IT導入補助金とは?対象や流れをわかりやすく解説
2024/04/17
2022/6/17
中小企業や小規模事業者の中には、IT導入補助金がどんな補助金なのか知りたい人もいますよね。その際、活用できるITツールが何かを知りたい人もいるでしょう。
当記事では、IT導入補助金とは何かを解説します。IT導入補助金のしくみや流れもわかりやすく解説しているため、IT導入補助金がどんな補助金なのか知りたい人は参考にしてみてください。
なお、この記事ではIT導入補助金の「公式サイト」をもとに作成しています。
目次
IT導入補助金はITツールの導入費用を支援する制度
IT導入補助金は、ITツールの導入費用の一部を国が補助する制度です。業務効率化やインボイス制度への対応など、ITツールの導入が必要な場面で活用できます。
【IT導入補助金においてシステムを導入できる場面】
|
参考:「補助対象について」|IT導入補助金2024公式サイト
たとえば、在庫管理や経理管理などを自社システムやExcelで行っている小売業者が、経営課題であった業務効率化を図るために、中小製造業向けの販売管理や在庫管理ソフトを導入できます。
また、情報サービス業を営む業者が、業務効率向上やインボイス制度への対応のため、会計管理や給与管理などの金融管理がまとめてできるITツールを導入することも可能です。クラウドサービスを利用することで、テレワークも実現できます。
IT導入補助金は、DXやインボイス制度に対応するためのITツールの導入に活用できます。ITツール導入時のサポート費用やクラウドサービス利用料なども補助されるので、ITツールの導入を考えている人は、IT導入補助金の利用を検討してみてください。
IT導入補助金における全体の工程
IT導入補助金は後払いの制度です。申請後に、ITツールを活用した経営課題の解決につながる事業を実施し、事業の実績報告が完了してから補助金を受け取れます。
【全体の工程】
参考:「新規・申請手続きフロー」|IT導入補助金2024公式サイト
交付申請では、ITツールを購入する先の業者である「IT導入支援事業者」と、現在の経営課題を解決する事業計画を作成し、申請します。IT導入支援事業者とは、IT導入補助金におけるITツールの導入および相談や、各種申請手続きのサポートをする事業者をさします。
補助事業とは、補助金を活用する事業をさします。申請者は交付決定において、補助金を受けとる資格を得たあとに、IT導入支援事業者から購入したITツールを活用し、作成した事業計画を実施することになります。
事業実績報告では、補助事業の完了後、実際にITツールの発注や支払い、納品などを行ったことがわかる証憑を提出します。補助金は、事業実績報告が終わったあと、申請者が確定された補助金額を確認したのちに受け取れます。
事業実施効果報告においては、定められた期限内に申請者が、IT導入支援事業者の確認を経て補助事業の成果の報告書を提出します。
なお、交付決定前にITツールの発注や支払いなどを行った場合は、補助金を受けとることができません。IT導入補助金を活用する際は、交付決定後にITツールの発注や支払いをしましょう。
中小企業や小規模事業者が補助の対象となる
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が補助の対象となります。インボイス枠の電子取引類型のみ、中小企業や小規模事業者と受発注の取引をしている事業者(大企業を含む)も対象です。
【補助対象となる中小企業】
業種 | 資本金・出資額 (以下) |
常時使用する従業員の数 (以下) |
①製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
②卸売業 | 1億円 | 100人 |
③サービス業 | 5,000万円 | 100人 |
④小売業 | 5,000万円 | 50人 |
⑤ゴム製品製造業 | 3億円 | 900人 |
⑥ソフトウェア業または 情報処理サービス業 |
3億円 | 300人 |
⑦旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
⑧その他の業種 (上記以外) |
3億円 | 300人 |
⑨医療法人と社会福祉法人 および学校法人 |
– | 300人 |
⑩商工会や都道府県連合 および商工会議所 |
– | 100人 |
⑪中小企業支援法第2条第1項第4号に 規定される中小企業団体 |
– | 主たる業種に記載の従業員規模 |
⑫特別の法律によって設立された 組合またはその連合会 |
– | 主たる業種に記載の従業員規模 |
⑬一般と公益の財団法人と社団法人 | – | 主たる業種に記載の従業員規模 |
【補助対象となる小規模事業者】
業種 | 常時使用する従業員の数(以下) |
①商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 5人 |
②サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人 |
③製造業その他 | 20人 |
参考:「補助対象者」|IT導入補助金2024公式サイト
中小企業と小規模事業者の定義は、業種によって異なります。それぞれ資本金額や従業員数で定義が決められているので、申請者は、自社が中小企業と小規模事業者どちらにあたるのかを確認しましょう。
なお、対象外となる事業者の条件は、申請する枠によって異なります。どんな事業者が対象外となるか知りたい人は「資料ダウンロード」にある、各枠の公募要領を参考にしてみてください。
業務システムの導入の経費が一部補助される
IT導入補助金は、在庫管理や会計システムなどの業務システムの導入に活用できます。申請する目的によって導入できるシステムや補助の補助金額の範囲が異なるため、まずは、目的ごとに区分された枠を選択しましょう。
【枠ごとの補助金額の範囲と対象】
通常枠:自社の課題解決のためのITツール導入 | |
補助金額の範囲(補助率) | 補助対象となるもの |
【1機能以上のソフトウェア】 5万~150万円 【4機能以上のソフトウェア】 150万超~450万円 (どちらも1/2以内) |
● ITツール:ソフトウェア購入費、クラウド利用費 ● オプション費用:機能拡張、データ連携ツール、セキュリティ対策費用 ● サービス費用:導入コンサルティング、導入研修、保守サポートなど <ソフトウェアの機能の種類> ①顧客対応や販売支援②決済管理③在庫管理④会計管理⑤総務や人事管理⑥業種固有のプロセス管理⑦自動化や分析ツールなどのソフトウェア |
セキュリティ対策推進枠:サイバーセキュリティ対策 | |
補助金額の範囲(補助率) | 補助対象となるもの |
5万~100万円(1/2以内) | ● ITツールの導入費用やサービス利用料(最大2年分) ※「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」のサービスで提供しているITツールが対象 |
インボイス枠(インボイス対応類型):会計や受発注、決済ソフトに特化したツールの導入 | |
補助金額の範囲(補助率) | 補助対象となるもの |
【ソフトウェア】 下限なし~50万円(3/4または4/5以内) 50万~350万円(2/3以内) 【ハードウェア】 ①PCやタブレット等など:10万円以下 ②レジや券売機:20万円以下 (①②ともに1/2) |
● ITツール:会計、受発注、決済 ● オプション:機能拡張、データ連携ツール、セキュリティ ● サービス:導入コンサルティング、導入設定マニュアル作成や導入研修、保守サポート <ハードウェアの種類> PCやタブレット、プリンターやスキャナ、複合機、POSレジやモバイルPOSレジ、券売機 |
インボイス枠(電子取引類型):インボイス制度に対応した受発注システムの導入 | |
補助金額の範囲(補助率) | 補助対象となるもの |
下限なし~350万円 (アカウント数や企業規模によって異なる) |
● インボイス制度に対応したクラウド型の受発注ソフト(その他条件あり) ● クラウド利用料(最大2年分) |
複数社連携IT導入枠:複数の事業者で連携をとるためのITツールの導入 | |
補助金額の範囲(補助率) | 補助対象となるもの |
【基盤導入経費】(※1) ①50万円以下×構成員数(3/4以内) ②50~350万円×構成員数(2/3以内) 【消費動向等分析経費】(※1) 50万円以下×構成員数(2/3以内) 【その他経費】 200万円以下※2(2/3以内) |
● インボイス制度に対応したクラウド型の受発注ソフト(その他条件あり) ● クラウド利用料(最大2年分) |
※1基盤導入と消費動向分析は合計3,000万円が上限 ※2 条件あり |
参考:「補助対象について」|IT導入補助金2024公式サイト
たとえば、通常枠の場合、自社の課題にあったITツールの購入費や導入サービス費用が補助されます。ITツールの機能数によって補助金額の範囲が異なるため、自社の状況に合ったITツールを選択しましょう。通常枠の申請の条件を知りたい人は「IT導入補助金2023の通常枠とは?対象となる要件も解説」を参考にしてみてください。
また、インボイス枠のインボイス対応類型を選んだ場合、会計や決済ソフトにかかわる保守サポート費用やPCやレジなどのハードウェアなどが補助対象となります。インボイス制度に対応した会計や受発注管理ソフトの導入をしたい人は、インボイス枠への申請を検討してみましょう。
IT導入補助金では、企業の生産性を高めるツールの導入費用が一部補助されます。導入できる具体的なツールの名称や種類を知りたい人は「IT導入補助金で利用できるITツールとは?主なツールの一覧も紹介」を参考にしてみてください。
IT導入補助金を活用した事例
IT導入補助金の活用事例には、管理業務のDX化やドローンの活用など、さまざまなITツールを使った取り組みがあります。
【IT導入補助金の活用事例】
事例①:ECサイト運営事業者によるバックオフィス業務のIT化 |
経営課題 |
● 既存の会計ソフトがクラウド対応していない ● 現状複数人での同時作業やリアルタイムの進捗管理が不可能 ● 仕訳入力の大半が手入力 |
取り組みと成果 |
【導入したITツール】 クラウド会計ソフト 「freee会計」 【業務の変化】
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事例②:林業のIT化への挑戦 |
経営課題 |
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取り組みと成果 |
【導入したITツール】 3D GISツール「ScanSurvey Z Pro」(森林解析ツール) 【業務の変化】
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参考:IT導入補助金の「公式サイト>ITツール活用事例」をもとに株式会社SoLaboが作成
たとえば、ECサイト運営事業者が業務効率化のため、IT導入補助金を活用した事例があります。バックオフィス業務のIT化を図るため、クラウド会計システムを導入することで、業務時間の短縮や、経理担当者のテレワークを実現しました。
他にも、林業を営む事業者がIT化に挑戦した事例もあります。利益の確保や自社負担のみのIT化が難しい中、森林調査にかかる作業の効率化という経営課題を解消するため、3Dで森林解析ができるITツールを導入し、森林調査にかかる人員やコストの削減、作業の効率化を実現しました。
IT導入補助金は、業務効率化や販路拡大に活用できる補助金です。他のIT導入補助金の活用事例を見たい人はIT導入補助金の公式サイトにある「ITツール活用事例」を参考にしてみてください。
交付申請の準備の流れ
交付申請の前には、資料の読み込みや申請要件となる作業の実施が必要です。
【交付申請の準備の流れ】
流れ | やること |
①補助事業を理解する | ・公式サイトや公募要領を読む |
②「gBizIDプライム」のアカウントを 取得する |
・「gBizID」のホームページからアカウントを 取得する (アカウントの発行はおよそ2週間かかる) |
③「SECURITY ACTION」を実施する | ・「SECURITY ACTION」のサイトから手続きを 行う (情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言 する) |
④「みらデジ経営チェック」を実施 する |
・「みらデジ」ポータルサイト内にgBizIDで登録 して「経営チェック」を実施する (ポータルサイト内にかかれた手順でチェックする) |
⑤「IT導入支援事業者の選定」と 「ITツールの選択」 |
・自社の課題解決に適した「IT導入支援事業者」と 「ITツール」を選択する |
⑥事業計画の作成 | ・IT導入支援事業者と共同で事業計画を作成する |
参考:「新規・申請手続きフロー」|IT導入補助金2024公式サイト
交付申請の前の準備で最初にやることは、申請する枠に関連する公募要領や交付規程などを読み込み、補助事業や制度を理解することです。「どんなシステムがいくら補助されるのか」「いつ補助金が受け取れるのか」などを理解した上で次の作業に取りかかりましょう。
「gBizIDプライム」のアカウントは「みらデジ経営チェック」や申請の際に必要になるアカウントです。アカウントは発行に2週間ほどかかるため、申請を決定した人は、まずgBizIDプライムのアカウントを発行しましょう。
「SECURITY ACTION」は、事業者が自ら情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。「★一つ星」または「★★二つ星」を宣言することが申請の要件となっているため必ず実施しましょう。なお、交付申請の手続きで「宣言済アカウントID」が必要になります。
「みらデジ経営チェック」では、事業で取り組む経営課題を把握します。みらデジ経営チェックをする際は「IT導入補助金」申請にあたり「みらデジ経営チェックを実施される事業者さま」に記載の手順に従って進めましょう。異なる手順で行った場合、申請要件を満たせず不採択となります。
自社で活用するITツールの種類が決まっている人は、IT導入補助金の「公式サイト」でITツールの種類からIT導入支援事業者を検索できます。何のITツールを使ったらいいのかわからない人も、エリアや業種で絞ってIT導入支援事業者やITツールを検索できます。
交付申請において提出する事業計画は、IT導入支援事業者と共同で作成します。事業で購入するITツールはIT導入支援事業者が提供しているツールの中から選択するため、経営課題の解決に適したITツールの活用方法などを話し合いながら、事業計画の作成が必要です。
なお、IT導入支援事業者の具体的なサポート内容や選び方を知りたい人は「IT導入補助金の支援事業者とは?サポート内容や選び方を解説」を参考にしてみてください。
IT導入補助金2024のスケジュール
IT導入補助金2024は、2月6日に公募要領が公開されてから、各枠で交付申請の受付が開始されています。インボイス制度への対応やDX化のためにITツールの導入を考えている人は、IT導入補助金の活用を検討してみてください。
【IT導入補助金2024の事業スケジュール】
項目 | 交付申請の締切日 | 交付決定日 | 事業実績報告期限 | |
通常枠
|
1次 | 2024年3月15日 | 2024年4月24日 | 2024年10月31日 |
2次 | 2024年4月15日 | 2024年5月27日 | 2024年11月29日 | |
3次 | 2024年5月20日 | 2024年6月26日 | 2024年11月29日 | |
4次 | 2024年6月19日 | 2024年7月29日 | 2024年11月29日 | |
セキュリティ対策推進枠
|
1次 | 2024年3月15日 | 2024年4月24日 | 2024年10月31日 |
2次 | 2024年4月15日 | 2024年5月27日 | 2024年11月29日 | |
3次 | 2024年5月20日 | 2024年6月26日 | 2024年11月29日 | |
4次 | 2024年6月19日 | 2024年7月29日 | 2024年11月29日 | |
インボイス枠(インボイス対応類型)
|
1次 | 2024年3月15日 | 2024年4月24日 | 2024年10月31日 |
2次 | 2024年3月29日 | 2024年5月8日 | 2024年10月31日 | |
3次 | 2024年4月15日 | 2024年5月27日 | 2024年11月29日 | |
4次 | 2024年4月30日 | 2024年6月6日 | 2024年11月29日 | |
5次 | 2024年5月20日 | 2024年6月26日 | 2024年11月29日 | |
6次 | 2024年6月3日 | 2024年7月8日 | 2024年11月29日 | |
7次 | 2024年6月19日 | 2024年7月29日 | 2024年11月29日 | |
インボイス枠(電子取引類型)
|
1次 | 2024年3月15日 | 2024年4月24日 | 2024年10月31日 |
2次 | 2024年4月15日 | 2024年5月27日 | 2024年11月29日 | |
3次 | 2024年5月20日 | 2024年6月26日 | 2024年11月29日 | |
4次 | 2024年6月19日 | 2024年7月29日 | 2024年11月29日 | |
複数社連携IT導入枠
|
1次 | 2024年4月15日 | 2024年5月27日 | 2024年11月29日 |
2次 | 2024年6月19日 | 2024年7月29日 | 2024年11月29日 |
参考:「事業スケジュール」|IT導入補助金2024公式サイト
IT導入補助金2024に申請予定の人は、スケジュールを確認して、申請締切に間に合うように交付申請を実施しましょう。IT導入補助金の手続きの流れが知りたい人は「IT導入補助金の利用の流れは?交付申請や入金のタイミングも解説」を参考にしてみてください。
なお、当メディアを運営する株式会社SoLaboもIT導入支援事業者です。申請相談や補助される金額を知りたい人は、無料診断からお問い合わせください。
無料診断この記事のまとめ
IT導入補助金は、業務効率化やインボイス制度など、ITツールの導入が必要な場面で活用できる後払いの制度です。補助金で導入したITツールを活用し、経営課題の解決へつながる事業を実施することでITツールの導入費用が一部補助されます。
補助の対象者は中小企業や小規模事業者です。補助の対象となるツールは、おもに在庫管理や会計管理などの企業の生産性を高める業務システムで、導入にともなうオプションやサービス費用なども含まれます。
交付申請の際は、公式サイトや公募要領を理解した上で必要な手続きを行い、IT導入支援事業者とともに事業計画を作成しましょう。IT導入補助金2024の最新のスケジュールは、公式サイトの「事業スケジュール」で確認してください。