジ枠)

    • 交付申請書(jGrantsの申請フォーム)
    • 以下いずれかの書類

    ①事業承継・引継ぎ支援センターから交付された支援依頼書の写し

    ②M&A 仲介業者や地域金融機関など M&A 支援機関との業務委託契約書の写し

    ③M&A マッチングサイトへの登録が完了したことを確認できる WEB ページまたは電子メールの写し

    参考:廃業・再チャレンジ枠 公募要領(9次公募)P.20|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、経営革新枠を併用申請する個人事業主の場合、共通の書類である「jGrantsでの交付申請書(入力)」に加え、「住民票」や「確定申告書」などが必要となります。

    また、廃業・再チャレンジ枠のみで申請する場合は、「jGrantsでの交付申請書(入力)」に加え、再チャレンジの証拠となる「支援依頼書の写し」や「M&A支援機関との業務契約書の写し」などが必要です。

    廃業・再チャレンジ枠の必要書類は、申請する人の事業形態と申請方法で種類が異なります。併用申請の場合は、廃業・再チャレンジ枠として提出すべき必要書類はないため、併用する申請枠の必要書類のみを提出すればよいと覚えておきましょう。

    GビズIDのアカウントは早めに取得しておく

    事業・承継引継ぎ補助金の申請方法は電子申請システム「jGrants」からの電子申請となります。申請には共通のアカウントである「GビズID」が必要となるため、余裕を持ってアカウントの取得をおこないましょう。

    【jGrantsとGビズID】

    サービス名

    概要

    jGrants

    • デジタル庁が運営する補助金の電子申請システム
    • 国や自治体の補助金を検索することも可能

    GビズID

    • さまざまな行政サービスにログインできる共通アカウント
    • 事業承継・引継ぎ補助金では「GビズIDプライム」が必要となる

    Gビズプライムアカウントの取得には、1~2週間かかる可能性があります。各補助金の締め切り前にはGビズID事務所が混雑したこともあるので、事業承継・引継ぎ補助金に申請したい人は早めに手続きをしましょう。

    なお、GビズIDで発行できるアカウントには「GビズIDプライム」と「GビズIDエントリー」の2種類がありますが、事業承継・引継ぎ補助金への申請で必要なアカウントは「GビズIDプライム」です。GビズIDエントリーでは申請ができないため、誤って取得しないように注意してください。

    実績報告をしないと交付決定が取り消しになる

    事業承継・引継ぎ補助金は、申請して交付決定を受けても、実績報告をしないと交付決定が取り消しになります。廃業・再チャレンジ枠に関心のある人は、実績報告はどのような内容なのか、概要を押さえておきましょう。

    【実績報告の概要】

    実績報告の内容

    補助事業として実施した内容や支払った経費内容の報告と証拠書類提出

    実績報告の時期

    以下のいずれか早い日

    • 補助対象事業の完了日から起算して30日を経過した日
    • 交付決定通知書記載の補助事業完了期限日より10日を経過した日

    実績報告に必要な書類

    〈法人〉

    対象会社の廃業が確認できる閉鎖事項全部証明書(発行から3か月以内のもの)

    〈個人事業主〉

    個人事業の廃業等届出書

    実績報告の方法

    電子申請jGrantsへの入力

    参考:廃業・再チャレンジ枠 公募要領(9次公募)|事業承継・引継ぎ補助金

    実績報告では、実施した事業内容の検査と経費内容等の確認などがおこなわれます。報告の期限は「補助事業の完了日から30日」もしくは「補助事業完了期限日から10日」のいずれか早い日となります。

    また、補助金が振り込まれるタイミングは、事業者が実績報告を提出し、事務局が確定検査を完了したあとです。廃業費の経費を事業承継・引継ぎ補助金で検討している人は、廃業の証拠書類が必要だと留意しておきましょう。

    なお、廃業・再チャレンジ枠では、補助金が交付されたあとも1年間、事務局が指定する所定の日までに「事業化状況報告書」が必要となります。さらに、補助対象事業に係る帳簿や支出の根拠となる証拠書類は、事業が完了した年度の終了後5年間は保存しておかなければならない点にも留意しましょう。

    まとめ

    廃業・再チャレンジとは事業承継・引継ぎ補助金の申請枠のひとつで、M&A前後の廃業に関わる経費を補助します。また、M&Aを試みてうまくいかなかった場合も、事業者が新たに事業を再チャレンジするなら、廃業費の補助の対象となります。

    廃業・再チャレンジ枠の補助対象経費は、廃業支援費や在庫処分費など、廃業に関わる費用が6種類あります。「上限50万円」や「併用申請のみ」などの条件がある経費項目もあるため、廃業・再チャレンジ枠に関心がある人は補助対象経費の内容を確認してみましょう。

    廃業・再チャレンジには併用申請と単独申請があります。「経営革新」枠または「専門家活用」枠と併用申請する場合と、廃業・再チャレンジのみで申請する場合とでは事業者が満たすべき補助対象者の要件が変わるため、それぞれの要件も確認しておきましょう。

    事業承継引継ぎ補助金の経営革新枠を解説

    事業承継やM&Aを検討している人の中には、事業承継で使える補助金として事業承継・引継ぎ補助金が気になる人もいますよね。事業承継・引継ぎ補助金には補助金の用途に応じた3つの申請枠があり、そのうちのひとつに「経営革新枠」があります。

    当記事では、事業承継・引継ぎ補助金の経営革新枠の概要を解説します。経営革新枠の対象者や申請要件も解説するので、経営革新枠に関心がある人は当記事を参考にしてみてください。

    なお、当記事は事業承継・引継ぎ補助金の公式サイトにある経営革新枠の公募要領(9次公募)をもとに作成しています。2024年7月に実施される10次公募においては「専門家活用枠」のみの募集となり、経営革新枠の募集はないため注意しましょう。

    経営革新枠は事業承継により革新的かつ地域経済に貢献する事業者が対象

    経営革新とは、事業承継・引継ぎ補助金の申請枠の名称です。経営革新枠は、事業承継をきっかけに革新的かつ地域経済に貢献する事業者を対象としており、具体的な対象事業には「デジタル化」や「地域の雇用維持」などがあげられます。

    【経営革新的な事業承継の例】

    経営革新的事業の例

    〈デジタル化の場合〉
    第三者から飲食業のテイクアウト事業の譲渡を受け、これまで電話注文で対応していた業務をデジタル化するため予約用のホームページを制作し、メールフォームで受け付ける

    〈グリーン化の場合〉

    学習塾の後継者となり、これまで紙で配布していたプリントの一部を生徒がいつでもスマホやパソコンで見られる管理画面へ配信する

    〈事業再構築の場合〉

    第三者からM&Aで事業承継を受け、これまで国内のみへ販売していた医療機器の一部を新分野展開として海外市場へも販売する

    地域経済に貢献する事業の例

    • 地域の雇用を維持する
    • 地域にこれまでない新しい事業を創出する
    • 事業が所在する地域からの仕入れが多い
    • 事業が所在する近隣地域からの仕入れが多い
    • 技術、特産品、観光などの地域の強みを生かした事業である
    • 事業が所在する地域への売上や需要が見込める
    • 新事業に挑戦し、地域経済を活性化するプロジェクトの中心的な役割を担っている
    • 企業の成長が地域経済に波及効果をもたらし、地域経済の活性化につながる取組を行っている

    参考:経営革新枠 公募要領(9次公募)|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、これまで電話応対で受注していた食品事業を事業承継する場合、新たにメールフォームの導入をすれば「デジタル化」につながり、地域の特産品の販売を加えれば「地域経済への貢献」につながる可能性があります。

    事業承継・引継ぎ補助金の経営革新枠は、事業承継で事業を引継ぎ、引き継いだ経営資源を活かして革新的で地域経済に貢献する事業者を対象としています。M&Aや親子承継などで事業を引き継ぎ、新たな事業に変えていきたい人は経営革新枠を検討してみてください。

    なお、経営革新枠で定義する革新的事業は、不動産や物品のみを保有する不動産産業やフランチャイズ、物品賃貸業は補助の対象外です。デジタル化や地域経済に貢献する事業でも、資産の保有のみの事業は不採択となるので、申請時は事業内容を確認してみましょう。

    補助金額は廃業・再チャレンジ枠との併用申請で最大950万円

    事業承継・引継ぎ補助金の経営革新枠の補助金額は最大で800万円です。廃業・再チャレンジ枠と併用することにより追加で廃業費を150万円まで上乗せできるため、最大950万円の補助額を受け取ることができます。

    経営革新枠の補助金額と補助率は、事業者が賃上げや事業規模などの要件を満たすかどうかで異なります。

    【経営革新枠の補助上限額と補助率の概要】

    項目

    要件に該当する(※1)

    要件に該当しない

    賃上げを実施する(※2)

    【補助率】

    2/3

    【補助上限額】

    800万円

    (補助額600万円超~800万円の部分は補助率1/2を適用)

    【補助率】

    1/2

    【補助上限額】

    800万円

    賃上げを実施しない

    【補助率】

    2/3

    【補助上限額】

    600万円

    【補助率】

    1/2

    【補助上限額】

    600万円

    ※1:補助率に関する補助対象者の要件のうちいずれかを満たす者

    ①中小企業基本法上の小規模企業者

    ②物価高の影響等により営業利益率が低下している者

    ③直近決算期の営業利益または経常利益が赤字の者

    ④再生事業者

    ※2:補助上限額の変更に関する賃上げ要件を満たす者

    ①補助事業期間終了時に、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+50円以上となる賃上げ

    ②補助事業期間終了時に、事業場内最低賃金+50円以上となる賃上げ(①を達成済みの事業者)

    参考:経営革新枠 公募要領(9次公募)P.30|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、中小企業基本法上の小規模企業者が事業所内の賃金を地域別最低賃金から50円以上となる賃上げをおこなった場合、経営革新枠において最大となる「補助率2/3」と「補助上限額800万円」が適用されます。

    また、経営革新枠で800万円の補助金額を申請し、廃業・再チャレンジ枠と併用申請する場合は、経営革新枠の800万円に廃業・再チャレンジ枠の廃業費を150万円を追加できるので、合計で950万円の申請が可能です。

    経営革新枠でより高い補助率や補助金額を目指す人は、補助率や補助上限額に関する要件を満たすことや、廃業・再チャレンジ枠との併用申請を検討してみてください。廃業・再チャレンジ枠の概要については、「事業承継・引継ぎ補助金の廃業・再チャレンジとは?概要を解説」で詳しく説明しています。

    なお、従業員がいない一人会社の場合は、賃上げ要件の対象外となります。要件を満たせば一人会社の人も事業承継・引継ぎ補助金に申請できますが、補助上限額は最大で600万円までとなることを留意しましょう。

    対象となる経費は事業承継対象期間に引き継ぎされたものだけ

    経営革新枠で補助される対象の経費は、事業承継をして引き継ぐ「店舗等借入費」や「設備費」などの事業費です。補助対象経費は、交付決定日から補助事業完了日までに契約と支払いが済んだ経費が対象となります。

    【経営革新枠の補助対象経費(事業費)と追加できる補助対象経費(廃業費)】

    事業費

    廃業費

    • 店舗等借入費
    • 設備費
    • 原材料費
    • 産業財産権等関連経費
    • 謝金
    • 旅費
    • マーケティング調査費
    • 広報費
    • 会場借料費
    • 外注費
    • 委託費
    • 廃業支援費
    • 在庫廃棄費
    • 解体費
    • 原状回復費
    • リースの解約費
    • 移転・移設費用(Ⅰ型・Ⅲ型のみ)

    参考:経営革新枠 公募要領(9次公募)P.29|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、経営革新枠における9次公募の場合、事業承継対象期間は2019年11月23日から補助事業完了期限日である2024年11月22日までです。この期間に事業承継と支払いがされた事務所の貸借料敷金や事業に利用する設備費などの費用のみが補助対象になります。

    また、設備の老朽化といった事情があり、対象事業を一度廃業する場合は「廃業・再チャレンジ枠」と併用申請し、事業承継対象期間中に廃業と新事業の両方で事業承継と支払いを済ませれば、廃業費と事業費の両方が補助の対象になります。

    経営革新枠の補助対象経費は、事業承継で得た経営資源で革新的な事業をする事業費だけでなく、新たな革新的事業のために廃業する費用も対象です。また、事業承継・引継ぎ補助金の補助対象経費には、原則、2者以上の相見積が必要なので、相見積の取得も留意するようにしましょう。

    なお、補助対象経費は、交付決定(採択)後に支払われた場合にのみ補助されます。これから経営革新枠に申請する人は、交付決定を受ける前に事業費の支払いをしないように注意しましょう。

    スケジュールを申請から交付決定の後まで確認しておく

    事業承継・引継ぎ補助金で補助対象経費の契約期間や支払い時期を確認する際は、交付決定の後のスケジュールも確認しましょう。経営革新枠の交付決定後のスケジュールを確認すると、実績報告をすべき時期や、補助金の振込時期の目安がわかります。

    【9次公募のスケジュール】

    申請受付期間

    2024年4月1日(月)~2024年4月30日(火)17:00まで

    交付決定日

    2024年6月4日(火)

    事業実施期間

    2024年6月4日(火)~2024年11月22日(金)

    実績報告期間

    2024年8月29日(木)~2024年11月25日(月)

    補助金交付手続き

    2024年12月中旬以降(予定)

    参考:経営革新 事業スケジュール|事業承継・引継ぎ補助金

    経営支援枠の9次公募では、交付決定の発表は2024年6月4日(火)に行われました。交付決定日以降に事業を実施し、2024年11月25日(月)までに実績報告をする必要があります。

    事業承継・引継ぎ補助金では、補助対象経費の対象期間や事業承継の対象期間など、複数の項目ごとで守るべきスケジュールがあります。事業承継・引継ぎ補助金に申請する人は、事前に事業承継・引継ぎ補助金の公式サイトで、各種対象期間を確認してみてください。

    革新的事業は4つの要件を満たす必要がある

    事業者が経営革新枠から補助事業計画を申請する際は、自社の事業計画が4つの革新的事業の要件を満たしているか確認しましょう。経営革新枠で求められる革新的事業は、デジタル化や地域経済への貢献を含め、4つの要件が設定されています。

    【経営革新枠の補助対象事業の要件】

    (1)中小企業者等が事業承継で引き継いだ経営資源をもとに、経営革新を行う取組であること

    (2)補助対象期間を含む5年間において、付加価値額または1人当たりの付加価値額の伸び率が3%/年以上となる計画を事業者が立案し、達成が見込まれること

    ※付加価値額とは、営業利益、人件費、減価 償却費を足したもの

    (3)「デジタル化に資する事業」「グリーン化に資する事業」「事業再構築に資する事業」のいずれかを伴う経営革新新的な事業を行い、認定支援機関が確認できる事業であること

    (4)公序良俗に反する事業や同一の補助対象経費で国から他の補助金を受け取る事業でないこと

    たとえば、M&Aで宿泊業を事業承継する人の場合、引き継いだ従業員やノウハウをもとに新たな予約システムを導入し、付加価値額を年3%以上伸ばす取組みを事業計画にすれば、4つの申請要件を満たす可能性があります。

    経営革新枠の革新的事業では、付加価値額の伸び率3%/年を達成する事業計画が必要で、達成が見込めない事業計画では申請不可となります。経営革新枠に申請する人は、革新的かつ地域経済に貢献する事業にくわえ、付加価値額の伸び率にも留意しましょう。

    9次公募の経営革新枠の採択率は60.0%

    事業承継・引継ぎ補助金の9次公募における、経営革新枠の採択率は60.6%でした。事業承継・引継ぎ補助金の経営革新枠を検討している人は、経営革新枠の申請者数の動向を把握できるので、事業承継・引継ぎ補助金の公式ページで採択結果を調べてみてください。

    【事業承継・引継ぎ補助金の9次公募の採択結果】

    事業

    申請者数(人)

    採択者数(人)

    採択率(%)

    経営革新

    388

    233

    60.6

    専門家活用

    440

    275

    62.5

    廃業・再チャレンジ

    25

    14

    56.0

    参考:採択結果|事業承継・引継ぎ補助金

    9次公募において、経営革新枠の採択率は60.6%で専門家活用枠の採択率は62.5%と大きく変わりませんでした。ただし、申請者数が異なることから枠ごとの難易度を一概に判断することはできないため、参考程度に留めておきましょう。

    なお、事業承継・引継ぎ補助金の採択率は公募回と申請枠によって大幅に異なる場合があります。事業承継・引継ぎ補助金の採択率について、過去の公募回もあわせて詳しく知りたい人は、「事業承継・引継ぎ補助金の採択率は?不採択になる理由や採択事例も解説」の記事を参考にしてみてください。

    経営革新枠では承継方法によって類型を選ぶ

    事業承継・引継ぎ補助金の経営革新枠は、承継方法により「創業支援類型(Ⅰ型)」「経営者交代類型(Ⅱ型)」「M&A類型(Ⅲ型)」の3つの類型に分かれます。類型により申請できる事業者は異なるので、経営革新枠に関心がある人は、各類型の特徴を確認しておきましょう。

    【経営革新枠の各類型の概要】

    類型

    対象となる事業承継

    創業支援類型(Ⅰ型)

    事業承継で経営資産等を引継ぎ、事業承継対象期間中に法人を設立または個人開業する

    経営者交代類型(Ⅱ型)

    親族や従業員などのうち、一定の実績や知識をもつ者が事業承継をして事業を引き継ぐ

    M&A類型(Ⅲ型)

    M&AマッチングサイトやM&A仲介業者などを通じ、一定の実績や知識をもつ者が事業承継をして事業を引き継ぐ

    たとえば、創業支援類型(Ⅰ型)の場合、事業を第三者から引き継ぎ、事業承継対象期間中に会社を設立し、革新的で地域経済に貢献する事業をする事業者は、補助の対象です。

    また、経営者交代類型(Ⅱ型)の場合、一定の経験や知識のある従業員が、地域に需要のある事業を事業承継対象期間中に後継者として引き継ぐなら、補助の対象になります。

    事業承継・引継ぎ補助金の経営革新枠に申請する人は、「創業支援類型(Ⅰ型)」「経営者交代類型(Ⅱ型)」「M&A類型(Ⅲ型)」のいずれかを選び申請をします。各類型で定められた事業承継と合わない方法で事業承継をする場合は、補助の対象外となるので注意しましょう。

    創業支援類型(Ⅰ型)では法人設立か個人開業する人が対象

    創業支援類型(Ⅰ型)が対象となる事業者は、事業承継対象期間中に事業承継で得た資産で新たな事業を行い、法人設立または個人開業をする事業者です。事業承継の方法は複数あり、いずれの場合も、実質的な経営権を含む事業承継が補助の対象となります。

    【創業支援型の事業承継の要件】

    1.事業承継期間内に法人(中小企業者)の設立または個人事業主としての開業を行う

    2.創業にあたり、廃業を予定している会社等から株式譲渡、事業譲渡等により登記変更、代表者変更、従業員や設備、株式の引継ぎを含め引き継ぐ

    参考:経営革新枠 公募要領(9次公募)P.7|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、事業承継の要件1の場合、都内に複数の店舗をもつA社が、後継者不在で廃業するB社から事業譲渡され、B社の事業を行うための会社を新たに設立するといった事業計画ならば要件を満たします。

    また、事業承継の要件2の場合、同じ条件のA社がB社から株式譲渡を受け、B社の株式と従業員などを取得しB社事業の登記をA社に移すならば要件を満たします。

    経営革新枠の「創業支援類型」では、法人設立や個人開業をする要件と、被承継者から経営資源を全部引き継ぐ要件があり、申請者は両方を満たす必要があります。事業承継で新たな会社や事業を立ち上げる人は、自社の事業承継の内容が要件を満たすか注意しましょう。

    なお、事業を個人事業主から譲り受ける法人の場合、対象事業を譲る個人事業主と対象事業を譲り受ける法人の代表者が同一であってはなりません。1社で複数の事業を持つ法人は、個人事業主名義の事業を自社法人へ引継ぎしないようにしてください。

    事業承継の形態は吸収合併や株式交換がある

    創業支援類型で補助される事業承継は、法人では「吸収合併」や「株式交換」などがあり、個人事業主では「事業譲渡」と「株式譲渡」のみとなります。法人設立または開業する予定があれば申請はできるため、申請時点で事業の代表権を持たなくても申請は可能です。

    【創業支援類型(Ⅰ型)の事業承継の形態】

    対象事業の種類

    事業承継の内容

    事業譲渡

    第三者から事業譲渡を受け、引き継いだ設備や従業員を利用した事業を始めるため、開業する

    株式譲渡

    法人から株式譲渡を受け、会社の経営権をもち、新たな会社を設立し、引き継いだ設備や従業員を利用して事業を開始する

    株式移転

    A社とB社が50%ずつ保有する株式を、新たな会社Cにすべて移転し、会社Cが引き継いだ設備や従業員を利用し、新たな事業を始める

    たとえば、個人事業主の場合、第三者の事業の設備や従業員を引き継ぎ、経営権を承継する場合は「事業譲渡」になります。申請時点では、対象事業での法人設立または開業は申請時点で実施していなくても申請は可能です。

    また、法人の場合、第三者の事業の設備や従業員だけでなく、株式の過半数を取得する場合は「株式譲渡」となります。申請時点で、事業を譲り受ける人が事業承継が済んでいない場合、および対象事業での法人設立が済んでいない場合でも、申請はできます。

    創業支援類型で対象の事業承継の形態は、事業譲渡や株式譲渡などで、個人事業主と法人で11の種類があります。自社の事業承継の形態が創業支援型に合致するか知りたい人は、経営支援型の公募要領の「事業承継形態に係る区分整理」の表を確認してみてください。

    なお、法人が交付決定後に事業再編または事業統合を含む吸収合併や新設合併をする場合は、事業の承継者だけでなく、事業を譲り渡す法人(被承継者)と共に「共同申請」する必要があります。共同申請では被承継者の必要書類も提出する点に留意しましょう。

    経営者交代類型(Ⅱ型)では親子や従業員間での承継が対象

    経営者交代類型(Ⅱ型)は、親子で事業承継する「親族内承継」や、会社の上司から事業を引き継ぐ「従業員承継」を対象とする類型です。経営者交代類型(Ⅱ型)で事業を譲り受ける人は、経営に関して一定の実績や知識を有している者でなければなりません。

    【経営者交代類型から申請する法人(後継者)に求められる要件の目安】

    要件

    概要

    経済産業省の薦める制度を利用している者

    • 産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業を受けた者
    • 地域創業促進支援事業(平成 29 年度以降は潜在的創業者掘り起こし事業)を受けた者
    • 中小企業大学校の実施する経営者・後継者向けの研修(具体的には経営後継者研修、経営管理者研修、経営管理者養成コースのいずれかの研修)を履修した者

    経営等に関して一定の実績や知識等を有している例に該当する者(目安)

    • 他の会社または対象会社の役員として3年以上の経験をもつ
    • 個人事業主として3年以上の経験をもる
    • 対象会社と同じ業種で6年以上業務に従事した経験をもつ

    たとえば、個人事業主A氏と個人事業主B氏が親族の場合、B氏がA氏と同じ業種で6年以上の経験をもち、経営者がA氏からB氏に交代されるなら、経営支援類型として申請できます。

    また、業績が悪く事業再生中のA社の場合、別の事業を3年以上経営しているB社の代表者が事業を譲り受けるなら、B社代表は経営者交代型の法人後継者の要件を満たすため、A社は経営支援型として申請できます。

    なお、経営者交代類型(Ⅱ型)に申請する承継者で既に承継している場合の経営経験の年数は定義されていません。「役員経験3年以上」や「同業経験6年以上」申請時点で承継者が代表権を持っていない場合の要件なので、既に承継している場合は目安として考えましょう。

    事業承継の形態は事業譲渡や同一法人内の代表者交代となる

    経営者交代類型で対象となる事業承継は、「個人事業主が法人から事業譲渡を受ける」「同一法人内で経営者交代をする」「事業譲渡を通じて法人成りする」の3つです。経営者交代類型の公募要領「事業承継形態に係る区分整理」で対象の事業承継を確認してみましょう。

    【経営者交代類型(Ⅱ型)の対象事例の例】

    対象事業の種類

    親族内承継

    親が高齢のため事業の経営者から退き、息子が経営権を譲り受けて事業承継する

    従業員承継

    現社長からの話を受け、現従業員が次期社長として経営社の地位と株式を譲り受け、事業を引き継ぐ

    事業再生

    業績が悪く、私的再生手続きをして事業再生を行うA社を、M&Aにより買収してB社が事業を引き継ぐ

    たとえば、個人事業主A氏が法人B社から事業譲渡を受ける場合、経営者交代類型では個人事業主が法人から事業譲渡を受ける事業承継は対象となるので、個人事業主A氏は経営者交代類型の対象です。

    一方、法人A社が法人B社から事業を引き継ぐ場合、法人A社が個人事業主から法人成りしない場合、同一法人内の代表者交代には該当しないので、経営者交代類型には該当しません。

    経営者交代類型で対象の事業承継は、個人事業主は事業承継、法人は同一法人内の代表者交代か事業譲渡経由の法人成りのみです。前任より事業譲渡を受ける人は、事業承継が経営者交代型の事業承継に該当するかを確認してみてください。

    なお、実際に経営者交代をしたかの判断は、交付決定後に提出する必要書類のひとつである「登記事項全部証明書」で判断されます。登記事項全部証明書で経営者交代が確認できない場合は、経営者交代型に申請しても不採択となるので、忘れずに登記事項の変更をしましょう。

    経営者交代類型のみ一部未来の承継も対象となる

    他の類型では事業承継対象期間に事業承継を済ませる必要がありますが、経営者交代類型では、同一内法人の経営者抗体の場合のみ、事業承継対象期間以降の「未来の承継」も補助の対象です。経営者交代型で申請する人は、「未来の承継」の仕組みを理解しましょう。

    【経営者交代類型(Ⅱ型)の事業承継による事業承継対象期間の違い】

    項目

    親族内承継/従業員承継/事業再生の場合

    同一法人内の代表者交代の場合

    補助対象経費の契約と支払い

    事業承継対象期間内

    事業承継対象期間内

    事業承継に関わる引継ぎ(手続き)

    事業承継対象期間内

    事業承継対象期間が終わる事業年度から5年後の年度末

    たとえば、9次公募の経営者交代型で個人事業主が事業承継をする場合、補助対象経費の契約、支払いと事業承継はすべて「交付決定日〜2024年11月22日」までに済ませる必要があります。

    しかし、9次公募の経営者交代型で同一法人内の経営者交代をする場合、補助対象経費の契約、支払いは「交付決定日から2024年1月22日」までとなりますが、事業承継の登記や引継ぎは、5年後の2029年12月31日までとなります。

    経営者交代型で同一法人内の代表者交代の場合は、引継ぎや登記に限り、未来の承継も補助されます。未来の承継をする際は認定経営革新等支援機関から事業承継の蓋然性につき確認を受け、事業計画書計画書にその旨記載する必要があるので、覚えておきましょう。

    なお、経営者交代型の申請時に同一法人内経営者交代で未来の承継で交付決定を受け、実際に事業承継をしない場合は「再度承継計画を提出させられる」といった措置があります。未来の承継の場合も、忘れずに事業承継を実施するようにしましょう。

    M&A類型(Ⅲ型)は事業譲渡や吸収合併での承継が対象

    M&A類型は、「事業譲渡」「吸収合併」「吸収分割」などのM&Aで事業を譲り受ける事業者が対象です。具体的には、M&Aマッチングサイトを通じて、対象事業の経験や知識がある事業者が事業承継をする場合、新たに承継する事業の店舗借入費や設備が補助されます。

    【M&A類型で注意すべき補助対象経費】

    補助される対象の経費

    補助されない対象外の経費

    〈事業費〉

    • 店舗等借入費
    • 設備費
    • 原材料費
    • 産業財産権等関連経費
    • 謝金
    • 旅費
    • マーケティング調査費
    • 広報費
    • 会場借料費
    • 外注費
    • 委託費

    〈廃業費〉※「廃業・再チャレンジ」枠と併用申請する場合のみ

    • 廃業支援費
    • 在庫廃棄費
    • 解体費
    • 原状回復費
    • リースの解約費
    • 移転・移設費用(Ⅰ型・Ⅲ型のみ)
    • M&A(事業再編・事業統合)費用
    • M&A(事業再編・事業統合)仲介手数料
    • デューデリジェンス費用
    • コンサルティング費用等

    たとえば、M&Aアドバイザリーから事業を譲り受ける人を紹介してもらう場合、事業者が事業を引き継いだあとに新たに事業を始めるための設備費やコンサルティング費としての謝金などが補助されます。

    なお、M&A類型で補助される経費は他の類型と同様に事業費であり、M&A費用やデューデリジェンス費用を申請しても不採択となります。M&Aに係る事業再編費用や仲介手数料の補助をして欲しい場合は、専門家活用枠からの申請を検討しましょう。

    事業承継の形態は事業譲渡や株式譲渡がある

    M&A類型は創業支援類型と同じで、個人事業主と法人による事業譲渡や吸収合併、株式譲渡などが対象ですが、引き継いだ事業をそのまま実施します。また、M&Aを受ける事業者が事業を譲る事業者の家族や従業員の場合は、申請が不採択となるので注意しましょう。

    【M&A類型(Ⅲ型)の対象事例の例】

    対象事業の種類

    事業譲渡

    個人事業主が事業を廃業しようとしているため、事業譲渡をもちかけ、法人が個人事業主から事業を購入する

    吸収合併

    A社とB社は取引先同士であったが、合併した方が共通の事業のコストを抑えられるため、A社はB社と合併し、共通の会社で事業を行うことにする

    吸収分割

    A社はB社の行う2つの事業のうち1つを譲り受けることになった

    たとえば、M&Aアドバイザリーから紹介を受けて第三者が経営する事業を譲渡される場合、原材料費や広報費などを補助対象経費としてM&A類型から申請することが可能です。

    一方、家族が経営者の事業の一部を事業譲渡される場合、分割された事業を仲介してもらう仲介手数料を補助対象経費とするなら、事業承継の形態の点でも補助対象経費の点でも補助の対象外です。

    経営革新枠のM&A類型は、親族と従業員以外から事業承継を受け、引き継いだ事業を継続する事業承継が対象です。M&A類型として事業を承継者に譲り渡す者は、株式をもつ株主であっても対象法人の経営をしていない場合は被承継者とはならないので注意しましょう。

    経営革新枠での申請は認定支援機関への相談が必要となる

    事業承継・引継ぎ補助金の経営革新枠に申請するには、認定支援機関への相談が必須です。経営革新枠の申請書類のひとつには、認定支援機関の発行する「確認書」が含まれるためです。

    【認定支援機関の概要】

    • 正式名称は「認定経営革新等支援機関」である
    • 中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある者として経済産業省に認可された団体
    • 金融機関や弁護士、民間のコンサルタントなどさまざまであり、専門分野が異なる
    • 料金体系は認定支援機関ごとに異なる
    • 「認定支援機関検索システム」から都道府県別で検索できる

    認定支援機関に相談すると、認定支援機関は法人が事業承継・引継ぎ補助金の申請要件や補助事業計画など計4点を確認し、問題なければ「確認書」を発行してくれます。

    また、無事に事業承継・引継ぎ補助金で交付決定を受けた場合は、申請した事業者は担当の認定支援機関へアフターフォローとしてサポートを受けられます。

    認定支援機関のサポートを受けることにより、事業承継の形態や補助対象経費など、申請に必要な要件を満たせるかどうかを事前に確認できます。経営革新枠に申請する際、認定支援機関の発行する確認書がないと申請しても書類不備で不採択となるので注意しましょう。

    まとめ

    経営革新枠は、事業承継をするだけでなく、事業承継をきっかけに革新的かつ地域経済に貢献する事業者を対象とします。具体的には、具体的には「デジタル化」や「地域の雇用維持」などに該当する事業です。

    事業承継・引継ぎ補助金の経営革新枠補助金額は最大で800万円ですが、廃業・再チャレンジ枠と併用した申請した場合は、廃業費を追加で150万円まで申請できます。営革新枠の補助金額と補助率は、事業者が賃上げや事業規模等の要件を満たすかどうかで異なります。

    経営革新枠の申請書類のひとつには認定支援機関の発行する「確認書」が含まれるため、経営革新枠に申請するには認定支援機関への相談が必須です。経営革新枠へ申請する人は、申請の準備の前に認定支援機関に相談しましょう。

    事業承継引継ぎ補助金の実績報告とは?必要書類と注意点も解説

    事業承継・引継ぎ補助金に申請した人の中には、交付決定を受け、実績報告を提出する人もいますよね。その際、「実績報告はいつまでに提出するのか」「どのような書類を出せばいいのか」などの詳細がわからない人もいることでしょう。

    当記事では、事業承継・引継ぎ補助金の実績報告の概要をまとめて解説します。実績報告の提出前に注意すべき点も解説するので、事業承継・引継ぎ補助金で実績報告を提出する予定の人は、当記事を参考にしてみてください。

    なお、当記事は事業承継・引継ぎ補助金の公式サイト(7次公募~)の「補助金交付のための事務手引書」「(別紙2)証拠書類等の準備に係る留意点」「(別紙3)実績報告時の提出書類に関する記入マニュアル」をもとに作成しています。

    実績報告は補助事業完了時に複数の書類を提出する手続き

    事業承継・引継ぎ補助金の実績報告は、申請者が補助事業を完了する際に行う手続きです。実績報告において事業者は「事業報告書」をはじめとする複数の書類を提出し、事務局によって交付申請時と実績報告に相違がないかを確認されます。

    【交付決定後に必要となる報告の種類】

    手続き

    概要

    タイミング

    ①状況報告

    補助事業の中間実施状況を報告する 

    補助事業の実施中、公募回ごとに定められた期間

    ②承継完了報告

    事業承継の完了を報告する

    承継の完了後、公募ごとの補助事業完了期限日まで

    ③実績報告

    事業の実績報告として、利用した経費や実施内容を報告する

    補助事業を完了して30日以内、または補助事業完了日の翌月10日のいずれか早い方

    ④事業化状況報告

    補助事業の完了した会計年度終了後から5年の間、毎年1回事業化状況を報告する

    国の会計年度終了(3月末)後90日以内

    参考:専門家活用枠 公募要領(10次公募)|事業承継・引継ぎ補助金

    実績報告は、採択後に行う補助事業に関する報告として、利用した経費や実施した取り組みの内容を報告するものです。事業者が行った補助事業を総括して補助金を交付できるか判断するための報告なので、事業者が補助事業を完了してすぐのタイミングで行われます。

    実績報告は事業者が補助金を受け取るために必要な手続きなので、忘れずに実施しなければなりません。事業承継・引継ぎ補助金事務局から「実績報告をして下さい」とのアナウンスはないので、事業者は補助事業の完了後30日以内に実績報告を送信するようにしましょう。

    なお、実績報告は交付決定後に事業者が行う複数の報告のうちのひとつです。実績報告をする前に事業者は「事業完了報告」を行う必要があるほか、実績報告後も3年にわたり事業化状況報告を行う必要がある点に留意しておいてください。

    必要書類は全員必須の書類と該当者のみの書類がある

    実績報告の必要書類は、全員必須の書類と該当者のみが用意する書類があります。実績報告における必要書類は申請枠によって異なるため、ここでは「専門家活用枠」の必要書類を紹介します。

    【実績報告で提出する書類(専門家活用枠)】

    全員が提出する書類

    概要

    (目次)実績報告書類チェックリスト

    実績報告書の一覧及び提出すべき書類に関するチェックリスト

    該当必須様式提出チェックリスト

    該当する場合に必要な提出書類に関するチェックリスト

    実績報告書

    補助対象事業の完了時に提出する実績報告書

    事業実施概要報告書

    実施した補助対象事業の概要報告書

    補助対象経費総括表

    実際にかかった補助対象経費の総括表

    経費区分別内訳書

    経費区分別の経費発生額内訳を記入する報告書

    検査チェックシート

    実績報告で遵守すべき事項に関するチェックシート

    実績報告類型別の必要書類

    実績報告類型別に規定された引継ぎ事業の証拠書類

    経費区分別の証拠書類

    経費区分別に規定された証拠書類

    該当者のみが提出する書類(例)

    概要

    旅費明細書

    旅費の契約日・支払金額等を記入する明細書

    出張報告書

    出張内容に関する報告書

    謝金単価報告書

    謝金における時間単価及び従事時間に関する報告書

    関与専門家選定理由書

    補助対象事業に関与する専門家を選定した理由書

    選定理由書

    相見積を取得せず、特定の1者を選定した場合の理由書

    受託業務完了報告書

    業務委託をした専門家からの提供業務に関する確認書

    見積と支払金額の差異報告書

    見積取得時の金額より支払金額が10%以上高い場合に提出する報告書

    経費区分変更申請書

    申請時の経費区分に変更が必要な場合に提出する書類

    表明保証保険利用報告書

    保険料を申請している場合に提出する報告書

    未成約時の追加報告書

    補助事業期間内に経営資源引継ぎが実現しない場合に提出する報告書

    参考:実績報告時の提出書類に関する記入マニュアル(専門家活用枠)|事業承継・引継ぎ補助金

    全員が提出する書類には、補助事業期間や共同申請者名を記入する「実績報告書」や、補助事業者や補助事業の概要を記入する「事業実施概要報告書」などがあります。

    該当者のみが提出する書類には、旅費を申請する場合に契約日や支払金額等を記入する「旅費明細書」や、保険料を申請する場合に必要となる「表明保証保険利用報告書」などがあります。

    実績報告の書式は、事業承継・引継ぎ補助金公式サイトの各申請枠のページにある「補助事業期間中に使用する様式」からダウンロードできます実績報告における必要書類は申請枠ごとに異なるため、かならず自分が申請した枠のページを確認しましょう。

    なお、事業者が実績報告で作成した帳簿や証拠書類は、補助事業の完了日から5年間保管する義務があります。実績報告の証拠書類については、事業承継引継ぎ補助金の公式サイトから各申請枠の「(別紙 2)証拠書類等の準備に係る留意点」を参考にしてみてください。

    実績報告類型番号ごとの必要書類

    実績報告の必要書類には、実績報告類型番号によって異なる必要書類があります。実績報告類型番号とは、「法人」「個人事業主」などの事業形態と「事業承継」「吸収合併」などの事業承継の形態に応じて割り振られている番号のことです。

    【実績報告類型番号の区分】※専門家活用枠「買い手支援類型(Ⅰ型)」の場合

    申請者

    事業承継の形態

    実績報告類型番号

    承継者

    (法人)

    株式譲渡

    1

    第三者割当増資

    株式交換

    吸収合併

    2

    吸収分割

    3

    事業譲渡

    4

    承継者

    (個人事業主)

    株式譲渡

    1

    第三者割当増資

    事業譲渡

    4

    実績報告類型番号ごとの必要書類

    実績報告類型番号

    必要書類

    1

    【株式譲渡】

    ① 株式譲渡契約書
    ② 対象会社の株式譲渡前と株式譲渡後の株主名簿

    【第三者割当増資】

    ① 引受契約書
    ② 被承継者の第三者割当増資前と第三者割当増資後の株主名簿

    【株式交換】

    ①株式交換契約書
    ② 被承継者と承継者、それぞれの株式交換前と株式交換後の株主名簿

    2

    【吸収合併】

    ① 合併契約書
    ② 承継者の吸収合併後の株主名簿
    ③ 被承継者の合併前の株主名簿
    ④ 承継者の履歴事項全部証明書
    ⑤ 被承継者の閉鎖事項全部証明書

    3

    【吸収分割】

    ① 分割契約書
    ② 承継者の履歴事項全部証明書
    ③ 被承継者の履歴事項全部証明書
    ④ 分割契約書に移動した資産負債の記載がない場合は移動した資産負債の一覧

    4

    【事業譲渡】

    ① 事業譲渡契約書
    ※ 不動産売買契約書等での代替は不可
    ② 事業譲渡契約書に移動した資産負債の記載がない場合は移動した資産負債の一覧
    ③ 事業譲渡が行われたことを証する書類

    参考:専門家活用枠 公募要領(10次公募)|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、専門家活用枠の買い手支援類型(Ⅰ型)へ申請する法人が吸収合併による事業承継を行う場合、実績報告類型番号は「2」に該当します。この場合に必要となる書類は「①合併契約書」「②承継者の吸収合併後の株主名簿」「③被承継者の合併前の株主名簿」「 ④承継者の履歴事項全部証明書」「⑤被承継者の閉鎖事項全部証明書」の5種類です。

    また、専門家活用枠の買い手支援類型(Ⅰ型)へ申請する個人事業主が株式譲渡による事業承継を行う場合、実績報告類型番号は「1」に該当します。この場合に必要となる書類は「① 株式譲渡契約書」「② 対象会社の株式譲渡前と株式譲渡後の株主名簿」の2種類です。

    実績報告における該当者別の必要書類は、申請者の事業形態や事業承継の形態に応じた実績報告類型番号によって異なります。自社が該当する実績報告類型番号を確認して、必要書類に漏れのないように準備をしましょう。

    補助対象経費ごとの必要書類

    実績報告においては、申請する補助対象経費ごとに契約書や領収書などの証拠書類を提出することになります。自分が申請する経費では、どのような書類を用意する必要があるのかを確認しておきましょう。

    【対象経費ごとの必要書類】

    経費

    必要書類

    共通

    • 支払確認資料

    謝金

    • 専門家の職位等を確認できる資料
    • 専門家等への依頼状・就任依頼書・承諾書・委嘱状
    • 請求書
    • 専門家等の業務内容が分かる議事録等の資料

    など

    旅費

    • 各種領収書
    • 航空機の搭乗を証明する書類
    • 出張の全行程が分かる資料
    • 正規交通料金が確認できる資料

    など

    外注費

    • 見積書
    • 請負契約書
    • 納品書
    • 請求書
    • 業務完遂が確認できる成果物

    など

    委託費

    • 見積書
    • 委託契約書
    • 請求書

    など

    システム利用料

    • マッチングサイト等への登録完了メール・WEBページ証憑等
    • 登録先サイトでの費用発生確認メール・WEBページ証憑等
    • マッチングサイトのサービス概要等が確認できる資料
    • 請求書

    など

    保険料

    • 見積書
    • 保険契約書
    • 請求書

    など

    廃業費

    • 見積書
    • 各種契約書
    • 業務完了書類(納品書、廃棄証明書等)
    • 請求書
    • 設備機器等の処分前と処分後の写真等

    など

    店舗等借入費

    • 賃貸借契約書
    • 図面
    • 写真
    • 請求書

    など

    設備費

    • 見積依頼書・カタログ
    • 見積書
    • 発注書・契約書
    • 納品書
    • 請求書
    • 写真
    • 各種証拠書類

    など

    原材料費

    • 見積依頼書
    • 見積書
    • 発注書・契約書
    • 納品書
    • 請求書
    • 受払簿
    • 配布リスト
    • 写真
    • サンプル品・試供品の配布にともなう報告

    など

    産業財産権等関連経費

    • 見積書
    • 発注書・契約書
    • 完了報告書
    • 出願人及び出願手続きの完了が確認できる書類
    • 請求書

    など

    マーケティング調査費

    • 見積書
    • 発注書・契約書
    • 納品書
    • 請求書
    • 成果物

    など

    広報費

    • 見積書
    • 発注書・契約書
    • 納品書
    • 請求書
    • 広報活動の成果物

    など

    会場借料費

    • 見積書
    • 発注書・契約書・申込書
    • 請求書

    など

    参考:各申請枠の「(別紙2)証拠書類等の準備に係る留意点」|事業承継・引継ぎ補助金

    申請する経費によって、提出が必要となる書類が異なります。見積書や請求書などは多くの経費において提出が必須となるため、誤って紛失することのないよう注意して保管しましょう。

    なお、事業承継・引継ぎ補助金の実績報告における必要書類には全員提出が必要となるものと、該当者のみ提出が必要となるものがあります。書類ごとにさまざまなルールがあるため、事業者が実績報告を提出する際は申請する枠の「(別紙2)証拠書類等の準備に係る留意点」をかならず確認しましょう。

    旅費を申請するときは書類の順番も揃える

    事業承継・引継ぎ補助金において、補助対象経費として「旅費」を申請する場合は、他の補助対象経費より多くの書類を提出します。書類を作成する順番も決まっているため、実績報告で旅費の書類を作成する際は順番を間違えないよう注意しましょう。

    【旅費を申請する際の提出書類】

    必要書類

    概要

    ①出張報告書 (出張に係る旅費の場合)

    「出張報告書(様式第5-3-3)」を出張ごとに作成

    ②旅費明細書

    「旅費明細書(様式第5-3-2)」に旅費の支払金額を記入し、旅費合計金額を算出

    ③経費区分別内訳書

    「経費区分別内訳書(様式第5-3)」に旅費合計金額をまとめて記入

    参考:(別紙3)実績報告時の提出書類に関する記入マニュアル|事業承継・引継ぎ補助金

    旅費を申請する場合の提出書類は、1番目に「出張報告書」を作成し、2番目に「旅費明細書」を作成し、最後に「経費区分別内訳書」を作成します。

    実績報告の人件費と旅費は、他の補助対象経費と扱いが異なります。事業承継・引継ぎ補助金において「旅費」を申請する人は、公式サイトにある「(別紙3)実績報告時の提出書類に関する記入マニュアル」から「提出書類の記入方法について」の項目を参考にしてみてください。

    実績報告の申請はj Grantsから行う

    実績報告の申請は、j Grantsから申請フォームへ入力し、作成した各種のファイルをアップロードする方法です。経営革新枠の場合、実績報告のファイルはパッケージ型の「実績報告書」と個別ファイルがあります。

    【専門家活用枠の実績報告書のファイルと内訳】

    ファイルの名称

    中に含まれるファイルの名称(抜粋)

    実績報告書パッケージ①

    ※総合

    • (目次)実績報告書チェックリスト
    •  該当必須様式提出チェックリスト
    •  実績報告書
    •  補助金実施概要報告書
    •  補助対象経費総括表

    実績報告書パッケージ②

    ※旅費関連

    • 旅費明細書
    • 出張報告書
    • 経費区分別証拠書類一覧(旅費)

    実績報告書パッケージ③

    ※選定理由書関連

    選定理由書

    個別ファイル

    受託業務完了報告書

    参考:交付決定後資料>実績報告時に使用する様式|事業承継・引継ぎ補助金

    パッケージ型の「実績報告書」の場合、事業承継・引継ぎ補助金の公式サイトからダウンロードする際のファイル名は「実績報告書パッケージ①」となっており、複数のシートが1つのエクセルファイルに集約されています。

    個別ファイルの場合、外部の事業者へ委託費を支払った事業者のみが提出する「受託業務完了報告書」のみとなっています。

    実績報告書のファイルには、複数のシートから成る「パッケージ」型のファイルと「個別ファイル」があります。パッケージ型のファイル「実績報告書パッケージ①」はすべての事業者が入力する書類なので、全てのシートに目を通すようにしてください。

    実績報告書の提出前に注意点を確認して完成度を高める

    実績報告書に不備があると差し戻しとなる可能性があるため、実績報告書を提出する前に実績報告時の注意点を把握しておきましょう。事業者があらかじめ実績報告で注意すべき点を確認すれば、実績報告書の完成度を高めることにつながります。

    【実績報告で注意すべき点】

    提出書類に関する注意点

    • 書類に不足はないか
    • 事業承継の契約に不備はないか
    • 見積金額と提出する領収書の金額は同じか
    • 補助事業内容や経費の支払者は交付申請内容と同じか
    • 証拠書類のPDFのファイルの名称は「【交付申請番号】」+「書類名」になっているか

    申請要件に関する注意点

    • 申請要件をすべて満たせているか
    • 補助対象経費の区分に誤りはないか
    • 補助対象経費から消費税額及び地方消費税額を減額しているか

    事業承継・引継ぎ補助金で実績報告をする際は、不備のない書類作成や要件を守った申請が大切です。実績報告を提出する際は、今一度「公募要領」や「補助金交付のための事務手引書」などの資料を読み、書類不備や要件対象外に当てはまらないかを確認しましょう。

    申請前にチェックシートを使って実績報告書の確認をする

    実績報告では複数の書類を提出するため、チェックシートを使って実績報告書の確認をしましょう。実績報告書の目次はチェックリストになっています。実績報告のチェックリストが見つからない場合は、事業承継・引継ぎ補助金の公式サイトにある「公募要領等ダウンロード」からダウンロードできます。

    【専門家活用枠の実績報告書のチェックリスト(抜粋)】

    様式名

    提出要否

    提出が必要なケース

    実績報告書

    必須

    全員必須

    事業実施概要報告書

    補助対象経費総括表

    経費区分別内訳書

    旅費明細書

    出張報告書

    該当の場合必須

    旅費を申請している場合

    謝金単価報告書

    旅費を申請しており、出張がある場合

    関与専門家選定理由書

    委託費・外注費を申請している場合

    参考:専門家活用(実績報告パッケージ①)|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、実績宝庫所の場合、提出要否は「必須」で、提出が必要なケースは「全員必須」なので、実績報告を提出するすべての事業者が提出する書類だとわかります。

    一方、出張報告被の場合、提出要否は「該当の場合必須」で、提出が必要なケースは「旅費を申請している場合」なので、該当する事業者のみが提出する書類だとわかります。

    実績報告書のファイルには、目次としてチェックリストがついています。実績報告を準備する際と提出する際は、チェックリストを利用して提出書類に抜け漏れのないようにしましょう。

    交付申請時と変更がある場合は実績報告前に報告する

    実績報告と交付申請時の内容が違う場合は、差し戻しや不採択となる可能性があるので、実績報告前に事業承継・引継ぎ補助金事務局へ報告しましょう。その際、変更できる内容と変更できない内容があるので、事前に「申請内容変更時の対応整理表」を確認してください。

    【申請内容変更時の対応整理表】

    変更可

    • 事業承継形態の変更
    • 基本情報の変更
    • 事業譲渡から株式交換に変更
    • 法人名を変更
    • 法人の住所を変更

    変更不可

    • 補助事業者の変更
    • 補助事業期間の変更
    • 補助対象経費の変更
    • 代表者の変更
    • 被承継者の変更
    • 事業費・廃業費間での振替

    参考:申請内容変更時の対応管理表(専門家活用)|事業承継・引継ぎ補助金

    変更可の手続きには「事業承継形態の変更」や「基本情報の変更」などがあります。一方で、変更不可の手続きには「補助事業者の変更」や「補助事業期間の変更」などがあります。

    実績報告では、交付申請時に事業承継・引継ぎ補助金事務局へ提出した内容と実績報告の内容が合致していることが大切です。交付申請時から補助事業の内容の変更があった人は、「申請内容変更時に対応整理表」で変更できる手続きなのか確認してみましょう。

    まとめ

    事業承継・引継ぎ補助金の実績報告は、申請者が補助事業を完了する際に行う手続きです。実績報告は補助金が振り込まれる前の審査であり、事業者は複数の書類を提出しなければなりません。

    実績報告で必要となる書類は、事業規模や事業承継の形態に応じて割り振られる「実績報告類型番号」と「補助対象経費」によって異なります。全員必須の書類だけでも10種類以上あり、加えて個別の書類もあるため、実績報告時は書類に抜け漏れがないように注意しましょう。

    事業承継・引継ぎ補助金の専門家活用とは?概要と注意点を解説

    事業承継や廃業をしたい人の中には、事業承継・引継ぎ補助金で補助を受けたい人もいますよね。その際、事業承継・引継ぎ補助金のパンフレットや公募要領にある「専門家活用」について、「専門家活用」が指す意味を知りたい人もいることでしょう。

    当記事では、事業承継・引継ぎ補助金の申請方法の1つである「専門家活用」枠の概要を解説します。専門家活用枠で対象の補助経費や事業者も解説するので、事業承継・引継ぎ補助金に関心がある人は、当記事を参考にしてみてください。

    なお、当記事は20247月に公開された事業承継・引継ぎ補助金の専門家活用枠10次公募回の公募要領をもとに作成しています。

    専門家活用は事業承継の専門家を通じて事業の引継ぎをする事業者が対象

    事業承継・引継ぎ補助金の専門家活用枠とは、弁護士や司法書士などの専門家に事業承継を依頼する際に利用できる申請枠です。専門家活用枠では、事業者が弁護士や司法書士などの専門家を活用し、事業をM&Aで売買する際に、かかる経費の一部補助を受けられます。

    専門家活用枠で対象となる補助事業は、不動産のような有形資産だけでなく、株式や経営権を含めて売買するM&Aです。

    【専門家活用枠を利用して申請できる経営引継ぎの例】

    経営引継ぎの形態

    有形資産+株式+経営権の引継ぎ

    飲食店をしている第三者の会社の店舗と株式、経営権を引き継ぐ

    無形資産+事業+経営権の引継ぎ

    美容室をしている個人事業主から顧客リスト、事業、経営権を引き継ぐ

    有形資産+無形資産+経営権の引継ぎ

    運送業者から車両、従業員、経営権を引き継ぐ

    参考:専門家活用枠 10次公募 公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、第三者から会社の事業を引き継ぐ場合、会社の店舗、株式、経営権を引き継ぐなら、「有形資産+株式+経営権」の引継ぎとなるため、専門家活用枠の対象事業の要件を満たすので、専門家活用枠へ申請できます。

    また、第三者へ事業を譲り渡す場合も、株式や店舗だけでなく、第三者が実質的な経営者となる場合は、専門家活用枠の対象事業の要件を満たすので、専門家活用枠の補助の対象事業となります。

    専門家活用枠では、M&Aで事業を購入する事業者だけでなく、売却する事業者も対象です。M&Aマッチングサイトや弁護士などを通じて事業承継をしたい人は、専門家活用枠の利用を検討してみてください。

    なお、2024年7月に実施される事業承継・引継ぎ補助金の10次公募では専門家活用枠のみの募集となります。

    専門家とは弁護士やM&Aアドバイザリーを指す

    専門家活用の「専門家」には弁護士や法律事務所などの種類があり、そのうち「M&A 支援機関登録制度」に登録された専門家は「登録FA・仲介業者」と呼ばれます。事業者がM&Aを依頼する専門家は特に指定されていないので、事業者は自社で専門家を決められます。

    【専門家の種類】

    専門家の種類

    依頼できる書類

    弁護士

    • 事業譲渡契約書
    • 株式譲渡契約書
    • 遺産分割協議書

    税理士

    • 確定申告書
    • 賃金台帳
    • 法人事業概況説明書

    中小企業診断士

    • 貸借対照表
    • 損益計算書
    • 営業利益率低下に関する計算書

    行政書士

    • 公正証書遺言書の原案
    • 履歴事項全部証明書の取得

    法律事務所

    • 事業譲渡契約書
    • 株式譲渡契約書
    • 遺産分割協議書

    たとえば、宿泊施設を買収したい事業者の場合、宿泊施設の買収に精通している法律事務所と契約をしたければ、自社でネット検索をして法律事務所を探すことができます。

    また、宿泊施設を売却したい事業者の場合、事業承継の契約書作成や定款変更を依頼したければ、自社でネット検索をして行政書士探すことができます。

    専門家活用枠を通して選べる専門家には、弁護士や中小企業診断士など、さまざまな専門家がいます。M&Aではさまざまな法的な手続きが発生するので、専門家にM&Aの依頼をしたい人は、自社の事業承継の形態に合う専門家を探してみてください。

    補助金額は廃業費を含めると最大750万円

    専門家活用枠の補助金額は、補助対象経費の50万円~600万円で、廃業費の150万円を合わせると最大750万円が補助されます。専門家活用枠から申請すると、事業者が支払う補助対象経費のうち、補助率をかけた補助金額の上限まで補助されます。

    【専門家活用枠の概要】

    類型

    補助率

    補助金額

    上乗せ額(廃業費)

    買い手支援型(型)

    補助対象経費の2/3以内

    対象経費の50万円~600万円以内

    ※補助事業期間内に経営資源の引継ぎが実現しなかった場合は上限300万円に引き下げる

    +150万円以内

    売り手支援型(型)

    補助対象経費の1/2または2/3以内

    ※売り手支援型の物価高等の影響で営業利益率低下直近決算期の営業利益等が赤字の場合は2/3となる

    参考:専門家活用枠 10次公募 公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、買い手支援型(型)の場合、司法書士に支払う不動産売買の登記費用を含み600万円支払うとすると、補助率は2/3なので、400万円が補助されます。

    また、売り手支援型の場合、税理士に対象事業の企業価値を算定する書類作成の依頼で300万円支払うなら、営業利益率低下がない場合は補助率1/2なので、150万円が補助されます。

    専門家活用枠の補助金額は50万円~600万円で、補助率は買い手支援型が一律2/3となり、売り手支援型より優遇されています。補助金額を多くしたい人は、補助事業期間中に経営資源の引継ぎを完了できるよう、引継ぎ計画を立ててみましょう。

    補助対象経費は専門家に支払うコンサルティング費用や着手金などがある

    専門家活用枠の主な補助対象経費は、各種専門家に支払うコンサルティング費用や着手金。専門家活用枠の補助対象経費は、公募要領では「謝金」や「委託費」などと記載されているため、各補助対象経費が意味する内容を理解しておきましょう。

    【専門家活用枠で補助される経費】

    補助対象経費の種類

    謝金、旅費、外注費(請負契約)

    • コンサルティング費用
    • コンサルティングをするための出張費
    • (建設業工事の)請負契約承継承諾願の作成費用

    委託費(委任契約)

    • デューデリジェンス費用(DD費)
    • 着手金
    • マーケティング費用
    • リテーナー費用
    • 成功報酬
    • 契約書の作成・レビュー

    システム利用料

    M&Aマッチングサイト利用費

    保険料

    M&A 当事者間で交わされる最終合意契約に規定される表明保証条項に関する保険

    廃業費

    廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの売り手支援型 解約費、移転・移設費用

    たとえば、企業が弁護士やコンサルタントなどの専門家に監査を頼む際のデューデリジェンス費用(DD費)を支払う場合、補助対象経費は「委託費」として申請します。

    また、M&Aアドバイザリーへのコンサルティング費用を支払う場合は、コンサルタントが助言や個別の実作業、補助対象経費は謝金として申請します。

    専門家活用枠の補助対象経費は、主に専門家との契約や手続きに係わる費用です。デューデリジェンス費用(DD費)や着手金、マーケティング費用を支払う場合は、専門家活用枠の公募要領を確認し、どの補助対象経費に当てはまるか確認してみてください。

    なお、専門家活用枠で委託費を支払う予定の人は、「M&A 支援機関登録制度」に登録済みの 登録FA・仲介業者に支払う補助対象経費のみが補助されます。専門家への登記手続きや売却事業者紹介などで着手金や成功報酬を支払うなら、登録FA・仲介業者を選ぶようにしましょう。

     事業承継期間中に支払いや事業再編の着手などを終える

    専門家活用枠では、事業承継期間中に支払いや事業再編の着手などを終える必要があります。事業承継期間とは、交付決定日から補助事業完了日までを指し、10次公募の場合、事業承継期間は交付決定日から20241122日までとなります。

    【事業承継期間が係わる申請ルール】

    ルールの種類

    公募要領にある「経営資源引継ぎ」のルール

    事業者と専門家の間で基本合意書または最終契約書を締結する際は、補助事業期間内に行わなければならない

    廃業に係わるルール

    事業者が廃業をする際は、関連する経営資源の引継ぎを補助事業期間内に完結しなければならない

    補助対象経費に係わるルール

    事業者が補助対象経費の支払いをする際は、補助対象経費の見積・発注・納品・検収・請求・支払をすべて補助対象期間内に終わらせなければならない

    参考:専門家活用枠 10次公募 公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、買い手支援型で法人Aが個人事業主Bから事業を購入する場合、法人Aが交付決定を受ける前に法律事務所に着手金を支払うと、着手金は補助対象外となります。

    また、売り手支援型で個人事業主Aが法人Bに事業を売却する場合、両者間で売却金額がまとまらず、補助対象期間中に支払いが完了できないと、個人事業主Aの補助対象経費は対象外となります。

    専門家活用枠では、補助対象期間中に専門家へのクロージングまでが完了する必要があります。専門家活用枠に申請する際は、申請する事業承継の実施、補助対象経費への支払い、専門家と契約書を交わす日付が、いずれも補助対象期間内となるように留意しましょう。

    対象者は経営資源引継ぎの要件を満たす中小企業者や個人事業主

    専門家活用枠の対象事業者は、国内に拠点または居住地をもつ中小企業者や個人事業主のうち、MAで事業を購入または売却する人です。専門家活用枠で申請する際は、いずれの対象者も「経営資源引継ぎの要件」を満たさなければなりません。

    【経営資源の引継ぎの要件】

    • 補助事業期間中に買い手と売り手の間で事業再編・事業統合が着手または実施されること

    ※廃業を伴う事業再編・事業統合をする予定の場合も含む

    • 専門家活用枠の公募要領に記載する「経営資源引継ぎ形態に係る区分整理」で定める形態に該当すること
    • 物品・不動産等のみの売買・グループ内の事業再編および親族内の事業承継に当てはまらないこと

    参考:専門家活用枠 10次公募 公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、法人Aの株式の一部を保有する法人Bの場合、法人Aの株式を第三者割当増資で過半数保有し、法人Aの設備や従業員も引き継ぐときは、経営資源の引継ぎ要件を満たします。

    一方、M&Aで事業譲渡する個人事業主の場合、代表権はそのままで、車両や不動産などの資産のみを法人に売却して引き継ぐときは、経営資源の要件を満たしません。

    専門家活用枠の対象者は、国内で事業承継をする中小企業者と個人事業主です。対象事業者は、3期分の決算および申告が終了している法人、開業と青色申告申請書を税務署に提出した日付から5年経過した個人事業主なので、申請時に確認してみましょう。

    2回申請できる人は複数の事業を持っている事業者

    事業承継・引継ぎ補助金では同一の事業者による複数回の申請は不可ですが、複数の事業をもつ事業者は、2回目の申請が可能です。事業承継・引継ぎ補助金に2回目の申請をしたい人は、2回目の申請ができるか、申請単位や申請できる人をしてみましょう。

     

    申請単位

    同じ事業者や同じ事業で2回目の申請は不可

    • 【例外】事業を譲り受ける人(承継者)と補助対象経費を支払う人が異なる場合:

    補助対象経費を支払う人が承継者の支配株主または株主代表である者なら、共同申請する場合、承継者は買い手支援型(型)から1申請、支配株主または株主代表である者は売り手支援型(型)から1申請、2申請が可

    • 【例外】売り手支援型(型)被承継者が複数の対象会社を異なる承継者に引継ぐ場合:

    売り手支援型として2回目以降の申請が可

    申請できる人

    補助対象者(事業承継の手続きをする人)

    • 補助対象経費を支払う人
    • 補助対象経費の契約の名義人
    • 事業承継・引継ぎ補助金に関連する補助金で、過去に交付決定を受けていない人

    〈関連する補助金の例〉

    -令和2年度第1次補正予算「経営資源引継ぎ補助金」

    -令和2年度第3次補正予算「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」

    -令和3年度当初予算「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」

    参考:専門家活用枠 10次公募 公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、法人がA事業B事業C事業の3つの事業を持っている場合、A事業で一度交付決定を受けるとA事業で2度目の申請はできませんが、B事業またはC事業では2回目の申請が可能です。

    ただし、複数の事業をもつ法人の場合でも、過去に令和2年度第1次補正予算「経営資源引継ぎ補助金」や令和3年度当初予算「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)で交付決定を受けた場合は、2回目の申請の対象者からは外れます。

    専門家活用枠で2回目の申請をする場合は、別の事業でなければなりません。ただし、売り手側が複数の事業者に事業を譲り渡す場合は、複数回の申請が可能です。事業承継・引継ぎ補助金で2回目の申請をしたい人は、要件を満たせるか確認してみましょう。

    事業承継・引継ぎ補助金の専門家活用枠の採択率は55.9%

    2024年度の9次公募で専門家活用枠の採択率は62.5%です。1次から8次公募の採択率は平均で57.8%程度でした。一方、事業承継・引継ぎ補助金の「経営革新」枠の9次公募の採択率は60.0%で専門家活用枠と近い数字ですが、申請者数と採択者数は異なります。

    9次公募の専門家活用枠とその他の申請枠の採択率】

    専門家活用枠

    経営革新枠

    採択率

    62.5%

    採択率

    60.0%

    申請者数

    440

    申請者数

    388

    採択者数

    275

    採択者数

    233

    ※事業承継・引継ぎ補助金の公式サイト「採択結果」を元に、株式会社ソラボが作成

    たとえば、9次公募の専門家活用枠の申請者数は440者ですが、9次公募の経営革新枠の申請者数は388者なので、経営革新枠より専門家活用枠の方が申請者数は多いことがわかります。

    事業承継・引継ぎ補助金の専門家活用枠の採択率は、2024年度の場合、62.5%程度でした。事業承継・引継ぎ補助金はあと何回の公募があるかは未定です。専門家経費の補助を希望する人は、早めに申請準備をしましょう。

    なお、事業承継・引継ぎ補助金の採択率をより詳しく知りたい人は、「事業承継・引継ぎ補助金の採択率は?不採択になる理由や採択事例も解説」を参考にしてみてください。

    対象となる事業は買い手支援型と売り手支援型の2つがある

    専門家活用枠の補助対象事業は、「買い手支援型(型)」と「売り手支援型(型)」の2つに分けられます。事業承継・引継ぎ補助金の他の申請枠では「事業を譲り受ける人」のみが対象者なのに対し、専門家活用枠ではM&Aで事業を買う人も売る人も対象になります。

    【買い手支援型と売り手支援型の概要】

    申請型の種類

    概要

    買い手支援型(型)

    事業再編・事業統合に伴い株式・経営資源を譲り受ける予定の中小企業等を支援する類型

    売り手支援型(型)

    事業再編・事業統合に伴い株式・経営資源を譲り渡す予定の中小企業等を支援する類型

    参考:専門家活用枠 10次公募 公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、事業譲渡の場合、第三者から事業を譲り受ける人は「買い手」として買い手支援型の対象となり、第三者へ事業を譲り渡す人は「売り手」として売り手支援型の対象になります。

    専門家活用枠の対象事業は、M&Aでの事業購入および事業売却です。事業承継・引継ぎ補助金の「経営革新」枠と異なり、専門家活用枠では事業を譲り渡す人も対象なので、専門家を通してM&Aをする予定の事業者は、専門家活用枠の利用を検討してみてください。

    買い手支援型は事業を譲り受けてシナジーを生かした経営革新を行う

    買い手支援型は事業を譲り受けてシナジーを生かした経営革新を行うことが求められます。シナジーとは相乗効果のことで、事業者がM&Aをすることで、売上増加やコスト削減などが見込まれることを示します。

    【買い手支援型で補助の対象となる事業承継】

    補助対象者

    経営資源引継ぎの形態の種類

    概要

    事業を譲り受ける者(法人)

    株式譲渡

    対象会社の株主から株式の譲渡を通じ、対象会社を譲り受ける

    事業を譲り受ける者(個人事業主)

    事業を譲り受ける者(法人)

    第三者割当増資

    承継者のA社は被承継者のB社が資金調達のために発行した株式を購入し、B社の株主となる

    事業を譲り受ける者(個人事業主)

    株式交換

    対象会社の株式を被承継者から販売され、株式を購入する承継者は対象会社を完全子会社とする

    事業を譲り受ける者(法人)

    吸収合併

    承継者が被承継者を吸収し、ひとつの会社となる

    事業を譲り受ける者(法人)

    吸収分割

    被承継者の事業について、会社分割を通じて承継者は被承継者から譲渡を受ける

    事業を譲り受ける者(法人)

    事業譲渡

    被承継者の事業について、承継者が被承継者から譲渡を受ける

    事業を譲り受ける者(個人事業主)

    参考:専門家活用枠 10次公募 公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、株式譲渡を受ける法人の場合、譲り受ける株式が過半数であれば経営権も取得できるため、補助事業期間中に経営資源の引継ぎを行えば、補助の対象となります。

    また、吸収合併で事業承継をする法人の場合、M&Aで購入する事業者を自社と合併し、経営資源とともに経営権も取得するのであれば、補助の対象となります。

    買い手支援型は、他の事業者から経営資源を譲り受け、経営革新や地域経済をけん引する事業を支援します。株主譲渡や株式交換などで事業を譲り受ける人は、弁護士や行政書士に支払う費用が補助されるので、専門家活用枠の買い手支援型を検討してみましょう。

    売り手支援型では地域で需要や雇用のあった事業が対象

    売り手支援型は地域経済をけん引する事業を、地域のために継続することが前提の類型です。売り手支援型では、一部の事業承継の形態において、対象会社だけでなく対象会社の株主と共同申請できる場合があります。

    【売り手支援型で補助の対象となる事業承継(抜粋)】

    補助対象者

    経営資源引継ぎの形態の種類

    概要

    対象会社

    株式譲渡

    対象会社が株式の譲渡を通じ、対象会社を承継者に譲り渡す

    対象会社+対象会社の株主(共同申請の場合)

    株式譲渡+廃業

    対象会社を譲り受ける株主と対象会社が共同申請をして、対象会社を譲り受ける際の専門家経費と、対象会社を廃業するための経費を申請する

    事業を譲り渡す者(法人)

    第三者割当増資

    被承継者のA社は資金調達のために株式を発行し、株式を購入したB社が株主となる

    株式移転

    被承継者と承継者が共に持ち株会社を設立する

    新設合併

    被承継者と承継者が合併し、新たな法人となる

    事業再編等+廃業

    被承継者のA社は第三者割当増資や株式交換などを行い、B社はA社の株式の取得を行う。その後A社は廃業する。

    事業を譲り渡す者(個人事業主)

    事業譲渡

    被承継者の事業について、被承継者が承継者へ譲渡する

    事業再編等+廃業

    被承継者の個人事業主は、新設合併や吸収合併などを行う。その後被承継者は廃業する。

    参考:専門家活用枠 10次公募 公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、対象会社が廃業して株式譲渡をする場合、対象会社を譲り受ける株主と対象会社の両方が共同申請できるので、対象会社を承継する株主と売り渡す対象会社の双方が、補助されます。

    また、事業再編で事業を譲り渡す個人事業主の場合は、事業譲渡または事業再編と廃業で事業を譲り渡す際、売り手支援型の対象となります。

    専門家活用枠の売り手支援型では、法人の場合は株式譲渡や新設合併、個人事業主の場合は事業譲渡と事業再編+廃業が対象事業です。地域で長年やってきた事業を手放す人は、弁護士や行政書士への費用が補助されるので、専門家活用枠の売り手支援型を検討しましょう。

    事業を譲り渡す株主と生計を共にする場合は対象外となる

    専門家活用枠では、事業承継をする株主と生計を共にする家族が被承継者の場合は、補助の対象外です。他にも、承継者と被承継者の組み合わせで補助対象外の場合があります。家族と事業承継をしたい人は、専門家活用枠の対象外に当てはまらないかを確認しましょう。

    【承継者と被承継者の関係で補助対象外となる要件】

    • 事業承継をする株主と生計を共にする家族が被承継者の場合
    • 事業承継後に承継者が保有する被承継者の議決権が、過半数でない場合
    • 事業再編・事業統合後に事業を譲り受ける会社が持つ議決権が、事業を譲り渡す会社が持つ議決権よりも少ない場合

    参考:専門家活用枠 10次公募 公募要領|事業承継・引継ぎ補助金

    たとえば、売り手支援型で申請する人の場合、生計を共にする家族が手放す事業を家族から承継するなら、補助の対象外です。

    また、買い手支援型で申請する人の場合、対象会社の事業を承継する際、対象会社の議決権を過半数保有しない条件で承継するのなら、補助の対象外です。

    専門家活用枠では、承継者と非承継者の関係が家族の場合、および、承継後の議決権が過半数以下の場合は補助されません。専門家活用枠から申請する際は、承継者と被承継者の関係や引き継ぐ内容が要件を満たせるよう、公募要領の詳細まで細かく確認してみましょう。

    事業承継・引継ぎ補助金の申請の流れを確認する

    事業承継・引継ぎ補助金に関心のある人は、早めに申請の流れを確認しておきましょう。事業承継・引継ぎ補助金に申請するには、公募要領を読むことに加え、Gビズプライムアカウントの取得など、やるべきことが複数あります。

    【事業承継・引継ぎ補助金の申請の流れ】

    手続きの種類

    内容

    ①3つの申請枠のうち、どれに申請するかを決める

    事業承継・引継ぎ補助金の公募要領ダウンロードから申請予定の公募要領を確認する

    ②どの公募回に申請するか決める

    事業承継・引き継ぎ補助金の上部にある各申請枠名をクリックし、スケジュールを確認する

    ③該当する専門機関をネット検索で探す

    〈経営革新枠または廃業・再チャレンジ枠〉

    認定支援機関を探す

    〈専門家活用枠で委託費申請する場合〉

    登録FA・仲介業者を探す

    ④GビズITプライムアカウントを取得する

    スマートフォンまたは携帯電話、印鑑証明書や登録印を準備のうえ、gBizIDより申請する

    ⑤申請書類を準備する

    交付申請の類型により必要な書類は異なるので、公募要領を確認し、必要な書類を準備する

    ⑥申請する

    事業承継・引継ぎ補助金の各申請枠ページの下にある「jGrants ホームページ」より交付申請する

    たとえば、事業承継・引継ぎ補助金でどの公募回に申請するかまだ決まっていない場合、事業承継・引継ぎ補助金は年間を通じて公募されている補助金ではないので、公式サイトで事業承継・引継ぎ補助金のスケジュールを確認する必要があります。

    また、専門家活用枠から申請したい場合、補助対象経費の委託費を支払う予定であれば、相談する専門家として登録FA・仲介業者を探すことも必要です。

    事業承継・引継ぎ補助金に申請する人は、やるべきことは複数あります。まずは全体的な申請の流れを把握し、公募要領を読むことや疑問点の解決をし、「専門家を探す」「Gビズプライムアカウントの取得をする」などの準備をしていきましょう。

    他の申請枠と違い認定支援期間の確認書は必要ない

    専門家活用枠では、事業承継引継ぎ補助金の他の申請枠と異なり、認定支援機関の確認書を提出する必要はありません。そのため、事業承継・引継ぎ補助金の申請時に要件を満たしているかの確認や、書類の不備がないかの確認は、事業者自身または専門家が確認します。

    j Grantsでの申請時に必要な書類の例】

    申請者

    法人

    事業承継引継ぎの形態区分

    株式譲渡

    必要書類(法人分)

    1. . 履歴事項全部証明書(交付申請日以前 3 カ月以内に発行されたもの)
    2. 直近の確定申告の基となる直近 3 期分の決算書(貸借対照表、損益計算書)
    3. 常時使用する従業員 1 名の労働条件通知書

    必要書類(法人の代表者分)

    住民票(交付申請日以前 3 カ月以内に発行されたもの)

    たとえば、法人がjGrantsから専門家活用枠へ株式譲渡で申請する場合、「履歴事項全部証明書」「直近3期分の決算書」「常時使用する従業員1名の労働条件通知書」に加え、法人の代表の住民票も提出します。

    事業承継・引継ぎ補助金に申請する際は、必要書類の漏れがないよう、公募要領をよく読みましょう。事業承継・引継ぎ補助金の公式サイトでは、申請時の必要書類を確認するためにチェックリストがあるので、申請時の書類が気になる人は確認してみてください。

    まとめ

    事業承継・引継ぎ補助金の専門家活用枠とは、弁護士や司法書士などの専門家に事業承継を依頼する事業者向けの申請枠です。専門家活用枠では、弁護士や司法書士などの専門家を活用し、事業をM&Aで売買する事業者が支払う経費の一部が補助されます。

    専門家活用の「専門家」には弁護士や法律事務所などの種類があり、そのうち「M&A 支援機関登録制度」に登録された専門家は「登録FA・仲介業者」と呼ばれます。事業者がM&Aを依頼する専門家は特に指定されていないので、事業者は自社で専門家を決められます。

    専門家活用枠の補助金額は、補助対象経費の50万円~600万円で、廃業費の150万円を合わせると最大750万円が補助されます。専門家活用枠から申請すると、事業者が支払う補助対象経費のうち、補助率をかけた補助金額の上限まで補助されます。