中小企業省力化投資補助金とは?わかりやすく解説

中小企業省力化投資補助金は、令和5年度からの3年間を変革期間とすることを踏まえ、事業の売上拡大や生産性向上を後押しすることを目的に実施されている制度です。中小企業や個人事業主等が対象となり、生産性向上につながる設備投資にかかる費用の一部が補助されます。

当記事では、中小企業省力化投資補助金とはどのような制度なのか、申請を検討中の人やはじめて申請する人にもわかりやすく解説します。事業における設備投資の負担を軽減するために、補助金の利用を検討している人は参考にしてみてください。

なお、当記事は中小企業省力化投資補助金の「公式サイト」をもとに作成しています。

人手不足に悩む中小企業の省力化製品導入を支援する補助金

中小企業省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業に対してIoTやロボット等の設備導入を支援する補助金制度です人手不足の解消と生産性向上を図る取り組みを支援することにより、中小企業等の付加価値額向上とともに、賃上げにつなげることを目的としています。

【中小企業省力化投資補助金の公募内容】

項目

詳細

目的

人手不足を解消できる製品の導入や生産性向上を図る取り組みを実施し、賃上げにつなげること

対象者

中小企業や小規模事業者

(個人事業主を含む)

対象経費

人手不足を解消するロボットやIoT機器

補助上限額

従業員数によって異なる

5人以下:200万円(300万円)

6~20人以下:500万円以下(750万円)

21人以上:1,000万円以下(1,500万円)

※()は賃上げ要件を達成した場合

補助率

1/2以下

補助金を受け取るまでに必要なこと

  • 導入する省力化製品を「製品カタログ」から選ぶ
  • 付加価値額や生産性を向上させる事業計画をたてる
  • 販売事業者と共同申請する
  • 付加価値額や生産性を向上させる事業を実施する
  • 実績を報告する など

参考:「公募要領」|中小企業省力化投資補助金

中小企業省力化投資補助金では、補助対象の人手不足を解消する製品として「製品カタログ」に導入できる機器が掲載されています。「製品カタログ」に掲載されている製品を導入することで購入費や導入費を補助してもらえるため、コストを抑えて新たな体制へと移行できます。

従業員の減少や人手不足による残業時間の増加などに悩んでいる事業者は、中小企業省力化投資補助金を活用できる可能性があります。省力化製品の導入により事業の課題を解決したいと考えている人は、中小企業省力化投資補助金の利用を検討してみてください。

なお、補助金は申請してすぐに受け取れるわけではありません。補助金を受け取れるのは付加価値額や生産性向上を図る取り組み(補助事業)を実施したあととなるため、取り組みにかかる経費の支払いには自己資金を用意する必要がある点に留意しましょう。

人手不足解消につながるロボットやIoT機器を導入できる

中小企業省力化投資補助金は、人手不足解消につながるロボットやIoT機器が導入できます。申請者は「製品カタログ」に記載している製品の中から、自社の人手不足解消につながる製品を選択します。

【中小企業省力化投資補助金で導入できる製品】

機器カテゴリ

対象業種

対象業務プロセス

①清掃ロボット

  • 飲食サービス業
  • 宿泊業
  • 製造業
  • 卸売業
  • 小売業
  • 清掃業務

②配膳ロボット

  • 飲食サービス業
  • 宿泊業
  • 製造業
  • 卸売業
  • 配膳業務
  • 搬送業務

③自動倉庫

  • 倉庫業
  • 卸売業
  • 小売業
  • 製造業
  • 保管
  • 在庫管理
  • 入出庫

④検品・仕分システム

  • 倉庫業
  • 卸売業
  • 小売業
  • 製造業
  • 資材調達
  • 加工・生産
  • 検査
  • 保管・在庫管理
  • 入出庫

⑤無人搬送車

(AGV・AMR)

  • 倉庫業
  • 卸売業
  • 小売業
  • 製造業
  • 資材調達
  • 加工・生産
  • 検査
  • 保管・在庫管理
  • 入出庫

⑥スチームコンベクションオーブン

  • 飲食サービス業
  • 小売業
  • 宿泊業

(規模問わず調理が行われている場所)

  • 調理

⑦券売機

  • 飲食サービス業
  • 注文受付
  • 請求・支払
  • 顧客対応

⑧自動チェックイン機

  • 宿泊業
  • 受付案内
  • 予約管理
  • 請求・支払
  • 顧客対応

⑨自動精算機

  • 飲食サービス業
  • 小売業
  • 注文受付
  • 請求・支払
  • 顧客対応

⑩タブレット型給油許可システム

  • 小売業

(ガソリンスタンド)

  • 給油

⑪オートラベラー

  • 製造業
  • 倉庫業
  • 卸売業
  • 小売業
  • 加工・生産
  • 梱包・加工
  • 保管・在庫管理

⑫飲料補充ロボ

  • 小売業
  • 飲料補充業務

⑬デジタル紙面色校正装置

  • 印刷・同関連業
  • 印刷

⑭測量機

  • 建設業
  • 専門・技術サービス業
  • 調査・測量
  • 施工
  • 検査

⑮丁合機

  • 製造業
  • 倉庫業
  • 卸売業
  • 小売業
  • 加工・生産
  • 梱包・加工
  • 出荷
  • 販売・納品

⑯印刷用紙高積装置

  • 印刷・同関連業
  • 印刷

⑰インキ自動計量装置

  • 印刷・同関連業
  • 印刷

⑱段ボール製箱機

  • 製造業
  • 加工・生産

⑲近赤外線センサ式

プラスチック材質選別機

  • 製造業
  • 廃棄物処理業
  • 卸売業
  • 分別業務

参考:「製品カテゴリ」|中小企業省力化投資補助金

たとえば、飲食サービス業が清掃ロボットを導入する場合、清掃ロボットの購入費用と導入費用が補助されます。導入費用には、設置や運搬作業、動作確認や設定などが含まれます。

中小企業省力化投資補助金において導入する製品は、「製品カタログ」に掲載されている製品の中から選ぶ必要があります。製品カタログには、保守およびサポート費用の目安や販売事業者の情報も掲載されるため、申請予定の人は導入する製品の情報を確認し自社に合った製品を選択しましょう。

補助の対象外となる製品もある

中小企業省力化投資補助金では、販売事業者が製品カタログに登録した製品以外は補助の対象外となります。申請を検討している人は「製品カタログ」から自社の人手不足を解消する製品を選択しましょう。

【補助の対象外になる製品】

項目

具体例

製品本体の費用

  • 製品の購入費用に、申請者の顧客が負担する費用を含んでいるもの

(売上原価に相当するもの)

  • 対外的に無償で提供されているもの
  • リース・レンタル契約の製品
  • 中古品
  • 交付決定前に購入した製品
  • 公租公課(消費税)
  • 事業の目的・趣旨から適切でないと判断されるもの

導入費用

  • 補助事業実施期間外に発生した費用
  • 過去に購入した製品に対する作業費用
  • 補助対象経費ではない製品に対する費用
  • 省力化製品の導入とは関連のないデータ作成費用や、データ投入費用等
  • 省力化製品の試運転に伴う原材料費、光熱費等
  • 補助事業者の通常業務に対する代行作業費用
  • 移動交通費・宿泊費
  • 委託・外注費
  • 申請者の顧客が負担する費用が導入費用に含まれるもの

(試作を行うための原材料費に相当するもの)

  • 交付申請時に金額が定められないもの
  • 対外的に無償で提供されているもの
  • 補助金申請、報告にかかる申請代行費
  • 公租公課(消費税)
  • 事業の目的・趣旨から適切でないと判断されるもの

参考:「公募要領」(p.8)|中小企業省力化投資補助金

中小企業省力化投資補助金において導入する製品は、人手不足を解消し、付加価値額や生産性を向上させる事業を行う中で活用されるもののみです。そのため、補助事業(補助金を活用する事業)以外の事業で活用する製品は補助の対象外となります。

なお、中小企業省力化投資補助金においては交付決定前に購入した製品や補助事業期間終了後に支払いが行われた製品など、補助事業実施期間外に発生した費用は補助の対象外となります。公募要領には「いかなる理由であっても事前着手は認められない」旨の記載があるため、製品の購入や導入は交付決定後の補助事業実施期間内に行いましょう。

対象者は中小企業や個人事業主

中小企業省力化投資補助金の対象者は、中小企業の定義に該当する企業や個人事業主です。中小企業の定義は、業種ごとに異なるため、申請を検討している人は、自社が対象者にあてはまるかを確認しておきましょう。

【中小企業の定義】

業種

資本金

(以下)

従業員

(以下)

製造業、建設業、運輸業

3 億円

300人

卸売業

1 億円

100人

サービス業

(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)

5,000万円

100人

小売業

5,000万円

50人

ゴム製品製造業

(自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)

3 億円

900人

ソフトウェア業または情報処理サービス業

3 億円

300人

旅館業

5,000万円

200人

その他の業種(上記以外)

3 億円

300人

参考:「公募要領」(p.9)|中小企業省力化投資補助金

たとえば、飲食店を経営している事業者は「サービス業」にあてはまります。サービス業は資本金が5,000万円以下、もしくは従業員が100人以下であれば、中小企業省力化投資補助金における申請の対象です。

また、宿泊業と旅館業の分類は異なり、旅館以外の宿泊業は「サービス業」に該当します。自社の業種がどの項目にあてはまるのか知りたい人は、総務省の「日本標準産業分類」を確認してみてください。

なお、中小企業や個人事業主であっても、会社の意思決定権を大企業等がもっている「みなし大企業」に該当する場合は申請の対象外です。中小企業省力化投資補助金へ申請予定の人は、自社がみなし大企業に該当しないか公募要領(p.10)を確認しましょう。

補助上限額は申請する企業の従業員数によって異なる

中小企業省力化投資補助金の補助上限額は、従業員数によって異なります。申請予定の人は、事業計画をたてる際に補助対象経費の金額を計算し、自社が事業を実施した場合に受け取れる金額の目安を把握しておきましょう。

【補助上限額と補助率】

従業員

補助率

補助上限額

5人以下

1/2以下

200万円(300万円)

6~20人以下

500万円以下(750万円)

21以上

1,000万円以下(1,500万円)

※()内の数字は、賃上げ目標を達成した場合に引き上げられる金額

参考:「公募要領」(p.6)|中小企業省力化投資補助金

たとえば、従業員が20人の中小企業が補助対象経費400万円を申請した場合、補助率が1/2のため最大で200万円が補助されます。補助率1/2を掛けた金額が補助上限額である200万円を超える場合は200万円までが補助され、200万円を超える金額は自己負担となります。

事業計画をたてる際に賃上げ目標を設定した申請者は、賃上げ目標を設定していない事業者と比べて補助金を多く受け取れます。ただし、賃上げ目標を設定したにもかかわらず目標を達成できなかった場合、補助額は減額されます。

補助上限額や補助率は、申請者の企業規模や事業計画の内容によって異なります。自社の事業計画に対して補助金がいくら受け取れるのか知りたい人は、補助対象経費や従業員数を用いて計算してみてください。

なお、交付決定を受けた申請者であっても、申請した経費の全額が補助されるとは限りません。審査によって経費と認められないものが申請されている場合や、賃上げ目標が未達成の場合などは減額される可能性もあることに留意しましょう。

採択されるためには要件を満たす事業計画をたてる

中小企業省力化投資補助金に採択されるためには、事業の要件を満たす事業計画をたてることが求められます。そのため、事業計画をたてる際は、事業の要件をすべて満たしているかの確認が必要です。

【補助対象事業の要件と補助対象外となる事業】

項目

内容

補助対象事業の要件

  • 導入する省力化製品に紐付けられた業種と補助事業者の営む事業の業種が1つ以上合致すること
  • カタログに登録された価格以内の製品本体価格・導入経費を補助対象として事業計画に組み込むこと

※補助額の範囲外で、自費により経費を追加する場合は可)

  • 労働生産性の向上目標を設定し、その実現に向けて取り組むこと
  • 補助上限額の引き上げを行う場合、賃上げ目標の設定と従業員への表明を行いその実現に向けて取り組むこと
  • 省力化製品を登録されている業種・業務プロセス以外の用途に供する事業ではないこと
  • 労働生産性の向上にかかる目標を合理的に達成することが可能な事業計画に沿って実施されること
  • 効果報告期間が終了するまでの間、省力化製品の導入を契機として、自然退職や自己都合退職によらない従業員の解雇を積極的に行わないこと
  • 補助額が500万円を超える場合、保険への加入を行うこと

補助対象外となる事業

  • 省力化製品を登録されている業種・業務プロセス以外の用途に用いるもの

例)調理として登録されている省力化製品を、家事のために使用する

  • 実質的な労働を伴わない事業または主に資産運用的性格の強い事業
  • 建築または購入した施設・設備を自ら占有し、事業に用いることなく特定の第三者に長期間賃貸させるような事業
  • 取り組む事業が1次産業(農業・林業・漁業)である事業
  • 従業員の解雇を通じて労働生産性を向上させる事業
  • 既に所有する製品の置き換えであり省力化効果が得られない事業。
  • 日本国外で実施する事業
  • 公序良俗に反する事業
  • 法令に違反する恐れがある事業や消費者保護の観点から不適切であると認められる事業
  • 風俗営業等の規制および業務の適正化等に関する法律第2条各項に規定する営業を営む事業
  • 暴力団または暴力団員と関係がある中小企業等による事業
  • 申請時に虚偽の内容を含む事業
  • その他制度趣旨・本公募要領にそぐわない事業

参考:「公募要領」(p.17)|中小企業省力化投資補助金

たとえば、飲食店を営む事業者が「製品カタログ」に載っているスチームコンベクションオーブンを飲食店で活用する場合は、補助の対象となります。しかし、飲食店ではなく、家事に活用する場合は補助の対象外となります。

製品カタログに載っているロボットやIoT機器でも、登録されている業種や業務プロセス以外で活用する場合は補助の対象外となります。要件を満たしていない場合は審査において不採択となり補助金の受給ができなくなるため、製品を選ぶ際は実施する補助事業に適した製品を選択してください。

なお、補助事業の要件は中小企業省力化投資補助金の公式サイトにある公募要領(p.17)に記載されているため、事業計画をたてる際に必ず確認しましょう。

申請を検討している人は補助金を受け取るまでの流れを確認する

中小企業省力化投資補助金への申請を検討している人は、事前に補助金を受け取るまでの流れを確認しておきましょう。補助金を受け取るには、審査や各種手続き、事業計画の実施が必要です。

【補助金を受け取るまでの流れ】

流れ

概要

①事前準備

  • 公募要領の確認
  • gBizIDプライムアカウントの取得
  • カタログから製品選定
  • 販売事業者の選定
  • 必要書類の準備

②交付申請

電子申請システムを通じて製品の販売事業者と共に申請する

③審査

交付申請の内容をもとに審査が実施される

④交付決定

採択された場合は申請受付システムを通じて採択通知を受け取る

⑤補助事業実施

交付決定日から原則12か月以内に、事業計画に基づく補助事業を完了させる

⑥実績報告

補助事業で実施した内容について以下を含めて報告する

  • 支払いに係る証憑
  • 導入実績に係る証憑
  • 事業計画の達成状況

⑦確定検査

実績報告の内容を踏まえて補助額が確定される

⑧補助金の請求・支払い

補助額の確定後、事務局に対して支払請求を行うことで補助金が支払われる

⑨効果報告

補助事業終了後5年間にわたり以下の内容を報告する

  • 省力化製品の稼働状況
  • 事業計画の達成状況

参考:「公募要領」(p.5)|中小企業省力化投資補助金

中小企業省力化投資補助金の申請方法は申請受付システムによる電子申請であり、申請には「gBizIDプライムアカウント」の取得が必要です。gBizIDプライムアカウントはオンライン申請をすれば即日発行が可能ですが、郵送による手続きを行った場合は2週間程度を要する可能性があります。

また、中小企業省力化投資補助金への申請手続きは、導入する製品の販売事業者とともに進める必要があります。申請者は、導入したい製品を「製品カタログ」から選び、製品の販売事業者に交付申請をする旨を連絡してから共同申請を行います。

申請の手続きには、事業計画の作成や販売事業者への連絡など、時間を要する手続きがあります。申請を検討している人は、全体の流れを確認して余裕をもったスケジュールで申請の準備を進めてください。

なお、中小企業省力化投資補助金では、補助金の受給後も「効果報告」として、補助事業終了後5年間にわたり事業状況の報告が必要です。導入した製品の稼働状況や事業計画の達成状況を伝える義務が発生するため、申請予定の人は補助金を受け取った後も手続きがあることに留意しておきましょう。

まとめ

中小企業省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業に対してIoTやロボット等の省力化製品の導入を支援する補助金制度です。人手不足の解消と生産性向上を図る取り組みを支援することにより、中小企業等の付加価値額向上とともに、賃上げにつなげることを目的としています。

補助対象となる経費は、「製品カタログ」に記載されている省力化製品です。人手不足を解消する配膳ロボットやIoT機器などが対象となっており、製品の購入費や設置費および運搬費などの導入費のうち最大半額を補助金として受け取ることができます。

事業計画で賃上げ目標を設定した場合は、補助額を引き上げることができます。事業の課題解決に向けて省力化製品を導入したいと会考えている人は、対象となるための要件や補助金を受け取るまでの手続きを確認し、中小企業省力化投資補助金への申請を検討してみましょう。

製造業が利用できる補助金を解説

事業者を支援する制度の中には、事業者が金銭面での支援を受けられる補助金という支援制度もあります。補助金には数多くの種類があり、利用できる事業者には条件が設けられていることがほとんどです。

当記事では、製造業が利用できる補助金を解説しています。製造業が補助金を利用した事例を交えながら解説しているため、補助金の利用を検討している製造業を営む事業者は参考にしてみてください。

製造業は国と自治体の補助金を利用できる

製造業を営む事業者は、国または事業活動をしている地域の自治体が管轄する補助金を利用できます。それぞれ管轄する地域において、製造業を含む事業者を支援するためにさまざまな補助金を実施しているためです。

【製造業が利用できる補助金の具体例】
管轄 補助金の制度名
  • ものづくり補助金
  • IT導入補助金
  • 小規模事業者持続化補助金
自治体
  • 秋田県ものづくり革新総合支援事業
  • 栃木県ものづくり技術強化補助金
  • 宮城県ものづくり中核企業AI・IoT先進技術導入補助金

国の補助金は、日本国内において事業活動をしている事業者が利用できる補助金です。国は日本国内の事業者が利用できる複数の補助金を用意しているため、製造業が利用できる補助金もあります。

自治体の補助金は、各地域内において事業活動をしている事業者が利用できる補助金です。地域の自治体ごとにさまざまな補助金を用意しているため、地域の自治体ごとに補助金の種類も異なり、製造業が利用できる補助金もあります。

製造業は国と自治体の複数の補助金の対象になりうる業種です。製造業が利用できる補助金を利用することにより設備の新設やシステムの導入などに活用できるため、製造業において事業活動を発展させたい事業者は、補助金の利用を検討してみましょう。

製造業が利用できる補助金の募集状況を確認する

製造業が利用できる補助金への申請を検討している人は、募集状況を確認しましょう。製造業が利用できる補助金は複数の種類がありますが、それぞれ募集期間が決められていることから、タイミングによっては補助金の募集を受け付けていない可能性もあるためです。

【募集状況を確認する方法】
管轄 確認方法
  • 経済産業省のホームページを確認する
  • 各補助金の公式サイトを確認する
自治体
  • 自治体のホームページを確認する
  • 自治体の窓口に確認する

たとえば、国の補助金の募集状況を確認したい場合は、各補助金の公式サイトから募集状況を確認できます。国の補助金は「ミラサポplus(人気の補助金)」から、各補助金の公式サイトを確認できるため、募集状況のスケジュールを確認することが可能です。

また、地方自治体の補助金の募集状況を確認したい場合は、事業活動をしている地域の自治体に確認できます。地方自治体の補助金は自治体の公式サイトの確認や自治体の窓口への問い合わせにより募集状況のスケジュールを確認することが可能です。

なお、国の補助金と自治体の補助金では募集状況の確認方法が異なります。申請を検討している補助金の募集状況を知りたい人は、それぞれの補助金を管轄する機関の公式サイトの確認や窓口に出向くなどして確認しましょう。

製造業が補助金を利用した事例を確認する

製造業が補助金を利用した事例は、各補助金のサイトにおいて公開されている場合もあります。製造業を営む事業者がどのように補助金を活用しているのかを参考にしたい人は、過去の採択事例を確認してみましょう。

事例を探す際は「ミラサポplus(事例を探す)」から検索できます。検索ワードや条件を絞り込むことにより製造業が補助金を利用した事例を探せるため、自社と似た業務内容の事業者が補助金を利用した事例を確認できます。

なお、事例にある補助金が現在も募集しているとは限りません。事例を参考にする際は、似た業務を行う事業者が補助金を利用してどのような事業を実施して、どのような効果を得られたのかを参考にしてみましょう。

補助金を設備投資に利用した事例

製造業が補助金を利用した事例には、設備投資をした事例があります。製造業における設備投資に対して補助金を受給できる可能性があるため、過去に採択された設備投資の取り組みを参考にしたい人は事例を確認してみましょう。

たとえば、洋菓子を製造する事業者が新しい製造ラインを設置する際に補助金を利用した事例があります。洋菓子製造における包餡機や包装機の設置にかかる費用に対して補助金を受け取りました。

また、精密加工を行なう事業者が新たな商品を製造する際に、補助金を利用した事例もあります。新たな商品の製造における精密穴あけ加工機や組み立て加工システムの精密加工機の設置にかかる費用に対して補助金を受け取りました。

製造業は補助金を利用することにより設備の設置にかかる費用を抑えることができます。補助金を利用して設備を設置することにより費用を抑えられるため、新たな設備を設置して事業を行う人は補助金を利用した設備投資を検討してみましょう。

補助金を業務のデジタル化に利用した事例

製造業が補助金を利用した事例には、業務のデジタル化を実施した事例もあります。製造業における「DX化」や「自動化」の取り組みに対して補助金を受給できる可能性があるため、過去に採択された取り組みを参考にしたい人は事例を確認してみましょう。

たとえば、木造住宅用の木質部材を製造する事業者がCADソフトを導入する際に、補助金を利用した事例があります。木質部材の製造における構造計算をするためのCADソフトの導入にかかる費用に対して補助金を受け取りました。

また、製造業における経理業務に会計ソフトを導入する際、補助金を利用した事例もあります。経理業務を効率化するための会計ソフトの導入にかかる費用に対して補助金を受け取りました。

製造業は補助金を利用することにより業務のデジタル化にかかる費用を抑えることができます。補助金を利用してITツールを導入することにより費用を抑えられるため、製造業のIT化を推進したい事業者は補助金を利用したITツールの導入を検討してみましょう。

補助金を販路開拓に利用した事例

製造業が補助金を利用した事例には、販路開拓に取り組んだ事例もあります。製造業における販路開拓の取り組みに対して補助金を受給できる可能性があるため、過去に採択された取り組みを参考にしたい人は事例を確認してみましょう。

たとえば、ハサミの製造と販売を行う事業者がオフラインで販路開拓に取り組む際に、補助金を利用した事例があります。製造したハサミの販路開拓をする上で、展示会にかかる費用に対して補助金を受け取りました。

また、食器の製造と販売を行う事業者がオンラインでの販路開拓に取り組む際に、補助金を利用した事例があります。製造した食器の販路開拓をする上で、SEOサイトを利用した周知にかかる費用に対して補助金を受け取りました。

製造業は補助金を利用することにより製造した商品の販路開拓にかかる費用を押さえることができます。補助金を利用して販路開拓することにより費用をおさえられるため、製造した商品の販促に取り組む事業者は補助金を利用した販路開拓を検討してみましょう。

製造業における補助金の利用に不安がある人は専門家に相談する

製造業における補助金の利用に不安がある人は、専門家への相談が可能です。専門家に相談することにより補助金の利用においてわからないことや申請の手続きなどをサポートしてくれるため、不安がある人は専門家へ相談してみましょう。

【専門家にサポートを依頼できる内容】

  • 製造業が利用できる補助金の提案
  • 経営課題にあった補助金の提案
  • 補助金の各種手続きのサポート
  • 補助金事業の実施のサポート

たとえば、製造業がどのような補助金を利用できるのかを知りたい場合は、専門家へ相談できます。専門家に相談することにより製造業が利用できる補助金を提案してくれるため、製造業が利用できる補助金を自身で探す手間を省くことが可能です。

また、製造業が補助金を利用してどのような事業を実施したらいいかを悩んでいる場合は、補助金を利用する際のアドバイスを求めることもできます。補助金の利用にあたり、経営課題を解決できる事業計画を立てるためのアドバイスを受けることも可能です。

専門家に相談することにより不明点の説明や活用のアドバイスを受けることも可能です。補助金を利用する場合は、専門家との協力が不可欠な場合もあり、申請手続きや事業の実施などのサポートを受けることもできます。

なお、補助金の相談先には国の認定を受けた「認定支援機関」をはじめ「よろず支援拠点」「商工会議所」「士業」などの機関があります。それぞれの相談先について詳しく知りたい人は「補助金の相談は誰にする?相談できる内容に合った相談先を解説」を参考にしてみてください。

まとめ

製造業を営む事業者は、事業活動をしている「国」または「自治体」が管轄する補助金を利用できます。製造業が利用できる補助金を活用することにより設備の新設やシステムの導入などの事業にかかる費用の一部を補助金として受け取れます。

補助金の利用を検討している人は、募集状況を確認する必要があります。製造業が利用できる補助金は複数の種類がありますが、それぞれ募集期間がきまっていることからタイミングによっては補助金の募集を受け付けていない可能性があるためです。

製造業における補助金の利用に不安がある人は、専門家への相談が可能です。製造業が利用できる補助金の提案や補助金の活用のアドバイスなどを受けることができるため、製造業の補助金の利用において不安を抱えている事業者は専門家への相談も検討してみましょう。

外国人雇用に使える助成金や補助金を解説

事業を営む人の中には、外国人の雇用を検討している人もいますよね。その際、言語や慣習などの文化の違いによるトラブルを避けるため、外国人雇用に対応するための環境整備を行いたいと考えている人もいるでしょう。

当記事では、外国人雇用に使える助成金や補助金を解説します。外国人を雇用する際の注意点も解説するので、これから外国人の雇用を考えている人は参考にしてみてください。

外国人雇用に特化した人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

外国人の雇用に使える助成金には、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)があります。人材確保等支援助成金は厚生労働省が実施している助成金であり、外国人労働者が長く働くための環境整備にかかる経費の一部が助成されます。

【人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)の概要】

項目

詳細
制度概要

外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着に取り組む事業者を支援する

補助率

1/2または2/3

※要件の達成状況により異なる

補助額

最大72万円

※要件の達成状況により異なる

対象経費

① 通訳費

② 翻訳機器導入費(上限10万円)

③ 翻訳料

④ 弁護士、社会保険労務士等への委託料

⑤ 社内標識類の設置・改修費(多言語の標識類に限る)

取組内容
  1. 雇用労務責任者の選任
  2. 就業規則等の社内規程の多言語化
  3. 苦情・相談体制の整備
  4. 一時帰国のための休暇制度の整備
  5. 社内マニュアル・標識類等の多言語化

※1,2に加えて3~5の中からいずれかを実施

参考:「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」|厚生労働省

外国人を雇用する場合、言語や慣習などの違いからトラブルに発展する可能性もあります。外国人労働者を雇う際に労働環境を整えたい人は、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)の活用を検討してみてください。

対象経費は環境整備の取り組み内容によって異なる

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)において助成対象となる経費は、環境整備の取り組み内容によって異なります。

【環境整備の内容ごとの対象経費】

環境整備の内容 対象経費
雇用労務責任者の選任
  • 通訳費
  • 翻訳機器導入費
就業規則等の社内規程の多言語化
  • 翻訳料(マニュアル・標識など)
苦情・相談体制の整備
  • 通訳費
  • 弁護士や社会保険労務士等への委託料(顧問料は含まない)
一時帰国のための休暇制度の整備
  • 弁護士や社会保険労務士等への委託料(顧問料は含まない)
社内マニュアル・標識類等の多言語化
  • 翻訳料(マニュアル・標識など)
  • 社内標識類の設置・改修費

参考:「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)ガイドブック(P21)」|厚生労働省

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)において対象となる経費は、通訳および翻訳料、弁護士や社会保険労務士などです。翻訳機器導入費以外の経費が補助対象となるのは、外部機関等に委託をする場合に限られます。

また、翻訳機器導入費は外国人労働者との面談に必要な場合に限り経費の対象となります。事業者全体の補助上限額にかかわらず、翻訳機器導入費として申請できる金額は10万円が上限です。

なお、助成対象となる経費は、対象期間内に事業主から外部機関等に対して支払いが完了したもののみです。事業者は、対象期間外に支払った経費は助成されないことに留意して、外国人雇用に向けた環境整備の計画をたてましょう。

助成金受給のための要件と共通要件を満たす必要がある

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)を利用するには「助成金受給のための要件」だけでなく「共通要件」も満たす必要があります。

【人材確保等支援助成金を利用する際の要件】

要件 内容
助成金受給のための要件(必須)
  • 計画を作成し、労働局長の認定を受けること
  • 認定された就労環境整備計画に基づき、措置を導入し実施すること
  • 離職率目標を達成すること
賃金要件(任意)
  • 毎月決まって支払われる賃金が1年以内に5%以上増加していること

参考:「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)ガイドブック(P3,P17)」|厚生労働省

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)を利用する人は、助成金受給のための必須要件を満たす必要があります。助成金受給のための必須要件では、労働環境を整備する取り組み計画の作成や、必要書類の準備などが求められます。

また、賃金要件は人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)における任意の要件のひとつです。「助成金の対象となる外国人労働者の賃金を改定する前の3か月と、改訂してからの3か月の賃金総額を比較して5%以上増加」を達成することにより、要件を満たさなかった場合と比較して高い補助率が適用されるほか補助上限額が15万円上乗せされます。

人材確保等支援助成金のガイドブックには、要件の詳細や申請時の必要書類など、受給の手続きの詳細が記載されています。申請を検討している人は、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)のガイドブックを参考にしてみてください。

なお、厚生労働省が実施する雇用関係助成金には人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)を含め複数の種類がありますが、全ての制度において共通する要件があります。各制度の要件を満たしていても共通要件を満たせていない場合な申請ができないため、雇用関係助成金への申請を検討する場合は雇用関係助成金に共通の要件等も確認しておきましょう。

外国人雇用に利用できる補助金は自治体によって実施されている場合がある

外国人雇用に特化した補助金や助成金は、自治体でも実施されている場合があります。自社の地域において外国人雇用に使える制度を確認をしたい場合は、補助金や助成金の検索サイトまたは会社の所在する地域を管轄している自治体のホームページなどを確認してみましょう。

【外国人雇用に利用できる自治体の支援制度の探し方】

  • J-NET21の補助金検索を活用する
  • 自治体のホームページから支援情報を確認する
  • 自治体の相談窓口を利用する
  • 商工会や商工会議所などの経営支援機関へ相談する

外国人雇用に利用できる自治体の支援制度の探し方として、J-Net21の「支援情報ヘッドライン」を利用する方法があります。中小機構が運営するポータルサイトであり、企業経営に関わる補助金、助成金、セミナー、イベントなどの支援情報をまとめて検索できます。

また、地域の役所や商工会(商工会議所)などへ相談し、利用できる補助金の情報を確認する方法もあります。企業の経営相談などを受け付けている支援機関は数多く存在し、国が全国に設置する無料の経営相談所「よろず支援拠点」を利用することも可能です。

外国人雇用に特化した助成金や補助金は、国が実施する制度よりも各自治体において実施されている制度が多い傾向にあります。外国人雇用に特化した支援制度を探している人は、各自治体の公式サイトや相談窓口などを活用して、助成金や補助金が実施されているかどうかを確認してみてください。

外国人を雇用する際の注意点

外国人労働者を雇用する場合は、注意点を確認しておきましょう。

【外国人を雇用する際の注意点】
  • 求人を出す際は、外国人のみを対象とした募集はできない
  • 雇った外国人が不法滞在者の場合、事業主も罪に問われる可能性がある
  • 外国人雇用状況の届出を忘れると罰則が適応される

参考:厚生労働省公式サイト「外国人の雇用

求人を出す際は、外国人のみを対象とした募集はできません。外国人のみ応募できない求人も同様です。国籍で差別するような不適切な募集や採用面接にならないように、事業主は「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(P3)」を確認しましょう。

外国人を雇用する際、まずは在留資格の有無を確認しましょう。在留カードの在留期限を過ぎている外国人は不法滞在者となります。

不法滞在者を雇った場合、雇い主は「不法就労助長罪」に問われる可能性があるため、外国人を雇用する際は在留期限が過ぎていないかの確認が必要です。

外国人雇用状況の届出を忘れると、雇用対策法28条違反として30万円以下の罰金が課せられます。短期のアルバイトで雇った外国人も届出の対象であるため、事業主は忘れずに届出を提出しましょう。

外国人雇用状況の届出は、日本の国籍をもたず、在留資格が「外交」か「公用」以外の外国人が届出の対象です。対象となる外国人が雇用保険の被保険者であるかどうかで届出の様式や届出先のハローワークが異なります。

他にも雇用管理や離職時の届出など、外国人を雇う場合のルールはこまかく決まっています。外国人雇用の詳しいルールを知りたい人は、厚生労働省の「外国人雇用のルールに関するパンフレット」を確認してください。

まとめ

外国人を雇用する際は、厚生労働省が実施している人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)が使えます。外国人労働者が長く働くための組織体制の整備や、翻訳にかかる委託費などの環境整備の経費を、一部助成する制度です。

外国人の雇用に使える助成金や補助金は、各自治体でも設置されています。自社の地域の支援制度を探している人は、自治体の公式サイトや相談窓口などを活用してみましょう。

外国人を雇用する際は、在留資格や外国人雇用のルールを確認する必要があります。届出や雇用管理のルールはこまかく決まっているため、外国人雇用を検討している人は、厚生労働省の公式サイトで外国人の雇用に関するルールを確認してください。

M&Aに使える補助金の種類と概要を解説

事業を売買したい人の中には、M&Aに使える補助金を探している人もいますよね。その際、「M&Aに使える補助金の一覧を見たい」「各補助金の特徴を知りたい」という人もいることでしょう。

当記事では、M&Aに使える補助金の種類と概要を解説します。M&Aに使える補助金を探している人は、当記事を参考にしてみてください。

なお、当記事は各補助金や支援制度の公式サイトをもとに作成しています。

M&Aに使える補助金には国や自治体の補助金がある

M&Aをする事業者が利用できる補助金には、国や自治体の補助金があります。制度によって対象者や支援内容、受給できる金額などが異なるため、自身が対象となる制度の中から希望に合うものを探しましょう。

【M&Aに使える補助金の種類】

管轄する機関の種類 補助金の名称
事業承継・引継ぎ補助金
自治体 ※抜粋
  • 事業承継支援助成金(東京都)
  • 事業承継・事業継続力強化支援補助金(川崎市)
  • 岡山市事業承継支援補助金(岡山市)
財団 事業承継・M&A着手支援事業助成金

国と自治体の補助金を比較した場合、国の補助金の方が自治体の補助金よりも高額の補助金を受け取れる傾向にあります。国が実施する「事業承継・引継ぎ補助金」では補助金額が最大800万円となるため、自治体の補助金では資金を補えない場合は補助金額の上限が高く設定されている国の補助金が適しています。

また、国と自治体の補助金を比較した場合、国の補助金の方が自治体の補助金よりも倍率が高くなる傾向にあります。地方自治体の補助金は管轄の地域の事業者を対象としているのに対し、国の補助金は全国の事業者を対象としているため応募者数が多くなる可能性があります。

国や自治体の補助金や助成金の中には、M&Aが対象となる制度があります。申請手続きや書類準備などの手間はかかりますがM&Aに必要な着手金や仲介手数料などの経費は抑えられるため、M&Aを予定している事業者は補助金の利用を検討してみましょう。

国の補助金には事業承継・引継ぎ補助金がある

国が運営する補助金には、事業承継・引継ぎ補助金があります。事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継を契機として新しい取り組みを行う中小企業や、事業再編・事業統合に伴う経営資源の引継ぎを行う中小企業等を支援する制度です。

【事業承継・引継ぎ補助金の概要】

項目 詳細
補助額

最大950万円

※申請枠により異なる

※廃業費の上乗せ適用時

補助率

1/2または2/3以内

※申請枠や事業者の条件により異なる

対象経費

【経営革新枠】

  • 人件費
  • 店舗等借入費
  • 設備費
  • 原材料費 など

【専門家活用枠】

  • 専門家への謝礼
  • 委託費
  • システム利用料
  • 在庫廃棄費 など

【廃業・再チャレンジ枠】

  • 廃業支援費
  • 原状回復費
  • リースの解約費
  • 移転・移設費用 など

 参考:公式サイト|事業承継・引継ぎ補助金

たとえば、法人がM&Aで店舗を買収する場合、最大600万円まで「店舗等借入費」や「設備費」などの経費が補助されます。さらに、一定の賃上げを実施すると、補助金額は最大800万円まで引き上げられます。

また、個人事業主がM&Aで事業を売却する場合、専門家活用経費として「謝金」や「旅費」などの経費が最大600万円まで補助されます。事業承継・引継ぎ補助金は個人事業主も対象の補助金で、事業を購入する人も売却する人も補助が受けられます。

事業承継・引継ぎ補助金は、M&Aで購入した新たな事業を始める人や、事業の売却や廃業をする人が使える補助金です。M&Aに関心のある人や、M&Aをしたいけれど資金が足りない人は、国の補助金「事業承継・引継ぎ補助金」に着目してみましょう。

なお、事業承継・引継ぎ補助金には「経営革新枠」「専門家活用」「廃業・再チャレンジ」の3つの申請枠があります。3つの申請枠の概要や申請方法を知りたい人は、「事業承継・引継ぎ補助金とは?概要と申請要件を解説」を参考にしてみてください。

地方自治体や財団にも独自の補助金や助成金がある

地方自治体や財団が独自に実施する補助金や助成金にも、M&Aの際に利用できる制度があります。「東京 事業承継 補助金」のように、地名と事業承継を組み合わせたキーワードで検索すると、自治体や財団が実施する支援制度を探せます。

【M&Aに利用できる自治体の補助金一覧】

管轄 補助金/助成金の種類 補助金額 補助対象経費
東京都 事業承継支援補助金

最大200万円

2/3以内

外部専門家等への委託に関わる経費

栃木県 栃木県事業承継支援補助金

最大100万円

1/2以内

弁護士、税理士等の専門家に委託するために支払われた経費

岡山県 岡山市事業承継支援補助金

最大100万円

2/3以内

初期診断、課題分析、コンサルティングなどの経費

横浜企業経営支援財団

(神奈川県横浜市)

事業承継・M&A着手支援事業助成金

最大20万円

1/2以内

M&Aの成立に重要な役割を果たす書類(企業概要書、事業承継計画書等)の作成費用

たとえば、東京都が実施する「事業承継支援補助金」は、M&Aの際に企業価値の算定や市場調査など、外部専門家へ業務を依頼する際の委託費用が補助対象となる補助金です。対象経費の2/3以内の金額が、最大で200万円まで補助されます。

また、神奈川県横浜市の横浜企業経営支援財団が実施する「事業承継・M&A着手支援事業助成金」は、M&Aの実施において必要となる「企業概要書」や「事業承継計画書」などの作成費用の一部が補助されます。対象経費の1/2以内の金額が、最大20万円まで補助されます。

M&Aに利用できる補助金には、国が実施する制度以外にも自治体や財団等が実施している制度もあります。すべての自治体で実施されているわけではないため、M&Aに補助金を利用したい人は自社の所在地においてM&Aに利用できる補助金が実施されているか確認してみましょう。

事業承継・引継ぎセンターではM&Aに関わる費用を節約できる

補助金ではありませんが、事業承継・引継ぎセンターを利用することで、M&Aに関わる費用を節約できる可能性があります。事業承継・引継ぎセンターでは、事業者は金融機関OBや税理士などと無料で相談や面談のセッティングをしてもらえるからです。

【事業承継・引継ぎ支援センターの概要】

項目 内容
管轄 中小機構
支援内容
  • 第三者承継支援(無料相談、 アドバイス&サポート、 譲受候補企業の紹介)
  • 親族内承継支援(事業承継計画策定支援)
  • 後継者人材バンク(起業家と後継者不在の事業者とのマッチング)
対応地域  全国
センター相談窓口 センター相談窓口で該当の都道府県をクリックして探します

たとえば、事業を第三者に譲りたい場合、事業承継・引継ぎ支援センターでは相談から第三者企業との面談までを無料でサポートしてくれます。民間のM&Aアドバイザリー企業のような仲介手数料が必要ないため、事業者は費用を抑えてM&Aに取り組むことが可能です。

事業承継・引継ぎセンターは補助金ではありませんが、事業者のM&Aに関わる負担を軽減するための支援を実施しています。事業承継・引継ぎセンターは全国各地に拠点があるので、M&Aを実施予定の人は近くの事業承継・引継ぎセンターへ相談してみてください。

ただし、M&Aで合意した場合の登記費用や税金は、事業者が支払うことになります。事業承継・引継ぎセンターでは相談とマッチング/面談までが無料であることに留意しましょう。

まとめ

M&Aをする事業者が利用できる補助金には、国や自治体の補助金があります。国の補助金には「事業承継・引継ぎ補助金」があり、申請する枠によって人件費や専門家への謝金、リースの解約費など対象となる経費が異なります。

また、M&Aに使える補助金には地方自治体や財団等が独自に実施する補助金や助成金もあります。「M&A 東京」のように地名と組み合わせたキーワードで検索すると自治体の支援制度を探せるため、M&Aを予定している人は自治体の補助金も検討してみましょう。

なお、M&Aを予定している事業者は「事業承継・引継ぎセンター」による支援を受けることも可能です。補助金制度ではありませんが、無料相談や譲受候補企業の紹介などを実施している支援機関であるため、M&Aに不安がある人は事業承継・引継ぎセンターへ相談することも選択肢のひとつとして覚えておきましょう。

美容室が設備投資や開業に活用できる補助金を解説

美容室を運営している人や開業を考えている人の中で、経営に関わる費用を抑えたいと悩んでいる人はいるのではないでしょうか。美容室を営む事業者が活用できる補助金や助成金があります。

この記事では、美容室で活用できる補助金を解説します。助成金も紹介するので、美容室の経費削減を検討している人は、参考にしてみてください。

美容室が設備投資や開業に活用できる補助金の種類

美容室が設備投資や開業に活用できる補助金には、経済産業省が運用している制度や自治体が行っているものなどがあります。補助金の用途や要件によっては活用できない制度もあるため、各補助金の詳細を確認した上で自身の取り組みが対象となる制度を選びましょう。

【美容室が活用できる補助金の種類】

  • 小規模事業者持続化補助金

  • ものづくり補助金

  • IT導入補助金

  • 事業再構築補助金

たとえば、事業再構築補助金の場合、美容室内の一部スペースを改修して新たにフォトスタジオを始めるなどの思い切った事業再構築を実施する事業者が対象です。ただし、建物の単なる購入や賃貸は対象外であり、計上した経費の半分以上が補助対象外に該当した場合、不採択・採択取消となります。

また、ものづくり補助金の場合、革新的サービス開発や試作品開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資等を実施する事業者が対象です。ものづくり補助金では必ず単価50万円以上の設備投資が必要であるほか、賃上げや付加価値額の増加に関する要件を満たす必要があります。

補助金を活用して美容室の業務改善をすることにより、効率が上がるだけでなく、サービス提供の質が向上し新規顧客を獲得することも可能です。美容室において業務改善を行いたいと考えている人は、自社に合った補助金や助成金を探してみましょう。

小規模の美容室が活用できる小規模事業者持続化補助金

小規模の美容室が活用できる小規模事業者持続化補助金は、販路開拓などに関する対象経費の一部を補助します。個人経営や常時使用する従業員数が5人以下に該当する小規模の美容室が補助対象です。

【小規模事業者持続化補助金の概要】

項目

特徴

対象者

  • 常時使用する従業員数 5人以下の小規模事業者
  • 個人事業主

要件

  • 商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であること
  • 商工会議所の管轄地域内で事業を営んでいること
  • 資本金又は出資金が5億円以上の法人に直接、間接に100%株式保有されていないこと(法人のみ)
  • 直近過去3年分の各年、各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと
  • 販路開拓等のための取組または販路開拓等の取組とともに行う生産性向上のための取組であること

補助上限

通常枠:50万円(100万円)

特別枠:200万円(250万円)

※()はインボイス特例適用時

補助率

2/3

※要件を満たす事業者は3/4

補助対象経費

  • 機械装置等費
  • 広報費
  • ウェブサイト関連費
  • 展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)
  • 旅費
  • 新商品開発費
  • 資料購入費
  • 借料
  • 設備処分費
  • 委託・外注費

参考:公式サイト|小規模事業者持続化補助金

たとえば、補助金の利用によりヘッドスパ装置を導入して、新サービスの宣伝のためにチラシを作成した費用は補助対象になります。新しい顧客層を増やす販路開拓を行い、売上を向上させる取り組みが補助事業に該当します。

古くなった装置を買い替えるだけやパソコンなどの汎用性が高く補助事業以外に使用できる場合は対象外です。ただし、販路開拓に向けて新サービスを提供するために機械を購入することは補助対象経費となります。

また、WEBサイト構築に利用できるウェブサイト関連費のみの申請はできないため、利用したい場合は、他の補助対象経費とともに活用しましょう。持続化補助金の申請時のポイントが知りたい人は、「小規模事業者持続化補助金 美容室の採択事例や申請時のポイントなどをご紹介」を参考にしてみてください。

美容室の設備投資に活用できるものづくり補助金

美容室の設備投資に活用できるものづくり補助金は中小企業や小規模事業者が対象です。ものづくり補助金では、革新的な生産プロセスやサービス提供方法の効率化につながる取り組みが支援されます。

【ものづくり補助金の概要】

項目

特徴

対象者

  • 中小企業者
  • 小規模事業者
  • 個人事業主

共通要件

  • 付加価値額を年平均成長率3%以上増加
  • 給与支給総額を年平均成長率1.5%以上増加
  • 事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上

補助上限

最大1億円

※申請枠と事業規模により異なる

補助率

1/3~2/3

※申請枠と事業規模により異なる

補助対象経費

  • 機械装置等費・システム構築費(必須)
  • 運搬費
  • 技術導入費
  • 知的財産権等関連経費
  • 外注費
  • 専門家経費
  • クラウドサービス利用費
  • 原材料費

たとえば、顧客管理や予約処理の効率化を図るために、店舗にAIが搭載されたオンライン予約システムを導入する費用の一部が補助されます。省力化(オーダーメイド)枠では、人手不足の解消に向けてシステム開発などを請け負うシステムインテグレーター(SIer)との連携により設計した専用設備の導入が必須です。

導入するデジタル技術等を活用した専用設備とは、ICTやAI、センサーなどを利用してサービス提供方法の効率化をはかる機械装置やシステムのことです。デジタル技術等を活用していない機械装置等を導入することは対象外となります。

なお、ものづくり補助金には3つの申請枠があり、それぞれ補助額や補助率、対象経費などがことなります。ものづくり補助金について詳しく知りたい人は「ものづくり補助金とは?」の記事を参考にしてみてください。

美容室のITツール導入に活用できるIT導入補助金

美容室のITツール導入費に活用できるIT導入補助金では、通常枠やインボイス枠など補助金の使用目的によって申請枠が異なります。IT導⼊補助⾦は、労働⽣産性の向上を⽬的としたソフトウェアやインボイス制度に対応した会計ソフトが導入可能です。

【IT導入補助金(通常枠)の特徴】

項目

概要

対象者

  • 中小企業
  • 小規模事業者
  • 個人事業主

補助率

1/2

補助額

1プロセス以上:5万円以上150万円未満

4プロセス以上:150万円以上450万円以下

※プロセス=導入するITツールが有する機能数

対象経費

  • ソフトウェア購入費
  • クラウド利用料(最大2年分)
  • 導入関連費

たとえば、補助金を利用してオンラインで予約が行える予約管理システムを美容室に導入することで、予約処理をスムーズにする取り組みが補助対象です。

IT導入補助金では、支援枠が改編されデジタル化基盤導入枠の撤廃のほか、新たにインボイス枠が新設されました。インボイス枠では、インボイス制度に対応した会計や決済ソフトなどの導入費用が補助対象経費です。

なお、インボイス制度に対応していないECサイト構築費は対象外となります。業務の効率化につながるITツールやインボイス制度に対応したITツールを導入したい場合はIT導入補助金の利用を検討してみましょう。

美容室の事業転換に活用できる事業再構築補助金

美容室の事業転換に活用できる事業再構築補助金の場合、思い切った事業再構築の取り組みに必要な経費が補助対象です。美容室の補助事業遂行のために補助金を利用したい場合、事業再構築補助金の産業構造転換枠にて申請可能です。

【事業再構築補助金の概要】

項目

特徴

対象者

  • 中小企業者
  • 中堅企業等
  • 個人事業主

補助上限

最大1.5億円

※従業員規模数等で上限額が異なる

補助率

【中小企業】2/3

【中堅企業】1/2

補助対象経費

  • 建物費
  • 機械装置・システム構築費(リース料を含む)
  • 技術導入費
  • 専門家経費
  • 運搬費
  • クラウドサービス利用費
  • 外注費
  • 知的財産権等関連経費
  • 広告宣伝・販売促進費
  • 研修費
  • 廃業費

たとえば、美容室の売り上げが大幅に減少したため、新しく高齢者向けに訪問美容サービスを開始、その際の費用の一部が補助されます。新たに始めるサービス提供にかかる広告宣伝費や補助事業に必要になった機械装置などが補助対象経費です。

事業再構築補助金は、美容室の事業再構築を考えている経営者にとって資金調達のサポートとなる補助金です。事業再構築補助金の美容室に関する採択事例や詳細を知りたい人は、「事業再構築補助金は美容室でも利用できる?要件や注意点も解説」を見てみましょう。

地域の自治体にも美容室が活用できる補助金がある

地域の自治体にも美容室の経営者が活用できる補助金があります。美容室に使える補助金の確認をしたい場合は、補助金の検索サイトまたは美容室がある所在地を管轄している自治体のホームページなどを確認してみましょう。

【美容室が利用できる自治体の補助金の探し方】

  • J-NET21の補助金検索を活用する
  • 自治体のホームページから支援情報を確認する
  • 自治体の相談窓口を利用する
  • 商工会や商工会議所などの経営支援機関へ相談する

美容室が利用できる自治体の補助金の探し方として、J-Net21の「支援情報ヘッドライン」を利用する方法があります。中小機構が運営するポータルサイトであり、企業経営に関わる補助金、助成金、セミナー、イベントなどの支援情報をまとめて検索できます。

また、地域の役所や商工会(商工会議所)などへ相談し、利用できる補助金の情報を確認する方法もあります。企業の経営相談などを受け付けている支援機関は数多く存在し、国が全国に設置する無料の経営相談所「よろず支援拠点」を利用することも可能です。

ただし、美容室が所在している地域によっては、補助金を実施していない自治体もあるため注意が必要です。目的や用途ごとに利用できる制度が異なるため、設備投資や店舗改修など、自社が補助金を活用する目的を明確にして自社に合った補助金を探しましょう。

美容室の経営に活用できる助成金もある

補助金のほかに、美容室の経営に活用できる助成金もあります。助成金は補助金と同様に返済不要の支援金であり、業務改善を行いたい場合や雇用が少ない地域で美容室を開業したい場合など、労働環境の改善や雇用機会の創出につながる取組を行う事業が対象となる傾向にあります。。

【美容室の経営に活用できる助成金一覧】

助成金名

特徴

業務改善助成金

【概要】

生産性向上に資する設備投資等とともに賃上げを実施した場合に、設備投資費用の一部を補助する

【助成額】

最大60万円

※引き上げる最低賃金額と労働者人数、および事業場規模によって異なる

【対象経費】

生産性向上に資する設備投資等

地域雇用開発助成金

(地域雇用開発コース)

【対象】

雇用機会が特に不足している地域等の事業主が、事業所の設置・整備を行うとともにその地域に居住する求職者等を雇い入れる取組を支援する

【助成額】

最大800万円

※設置・整備に要した費用や対象労働者の増加人数などにより異なる

※特例による加算あり

【対象となる費用】 

条件を満たす場合に一律で支給

人材開発支援助成金

(人材育成支援コース)

【対象】

事業主が従業員に対して実施させる、職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための職業訓練等を支援する

【助成額】

実施訓練や企業規模等により異なる

<例>

①OFF-JTの人材育成訓練を実施する中小企業の場合

賃金助成額:最大960円/h

経費助成額:最大100%

②OJTの有期実習型訓練を実施する大企業の場合

OJT実施助成額:最大12万円/人

【対象費用】

部外の講師への謝金・手当

部外の講師の旅費

施設・設備の借上費

必要な教科書・教材の購入費

訓練コースの開発費

訓練期間中の所定労働時間内の賃金

たとえば、業務改善助成金の場合、助成金を利用することで最新機械を購入することができ、施術時間が短縮され顧客の回転率を向上させることが可能です。業務改善助成金は、生産性向上のための設備投資等とともに事業場内最低賃金の引き上げることで助成金が支給されます。

地域雇用開発助成金では、雇用不足の地域で開業して対象の求職者を雇うことで美容室の内装工事費用などが助成されます。人材開発支援助成金では、専門知識や技術獲得の訓練を10時間以上実施することで助成されるため、従業員のスキルアップを促進したい際は検討してみましょう。

助成金を活用することで、コストを抑えながら雇用環境の整備が可能です。美容室の開業前に利用できる助成金について詳しく知りたい人は、資金調達ノート「美容室の開業前に利用できる助成金を解説」を見てみましょう。

まとめ

美容室が利用できる補助金や助成金には、国が実施しているものや地域の自治体が運営している制度などがあります。それぞれの制度によっては活用できる美容室の規模や要件などが異なります。

美容室内の設備投資や店舗改修を行うことで、施術時間が短縮するなどの顧客に提供するサービスの質が向上され、顧客満足度が高まり新たな顧客を獲得する可能性があります。また、設備を新しくすることで環境が改善され担当スタッフの負担を軽減することが可能です。

補助金や助成金の利用によって、補助事業の遂行に必要になるコストの一部が抑えられます。美容室にかかる資金を調達するために補助金や助成金の利用は有効な手段のため、資金調達方法に悩みがある経営者は補助金や助成金など支援制度の利用を検討してみましょう。

新規事業を展開する際に利用できる補助金を解説

新規事業の展開をする際には、さまざまな資金が必要になりますよね。新規事業にかかる費用をどうやって抑えようか悩んでいる人もいるでしょう。

当記事では新規事業を展開する際に利用できる補助金について解説します。新規事業の展開を検討している人は、参考にしてみてください。

新規事業を展開する際に利用できる補助金

新規事業を展開する際に利用できる補助金があります。新規事業に関する補助金を活用したい場合は、以下の例を参考に自社に合った補助金について検索してみましょう。

【新規事業に利用できる補助金の例】

  • 事業再構築補助金
  • 小規模事業者持続化補助金
  • ものづくり補助金

事業再構築補助金は、中小企業などの思い切った事業再構築を支援することで、経済の転換を促すことを目的とした補助金です。

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者を対象に経営の見直しを行い作成した経営計画をもとに新規事業などの取り組みを支援する補助金です。

補助金にはそれぞれ利用できる対象者や要件が異なります。新規事業に利用できる補助金の特徴を把握して、新規事業を展開する際にかかる費用を抑える方法のひとつとして補助金の活用を検討してみましょう。

事業債構築補助金は思い切った事業再構築に利用できる

事業再構築補助金は思い切った事業再構築により新規事業を展開する際に利用できる補助金です。事業再構築補助金には8つの事業類型がありますが、認定経営革新等支援機関との連携や付加価値額の向上が必須要件になります。

【事業再構築の概要】

項目

概要

対象者

日本国内に本社を有する中小企業、中堅企業

全枠必須要件

  • 事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けること
  • 付加価値額を向上させること

補助額

最大1.5億円

補助率

中小企業:1/2

中堅企業:1/3

補助対象経費

  • 建物費
  • 機械装置・システム構築費(リース料を含む)
  • 技術導入費
  • 専門家経費
  • 運搬費
  • クラウドサービス利用費
  • 外注費
  • 知的財産権等関連経費
  • 広告宣伝・販売促進費
  • 研修費

参考:事業再構築補助金の公式サイト

たとえば、経営していたカフェが売上減少したことにより、新たな食品事業を立ち上げるというような、新市場へ進出するなどの思い切った事業再構築に挑戦する中小企業が補助対象になります。

補助金申請の準備をする際は、設備の投資や店舗のリフォームなどに補助金を活用して、補助事業終了時に付加価値額の向上が見込める計画を立てることが重要です。

なお、8つの事業類型はそれぞれ要件や補助金額などが異なるため、申請を検討している人は申請要件や対象者の確認が必要です。事業再構築補助金について詳しく知りたい人は、「事業再構築補助金とは?対象や要件など概要をわかりやすく解説」を参考にしてみてください。

小規模事業者持続化補助金は新商品開発に伴う経費に利用できる

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が新規事業の実施に向けて使える補助金です。小規模事業者持続化補助金では、商工業者である個人事業主や営利法人、一定の条件を満たした特定非営利活動法人が補助対象者になります。

【小規模事業者持続化補助金の概要】

項目

概要

対象者

  • 小規模事業者である個人事業主や営利法人、一定の要件を満たした特定非営利活動法人であること
  • 資本金又は出資金が5億円以上の法人に直接または間接に100%の株式を保有されていないこと(法人のみ)
  • 直近過去3年分の各年または各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと
  • 「卒業枠」で採択され補助事業を実施した事業者ではないこと

対象事業

  • 経営計画に基づいて実施する取組であること
  • 商工会、商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であること
  • 国が助成する他の制度と重複する事業でないこと
  • 補助事業の終了後、1年以内に売上げにつながることが見込まれる事業である

補助額

最大250万円

※インボイス特例適用時

※申請枠によって異なる

補助率

2/3

(条件を満たす事業者は3/4)

補助対象経費

  • 機械装置等費
  • 広報費
  • ウェブサイト関連費
  • 展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)
  • 旅費
  • 新商品開発費
  • 資料購入費
  • 借料
  • 設備処分費
  • 委託・外注費

参考:小規模事業者持続化補助金の公式サイト

たとえば、新商品を試作する際の材料費や新たに包装をデザインする費用に活用できる開発費、新規事業に活用する製造機械を導入する費用の機械装置等費といった新規事業を展開する際に使える補助対象経費です。

また、新たな商材を紹介するパンフレット作成に支払う費用やWEBサイトを構築する際にかかる経費を抑えられる補助対象経費もあります。ただし、WEBサイト関連費のみによる補助金申請はできないため、他の経費と組み合わせて申請する必要があります。

なお、小規模事業者持続化補助金は「小規模事業者」の定義にあてはまる事業者のみが対象です。小規模事業者持続化補助金の対象や申請条件について詳しく知りたい人は「小規模事業者持続化補助金とは?はじめて申請する人向けにわかりやすく解説」の記事を参考にしてみてください。

ものづくり補助金は新規事業のための設備導入に利用できる

ものづくり補助金は、新規事業を展開するための設備導入等に利用できる補助金です。ものづくり事業を経営している中小企業や小規模事業者などを対象に、革新的な商材開発や生産性向上の取り組みにかかる費用の一部が補助されます。

【ものづくり補助金の概要】

項目

概要

対象者

  • 日本国内で事業を営む中小企業者、小規模事業者、個人事業主等(みなし大企業は不可)
  • 過去3年間に、2回以上の交付決定を受けていないこと
  • 直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと

共通要件

以下を満たす3~5年の事業計画を策定し実施すること

①給与支給総額の増加

②最低賃金の引き上げ

③付加価値額の増加

補助額

最大1億円

補助率

1/3~2/3

※申請枠や事業規模によって異なる

補助対象経費

  • 機械装置・システム構築費
  • 技術導入費
  • 専門家経費
  • 運搬費
  • クラウドサービス利用料
  • 原材料費
  • 外注費
  • 知的財産権等関連経費
  • 海外旅費
  • 通訳・翻訳費
  • 広告宣伝・販売促進費

参考:ものづくり補助金の公式サイト

ものづくり補助金は、補助事業に要する設備の投資が必須であるため、他の補助対象経費を活用したい場合は、機械装置、システム構築費とあわせて申請を行わなければなりません。

また、補助対象経費のなかには、補助対象経費総額の上限が決められているものもあります。

なお、ものづくり補助金には5つの申請枠があり、それぞれ補助額や申請要件が異なります。申請を検討する人は、申請枠ごとの基本要件や追加要件、補助率などを確認して事業内容にあったものを選ぶようにしましょう。

ものづくり補助金について詳しく知りたい人は、「ものづくり補助金とは?概要をわかりやすく解説」を参考にしてみてください。

自治体でも新規事業に利用できる補助金を実施している場合がある

地方自治体においても、新規事業に利用できる補助金を実施している場合があります。自治体の補助金にはさまざまな種類があるため、目的別にどのような補助金を利用できるのか確認してみましょう。

【新規事業に利用できる自治体の補助金一覧】

項目

利用できる補助金の具体例

起業にかかる経費が幅広く対象となる補助金

  • 【北海道】旭川市スタートアップ支援補助金
  • 【東京都】創業助成金
  • 【大阪府】大阪起業家グローイングアップ補助金
  • 【山梨県】南アルプス市創業支援補助金
  • 【長野県】信濃町起業等人材育成支援補助金
  • 【愛知県】名古屋市スタートアップ企業支援補助金

女性起業家向けの補助金

  • 【茨城県】笠間市女性創業支援事業
  • 【東京都】若手・女性リーダー応援プログラム助成事業
  • 【兵庫県】商店街若者・女性新規出店チャレンジ応援事業補助金
  • 【和歌山県】シニア・女性起業家支援資金利子補給

学生起業家向けの補助金

  • 【新潟県】長岡市学生起業家育成補助金
  • 【福井県】学生起業応援事業
  • 【福岡県】大学生起業家育成事業費補助金

地方に移住して新規事業を実施する人向けの補助金

  • 【千葉県】勝浦市移住支援事業支援金制度
  • 【長野県】UIJターン就業・創業移住支援事業
  • 【京都府】移住者起業支援事業
  • 【長崎県】雇用機会拡充事業
  • 【鹿児島県】鹿屋市移住・定住者就農支援事業
  • 【沖縄県】移住支援金制度

空き店舗を活用して新規事業を実施する人向けの補助金

  • 【青森県】弘前市空き店舗対策事業費補助金
  • 【山形県】空き店舗等対策支援事業
  • 【埼玉県】空き店舗等開業支援補助金
  • 【愛知県】空き店舗利活用支援補助金

起業したばかりの事業者向けの補助金

  • 【秋田県】若者・女性創業資金利子補給費補助金
  • 【大阪府】創業支援利子補給制度

参考:創業者向け補助金・給付金(都道府県別)|J-Net21

新規事業の実施において、起業する場合にかかる幅広い経費が対象となる補助金には、北海道旭川市が実施する「スタートアップ支援補助金」や東京都が実施する「創業助成金」などがあります。店舗や設備の取得にかかる費用に加え、事業の宣伝・広告費や従業員の人件費、依頼した専門家への謝金などの経費が補助対象となる傾向にあります。

また、地方に移住して新規事業を実施する人向けの補助金には、千葉県勝浦市が実施する「移住支援事業支援金制度」や沖縄県が実施する「移住支援金制度」などがあります。都市部からの移住者の受け入れによる地域経済の活性化を目的に、新規事業に係る経費の一部を補助する制度や移住世帯に対して一律の支援金を支給する制度が実施されている傾向にあります。

これらは新規事業に利用できる補助金のうちの一部であり、このほかにも全国各地においてさまざまな支援制度が実施されています。自身の事業実施地域においてどのような支援制度が設けられているのかを知りたい人は、自治体のホームページやJ-Net21の「支援情報ヘッドライン」などを活用して自身が対象となる補助金や助成金を探してみましょう。

まとめ

新規事業を実施する際に利用できる補助金には「事業再構築補助金」「小規模事業者持続化補助金」「ものづくり補助金」が挙げられます。それぞれ対象となる取り組みや対象経費が異なるため、各制度の詳細を確認した上で自身に合った制度を選ぶ必要があります。

また、地方自治体が実施する補助金の中にも、新規事業を実施する際に利用できる補助金があります。自治体の補助金は、管轄する地域において実施される事業を対象としている傾向にあるため、自身が事業を営む地域において新規事業に利用できる補助金があるかどうかを確認しましょう。

補助金を活用することで、新規事業に関する費用の負担を軽減することが可能です。新規事業を立ち上げる際の資金調達方法のひとつとして、補助金の利用を検討してみてください。

RPAツールの導入に利用できる補助金を解説

RPA(Robotic Process Automation:ソフトウェアロボットによる業務自動化)ツールを探している人の中には、国や自治体の補助金を利用したい人もいますよね。その際、どの補助金でいくらまで補助されるのか、具体的な情報を知りたい人もいるでしょう。

当記事では、RPAツールを補助対象とする国や自治体の補助金を解説します。具体的に対象となるRPAツールの名称や参考価格も紹介するので、RPAツールの導入に興味のある人は、当記事を参考にしてみてください。

RPAツールの導入に利用できる補助金は複数ある

RPAツールの導入に利用できる補助金には、複数の種類があります。補助金には制度ごとに目的や対象が決められており、その目的や対象にあてはまる取り組みをRPAツールを用いて実施する場合に、RPAツールの導入費用の一部が補助される可能性があります。

【RPAツールに使える補助金の一覧】

制度名

概要

IT導入補助金

生産性向上につながるITツールの導入を支援する

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者の販路開拓や業務効率化の取組を支援する

ものづくり補助金

生産性向上につながる設備投資等を支援する

働き方改革推進支援助成金

中小企業における労働時間の設定の改善の促進を支援する

RPAツールの導入に利用できる補助金には、「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」「ものづくり補助金」「働き方改革推進支援助成金」が挙げられます。RPAツールの導入により生産性向上や労働環境の改善など、事業者の課題解決につながる取り組みを実施する場合に補助金を受給できる可能性があります。

公的な補助金を使うと、事業者は金銭的負担を抑えてRPAツールを導入できます。ただし、補助金を受給するためには制度の目的に合った事業計画の作成や必要書類の準備などが必要となるため、RPAツールの導入に補助金を利用したい人は各補助金の条件を確認したうえで申請可能な補助金を選びましょう。

IT導入補助金では生産性を向上させるRPAツールが対象

IT導入補助金は、中小企業や個人事業主等の生産性向上につながるITツールの導入を支援する制度です。RPAツールが対象となるのはIT導入補助金の「通常枠」であり、生産性向上や業務効率化など、企業の課題解決につながる機能を備えるソフトウェアとしてRPAツールを導入できる可能性があります。

【IT導入補助金(通常枠)の概要】

項目

詳細
制度の目的

ITツール導入による生産性向上や業務効率化

補助額

導入するソフトウェアの機能数により異なる

1機能以上:5万円以上150万円未満

4機能以上:150万円以上450万円以下

補助率

1/2

対象経費

  • ソフトウェア(購入費、クラウド利用料)
  • オプション(拡張機能、セキュリティ)
  • 役務(導入コンサル、保守サポート)
対象のRPAツール
  • Win Actor
  • RPA Ez Robot
  • RPAロボパットDX

参考:IT導入補助金2024公式サイト

IT導入補助金を利用して導入できるRPAツールのひとつとしてWin Actor」が挙げられます。Win ActorではExcelデータを基幹システムに転記できるため作業時間の短縮や入力ミスの防止が期待できるほか、大量のアンケート結果や売上データを基幹システムに反映させる作業も可能です。

また、IT導入補助金を利用して導入できるRPAツールのひとつとして「RPA Ez Robot」が挙げられます。RPA Ez Robotでは社内システムからロボットが報告書を作成するシナリオを作成できるため報告書作成の時間を短縮できるほか、社員に提出を課していた報告業務をロボットに対応させることも可能です。

ただし、IT導入補助金においてはRPAツールのみでの申請はできません。RPAツールは単体での申請ができない「汎用プロセス」に該当するソフトウェアのひとつであるため、IT導入補助金を利用してRPAツールを導入したいと考えている人は他のソフトウェアとあわせて導入しましょう。

なお、IT導入補助金において対象となるRPAツールは「ITツール・IT導入支援事業者検索」に登録されているもののみです。IT導入補助金の補助対象となるRPAツールには複数の種類がありますが、シナリオ登録や更新の有無、料金体系などは種類によって異なるため、操作性や価格を比較して導入するRPAツールを検討しましょう。

小規模事業者持続化補助金では販路拡大や生産性向上のためのRPAツールが対象

小規模事業者持続化補助金では、補助事業に必要な対象のRPAツールが対象です。事業者が小規模事業者持続化補助金の目的である「販路拡大」や「生産性向上」に沿う事業計画を立てて実行する場合に、その事業計画で利用するRPAツールは補助の対象となります。

【小規模事業者持続化補助金の概要】

項目

詳細
制度の目的

小規模事業者や個人事業主等の販路開拓および業務効率化の取組を支援する

補助上限額

通常枠:50万円(100万円)

特別枠:200万円(250万円)

※()はインボイス特例適用時

補助率

2/3

(要件を満たす場合は3/4)

対象経費

①機械装置等費

②広報費

③ウェブサイト関連費

④展示会等出展費

⑤旅費

⑥新商品開発費

⑦資料購入費

⑧借料

⑨設備処分費

⑩委託・外注費

RPAツールの導入事例

【宿泊業】

人手不足のため、無人営業ができる予約管理システムを導入。

それに伴い、毎月の予約とアンケート結果を自動で集計するRPAツールも導入

【フォトスタジオ】

季節のDMを送る際、より精度の高いエリアと層に絞ることを検討。

過去の問い合わせや顧客のデータからマーケティング資料を制作する際、RPAツールを導入

【ネット通販事業】

Google経由で訪れるユーザーの分析資料を作成し、ECサイトの更新に役立てる。

担当者の時間短縮のため、毎日決まった時間にレポート作成をするRPAツールを導入

【法律事務所】

残業を減らすため、毎月決まった役員報酬の計算にRPAツールを導入

参考:小規模事業者持続化補助金の公式サイト

たとえば、宿泊事業の場合、人員不足のために無人営業ができる予約管理システムを導入するとします。その際、RPAツールを導入すると、予約管理システム上で取得できる予約情報とアンケート結果をロボットに管理・集計させることが可能です。

小規模事業者持続化補助金でRPAツールが補助対象となる条件は、販路拡大や生産性向上に役立つ使い方をされることです。小規模事業者が通常の業務に使用するためのRPAツールは補助対象として認められない点に留意しましょう。

なお、小規模事業者持続化補助金の概要を確認したい人は、「小規模事業者持続化補助金とは?対象者や活用例をわかりやすく解説」を参考にしてみてください。

ものづくり補助金では革新的サービスや生産性向上のためのRPAツールが対象

ものづくり補助金では、革新的サービスや製品開発、試作品開発、生産性向上のためのRPAツールが対象です。RPAツールはパソコンで行う作業をロボットが人の代わりに行うため、発注書や見積書の作成などに役立てることができます。

【ものづくり補助金の概要】

項目

詳細
制度の目的

生産性向上につながる設備投資等にかかる費用の一部を支援する

補助上限額

最大1億円

※申請枠や事業規模により異なる

補助率

1/3~2/3

※申請枠や事業規模により異なる

対象経費

  • 機械装置・システム構築費
  • 運搬費
  • 技術導入費
  • 知的財産権等関連経費
  • 外注費
  • 専門家経費
  • クラウドサービス利用料
  • 原材料費
  • 海外旅費
  • 通訳・翻訳費
  • 広告宣伝・販売促進費
RPAツールの導入事例

【製造業】

職人の間接作業を減らすため、受発注に使えるRPAツールを導入

【印刷業】

品質を求められる医療用印刷物を受注するにあたり、印刷物チェックにより時間を取られることになった。

パソコン内のフォルダ整理や入稿データチェックのためRPAツールを導入

【税理士事務所】

手書き文字をOCRで読み取り、読み取ったデータを分析するためにRPAツールを導入

参考:ものづくり補助金公式サイト

たとえば、製造業の場合、職人が製品をつくる時間を確保するため、RPAツールを導入しました。RPAツールを導入した結果、職人がこれまで行ってきた受発注をロボットが行うことで、職人の間接作業の時間が短縮されました。

ものづくり補助金でRPAツールは、機械装置費の一環として、補助金の目的に沿っていれば補助されます。ただし、機械装置費は単価50万円以上の設備投資と共に行われる必要があり、RPAツールのみでは対象外となる可能性がある点に留意しましょう。

働き方改革推進支援助成金は従業員の休息時間確保の取り組みとしてRPAツールを導入できる

厚生労働省が管轄の「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」では、労務管理用機器やソフトウェアの導入が補助されます。事業者がシフト制や夜間勤務などで従業員を雇っていて、従業員の休息時間確保に取り組む場合に必要となるRPAツールが補助対象となる可能性があります。

【RPAツールを申請できる働き方改革推進支援助成金の概要】

補助対象となる取組み  補助上限額 補助率

① 労務管理担当者に対する研修
② 労働者に対する研修、周知・啓発
③ 外部専門家によるコンサルティング
④ 就業規則・労使協定等の作成・変更
⑤ 人材確保に向けた取組
⑥ 労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器、デジタル式運行記録計の導入・更新
⑦ 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新

50万円~120万円
※従業員に休息を与える時間数により異なる

3/4または4/5

参考: 働き方改革推進支援助成金|厚生労働省

たとえば、ホームページや旅行サイトからのキャンセル情報をExcelでまとめていたホテルが、RPAツールの導入により作業を自動化した事例があります。ホテルが成果目標として従業員の勤務後に9時間以上の休息時間を設定するなら、助成の対象となる可能性があります。

働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)では、勤務後に9時間~11時間の休息を与える「成果目標」の設定が必要です。RPAツールは従業員の休息への取り組みの一環であり、あくまで従業員の休息が主となる助成金であると理解しておきましょう。

RPAツールの導入に利用できる自治体の補助金もある

自治体が運営する補助金にも、RPAツールの導入が対象となる制度があります。自治体の補助金にはさまざまな種類があり、RPAツールの導入を目的としているものや、デジタルツール導入の一環としてRPAツールが対象とあるものなどがあります。

RPAツールの導入に利用できる自治体の補助金のひとつとして、東京都が実施している「中小企業デジタルツール導入促進支援事業」が挙げられます。都内の中小企業におけるデジタルツールの導入を支援する制度であり、業務効率化のためのRPAツールの導入などに対して最大半額(上限100万円)が補助されます。

RPAツールを対象とする自治体の補助金は、該当の自治体で事業を行う事業者が対象です。RPAツールを導入したい事業者は、事業所を管轄する自治体のホームページや相談窓口を活用し、RPAツールが対象となる補助金があるかどうかを確認してみましょう。

まとめ

RPAツールが対象となる国の補助金には、「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」「ものづくり補助金」「働き方改革推進支援助成金」などがあります。それぞれ制度の目的や対象が決められており、その目的や対象に合った取り組みを実施する事業者に対して補助金が支給されます。

また、RPAツールが補助対象となる制度には、都道府県や市区町村の自治体が独自に実施しているものもあります。自治体の補助金は管轄の地域において事業を実施する事業者が対象となるため、自治体のホームページや相談窓口を利用して自身が利用できる補助金が実施されているかどうかを確認してみてください。

テレワークの導入に使える補助金を解説

テレワークの導入を検討している人の中には、できるだけ費用を抑えてテレワークを始めたい人もいますよね。その際、国や自治体の補助金を使いたいという人もいるでしょう。

当記事では、テレワークの導入時に使える補助金の種類と対象を解説します。それぞれの補助金が向いている事業者や向いていない事業者も紹介するので、補助金でテレワークを始めたい人は当記事を参考にしてみてください。

テレワークの導入に使える補助金には事業者向けと個人向けがある

テレワークに使える補助金には、企業向けと個人向けの補助金があります。テレワークの導入に補助金を利用したいと考えている人は、企業向けと個人向けの補助金ではそれぞれ制度の目的が異なることを前提として覚えておきましょう。

【テレワークの導入に利用できる補助金と助成金一覧】

対象者 制度 制度の目的
事業者
  • 企業におけるテレワーク環境の整備
  • 従業員の働き方改革の推進

個人
  • 地域への移住・定住促進
  • 地域経済の活性化

 

テレワークの導入に利用できる事業者向けの補助金のひとつとして、厚生労働省が実施する「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」が挙げられます。テレワークを新たに導入する事業者と導入済みのテレワークの実施拡大をはかる事業者を対象に、テレワークに必要な通信機器等の導入や従業員への研修にかかる費用の一部が補助されます。

また、テレワークの導入に利用できる事業者向けの補助金のひとつとして、大阪府河内長野市が実施する「テレワーク移住支援補助制度」が挙げられます。人口減少対策や地域経済の活性化につなげることを目的とし、市内に転入してテレワークを実施する世帯を対象に1世帯当たり10万円が一括支給されます。

テレワークの導入に利用できる補助金や助成金は、事業者向けか個人向けかによって制度の目的に違いがあります。目的の違いから申請の条件や対象となる経費も異なる傾向にあるため、補助金や助成金の申請を検討している人は申請したい制度の募集要項などを確認して、希望に合う内容かどうかを確認しましょう。

なお、補助金と助成金はどちらも返済不要の支援金を受給できる制度ですが、それぞれ異なる特徴もあります。補助金と助成金の違いについて知りたい人は「補助金と助成金の違いは?相違点と共通点からそれぞれの傾向を解説」の記事を参考にしてみてください。

事業者向けの補助金における対象経費

テレワーク導入に利用できる事業者向けの補助金における対象経費は、制度の目的である「テレワーク環境の整備」や「働き方改革の推進」などにつながる取り組みに必要となる経費です。事業者向けの補助金では、事業においてテレワークを実施できる体制を整えるためのさまざまな経費が補助対象となります。

【事業者向けの制度における対象経費】

制度 対象経費
IT導入補助金
  • テレワークに必要なITツール(ソフトウェア・ハードウェア)の導入費用
  • ITツールの導入にかかるコンサル・研修費用
  • 導入するITツールの保守サポート費用
人材確保等支援助成金(テレワークコース)
  • テレワーク用通信機器等の導入・運用費用
  • 労働者への研修費用
  • 外部専門家によるコンサルティング費用
  • 就業規則・労使協定等の作成・変更費用
テレワーク助成金
  • テレワークに必要なモバイル端末等機器整備費用
  • テレワークに必要なシステム機器等の設置・設定費用
  • システム機器等の保守委託等の業務委託料
  • 機器リース・レンタル料
  • テレワーク業務関連ソフト利用料
  • システム導入時運用サポート費用
テレワーク定着強化奨励金

以下の取り組みに対して一律で奨励金を支給

  • フレックスタイム制度の導入
  • 中抜け時間制度の導入
  • 複数の時間帯から選択できる勤務制度の導入
  • テレワークなどと組み合わせた時差出勤制度の導入
  • 有給休暇における時間単位での取得の導入
札幌市働き方改革テレワーク導入補助金
  • 事業所に設置するテレワーク用ネットワーク構築のための機器購入費
  • 事業所に設置する会議用モニターやWeb カメラ等の購入費
  • 就業規則等の改正に係る費用
  • 在宅勤務等の実施者が使用するPCやプリンターの購入費

厚生労働省が実施する「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」は、テレワークを実施するために必要となる通信機器の導入費用や、テレワークの導入にともなう従業員への研修費用などが補助されます。新たにテレワークを導入する事業者だけでなく、すでにテレワークを導入し実施を拡大したいと考える事業者も対象です。

また、東京都が実施する「テレワーク定着強化奨励金」は、テレワークの導入とともにフレックスタイム制度の実施や有給休暇の時間単位での取得など、従業員の働き方改革につながる取り組みを支援しています。テレワーク定着強化期間中における1人当たりの週のテレワーク実施回数に応じて、最大40万円の奨励金が支給されます。

テレワークの導入に利用できる事業者向けの補助金にはさまざまな制度があり、導入した設備や利用したサービスの料金の一部が補助されるもののほか、テレワーク導入の取り組みに対して一律の補助金を受け取れるものもあります。制度によって対象となる経費の条件が異なるため、テレワークの導入に補助金の利用を検討している人は自身の用途に合った制度を探しましょう。

個人向けの補助金における対象経費

テレワーク導入に利用できる個人向けの補助金における対象経費は、テレワークを目的とする移住や、ワ―ケーションを目的とした宿泊にかかる費用です。個人向けの補助金では、転居や宿泊をともなうテレワークの実施に対して補助金や助成金が支払われる傾向にあります。

【個人向けの制度における対象経費】

制度 対象経費

ワーケーション実証費用助成金

町内の宿泊施設でワ―ケーションを実施する際の宿泊費
リモートワーク支援金
  • インターネット通信環境整備費
  • 通信費
  • 住宅賃貸契約諸費、家賃
  • レンタルオフィス等利用料
  • 県外の本店等へ赴く際の交通費(所属企業が認める場合に限る)
テレワーク移住支援補助制度

テレワークの実施を目的として市内へ転入した世帯へ一律の補助金を支給

高松市テレワーク移住補助金

県外から移住しテレワークを実施する世帯へ一律の補助金を支給

北海道上川郡新得町が実施する「ワ―ケーション実証費用助成金」は、余暇を楽しみながら仕事を行う「ワ―ケーション」を実施するために町内の宿泊施設を利用する際の宿泊費が補助対象です。町の関係者との交流会への参加やSNSでの情報発信を条件に、1泊当たり最大5,000円が補助されます。

また、秋田県が実施する「リモートワーク支援金」では、県内への移住をともなうテレワークを実施する人を対象に、テレワークを実施するための通信費やレンタルオフィスの利用料などが最大3年間にわたり補助されます。移住後1年度目においては、インターネット通信環境整備費や住宅賃貸契約諸費、家賃なども補助対象です。

テレワークの導入に利用できる個人向けの補助金にはさまざまな制度があり、導入した設備や利用したサービスの料金の一部が補助されるもののほか、転居をともなうテレワーク実施世帯に対して一律の補助金が支給されるものもあります。制度によって対象となる経費の条件が異なるため、テレワークの導入に補助金の利用を検討している人は自身の用途に合った制度を探しましょう。

サテライトオフィスの設置に利用できる補助金もある

テレワークの導入と関連するものとして、本社から離れた場所にある小規模なワークスペースである「サテライトオフィス」の設置に利用できる補助金もあります。物価の高騰による家賃の値上げの回避や従業員の通勤の利便性を考慮する場合は、サテライトオフィスの導入に使える補助金の利用も検討してみましょう。

【サテライトオフィスの導入を支援する補助金】

東京都が実施する「サテライトオフィス設置等補助金(サテライトオフィス設置コース)」の場合、23区外に建てるサテライトオフィスの家賃や運営費が補助対象です。サテライトオフィスの設置における整備・改修費が最大2,000万円、運営費が最大800万円が補助されます。

また、鳥取県が実施する「とっとり先駆型ラボ誘致・育成補助金」の場合、サテライトオフィスの設置や運営のための費用が補助対象です。「事業所改修・賃借費」「機器設備取得・賃借費」「通信費」などの対象経費が、最大200万円まで補助されます。

補助金の中には従業員に在宅ワークをさせるときだけでなく、他県へ企業のサテライトオフィスを設置するときに利用できる制度もあります。オフィスの維持費を軽減したい場合や従業員の働きやすい環境づくりに取り組みたい場合は、公的な補助金を使ってサテライトオフィスを設置することも検討してみましょう。

まとめ

テレワークの導入に利用できる補助金や助成金には、事業者向けの制度と個人向けの制度があります。それぞれ制度の目的や対象となる経費が異なるため、テレワークの導入に補助金を利用したいと考えている人は、自身の目的に合った制度を選ぶ必要があります。

事業者向けの補助金には、経済産業省が実施する「IT導入補助金」や厚生労働省が実施する「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」などがあります。テレワークの実施において必要となる設備導入や研修費用が対象となる傾向にあります。

個人向けの補助金には、地方自治体が実施するさまざまな補助金があります。自治体の管轄する地域への転居や宿泊をともなうテレワークを実施する際に、転居費用や宿泊費が対象となる傾向にあります。

なお、本社とは別の場所に設置する小規模なワークスペースである「サテライトオフィス」の設置に導入できる補助金もあります。テレワークや働き方改革につながる取り組みのひとつとして、サテライトオフィスの設置も選択肢のひとつとして検討してみてください。