ものづくり補助金の補助率と採択率は?申請前の判断基準として解説
2024/04/17
2023/10/30
ものづくり補助金への申請を検討している人の中には、補助率がどれぐらいなのか気になる人もいますよね。特に、個人事業主や中小企業などの補助率は、事業規模により変わることもあるので、自社の補助率を確認したい人もいるでしょう。
当記事では、ものづくり補助金の補助率とその関連する注意点を解説します。採択率についても紹介するので、補助率と採択率でものづくり補助金に申請するかを判断したい人は、当記事を参考にしてみてください。
Contents
申請に迷う人は補助率と採択率を判断基準の1つにできる
ものづくり補助金の申請に迷う人は、補助率と採択率を判断基準の1つにできます。自社に適用される補助率が高ければ、ものづくり補助金で受け取れる補助金額が多いと判断できます。また、採択率を知れば、ものづくり補助金の難易度を予測できます。
【ものづくり補助金の補助率と採択率】
16次の採択率 | |
48.8% | |
省エネ(オーダーメイド)枠 | |
補助金額が1,500万円まで | 1,500万円を超える部分 |
中小企業: 1/2 小規模企業者・小規模事業者・再生事業者: 2/3 |
1/3 |
製品・サービス高付加価値化枠 | |
通常類型 | 成長分野進出類型 (DX・GX) |
中小企業: 1/2 小規模企業者・小規模事業者・再生事業者: 2/3 新型コロナ回復加速化特例: 2/3 |
2/3 |
グローバル枠 | |
中小企業: 1/2 小規模企業者・小規模事業者: 2/3 |
参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金
たとえば、小規模事業者がものづくり補助金で300万円の機械設備を導入する場合、補助金額は「300万円×2/3=200万円」と計算できます。一方、事業者が小規模事業者ではない場合、補助率は1/2なので補助金額は150万円となり、50万円少なくなります。
ものづくり補助金の補助率は、小規模事業者の場合は概ね2/3なので、申請者が小規模事業者や個人事業主なら国が補助する割合は高いと判断できます。ただし、補助金額の最低金額は100万円なので、事業者は補助金を受け取る前に最低150万円の経費支払いが必要です。
また、ものづくり補助金の採択率は、16次公募の場合、48.8%でした。およそ2人に一人は採択される計算となりますが、2024年の公募からは申請枠の変更により採択率も大幅に変動する可能性もあります。
ものづくり補助金の補助率をもとに計算することで、補助対象になる金額と自己負担になる金額がわかります。また、採択率により補助金の難易度の傾向がわかります。ものづくり補助金を検討する人は、「補助金額の自己負担額を支払えるか」「不採択になるリスクも受け入れられるか」という視点も含め、申請すべきかを検討してみてください。
なお、各補助金の採択率について興味のある人は「補助金の採択率とは?」を参考にしてみてください。
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無料診断小規模事業者はすべての申請枠で補助率2/3
小規模事業者は、ものづくり補助金のすべての申請枠で補助率2/3です。小規模事業者とは、従業員数が製造業その他の業種で20人以下、商業・サービス業で5人以下の事業者を指します。小規模事業者には、法人格のない個人事業主も含まれます。
【ものづくり補助金の申請枠の種類と補助金額】
申請枠 | 補助金額 | |
省力化(オーダーメイド枠) | 従業員数 5 人以下 :100万円~750万円 6人~20人:100万円~1,000万円 21人以上 :100万円~1,250万円 51~99人 :100万円~5,000万円 100人以上:100万円~8,000万円 |
|
製品・サービス高付加価値化枠 |
通常類型 |
成長分野進出類型(DX・GX)) |
従業員数 5人以下 :100万円~750万円 6~20人 :100万円~1,000万円 21人以上 :100万円~1,250万円 |
従業員数 5人以下 :100万円~1,000万円 6~20人 :100万円~1,500万円 21人以上 :100万円~2,500万円 |
|
グローバル枠 |
100万円~3,000万円 |
参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金
なお、ものづくり補助金のグローバル枠では、小規模事業者でも最大3,000万円の補助を受けることが可能です。ただし、グローバル枠は国内事業だけでなく海外事業を行う事業者が対象なので留意しておきましょう。
申請後に労働者数が増える場合は補助率が変わる可能性がある
事業者が申請後に労働者数を増やす場合、ものづくり補助金の補助率が2/3から1/2になることがあります。ものづくり補助金で労働者の数が確認される手続きは4回ありますが、労働者数が確定するのは、事業者が補助事業を実施したあとの「確定検査」時です。
【労働者数の変化と適用される補助率の例】
労働者数の報告のタイミング | 労働者数と適用される補助率 |
応募申請時 | 5人 2/3 |
応募申請時 | 6人 1/2 |
実績報告時 | 5人 2/3 |
確定検査時 (補助率の決定のタイミング) |
5人 2/3 |
たとえば、応募申請時に労働者数が5人の小規模事業者の場合、適用される補助率は2/3です。その後、労働者数を増やしたとしても、確定審査での報告時に5人であれば、補助率は2/3のままとなります。
一方、同じ条件でも、確定検査での報告時に労働者数が10人となっている場合は、補助率は1/2が適用されます。その結果、補助率は2/3から1/2へと変わるため、交付決定で確定となった補助金額は減額されます。
飲食店や小売店などの労働者の雇用が流動的な事業者は、ものづくり補助金で申告する労働者数に注意が必要です。労働者数が増えると補助率が下がることも考慮して、採用を計画しましょう。
ものづくり補助金の採択率は約50%
16次公募において、ものづくり補助金の全体の採択率は約50%でした。ものづくり補助金の採択率は申請枠により違いがあり、16次公募で最も採択率が低い申請枠は「グローバル枠」で、最も採択率の高い申請枠は「通常枠」でした。
【16次の申請枠ごとの採択率】
申請枠 | 採択率 |
通常枠 | 51.1% |
回復型賃上げ・雇用拡大枠 |
45.1% |
デジタル枠 | 46.4% |
グリーン枠 |
39.1% |
グローバル枠 |
29.3% |
申請枠 | 採択率 |
通常枠 | 50.0% |
回復型賃上げ・雇用拡大枠 | 49.5% |
デジタル枠 | 55.4% |
グリーン枠 | 40.0% |
グローバル市場開拓枠 | 33.6% |
参考:採択結果|ものづくり補助金
※小数点第二位以下は切り捨て
ものづくり補助金の採択率は、申請要件にも関連します。省力化(オーダーメイド)枠とグローバル枠との申請要件には「労働生産性が 2倍以上となる事業計画を立てる」や「国内事業と海外事業を実施する」などがあり、要件を満たせない場合は不採択となります。
ものづくり補助金で低い採択率の申請枠は、申請要件が厳しい場合があります。18次公募の場合、ものづくり補助金には3つの申請枠があるので、申請を検討している人は、どの申請枠なら自社が申請しやすいかという視点で調べてみましょう。
採択後の賃上げが負担になりすぎないかを検討する
ものづくり補助金への申請に迷う場合は、採択後の賃上げが負担になりすぎないかも検討しましょう。ものづくり補助金の賃金引上げの要件が未達になる場合、補助金の返還義務が発生するためです。
ものづくり補助金の基本要件は3つあり、それらはすべて事業者が支払う労働者の給与や賃金の増加に関連しています。
【ものづくり補助金の基本要件】
(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち 任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加)
を、毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準とする。
|
参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金
たとえば、基本要件の1つ目「給与支給総額」とは、従業員や役員に支払う給料、賃金、賞与のほか、各種手当(残業手当、休日出勤手当、職務手当等)を指します。
また、基本要件の3つ目「付加価値額」とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものを指します。
補助率が有利な小規模事業者だとしても、従業員数が多い場合や補助金額が少ない場合は賃上げが負担になる可能性もあります。ものづくり補助金への申請を検討している人は、賃上げでいくら増額する事になるのか、あらかじめ計算してみてみましょう。
受け取れる補助金額と賃上げ額を比較する際の計算例
ものづくり補助金の基本要件による賃金引上げの計算例を紹介します。ものづくり補助金の申請を検討している人は、計算例を参考に自社への影響を確認してみてください。
【受け取れる補助金額と賃上げ要件で申請を検討する際の計算例】
条件 | 計算例 |
(1人につき年収500万円)
100万円 |
〈補助金額〉
150万円
100万円
50万円 〈賃上げ〉※給与支給総額の場合 事業計画期間中に給与支給総額を年率平均1.5%以上増加: 年収500万円×1.5%=7万5千円 →7万5千円×3人=1年間につき22万5千円を賃上げ |
(1人につき年収400万円)
1,000万円 |
〈補助金額〉
1,500万円
1,000万円
事業計画期間中に給与支給総額を年率平均1.5%以上増加: 年収400万円×1.5%=6万円 →6万円×20人=1年間につき120万円を賃上げ |
たとえば、年収500万円の従業員を3人雇っている事業所の場合、ものづくり補助金に100万円で採択されると、1年間につき合計で22万5千円の賃上げが必要になります。
一方、年収400万円の従業員を20人雇っている事業所の場合は、ものづくり補助金に1,000万円で採択されると、1年間につき合計で120万円の賃上げが必要になります。
ものづくり補助金の要件である賃上げは、従業員数と受け取る補助金額により負担の規模が変わります。これからものづくり補助金を検討する人は、採択された場合に行う賃上げも考慮して、申請枠や補助対象経費の金額を決めていきましょう。
採択率を高めるには審査項目に合わせた事業計画を意識する
採択率を高めるには、審査項目に合わせた事業計画を意識しましょう。ものづくり補助金で採択されるのは、公募要領の「審査項目に沿った」事業計画です。
【ものづくり補助金の審査項目】
審査項目 | 内容(公募要領より抜粋) |
補助対象事業としての適格性 |
②給与支給総額 年平均成長率+1.5%以上/年 ③事業場内最低賃金≧地域別最低賃金+30円 |
技術面 |
課題達成度の指標を設けているか |
事業化面 |
現実的に事業化できる事業計画か
(金融機関からの調達など)ができているか |
政策面 |
生む事業計画であるか
グローバル市場も狙える事業計画であるか |
参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金
ものづくり補助金は書類審査が中心であるため、提出する事業計画の出来や添付書類に不備がないことが審査では大切です。ものづくり補助金の事業計画の書き方を知りたい人は、「ものづくり補助金で採択される事業計画書の書き方」を参考にしてみてください。
この記事のまとめ
ものづくり補助金の補助率は、18次公募の場合、小規模事業者は概ね「2/3」です。補助率が2/3ということは、事業者が支払う補助事業の経費のうち、国が2/3を支払い、残りの1/3は事業者が支払うということになります。
ものづくり補助金の最低補助金額は100万円なので、最低金額で申請する場合は、最初に事業者が150万円を支払い、補助事業のあとに100万円を受け取ることになります。そのため、事業者によっては、ものづくり補助金の申請前に資金調達が必要です。
ものづくり補助金への申請を迷う人は、申請枠ごとの採択率も確認してみましょう。ものづくり補助金には全部で複数の申請枠がありますが、過去の申請枠をみるとグローバル関連やグリーン関連の採択率は30%前後と低く、その他の通常枠などの申請枠は40%~50%台だったので申請枠の間でも違いがあります。