中小企業省力化投資補助金を解説

2024/04/26

2023/12/19

この記事の監修

株式会社SoLabo田原広一

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原 広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

2024年3月29日に中小企業省力化投資補助金の公募要領が公開されました。中小企業省力化投資補助金は、中小企業や小規模事業者が設備投資に活用できる補助金です。

当記事では、中小企業省力化投資補助金を解説します。設備投資を検討している中小企業や小規模事業者は、参考にしてみてください。

なお、当記事は中小企業省力化投資補助金の「公式サイト」をもとに作成しています。

中小企業省力化投資補助金は人手不足解消を図るための補助金

中小企業省力化投資補助金は、人手不足の解消と生産性向上を図る取り組みを補助する制度です。人手不足を解消できる製品を導入して、賃上げにつなげることが目的です。

【中小企業省力化投資補助金の公募内容】

項目 詳細
目的 人手不足を解消できる製品の導入や生産性向上を図る取り組みを実施し、賃上げにつなげること
対象者 中小企業や小規模事業者
導入できるもの 人手不足を解消するロボットやIoT機器
補助上限額 【従業員数5人以下】
200万円(300万円)
【従業員数6~20人以下】
500万円以下(750万円)
【従業員数21人以上】
1,000万円以下(1,500万円)
※賃上げの目標をした場合は()の数字に引上げ
補助率 1/2以下
補助金を受け取るまでに必要なこと
  • 製品を「製品カタログ」から選ぶ
  • 付加価値額や生産性を向上させる事業計画をたてる
  • 販売事業者と共同申請する
  • 付加価値額や生産性を向上させる事業を実施する
  • 実績を報告する など

参考:「公募要領」|中小企業省力化投資補助金公式サイト

中小企業省力化投資補助金では、補助対象の人手不足を解消する製品として「製品カタログ」に導入できる機器が掲載されています。「製品カタログ」に掲載されている製品を導入することで購入費や導入費を補助してもらえるため、コストを抑えて新たな体制へと移行できます。

従業員の減少や人手不足による残業時間の増加などに悩んでいる事業者は、中小企業省力化投資補助金を活用できます。2024年4月22日時点で詳しいスケジュールは公開されていないため、申請を検討している人は中小企業省力化投資補助金の「公式サイト」で最新情報をこまめに確認してください。

なお、補助金は申請してすぐに受け取れるわけではありません。付加価値額や生産性向上を図る取り組みを実施してから補助金を受け取るため、取り組みにかかる経費は一旦自己負担する必要があります。

人手不足解消につながるロボットやIoT機器を導入できる

中小企業省力化投資補助金は、人手不足解消につながるロボットやIoT機器が導入できます。申請者は「製品カタログ」に記載している製品の中から、自社の人手不足解消につながる製品を選択します。

【中小企業省力化投資補助金で導入できる製品】

機器カテゴリ 対象業種 対象業務プロセス
①清掃ロボット 宿泊業、飲食サービス業 施設管理
②配膳ロボット 宿泊業、飲食サービス業 配膳・下膳
③自動倉庫 製造業、倉庫業、卸売業、小売業 保管・在庫管理、入出庫
④検品・仕分システム 製造業、倉庫業、卸売業、小売業 資材調達、加工・生産、検査、保管・在庫管理、入出庫
⑤無人搬送車(AGV・AMR) 製造業、倉庫業、卸売業、小売業 資材調達、加工・生産、検査、保管・在庫管理、入出庫
⑥スチームコンベクションオーブン 飲食サービス業、宿泊業、小売業 調理
⑦券売機 飲食サービス業 注文受付
⑧チェックイン機 宿泊業 受付案内、予約管理、請求・支払、顧客対応
⑨自動精算機 飲食サービス業、小売業 請求・支払

参考:「製品カタログ」|中小企業省力化投資補助金公式サイト

たとえば、飲食サービス業が清掃ロボットを導入する場合、清掃ロボットの購入費用と導入費用が補助されます。導入費用には、設置や運搬作業、動作確認や設定などが含まれます。

中小企業省力化投資補助金において導入する製品は、製品カタログから選ぶ必要があります。製品カタログには、保守およびサポート費用の目安や販売事業者の情報も掲載されるため、申請予定の人は導入する製品の情報を確認し、自社に合った製品を選択しましょう。

補助の対象外となる製品もある

中小企業省力化投資補助金では、販売事業者が製品カタログに登録した製品以外は補助の対象外となります。申請を検討している人は「製品カタログ」から自社の人手不足を解消する製品を選択しましょう。

【補助の対象外になる製品】

製品本体の費用 ①製品の購入費用に、申請者の顧客が負担する費用を含んでいるもの(売上原価に相当するもの)
②対外的に無償で提供されているもの
③リース・レンタル契約の製品
④中古品
⑤交付決定前に購入した製品
⑥公租公課(消費税)
⑦本事業の目的・趣旨から適切でないと中小企業庁及および中小機構並びに事務局が判断するもの
導入費用 ①交付決定前に発生した費用や、補助事業実施期間外に発生した費用
②過去に購入した製品に対する作業費用や、補助対象経費ではない製品に対する費用
③省力化製品の導入とは関連のないデータ作成費用や、データ投入費用等
④省力化製品の試運転に伴う原材料費、光熱費等
⑤補助事業者の通常業務に対する代行作業費用
⑥移動交通費・宿泊費
⑦委託・外注費
⑧申請者の顧客が負担する費用が導入費用に含まれるもの(試作を行うための原材料費に相当するもの)
⑨交付申請時に金額が定められないもの
⑩対外的に無償で提供されているもの
⑪補助金申請、報告にかかる申請代行費
⑫公租公課(消費税)
⑬本事業の目的・趣旨から適切でないと中小企業庁および中小機構並びに事務局が判断するもの

参考:「公募要領」|中小企業省力化投資補助金公式サイト

中小企業省力化投資補助金において導入する製品は、人手不足を解消し、付加価値額や生産性を向上させる事業を行う中で活用されるものである必要があります。そのため、補助事業(補助金を活用する事業)以外の事業で活用する製品は、補助の対象外となります。

なお、中小企業省力化投資補助金において、交付決定前に購入した製品は補助の対象外となります。公募要領には「いかなる理由であっても事前着手は認められない」旨の記載があるため、製品の購入や導入は交付決定後に行いましょう。

対象者は中小企業や個人事業主

中小企業省力化投資補助金の対象者は、中小企業や個人事業主です。中小企業の定義は、業種ごとに異なるため、申請を検討している人は、自社が対象者にあてはまるかを確認しておきましょう。

【中小企業の定義】

業種 資本金
(以下)
従業員
(以下)
製造業、建設業、運輸業 3 億円 300人
卸売業 1 億円 100人
サービス業
(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)
5,000万円 100人
小売業 5,000万円 50人
ゴム製品製造業
(自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く)
3 億円 900人
ソフトウェア業または情報処理サービス業 3 億円 300人
旅館業 5,000万円 200人
その他の業種(上記以外) 3 億円 300人

参考:「公募要領」|中小企業省力化投資補助金公式サイト

たとえば、飲食サービス業は「サービス業」にあてはまります。サービス業は資本金が5,000万円以下、もしくは従業員が100人以下であれば申請の対象です。

また、宿泊業と旅館業の分類は異なり、宿泊業は「サービス業」に該当します。自社の業種がどの項目にあてはまるのか知りたい人は、総務省の「日本標準産業分類」を確認してみてください。

なお、中小企業や個人事業主であっても、会社の意思決定権を大企業等がもっている「みなし大企業」に該当する場合は申請の対象外です。中小企業省力化投資補助金へ申請予定の人は、自社がみなし大企業に該当しないか公募要領(P10)で確認しましょう。

補助上限額は申請する企業の従業員数によって異なる

中小企業省力化投資補助金の補助上限額は、従業員数によって異なります。申請予定の人は、事業計画をたてる際に補助対象経費の金額を計算し、自社が事業を実施した場合に受け取れる金額の目安を把握しておきましょう。

【補助上限額と補助率】

従業員 補助金 補助上限額
5人以下
1/2以下
200万円(300万円)
6~20人以下 500万円以下(750万円)
21以上
1,000万円以下(1,500万円)
※()内の数字は、賃上げ目標を達成した場合に引き上げられる金額

参考:「公募要領」|中小企業省力化投資補助金公式サイト

たとえば、従業員が20人の中小企業が補助対象経費400万円を申請した場合、1/2のため最大で200万円が補助されます。補助上限額が200万円であるため、補助対象経費が500万円であっても、補助される額は200万円までとなります。

事業計画をたてる際に賃上げ目標を設定した申請者は、賃上げ目標を設定していない事業者と比べて補助金を多く受け取れます。ただし、賃上げ目標を設定したにもかかわらず目標を達成できなかった場合、補助額は減額されます。

補助上限額や補助率は、申請者の企業規模や事業計画の内容によって異なります。自社の事業計画に対して補助金がいくら受け取れるのか知りたい人は、補助対象経費や従業員数を用いて計算してみてください。

なお、交付決定を受けた申請者であっても、申請した経費の全額が補助されるとは限りません。審査によって経費と認められないものが申請されている場合や、賃上げ目標が未達成の場合など、減額される可能性もあることに留意して申請を検討しましょう。

採択されるためには要件を満たす事業計画をたてる

中小企業省力化投資補助金に採択されるためには、事業の要件を満たす事業計画をたてることが求められます。そのため、事業計画をたてる際は、事業の要件をすべて満たしているかの確認が必要です。

【補助対象事業の要件と補助対象外となる事業】

補助対象事業の要件 (1)導入する省力化製品に紐付けられた業種のうち少なくとも1つ以上が、補助事業者の営む事業の業種と合致すること
(2)カタログに登録された価格以内の製品本体価格・導入経費を補助対象として事業計画に組み込むこと
※補助額の範囲外で、自費により経費を追加することは認められる
(3)労働生産性の向上目標を設定し、その実現に向けて取り組むこと
(4)補助上限額の引き上げを行う場合、賃上げの目標を設定し、その計画を従業員に対して表明するとともに、その実現に向けて取り組むこと
(5)省力化製品を登録されている業種・業務プロセス以外の用途に供する事業ではないこと
(6)労働生産性の向上にかかる目標を合理的に達成することが可能な事業計画に沿って実施されること
(7)効果報告期間が終了するまでの間、省力化製品の導入を契機として、自然退職や自己都合退職によらない従業員の解雇を積極的に行わないこと
(8)補助額が500万円を超える場合、保険への加入を行うこと
(9)既に所有する製品の置き換えを行うものではないこと
(10)GビズIDプライムを取得していること
補助対象外となる事業 (1)省力化製品を登録されている業種・業務プロセス以外の用途に供するもの
例)業種:飲食業、業務プロセス:調理として登録されている省力化製品を、家事のために使用するもの
(2)不動産賃貸(寮を含む)、駐車場経営、暗号資産のマイニング等、実質的な労働を伴わない事業または主に資産運用的性格の強い事業
(3)建築または購入した施設・設備を自ら占有し、事業の用に供することなく、特定の第三者に長期間賃貸させるような事業
(4)取り組む事業が1次産業(農業・林業・漁業)である事業
(5)主として従業員の解雇を通じて労働生産性を向上させる事業
(6)公序良俗に反する事業
(7)法令に違反するおよび違反する恐れがある事業並びに消費者保護の観点から不適切であると認められる事業
(8)風俗営業等の規制および業務の適正化等に関する法律第2条各項に規定する営業を営む事業
(9)暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条に規定する暴力団または暴力団員と関係がある中小企業等による事業
(10)申請時に虚偽の内容を含む事業
(11)その他制度趣旨・本公募要領にそぐわない事業

参考:「公募要領」|中小企業省力化投資補助金公式サイト

たとえば、飲食店を営む事業者が「製品カタログ」に載っているスチームコンベクションオーブンを飲食店で活用する場合は、補助の対象となります。しかし、飲食店ではなく、家事に活用する場合は補助の対象外となります。

製品カタログに載っているロボットやIoT機器は、登録されている業種や業務プロセス以外で活用すると補助の対象外となります。要件を満たさないと審査で不採択になる可能性があるため、製品を選ぶ際は実施する補助事業に適した製品を選択してください。

なお、補助事業の要件は中小企業省力化投資補助金の公式サイトにある公募要領(P17)に記載されているため、事業計画をたてる際に必ず確認しましょう。

申請を検討している人は補助金を受け取るまでの流れを確認する

中小企業省力化投資補助金への申請を検討している人は、事前に補助金を受け取るまでの流れを確認しておきましょう。補助金を受け取るには、審査や各種手続き、事業計画の実施が必要です。

【補助金を受け取るまでの流れ】

  • GビスIDイムアカウントの取得
  • 要件を満たす事業計画の作成
  • 保険への加入(補助金の額が500万円以上:必須、500万円未満:推奨)
  • 販売事業者と共同で交付申請を実施
  • 人材不足を解消し、付加価値額や生産性を向上させる事業の実施
  • 効果報告 など

参考:「公募要領」|中小企業省力化投資補助金公式サイト

申請には「GビズIDプライムアカウント」というアカウントが必要です。アカウントをもっていない人は取得が必要ですが、書類を郵送した場合は約2週間、オンラインであれば最短で即日に発行されるため、すぐにアカウントを発行したい人はオンライン上で取得できます。

また、中小企業省力化投資補助金への申請手続きは、導入する製品の販売事業者とともに進める必要があります。申請者は、導入したい製品を「製品カタログ」から選び、製品の販売事業者に交付申請をする旨を連絡してから、共同申請を行います。

申請の手続きには、事業計画の作成や販売事業者への連絡など、時間を要する手続きがあります。申請を検討している人は、全体の流れを確認して余裕をもったスケジュールで申請に臨みましょう。

なお、中小企業省力化投資補助金では、補助金を受け取った後も事業状況の報告が必要です。初回を含めた計6回1年ごとに、導入した製品の稼働状況や事業計画の達成状況を伝える義務が発生するため、申請予定の人は補助金を受け取った後も手続きがあることに留意して申請を検討してください。

まとめ

中小企業省力化投資補助金は、人手不足の解消と生産性向上を図る製品の導入を補助する制度で、賃上げにつなげることを目的としています。人手不足の解消のために製品の導入を考えている人は、中小企業省力化投資補助金の活用を検討してみてください。

導入する製品は、補助対象となる製品が記載されている「製品カタログ」の中から選びます。人手不足を解消するロボットやIoT機器が選択でき、製品の購入費や設置費および運搬費などの導入費が最大半額補助されます。

事業計画で賃上げ目標を設定した場合は、補助額を引き上げることができます。中小企業省力化投資補助金へ申請を検討している人は、事業の要件や補助金を受け取るまでの手続きを公募要領で確認し、無理のない事業計画を作成しましょう。

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