SDGsの取り組みに活用できる補助金を解説

事業者向けの補助金の中で、「SDGs」を実現するための取組に活用できる制度があります。「SDGs」とは、環境、差別、貧困といった世界のさまざまな課題を解決し、より良い世界をつくるために設けられた世界共通の17の目標のことです。

当記事では、SDGsの取組に活用できる補助金を解説します。補助金を活用してSDGsの取組を行うことを検討している人は参考にしてみてください。

補助金を活用して取り組めるSDGsの目標がある

補助金を活用して取り組めるSDGsの目標があります。まずは、SDGsの17の目標における取組例を把握した上で、補助金をどのように活用できるのか確認してみましょう。

【SDGsの17の目標と取組例】

SDGsの目標

取組例

目標1 貧困をなくそう

自立支援、無償の医療支援 等

目標2 飢餓をゼロに

子ども食堂、栄養改善の支援 等

目標3 すべての人に健康と福祉を

感染症対策に向けて製品開発 等

目標4 質の高い教育をみんなに

教育支援 等

目標5 ジェンダー平等を実現しよう

労働環境改善、社内託児所の開設 等

目標6 安全な水とトイレを世界中に

節水設備の導入、途上国にトイレを提供 等

目標7 エネルギーをみんなにそしてクリーンに

再生可能エネルギー発電設備の導入、持続可能なエネルギーの開発 等

目標8 働きがいも経済成長も

働き方改革 等

目標9 産業と技術革新の基盤をつくろう

インフラ整備 等

目標10 人や国の不平等をなくそう

労働環境改善、障がい者雇用 等

目標11 住み続けられるまちづくりを

防災への取組 等

目標12 つくる責任つかう責任

リサイクル可能な素材の使用、食品ロスの削減対策 等

目標13 気候変動に具体的な対策を

省エネ設備導入、環境に配慮した製品開発 等

目標14 海の豊かさを守ろう

海洋汚染対策、プラスチックごみの削減の取組 等

目標15 陸の豊かさも守ろう

植樹活動の取り組み、持続可能な森林経営 等

目標16 平和と公正をすべての人に

労働環境改善、学習支援事業 等

目標17 パートナーシップで目標を達成しよう

国際交流に係る取組 等

参考:SDGs17の目標|SDGsクラブ(公益財団法人日本ユニセフ協会)

たとえば、中小企業における働き方改革を目的とする補助金があります。働き方改革への取り組みは持続可能な経済成長が期待できるため、SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」の達成につながる可能性があります。

また、カーボンニュートラルの実現を目的とした補助金があります。カーボンニュートラルの実現に向けた取組は、脱炭素化が期待できるため、SDGsの目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」やSDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」の達成につながります。

なお、補助金によってはSDGsの目標の中で、複数の目標達成を目指す取組が必要となる場合があります。自社が達成を目指せる目標を指定しているかどうか、補助金の公式サイトにて確認しておきましょう。

エネルギーをみんなにそしてクリーンに

SDGsの目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」の取組に活用できる補助金があります。補助金を活用して目標達成を目指すことで、エネルギー問題の解決につながります。

【補助金を活用したSDGsの目標達成に向けた取組例】

  • 再生可能エネルギー発電設備の導入
  • 省エネ設備導入 等

たとえば、再生可能エネルギー発電設備の導入に利用できる補助金があります。太陽光発電設備などを導入することにより、発電時に地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出を抑えられることから、SDGsの目標の施策「事業活動で使用する電力を再生可能エネルギーに切り替え」を実施できます。

また、省エネ設備導入に利用できる補助金があります。省エネ設備導入を導入することによりエネルギーの消費量を減らし、エネルギー効率の向上につながることから、SDGsの目標の施策である「二酸化炭素(CO2)の排出量を抑えること」を実施できます。

SDGsの目標のひとつである「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」のための取組には、再生可能エネルギー設備の導入や省エネ設備の導入などがあります。省エネ設備を導入することによって、二酸化炭素の排出量を削減し、地球温暖化の抑制につながるでしょう。

働きがいも経済成長も

SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」の取り組みに活用できる補助金があります。「働きがいも経済成長も」は、持続可能な経済成長および誰もが平等に働きがいを持ち、人間らしい働き方(ディーセント・ワーク)の実現が目的で設定された目標です。

【補助金を活用したSDGsの目標達成に向けた取組例】

  • 労働時間の短縮
  • 最低賃金の引き上げ
  • 雇用環境や業務体制整備
  • 研修制度の導入
  • 処遇の改善 等

たとえば、労働管理ソフトの導入費用の一部が支援される補助金があります。労務管理ソフトの導入により業務効率化が可能となることから、労働時間の短縮や従業員のモチベーション向上につながり、働きがいのある人間らしい仕事(ディーセントワーク)を実現できます。

また、社内などで実施した研修にかかる費用の一部が支援される補助金があります。研修制度を導入することで、従業員のスキルが向上し、平等に活躍できる職場となり、SDGsの施策である「労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進」につながります。

補助金を活用して、「働きがいも経済成長も」の取組を行うことで、自社の抱える労働環境の問題を解決できる場合があります。従業員が働きやすい職場環境づくりに取り組むことにより、従業員の働きがいが向上し、離職率の低下につながる可能性があります。

産業と技術革新の基盤をつくろう

SDGsの目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の取組に活用できる補助金があります。「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、暮らしを支えるインフラを整え持続可能な産業の発展と技術革新の促進という目的のもと、設定された目標です。

【補助金を活用したSDGsの目標達成に向けた取組例】

  • 資源利用効率が向上する生産方法の改善
  • 環境に配慮した技術・産業方法を導入
  • 廃棄物の発生を抑える製品を開発 等

たとえば、SDGsの目標に向けて新製品を開発する際にかかる費用の一部が支援される補助金があります。資源を繰り返し利用するための装置を導入することで、限られた資源の使用量を抑えられ、環境に配慮した生産方法を取り入れることができ、持続可能な産業化につながる可能性があります。

また、再生可能エネルギーを活用する機械の開発費などの一部が支援される補助金があります。再生可能エネルギーを活用する機械の開発を行うことで、クリーンで環境に配慮した技術や産業方法を取り入れることができ、技術革新の促進につながる可能性があります。

補助金を活用して、生産方法の改善や技術を開発することによって業務の効率化にも取り組めます。業務効率化となるほかに、生産方法の改善を行い資源を繰り返し利用する場合、資源にかかるコストを削減することができます。

住み続けられるまちづくりを

SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」の取り組みに活用できる補助金があります。「住み続けられるまちづくりを」は、地域の過疎化や環境問題を解決し、誰もが安全で快適に暮らし続けられるまちをつくることを目標としています。

【補助金を活用したSDGsの目標達成に向けた取組例】

  • 地域活性化を促進する事業
  • 雇用機会が特に不足している地域での事業所の設置や従業員の雇用
  • 再生可能エネルギー発電設備の導入
  • 省エネ設備導入 等

たとえば、補助金を活用して、雇用機会が特に不足している地域に事業所を設置し従業員を雇用することができます。地域に事業所を設置し雇用機会を創出することにより、地域の過疎化を防ぎ、人手を増やすことができるため従業員の負担を軽減できる可能性があります。

また、補助金を活用して、再生可能エネルギー発電設備を導入することができます。再生可能エネルギー発電設備を導入することにより、環境に配慮したエネルギーに切り替えられ「住み続けられるまちづくりを」に挙げられている大気汚染の問題の解決につながります。

SDGsの目標のひとつである「住み続けられるまちづくりを」の取組には、人材雇用や省エネ設備の導入などがあります。補助金を活用して人材雇用や省エネ設備の導入を行うことで、事業所が抱える人手不足などの問題解決やエネルギーコスト削減につながる可能性があります。

つくる責任つかう責任

SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」の取組に活用できる補助金があります。「つくる責任つかう責任」は、持続可能な消費と生産を目指した目標です。

【補助金を活用したSDGsの目標達成に向けた取組例】

  • フードロスの削減につながる機械装置の開発
  • 資源を長期的に使用できるものにする取組
  • 廃棄物リサイクル 等

たとえば、急速冷凍機の開発費用の一部が支援される補助金があります。急速冷凍機を開発することで、解凍後でも冷凍前と変わらない品質を維持することができ、長期保存が可能となるためフードロスの削減につながります。

また、花をドライフラワーにする機械装置の導入費用の一部が支援される補助金があります。ドライフラワーにすることで、生花の廃棄を減らすことができ、コストの削減や持続可能な消費を可能にすることができます。

補助金を活用することにより、費用を抑えて廃棄を減らすための機械装置導入や技術開発に取り組むことが可能です。フードロスや資源廃棄の削減に取り組むことは、SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」の実現につながるでしょう。

SDGsの取組に活用できる補助金の具体例

国や自治体が実施する補助金の中には、SDGsの取組に活用できる制度があります。それぞれの補助金は、管轄や活用する用途などが異なることに留意しておきましょう。

【SDGsの取組に活用できる補助金の具体例】

補助金名

特徴

省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金

(環境省)

省エネ設備導入・脱炭素目的の燃料転換を伴う設備導入等に要する費用の一部を支援する補助金

事業再構築補助金

(経済産業省)

新分野展開、業態転換、事業・業種転換等といった事業再構築の取組にかかる費用の一部を支援する補助金

※低炭素技術の活用等を行った場合、書面審査にて加点される可能性あり

SDGs債発行支援事業補助金

(東京都)

SDGs債の発行支援を行う事業に要する経費の一部を補助する制度

※環境省が実施する指定補助金の交付決定を受けた者のみが申請者として認められる

カーボンニュートラル創エネ促進補助金

(愛知県)

再生可能エネルギー発電設備等を導入する費用の一部を支援する補助金

SDGs推進ネットワーク連携促進補助金

(岐阜県)

SDGs推進ネットワークの会員が実施するSDGsの普及啓発の取組に要する費用の一部を支援する補助金

京丹後市商工業支援補助金

(京都京丹後市)

SDGsの達成および脱炭素社会実現に寄与する環境・経済・社会の3側面の課題に総合的に取り組む事業に対し費用の一部を支援する補助金

中小事業者持続化及びSDGs推進補助金

(群馬県)

SDGsの目標8・9・11・12を対象とした取組に要する費用の一部を支援する補助金

中小企業等SDGs推進事業補助金

(広島県福山市)

SDGsの目標の視点を踏まえて行う新製品開発にかかる経費の一部を補助する制度

両立支援等助成金

(厚生労働省)

育児休暇や介護休業などの制度の導入といった就業環境整備に取り組む際にかかる費用の一部を支援する制度

働き方改革推進支援助成金

(厚生労働省)

労働時間短縮等を行った際にかかる就業規則・労使協定の作成・変更等の費用の一部を支援する制度

たとえば、環境省が運営する「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」では、4つの申請事業に分かれています。それぞれ申請要件は異なり、電化・脱炭素燃転型では、指定設備の中で電化や脱炭素目的の燃料転換を伴う設備導入などの費用の一部が補助されます。

また、東京都が運営する「SDGs債発行支援事業補助金」は、SDGs債発行時の発行支援を行う事業に要する経費の一部を補助する制度です。SDGs債とは、SDGsの目標達成に貢献する事業の資金調達のために発行される債券のことです。

SDGsの取組に活用できる補助金には、SDGsの目標を達成することを目的に設けられた制度のほか、省エネ化や脱炭素の取組を支援し、結果としてSDGsの実現につながる制度もあります。補助金を活用して、SDGsの取組を行う場合、自社に合った補助金があるのかどうか探してみましょう。

まとめ

事業者向けの補助金の中には、SDGsの目標達成に貢献する取組に活用できる制度があります。SDGsとは、より良い世界をつくるために設けられた世界共通の17の目標のことです。

SDGsの目標はおもに環境、差別、貧困といった世界にある課題を解決するためであり、各目標はそれぞれ目標の内容が異なっています。日本の企業でも、補助金を活用して自社が抱える課題を解決しながらSDGsの目標達成に貢献することが可能です。

事業者向けの補助金には、国や自治体が実施する制度があります。それぞれ活用できる用途や申請要件などが異なるため、SDGsの取組に活用できる自社に合った補助金を選びましょう。

補助金の不正受給に関する事例と罰則を解説

近年、補助金や助成金など、国や各都道府県の支援金制度における不正受給が問題視されています。不正受給をした場合、当然ながら補助金支給の取り消しや返還となり、相当の罰則を受けることになります。    

当記事では、補助金の不正受給に関する事例と罰則を解説します。不正受給のリスクや防止策も交えて解説するので、補助金の適正な使い方を確認しておきたい人や、トラブルを未然に防ぎたい人は参考にしてみてください。

補助金や助成金の不正受給に該当する事例

補助金や助成金の不正受給にあたる行為とはどのような内容が該当するのか、事例を確認してみましょう。内容によっては、不正に該当すると気づかずに申請や補助事業を進めてしまう可能性もあるため、不正に該当する事項をあらかじめ確認しておくことが重要です。

【不正受給とみなされる事例】

不正項目

内容

虚偽申告

補助金申請時に虚偽の情報を記載して多く受け取る行為

架空の経費計上

実際に支出していない経費を偽りの請求書などで申請

虚偽の実績報告

補助金受給後、実際の活動や結果を偽って報告

補助金の目的外使用

補助金を指定された目的以外に使用すること

二重申請・二重受給

同じ事業や経費で複数の補助金を申請・受給

関係者間取引の偽装

架空または不当な金額での取引により経費を水増し

不適切な事業計画変更

事前許可なく事業内容を変更して補助金を使用

従業員の名義貸し

実際に雇用していない従業員の名義で申請

外注費の水増し

実際に行っていない外注業務の費用を偽装して申請

その他の書類不備・不正な手続き

書類の改ざんや期限未遵守などの不正行為

補助金や助成金の不正受給で罰則の対象になるのは「故意」に行った虚偽の申請や架空の経費計上などの不正行為です。たとえば、経費の水増しや書類の改ざんなどは、故意的な不正行為であることが明確であり、発覚した場合には補助金の全額返金に加え、罰則の対象となる傾向があります。

一方で、確認不足や誤解によって発生した事例は「過失」とみなされ、正しく補助金の返還手続きを行えば、罰則は科されない可能性があります。たとえば、条件をよく確認せずに、同じ経費に対して異なる補助金や助成金を申請し、結果的に二重受給となってしまった場合は過失とみなされる傾向があります。

また、補助金の利用条件や用途の理解不足により、誤って条件外の支出をしてしまった場合なども過失に該当する傾向があります。

補助金の不正受給には「故意」と「過失」の違いがあり、過失の場合は速やかに返還手続きを行えば罰則を避けられる傾向にあります。しかし、もとより不正受給のトラブルを防ぐためには、申請する補助金や助成金の条件やルールを漏れなく確認しておくことをおすすめします。

虚偽申請と虚偽報告

虚偽申請と虚偽報告は、補助金の申請時や受給後の報告時に、事実と異なる内容を意図的に記載して不正に補助金を受け取る行為です。虚偽の申請や報告は故意の不正行為であるため、補助金の返還だけでなく、法律で定められた罰則の対象となります。

たとえば、地域振興のための補助金を申請する際、申請書に「地元の特産品を活用した観光施設を運営する」と記載しておきながら、実際には地域振興とは関係のない小売店を開業するのは、明らかな虚偽申請です。

また、ITシステム開発の補助金では、事業開始時に一部が支給され、進捗に応じて残りが分割で支払われる場合があります。実際には開発が進んでいないのに「プロトタイプが完成した」と虚偽報告をして、次の支払いを受けようとする行為も故意の不正に該当します。

補助金の虚偽申請や虚偽報告は、本来支援を受けるべき事業者に不利をもたらし、補助金制度全体の信用を損ないます。不正行為は厳しく罰せられるため、補助金の申請や報告は必ず正確な情報に基づいて行いましょう。

架空の経費計上と水増し

架空の経費計上と水増しは、実際に発生していない経費を偽って申請し、補助金を不正に受け取る行為です。補助金は、実際にかかった経費を支援するために給付されるため、架空の経費を計上したり、金額を水増ししたりすることは不正とみなされ、厳しい罰則が科されます。 

たとえば、外部業者への委託費用を本来の50万円から100万円に水増しして請求書を偽造し、補助金を申請するケースが挙げられます。また、実際には行っていない研修やセミナーの費用を計上し、その経費を偽って補助金を受け取ろうとする行為も架空の経費計上に該当します。

さらに、取引先に協力してもらい、実際より高額な請求書を発行させ、その額をもとに補助金を多く受け取ろうとする場合、取引先が不正に関与していたと判断されれば、取引先にも罰則が及ぶ可能性があります。

架空の経費計上や水増しの不正行為は、他の事業者が本来受けるべき支援を妨げるだけでなく、制度全体の信頼を失わせます。補助金申請の際には、実際の支出に基づいた正確な経費報告を徹底しましょう。

従業員の名義貸し

従業員の名義貸しとは、実際には雇用していない従業員の名義を使って補助金を申請し、不正に受け取る行為です。名義貸しは、故意に行われる不正行為とみなされ、罰則の対象となります。

たとえば、新規雇用に対する補助金を申請する際、実際には雇用していない人物の名義を使い、新たに5人を雇用したと偽って補助金を受け取ることは明らかな不正です。また、雇用契約を結んでいない家族や知人の名前を利用して従業員数を水増しする場合、全額返還に加えて罰金が科される可能性があります。

さらに、補助金の加点を得るために、実際には働いていない知人を新規従業員として申請したり、短期間だけ形式的に雇用契約を結んだりして、実態のない雇用を装う行為も不正受給に該当します。

補助金の申請時に従業員の名義貸しを行うことは、不正行為として厳しく罰せられます。不正を防ぐため、申請時には雇用実態を丁寧に確認し、正確な記載と事実に基づいた報告を徹底しましょう。

二重申請・二重受給

二重申請・二重受給とは、同じ事業や経費に対して複数の補助金や助成金を申請し、重複して受け取る不正行為です。複数の補助金制度では、他の補助金や助成金と併用できない規定があり、申請時のルールブックである「公募要領」にてその旨が記載されています。

たとえば、ある設備投資に対してA補助金を申請した後、同じ設備を対象にB補助金を申請・受給する場合は不正受給に該当します。また、同じ経費に対して異なる自治体の補助金や助成金を申請することも同様に不正とみなされます。

不正受給の対象となることを知らずに、同一の事業や経費を複数の補助金に申請してしまった場合でも、結果として不正受給とみなされ、補助金の不支給となる場合や返還を求められる場合があります。ただし、異なる事業の経費を申請する場合は二重申請とは判断されないため、複数の補助金に応募する際は、違う事業計画に基づく経費を申請しましょう。

書類改ざんや期限未遵守

書類改ざんや期限未遵守は、補助金の申請や報告において不正行為とみなされます。補助金の申請や報告時には、正確で信頼性のある情報を提供することが求められており、書類の改ざんや期限を守らない行為は制度の公正さを損なうため、罰則の対象となります。

たとえば、補助金の交付決定前に経費を使うことは基本的に認められていません。そのため、交付決定前に購入した物品や契約した経費の日付を交付決定後に改ざんして申請する行為は、不正受給に該当します。

申請書類の内容を都合よく書き換えることも書類改ざんに当たります。補助金の適正な審査を行うためには、すべての申請者が正確な情報を提供してルールを遵守することが重要となるため、申請書類や実績報告書には事実に基づいた内容を記載しましょう。

不正受給のリスクを把握しておく 

補助金や助成金の不正受給が発覚した場合、事業者や関係者に対して罰則が科されます。2019年4月以降、法改正により不正受給に対する処罰が厳格化され、不正に関与した社会保険労務士や代理人も罰則の対象となりました。

不正受給によってどのようなリスクが伴うのかを把握しておきましょう。

【不正受給にともなうリスク】

リスク項目

内容

延滞金の発生

不正受給した金額に対して年3%程度の延滞金が請求される

違約金の請求

不正受給額の20%相当の違約金が上乗せされ、追加で納付が必要となる

事業所名の公表

事業主名、事業所名、所在地、不正受給の内容などが公表され、信用を失う恐れがある

刑事告発の可能性

特に悪質な場合には詐欺罪などで刑事告発されるリスクもある

補助金・助成金の5年間申請停止

不正受給後、5年間は補助金や助成金の申請ができなくなる

社会保険労務士などへの罰則

不正に関与した社労士や代理人も連帯責任を問われ5年間補助金・助成金の申請ができなくなる

不正受給が確認されると、受給した助成金の全額返還に加えて、年3%程度の延滞金や不正受給額の20%に相当する違約金が請求されます。また、企業名が公表されるため、取引先や金融機関からの信用を失い、最悪の場合、取引停止や融資停止に至る可能性もあります。

さらに、悪質なケースでは詐欺罪などで刑事告発される可能性もあります。たとえ知識不足により意図せず不正を行ってしまった場合でも、全額返還や罰則の対象となる可能性があります。不正受給のリスクを理解し、適切な補助金や助成金の活用を心がけましょう。

不正が発覚する経緯

不正受給の発覚は、労働局による調査に限らず、内部告発や提出書類の内容の不一致、外部業者からの情報提供など、さまざまな経緯で明るみに出る可能性があります。常に予期せぬ調査や情報提供が行われるため、不正が隠し通せるという考えは危険です。

【不正が発覚する原因】

発覚の原因

内容

労働局の抜き打ち調査

・労働局職員が事前連絡なしに事業所を訪問
・出勤簿や給与記録、オフィスの実態などを詳細に調査する

従業員へのヒアリング

・労働局が会社を通さず、従業員に調査を実施
・電話やアンケートによる調査で事業所の実態を確認する

従業員や関係者からの内部告発

・社員や退職者、取引先などが不正を通報することで発覚
・特に信頼を損なった従業員からの内部告発が増加傾向

関連書類の不一致

・提出した書類の内容が、過去に申請した他の助成金の書類と矛盾している
・出勤簿、給与規則の内容などが過去の申請と食い違っている

悪徳業者の関与による調査

・外部業者が関与して不正受給した場合に別案件からの調査で発覚
・業者に騙された場合でも事業主に責任が問われる

たとえば、2020年には、新型コロナウイルス関連の助成金の不正受給が多数報告されました。元従業員や取引先からの内部告発で発覚するケースが多く、実際に休業していないのに助成金を受け取っていた企業が明らかになった事例がニュースでも報道されました。

また、2021年には助成金申請をサポートすると称して不正を助長していたコンサルタント業者が摘発されました。不正受給のアドバイスを行っていた企業が助成金を受給した際に捜査が進み、他の案件でも不正に関与していたことが明らかになり、関わった企業も摘発されました。

不正受給は必ず発覚するリスクがあります。補助金や助成金を申請する事業者は、適正な手続きと報告を行い、不正の疑いを生じさせないようにしましょう。

補助金適正化法違反の罰則を受けることになる

補助金や助成金の不正受給が発覚した場合、補助金適正化法違反の罰則を受けることになります。国民の税金が原資である補助金や助成金は、当然ながら嘘偽りなく適正に活用されなければなりません。

【補助金適正化法違反の罰則】

違反内容

主な罰則の内容

不正受給
(補助金適正化法第29条)

・5年以下の懲役または100万円以下の罰金
・詐欺罪として刑事告発されるリスクも高い

目的外利用
(補助金適正化法第30条)

・補助金交付決定の取り消し、全額返還、延滞金の発生
・3年以下の懲役または50万円以下の罰金

参考:補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律|厚生労働省

たとえば、不正受給の事例では、実際には存在しない従業員を雇用したと偽り、助成金を申請することが挙げられます。この場合、補助金適正化法第29条に基づき、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。

また、目的外利用の事例では、事業拡大のための補助金を本来の目的とは関係のない物品の購入やほかの事業の運転資金に使用する行為などが考えられます。この場合、補助金適正化法第30条により、補助金交付決定の取り消しや全額返金、さらに3年以下の懲役または50万円の罰金が科される可能性があります。

補助金適正化法では、補助金の利用目的を正確に守る必要性や、虚偽の申請を許さない旨が定められています。法律違反に対しては罰金や懲役などの罰則を科される可能性があるため、申請内容を十分に確認し、適正な使途での利用を徹底することが不正受給の防止策となります。

補助金の不正受給に科される罰則

補助金適正化法第29条では、補助金の不正受給に対する罰則が定められています。不正な手段によって補助金を受け取った場合、5年以下の懲役や100万円以下の罰金、あるいはその両方が科される可能性があります。また、不正であることを知りつつ補助金の交付に関与した者も、同様の罰則を受けることとなります。

【補助金適正化法第29条】

項目

内容

違反対象

偽りその他不正な手段による補助金の受給、または間接的な補助金の交付・融通を受けた場合

罰則内容

5年以下の懲役、または100万円以下の罰金、もしくはその併科

関与者への適用

不正受給であることを知りながら交付や融通を行った者も同じ罰則の対象

主な不正行為の例

・実施していない活動を行ったと虚偽の報告をして補助金を受給
・雇用していない架空の従業員を申告書に記載して助成金を受給
・売上を偽り、事業規模に見合わない補助金を申請・受給

具体的なリスク

刑事告発のリスク、企業や個人の信用失墜、社会的制裁

「偽りその他不正の手段」には、申請書類や添付資料の改ざん、虚偽の記載などが含まれます。たとえば、2017年に発覚した森友学園の事例では、補助金不正受給の疑いで理事長夫妻が逮捕・起訴されました。約1億7千万円の補助金をだまし取ったとして詐欺罪に問われており、不正受給の重大さを示す一例です。

補助金の不正受給には、罰金や懲役などの厳しい罰則が科されます。また、不正が発覚すれば、企業の信用失墜や事業停止に追い込まれることも想定されます。補助金は事業活動の一助となる重要な資金だからこそ、適正な利用と申請を徹底しましょう。

補助金の目的外利用に科される罰則

補助金適正化法第30条では、補助金の目的外利用に対して厳格な罰則が設けられています。補助金を他の用途に使用することは、3年以下の懲役または50万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。

【補助金適正化法第30条】

項目

内容

違反対象

補助金を指定された用途以外に使用した場合

罰則内容

3年以下の懲役、または50万円以下の罰金、もしくはその併科

主な不正行為の例

・設備投資のために受け取った補助金を車両購入費に充てる
・人財育成のための補助金を研修費用として受け取り、社内イベントや懇親会の費用に流用
・事業拡大のための補助金を従業員の給与や賞与に充てる

具体的なリスク

補助金の全額返還、法的な罰則、企業や個人の信用失墜

「目的外利用」に該当する行為には、補助金を本来の用途以外に使用することが含まれます。たとえば、IT導入補助金を受け取った際に、本来は生産性向上のためのソフトウェアや機器の購入に使うべき資金を、事務所の改装に充てる行為は目的外利用に該当します。

補助金の目的外利用は不正行為に該当するため、補助金の利用目的を変更したい場合は、補助金事務局に変更申請を申し出る必要があります。変更申請が承認されない場合は、本来の補助事業目的以外の補助金利用が認められず、違反した場合は処罰の対象になることを把握しておきましょう。

不正受給に該当する場合は早期に自主返還の手続きを行う

不正受給が発覚した場合、早期に自主返還の手続きを行う必要があります。労働局の調査前に自主申告し、不正を速やかに報告することで、事業主名の公表や違約金の支払いなどの罰則を回避できる可能性があります。

【自主返還の手続き内容】

自主申告の事項

ポイント

労働局や事務局への連絡

不正受給の事実を速やかに申告することが重要

書類の提出

不適正な事実がわかる書類を提出する

調査中の申告

調査中であることを含めて申告する必要がある

補助金や助成金を不正または不適正な内容で受給したことに気づいた場合は、まず速やかに都道府県労働局や補助金の事務局に連絡し、必要な手続きを確認します。労働局や事務局の指示に従い、必要書類を準備する必要があります。

自主返還の手続きをできる限り迅速に行うことで、補助金の取消や返還以外のペナルティを軽減し、企業の信頼を維持することにつながります。特に「調査中だが不適正な部分が見つかった」と申告する場合には、自主的な対応として評価される可能性があります。

補助金や助成金の不正受給にはさまざまな事例がある中、申請の条件の確認不足により「本来は受けられない支援金を受け取ってしまった」といった故意ではない事例も存在します。不正や不適正な受給が疑われる場合は速やかに自主返還を行い、信頼回復に努めましょう。

補助金や助成金の不正受給に関する相談先

不正受給に関する相談先は、補助金・助成金の事務局や労働局、地方公共団体の窓口などです。迅速に適切な相談先に連絡することで、自主変異間の手続きを円滑に進め、事業主名の公表や罰則を回避できる可能性が高まります。

【不正受給に関する相談先】

相談内容

主な相談先

専門家の支援内容

自主返還に関する相談

・補助金、助成金の事務局
・地方公共団体の相談窓口
・労働局

<弁護士>

・返還手続きの方法提示
・必要書類のアドバイス
・刑事罰リスクへの対処

過失による不正受給の相談

・支給機関の相談窓口
・商工会、商工会議所
・認定支援機関

<弁護士、税理士、公認会計士>

・事実関係の整理
・説明準備
・税務、会計の知識共有

たとえば、補助金や助成金を不正または不適正に受給してしまった場合、まずは、補助金事務局や労働局に連絡し、受給の経緯や状況を詳細に説明することが必要です。

また、書類の準備や今後の対応方法などに関しては、専門家に相談することにより具体的なアドバイスを受けられます。

不正受給が疑われる際は、補助金事務局や労働局に連絡し、自主返還の手続きを迅速に行いましょう。その際、弁護士や税理士などの専門家には、事実関係の整理やリスク回避の方法も相談できるため、必要に応じてアドバイスを受けることを検討してみてください。

まとめ

近年、補助金や助成金の不正受給が問題視されています。不正受給は、事業者に対して重大な罰則を科される可能性があります。補助金適正化法では、不正受給に該当する行為が明確に定められており、企業の信用失墜や法的措置につながるリスクがあります。

不正受給の具体的な事例には、虚偽申請や架空経費の計上、従業員の名義貸し、経費水増しなどがあります。これらの行為は厳しく罰せられるため、補助金を申請する事業者は、適正な利用と報告を徹底することが求められます。また、不正を未然に防ぐためには、申請条件やルールをしっかり確認しておくことが重要です。

万が一、不正受給が疑われる場合には、速やかに自主返還の手続きを行うことが推奨されます。補助金事務局や労働局に連絡し、迅速に手続きすることで、事業主名の公表や罰則を回避できる可能性が高まります。必要に応じて専門家からのアドバイスを受けながら、確実に自主返還の手続きを進めてください。

補助金と助成金の違いを項目別に解説  

補助金や助成金の申請を検討している人の中には、補助金と助成金の違いについて疑問に思う人もいるのではないでしょうか?当記事では、補助金と助成金の違いを、項目別に比較しながら解説します。補助金と助成金は何が違うのかを知りたい人は参考にしてみてください。

なお、補助金と助成金をいくつかの項目別に比較するとそれぞれ違いは確認できるものの、明確な定義はありません。そのため、双方の「傾向」という視点で理解し、実際には補助金の特色に近い内容の助成金や、その逆の支援制度もあることを留意しておいてください。

補助金と助成金の相違点

補助金と助成金はどちらも資金調達に利用できる制度ですが、目的や管轄などの項目ごとにそれぞれの傾向を比較することにより、相違点が見えてきます補助金と助成金を項目別に比較し、どのような特徴や違いがあるのかを確認してみましょう。

【補助金と助成金の比較項目】

項目 補助金 助成金

目的

  • 政策目標の達成
  • 産業振興
  • 特定事業の支援
  • 社会的支援
  • 雇用促進
  • 労働環境の改善

管轄

  • 経済産業省
  • 厚生労働省

財源

  • 国や自治体の予算
  • 雇用保険料

受給の難易度

  • 申請要件を満たし、採択審査に通過することが必須
  • 申請要件を満たせばほぼ給付される傾向

公募期間

  • 一定期間のみ公募
  • 通年申請可能
支給額の相場
  • 数十万円~数億円
    (会社や事業の規模に応じて変動)
  • 数万万円~数百万円
    (雇用や支援活動に応じて変動)

支給期間

  • 一度の支給で終了
  • 継続的に支給される傾向

たとえば、補助金の主な管轄は経済産業省や中小企業庁で、産業振興や地域活性化などの目的を支援することを目的としています。一方、助成金は主に厚生労働省が管轄しており、雇用促進や職場環境の改善などの支援を目的としています。

また、補助金は、予算や採択件数が限られているため、競争率が高く、審査に通過するためには質の高い事業計画や経費計画を示す必要があります。一方、助成金の場合は、要件を満たしていれば給付される傾向にあります。

補助金と助成金を比較すると、補助金は「経済的な取組みへの支援」に重点を置き、助成金は「社会的な課題解決への支援」に重点を置いている傾向があります。両制度の目的を把握すると、その概念によって管轄や財源などの違いも理解しやすくなるため、まずは補助金と助成金の目的を詳しく確認しましょう。

制度の目的

補助金と助成金は、それぞれ特定の目的に基づいて支給されます。補助金は政策目標や産業支援を通じて経済成長を促進することを目的とし、助成金は社会的な支援や雇用の向上を目的としている傾向があります。

【補助金と助成金の支援内容】

補助金
支援項目 対象となる事業内容
販路開拓
  • マーケティング活動や広告戦略の強化
  • 展示会出展
  • 海外市場進出 など

事業再編

  • 経済変化に対応した事業転換
  • M&A
  • 非中核事業の分割・統合など

商品開発

  • 新製品や新サービスの研究開発
  • プロトタイプの製造
  • 地域特産品の開発

DX化

  • ITツール導入
  • 業務の自動化
  • デジタル技術活用による生産性向上

地域活性化

  • 観光地の整備、地域特産品のブランディング
  • 地域イベントの開催
  • 雇用創出

助成金

支援項目 対象となる事業内容

雇用促進

  • 障がい者や高齢者の雇用
  • 新卒や若年者の採用支援
  • 特定地域や産業の雇用創出を目的とした活動

職場環境の改善

  • 労働環境の改善
  • 安全対策や健康増進
  • 産業医の配置やメンタルヘルス対策
  • 福利厚生の向上

福祉支援

  • 育児や介護を支援する制度の導入
  • ワークライフバランスを支える環境づくり
  • 育児・介護休業制度の整備

地域社会支援

  • 地域での人材確保や職場定着支援
  • 地域コミュニティにおけるボランティア活動
  • 地域特化型の雇用支援プログラム

補助金は、産業支援を目的としているため、企業や個人事業主が売上向上や事業再建などの取り組みを行う際に活用できる傾向があります。たとえば、新商品開発に向けた機械装置の購入費や、新事業実施に向けた事業所や店舗の改装費などに補助金を使えます。

一方で、助成金は、従業員の雇用促進や職場環境の改善を行う際に活用できる傾向にあります。たとえば、就職氷河期で正規雇用に就けなかった人を「トライアル」という形態で雇用し、使用期間を経て正社員に登用する場合にも助成を受けることができます。

補助金と助成金の支援目的は、補助金と助成金における相違点のひとつです。目的の違いを理解することで、補助金・助成金の管轄や、制度を実施するための「お金の出どころ」なども見えてくるため、双方の違いを確認してみましょう。

管轄と財源

補助金と助成金は、それぞれ管轄する機関や、実施に必要な財源に違いがあります。事業活動や産業振興に対する経済的支援は「経済産業省」、雇用促進や少子高齢化対応といった社会的支援は「厚生労働省」が主に管轄している傾向があるためです。

たとえば、経済産業省や、経済産業省に属する中小企業庁は、企業や個人事業主を対象に、ものづくり、事業再建、IT導入などの補助金を提供しています。経済産業省の補助金の財源は、国や地方自治体の予算(税金)であり、国税や地方税として集められた税金が充てられます。

一方、厚生労働省は、育児・介護と仕事の両立を支援することや、企業年金制度の導入などをサポートする助成金を管轄しています。厚生労働省の財源は、主に事業者が支払う雇用保険の保険料であるため、雇用や従業員関連の取り組みに活用される経緯には納得がいきます。

補助金の管轄は主に経済産業省、助成金の管轄は主に厚生労働省です。補助金は税金を財源とし、予算内で支給されるため、予算が不足する場合には公募が行われない可能性もあります。現在公募されている補助金や助成金については、管轄省庁の公式ページで確認してみてください。

受給の難易度

補助金と助成金を比較すると、受給の難易度にも違いが見られます。補助金を申請した場合は、助成金に比べ、申請から受給までの工程が多いためです。

【補助金と助成金の申請から受給までの流れ】

補助金
工程 内容

①事前準備

  • 補助金の申請要件を満たしておく
  • 電子申請のアカウントを取得する

②申請

  • 電子申請や郵送申請などの申請方法がある
  • 作成した事業計画書や申請書類を提出する
③採択審査
  • 申請内容に基づき審査が行われ、優秀な事業計画が採択される
④採択
  • 公式サイトにて採択者発表後、メールや郵送での採択通知が届く

⑤交付申請

  • 採択者は見積書や図面などを提出し、交付申請を行う
  • 事務局による交付申請内容の確認後、交付決定通知が届く

⑥補助事業実施

  • 交付決定後、事業計画に基づいた補助事業を開始する
  • 実績報告で必要となる領収書、発注書、納品書などを保管する

⑦実績報告

  • 事業終了後に実績報告書を作成し、証ひょう(=証拠書類)とともに提出する
  • 証ひょう(領収書や発注書、購入商品の写真など)の整理がポイント

⑧確定審査

  • 報告書が承認され、最終的な支給額が決定される

⑨補助金の受給

  • 指定の銀行口座に補助金が交付される
助成金
工程 内容

①実施計画を策定

  • 助成金の要件に沿った実施計画を策定する
  • 雇用促進の助成金であれば、雇用予定者の職務内容や研修計画などをまとめる

②申請

  • 必要書類を提出し、助成金の申請を行う
  • 計画書、要件を満たす証明書(雇用契約書など)が求められる場合が多い

③計画の実施

  • 申請後、助成金の条件に沿って計画通りに活動を進める

④支給申請

  • 計画の取り組みが終了したら報告書類を作成し、支給申請を行う

⑤助成金の受給

  • 提出書類の内容が審査され、問題が無ければ口座に助成金が振り込まれる

たとえば、補助金を申請する場合、原則として「採択審査」が行われます。主に、申請時に提出した「補助事業計画書」や「経費計画書」などが審査され、優秀な内容から採択が決まります。不採択だった場合は以降の工程に進めず、補助金を受給することができません。

一方、助成金の場合は、各助成金制度で定められている要件を満たしていれば申請した計画を実施でき、実施後の手続きを経て助成金を受給できるという流れです。そのため、受給の難易度は助成金より補助金の方が高い傾向があります。

補助金や助成金を比較した場合、助成金の方が受給のハードルが低いと言えます。補助金は予算や採択件数があらかじめ決まっているため、審査に通過する競争率も高くなります。申請の際は、説得力のある事業計画書の作成がポイントになるため、事前準備に尽力しましょう。

公募期間と支給期間

補助金と助成金には、公募期間や支給期間の相違点があります。両制度の公募期間と支払われる期間にはそれぞれ特徴があるため、内容を確認してみましょう。

補助金と助成金の公募期間と支給期間】

補助金 助成金
公募期間 定められた期間内のみ公募される 通年で申請可能
支給期間 一度の支給で終了 継続的に支給される傾向
例:一定期間の雇用助成など
支給額の相場 数十万円〜数千万円
(規模に応じて変動)
数万円〜数百万円
(雇用や支援活動に応じて変動)

補助金は一度の大型プロジェクトや設備投資などの支援金が一度に交付され、数十万円から数千万円といったまとまった補助金額が支給されます。たとえば、飲食店の新規事業を開始するための店舗改装費や厨房設備費に対して250万円の補助金を一度に受給するイメージです。

一方、助成金は雇用維持や人材育成など継続的な取り組みを支援するために、数ヶ月から複数年にわたって分割して支給される傾向があります。たとえば、育児や介護と仕事の両立を支援する助成金で、30万円が休業取得時と職場復帰時の2回に分けて支給されるイメージです。

補助金の公募期間は数週間から数ヶ月と限られた期間が設定されているのに対し、助成金は通年で公募されていることが多い傾向にあります。申請する補助金や助成金の支給額や支給期間を知りたい場合は、各制度の公式サイトや公募要領を確認してみましょう。

相違点をおさえた人は共通点も確認しておく

補助金と助成金の相違点をおさえた人は、共通点も確認しておきましょう。相違点と共通点の両方を知っておくことで、制度をより理解しやすくなります。

【補助金と助成金の共通点】

  • 返済の義務がない
  • 原則的に後払い

補助金と助成金の共通点のひとつは、返済の義務がないことです。不正受給や事業計画の未達などの例外を除き、原則として返済義務のない収入として扱われます。

また、もうひとつの共通点として、補助金も助成金も原則として後払いで支給されます。申請した事業や計画の実施後に取り組み内容の審査が行われ、問題なく認められると入金されるという仕組みです。

補助金や助成金は、いずれも返済の義務なく受け取れる支援金です。また、入金時期は原則として後払いとなるため、まずは補助金や助成金の取り組みを実施する資金を準備しておきましょう。

まとめ

補助金は、産業支援を目的としており、企業や個人事業主が売上向上や事業再建などの取り組みを行う際に活用できる傾向があります。一方で、助成金は、社会的支援を目的としており、従業員の雇用促進や職場環境の改善を行う際に活用できる傾向があります。

補助金は主に経済産業省が管轄し、財源は税金であるため、予算内で支給が行われます。予算が不足する場合には、公募が行われないこともあります。対して、助成金は厚生労働省が主に管轄し、財源は事業者が支払う雇用保険料で賄われています。

補助金は予算や採択数が決められているため、競争率が高く、受給難易度も高い傾向です。一方で、助成金は要件を満たせば受給しやすいとされています。どちらも返済義務のない支援金ですが、事業や取り組みのための資金はあらかじめ準備しておくことが必要です。

助成金 社労士

助成金の申請を社労士へ依頼するときのポイントを解説

助成金の申請をする際には、社会保険労務士(以下、社労士)による申請サポートを利用できます。事業者が自分だけで申請することも可能ですが、社労士へ申請サポートを依頼することにより、専門家の視点からのアドバイスを受けながら書類作成や申請手続きを行うことができます。

当記事では、助成金の申請を社労士へ依頼するときのポイントを解説します。社労士以外にサポートを依頼することができない理由や、社労士に依頼することのメリット・デメリットもあわせて解説しているため、助成金への申請を検討している人は参考にしてみてください。

ポイントは複数の社労士を比較して選ぶこと

助成金の申請を社労士へ依頼するときのポイントは、複数の社労士事務所やコンサルティング会社を比較して選ぶことです。社労士によって「サポート内容」「報酬」「専門分野」「支援実績」などが異なるため、それぞれを比較することにより自社の希望に合う依頼先を選ぶことができます。

【申請代行の依頼先を選ぶときの比較項目】

項目

選び方のポイント

サポート内容

  • 依頼したいサポートをすべて実施しているか
  • 対面、オンラインなど希望する方法で相談できるか

報酬体系

  • 料金システムは明瞭か(着手金、成功報酬、成果報酬等)
  • 予算内であり、法外な料金設定がされていないか

専門分野

  • 業者の得意分野と依頼したい内容が合っているか
  • 社労士が在籍している、または社労士との提携があるか(コンサルティング会社の場合)

支援実績

  • 支援者の採択実績はどれくらいあるか
  • 過去の利用者からの評判や口コミはどうか

助成金の申請サポートの依頼先には、社労士事務所のほか、社労士が在籍または社労士と提携している民間のコンサルティング会社などがあります。「代理申請」や「書類の添削」など、どのようなサポートを受けたいのかを申請者自身が明確にしたうえで、複数の社労士を比較し自社の希望に合った依頼先を選びましょう。

なお、依頼にかかる報酬や手数料などの費用は、社労士ごとに異なります。費用の相場を一概にいうことはできませんが、他の社労士事務所やコンサルティング会社と比較して料金が段違いに高い場合や、料金システムが明瞭でない場合は助成金の申請代行をうたう悪質な業者である可能性があるため注意が必要です。

助成金の申請は社労士の独占業務

助成金の申請代行やサポート業務は社労士の独占業務に該当するため、社労士以外に補助金の書類作成や申請手続きを代行してもらうことはできません。社労士法では、社労士以外の者が事業として助成金の申請代行やサポート業務を行うことは認められていない旨が定められています。

【社労士法における独占業務に関する記載(要約)】

  • 社労士は次の事務を行うことを業とする(第二条)

 一号業務:労働および社会保険に関する法令に基づき行政機関等に提出する申請書等の作成、提出・申請代行等

 二号業務:労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成

  • 原則として、社労士以外の者が報酬を得て一号業務および二号業務を行ってはいけない(第二十七条)

      参考:社会保険労務士法(昭和四十三年法律第八十九号)第二条および第二十七条|e-Gov法令検索

      助成金はおもに厚生労働省が管轄する資金援助制度のことであり、人材雇用や労働環境の改善につながる取組に対して財政支援が行われます。助成金の申請代行やサポート業務は、社労士法に定められている「一号業務」に該当します。

      社労士は、社会保険や労務管理など人材に関連する法律の専門家であることから、助成金の申請代行やサポート業務は社労士の独占業務に指定されています。つまり、社労士の資格をもたない税理士や行政書士などの専門家には、助成金の申請を依頼することが認められていません。

      ただし、助成金の申請において、社労士からのサポートを受けることは必須ではありません。制度としての指定がない限りは、事業者が自分だけで助成金の申請をすることも可能であるため、各制度の申請方法を確認したうえで必要に応じて依頼を検討しましょう。

      社労士以外に依頼した場合は罰則が科される可能性がある

      万が一、社労士以外に助成金の書類作成や申請代行を依頼した場合は、社労士法違反として罰則が科される恐れがあります。社労士法の第六章「罰則」の項目において、違反した者には1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることが明記されています。

      また、社労士法における罰則以外にも「採択の取り消し」「今後の助成金申請への制限」「助成金の返還」「事業者名の公表」などさまざまなペナルティを受けるリスクがあります。事業者の信用にも関わる恐れがあるため、コンサル会社を通して助成金の申請サポートを依頼する場合は、申請書類の作成や申請代行にかかわる業務を社労士に対応してもらえるのかを事前に確認しておきましょう。

      なお、助成金以外の財政支援制度には「補助金」もありますが、厚生労働省の管轄ではない補助金は社労士法の対象外であるため、社労士以外からの申請サポートを受けることも可能です。補助金と助成金の違いを知りたい人は「補助金と助成金の違いは?」の記事も参考にしてみてください。

      社労士に申請を依頼するメリット

      助成金の申請において、申請代行やサポート業務の依頼は必須ではありませんが、社労士によるサポートを受けることにはさまざまなメリットがあります。助成金の申請を検討している人は、社労士に助成金の申請を依頼するメリットを確認してみましょう。

      【社労士に助成金の申請を依頼するメリット】

      • 採択の可能性を高められる
      • 申請にかかる時間と手間を軽減できる
      • 助成金に関わるさまざまなアドバイスを受けられる

      社労士に申請代行やサポート業務を依頼することのメリットには「採択の可能性を高められる」「申請にかかる時間と手間を軽減できる」「助成金に関わるさまざまなアドバイスを受けられる」などが挙げられます。これらのメリットと自社の状況を踏まえて、社労士にサポートを依頼するかどうかを判断してみてください。

      採択の可能性を高められる

      社労士に助成金の申請代行やサポート業務を依頼するメリットのひとつは「採択の可能性を高められること」です。専門家の視点からのアドバイスを受けることにより、不備のない書類を作成することにつながるためです。

      助成金は、申請要件を満たした上で必要な手続きを行うことにより支援金を受給できる制度ですが、申請内容に不備があった場合は助成金を受け取ることができません。社労士にサポートを依頼することにより、自分だけでは気付かない書類のミスや申請の不備を指摘してもらえる可能性があります。

      助成金申請の専門家である社労士に書類作成や申請手続きをサポートしてもらうことにより、申請不備となる可能性を最小限に抑えることができます。助成金の申請において、採択の可能性をできる限り高めたい人は、社労士によるサポートを受けることを検討しましょう。

      申請にかかる時間と手間を軽減できる

      社労士に助成金の申請代行やサポート業務を依頼するメリットのひとつは「申請にかかる時間と手間を軽減できること」です。助成金の申請にはさまざまな準備が必要となる傾向にありますが、社労士にサポートを依頼することにより、書類の作成や提出を代行してもらえるためです。

      制度によって内容は異なりますが、助成金の申請には交付申請書や事業計画書など、さまざまな書類を作成しなければなりません。特に、事業計画書は現在の事業状況や将来の展望も踏まえて実現可能な計画をたてる必要があるため、通常業務を行いながらの書類作成には相当な時間を要する可能性があります。

      社労士に申請サポートを依頼することにより、各種書類の作成を代行してもらうことができます。また、窓口での申請も社労士に任せることができるため、自分だけで申請手続きを進める場合と比較して申請にかかる時間と手間を軽減させることにつながります。

      なお、社労士に申請書類の提出を代行してもらう場合は、委任状の提出および身分証明書の提示を求められる可能性があります。事業主以外が助成金の申請を行う場合は、委任状や身分証明書など追加の書類が必要となる場合があるため、各制度における申請のルールを確認しておきましょう。

      助成金に関する幅広いサポートを受けられる

      社労士に助成金の申請代行やサポート業務を依頼するメリットのひとつは「助成金に関する幅広いサポートを受けられること」です。社労士に依頼できる業務は助成金の申請手続きだけではないため、助成金に関する幅広い相談に対応してもらうことも可能です。

      【社労士に依頼できるサポートの具体例】

      • 申請者の状況に適した助成金の提案
      • 助成金受給に向けた事業体制の整備に関するアドバイス
      • 助成金受給後の手続きサポート

      社労士に申請サポートを依頼することにより、申請者の状況に適したほかの助成金を提案してもらえる可能性があります。万が一、条件が合わずに助成金の申請ができない場合や申請した助成金が不採択となった場合でも、助成金の知識が豊富な社労士であれば、申請者に適したほかの助成金を提案してもらえることがあります。

      また、助成金受給に向けて、事業体制の整備に関するアドバイスをしてもらうことができます。助成金の申請において、就業規則の整備や社内環境の改善が必要となる場合には、労務管理の専門家である社労士からのアドバイスにより課題の発見や改善策の考案をスムーズに行えます。

      そして、助成金受給後の手続きまでサポートしてもらうことも可能です。制度によっては助成金を受給したあとも事業の実績報告などが必要となりますが、社労士にサポートを依頼することにより、助成金の受給後の各種手続きにかかる時間や手間を削減することにつながります。

      ただし、依頼できるサポートの範囲は社労士によって異なります。場合によっては希望のサポートを実施していないことや、追加の報酬が必要となることもあるため、助成金の申請業務以外にも依頼したいサポートがある場合は対応の可否や追加費用の有無を社労士へ直接確認しておきましょう。

      社労士に申請を依頼するデメリット

      助成金の申請を検討している人は、社労士に助成金の申請代行やサポート業務を依頼するデメリットも確認してみましょう。

      【社労士に助成金の申請のサポートを依頼するデメリット】

      • 報酬の支払いが必要となる
      • 社労士選びの手間が発生する

      社労士に申請サポートを依頼することのデメリットには「報酬の支払いが必要となる」「社労士選びの手間が発生する」などが挙げられます。これらのデメリットと自社の状況を踏まえたうえで、社労士にサポートを依頼するかどうかを判断してみてください。

      報酬の支払いが必要となる

      社労士に助成金の申請代行やサポート業務を依頼するデメリットのひとつは「報酬の支払いが必要となること」です。料金や社労士に申請サポートを依頼した場合、社労士に対して報酬を支払うことになるため、事業者が自分だけで申請する場合と比較して支出が増えることになります。

      報酬体系や料金は社労士事務所によって異なりますが、おおよその報酬相場を確認してみましょう。

      【社労士に助成金申請を依頼した場合の報酬体系と報酬相場】

      報酬体系

      概要

      報酬相場

      着手金型

      サポートの依頼に対して発生する費用。

      採択結果にかかわらず支払が必要

      5万円~20万円

      成功報酬型

      採択された場合のみ発生する費用。

      助成金受給額に対して一定の割合で設定されている

      受給額の10%~20%

      助成金の申請サポートにおけるおもな報酬体系は、サポートの依頼に対して料金が発生する「着手金型」や、採択された場合に助成金の受給額に対して一定の割合が報酬として発生する「成功報酬型」が用いられる傾向にあります。社労士事務所によっては、着手金型と成功報酬の両方が設定されている場合もあります。

      ほかにも、書類作成や申請代行など1件あたりの成果に対する金額をそれぞれ定めている「成果報酬型」や、申請サポートの費用を一律で定めている「固定報酬型」などの報酬体系をとっている場合もあります。報酬体系や設定金額に決まりはないことを念頭に置き、依頼先の料金システムの確認が必要です。

      なお、報酬の金額は助成金の種類や申請者の事業規模、依頼するサポート内容、申請する件数など、さまざまな要因によって変動します。報酬相場はあくまで目安のため、実際に助成金の申請サポートを依頼した場合にいくらの報酬が必要になるのか知りたい場合は、社労士へ見積もりを依頼してみてください。

      社労士選びの手間が発生する

      社労士に助成金の申請代行やサポート業務を依頼するデメリットのひとつは「社労士選びの手間が発生すること」です。顧問社労士など普段から付き合いがある社労士がいない場合、複数存在するコンサルティング会社や社労士事務所の中から自社に合った依頼先を選ぶ必要があります。

      自社に合った依頼先を選ぶためには、いくつかの判断軸をもとにコンサルティング会社や社労士事務所を比較してみましょう。

      【社労士を選ぶときの判断軸】

      • 報酬金額
      • サポート内容
      • 対応地域
      • サポート実績
      • 社労士の在籍や提携状況

      報酬金額やサポート内容、対応地域などは、依頼先によって異なります。初回の相談を無料で実施している場合もあるため、正式な依頼をする前に報酬の見積もりや社労士との相性などを確認することも可能です。

      また、過去のサポート実績や社労士の資格を持つスタッフの有無、社労士との業務提携状況などを踏まえて、信頼できる会社であるかどうかの見極めも必要です。助成金や補助金のコンサルティングをうたい、法外な報酬を要求する悪徳業者も存在しているため注意しなければなりません。

      なお、インターネットを通じて社労士を探す場合は「助成金 社労士 東京都」「社労士 沖縄県」など、地域名を組み合わせて検索することにより希望の地域でのサポートに対応している社労士を探せます。条件を指定して絞り込むことにより、効率よく希望に合う社労士を探しましょう。

      まとめ

      助成金の申請を社労士に依頼するときのポイントは、複数の社労士を比較して選ぶことです。社労士によって「サポート内容」「報酬」「専門分野」「支援実績」などが異なるため、それぞれの項目を比較することにより自社の希望に合う依頼先を選ぶことができます。

      また、助成金における申請書類の作成や書類提出の代行は社労士の独占業務であり、社労士以外に申請代行やサポート業務を依頼することは認められていません。万が一、社労士以外に助成金の申請を依頼した場合には、助成金を受け取れなくなるだけでなく社労士法違反として罰則が科される恐れがあります。

      助成金の申請は事業者が自分で行うことも可能ですが、社労士に申請サポートを依頼することは「申請者に合った助成金を提案してもらえる」「申請にかかる時間や手間を軽減できる」「助成金に関する幅広いサポートを受けられる」などのメリットがあります。

      しかし、社労士に依頼することは「報酬の支払いが必要となる」「社労士選びの手間が発生する」などのデメリットもあります。メリットとデメリットを踏まえたうえで、自社の状況に合わせて助成金の申請に社労士のサポートを依頼するかどうかを検討してみてください。

      補助金の申請代行を利用するときのポイントを解説

      補助金の利用を検討している人の中には、専門家やコンサル会社へ申請業務を委託する「申請代行」を利用したいと考えている人もいますよね。申請代行を利用できれば、補助金の申請にかかる時間や手間を大幅に削減できるでしょう。

      しかし、申請代行利用のルールは補助金によって異なります。場合によっては申請代行の利用が違法とみなされ、補助金を受け取れなくなることや罰則が科されることも考えられます。

      当記事では、補助金の申請代行を利用するときのポイントを解説しています。補助金を申請する際に、第三者からのサポートを受けることを検討している人は当記事を参考にしてみてください。

      ポイントは申請代行の利用の可否を確認すること

      補助金の申請代行を利用するときのポイントは、申請代行の利用の可否を確認することです。補助金を利用する際のルールは制度によって異なりますが、複数の補助金の公募要領において「申請手続きや書類作成は申請者自身が行うこと」という趣旨の記載があり、申請代行の利用が認められない傾向にあります。

      いくつかの補助金を例に、申請代行に関するルールを確認してみましょう。

      【補助金ごとの申請代行のルール】

      補助金名

      申請代行に関する記載

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      IT導入補助金の申請代行は可能なのかを解説

      ものづくり補助金

      • 正当な事由なく、申請者自身による申請と認められない場合には不採択となる

      ものづくり補助金の申請代行業者を選ぶポイントを解説

      小規模事業者持続化補助金

      • 代理申請は不正アクセスとなるため、一切認められない

      小規模事業者持続化補助金では申請代行の依頼は可能?

      事業再構築補助金

      • 事業計画は必ず申請者自身で作成すること
      • 作成自体を外部機関が行うことは認められない

      事業再構築補助金では申請代行を利用できる?

      補助金によっては、申請手続きや書類作成を申請者以外が代理で行うことが認められていないことがあります。申請代行が認められていないにもかかわらず申請手続きや書類作成の代行を利用した場合、規則違反としてその申請が不採択となるだけでなく、違反者として事業者名が公表されることや以後の公募においても申請ができなくなる恐れがあります。

      申請代行のルールは補助金ごとに異なるため、利用を検討している場合は各補助金の公募要領から申請代行に関する規定を確認しておきましょう。補助金の申請代行における違法性については「補助金の申請代行に依頼することは違法?の記事で詳しく解説しているため、あわせて参考にしてみてください。

      アドバイスやサポートを受けることは認められる

      補助金の申請手続きや書類作成を第三者へ委託する申請代行」が認められていない場合でも、専門家から申請に関するアドバイスやサポートを受けることは認められる傾向にあります。申請代行とはみなされない「申請サポート」では、どのようなサポートを受けられるのかを確認してみましょう。

      【専門家からの申請サポートの可否】

      サポート内容

      サポートの可否

      申請手続きをすべて代行してもらう

      ×

      電子申請のアカウント作成や入力を代行してもらう

      ×

      事業計画書を申請者の代わりに作成してもらう

      ※行政書士のみ可能な場合あり

      補助金の概要や申請方法の説明を受ける

      申請画面の操作方法の説明を受ける

      事業計画書へのアドバイスを受ける

      提出書類の内容を確認してもらう

      申請者が入力した電子申請の内容を確認してもらう

      原則として、申請手続きを第三者へ丸投げする「代理申請」は認められていませんが、制度に関する説明や書類作成へのアドバイスなど「申請サポート」を受けることは許可されている傾向にあります。第三者からのサポートを受けること自体に制限がない限り、申請者自身が行う手続き等への助言や確認は認められる可能性があります。

      また、補助金申請における書類作成の代行は、国家資格である「行政書士」のみ認められています。ただし、制度の規定として申請書類の作成を申請者本人が行うよう定められている場合は、行政書士であっても書類作成の代行を依頼することが不正とみなされる恐れがあります。

      申請サポートを依頼することにより、申請の不備を防ぐことや、申請にかかる時間を短縮することにつながります。補助金によって第三者からの申請サポートに関するルールは異なるため、サポートを受けることが許可されている範囲を確認した上で依頼を検討してみてください。

      申請代行やサポートの依頼先は制度ごとに異なる

      補助金の申請代行やサポートを行っている機関は「金融機関」「士業」「民間のコンサル会社」などさまざまです。第三者からのサポートを受けずに自分だけで申請できる補助金もありますが、補助金によっては申請代行やサポートの依頼先が指定されている場合があるため、事前に確認が必要です。

      たとえば、IT導入補助金の場合、「IT導入支援事業者」へサポートを依頼する必要があります。IT導入支援事業者はIT導入補助金の申請手続きやITツールの提供を行うことができる事業者であり、公募要領においてはIT導入支援事業者と協力して申請を進める必要がある旨が明記されています。

      また、小規模事業者持続化補助金の場合、「商工会議所」へサポートを依頼する必要があります。公募要領には「商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であること」と明記されており、一部書類の発行や補助事業への助言などを商工会議所へ依頼することが申請要件のひとつとなっています。

      そして、事業再構築補助金の場合、「金融機関」または「認定支援機関」へサポートを依頼する必要があります。申請要件のひとつとして「金融機関要件」が設けられており、申請の際に提出する事業計画の確認を、金融機関や認定支援機関へ依頼する必要がある旨が明記されています。

      ほかにも、補助金の各制度において申請代行やサポートの依頼先が指定されている可能性があります。補助金ごとに第三者からのサポートの必要性や依頼先の機関が異なるため、公式サイトや公募要領からルールを確認したうえで適切に申請代行やサポートを利用しましょう。

      助成金の申請代行は社労士の独占業務

      補助金と同じく返済不要の資金援助制度として「助成金」があります。補助金と助成金は性質が似ていることから混同されることもありますが、厚生労働省が管轄する助成金の申請代行は社労士の独占業務であることを前提として覚えておきましょう。

      社労士法では、社労士以外が実施できない独占業務のひとつとして「労働および社会保険に関する法令に基づき行政機関等に提出する申請書等の作成、提出、申請代行等」と定められています。厚生労働省は労働や社会保険を管轄する機関であり、厚生労働省が実施する助成金の申請代行は社労士の独占業務に該当するため、社労士以外に依頼することはできません。

      助成金の申請代行については「助成金の申請には社労士への依頼が必要?」の記事で詳しく解説しています。助成金の申請代行を依頼するメリットとデメリットも解説しているため、助成金の申請を検討している人はあわせて参考にしてみてください。

      なお、補助金と助成金に明確な区別はなく、厚生労働省以外が「助成金」という名称で実施している支援制度であれば社労士以外に申請代行やサポートを依頼できる場合があります。補助金や助成金の申請代行やサポートを依頼する場合は、制度ごとのルールを確認した上で適切な支援機関へ依頼しましょう。

      補助金の申請代行業者の選び方

      補助金の申請代行業者やサポート業者を選ぶときには、複数の業者を比較してみましょう。申請サポート業者によって「サポート内容」「報酬」「専門分野」「支援実績」などが異なるため、それぞれ比較することにより自社の希望に合う依頼先を選ぶことができます。

      【申請サポート業者を選ぶときの比較項目】

      項目

      選び方のポイント

      サポート内容

      • 依頼したいサポートをすべて実施しているか
      • 対面、オンラインなど希望する方法で相談できるか

      報酬体系

      • 料金システムは明瞭か(着手金、成功報酬、成果報酬等)
      • 予算内であり、法外な料金設定がされていないか

      専門分野

      • 業者の得意分野と依頼したい内容が合っているか
      • 専門家や有資格者が在籍しているか

      支援実績

      • 支援者の採択実績はどれくらいあるか
      • 過去の利用者からの評判や口コミはどうか

      補助金の申請代行やサポートを実施している業者は複数存在しており、サポート内容や料金システムなどはさまざまです。「代理申請」や「書類の添削」など、どのようなサポートを受けたいのかを申請者自身が明確にしたうえで、複数の業者を比較し自社の希望に合った依頼先を選びましょう。

      なお、依頼にかかる報酬や手数料などの費用は、業者ごとに異なります。費用の相場を一概にいうことはできませんが、複数の事業者を比較して料金が段違いに高い場合や、料金システムが明瞭でない場合は申請代行をうたう悪質な業者である可能性があるため注意が必要です。

      まとめ

      補助金の申請代行を利用するときのポイントは、申請代行の利用の可否を確認することです。複数の補助金において、申請手続きや書類作成は申請者自身で行うよう定められており、ルールに違反した場合は申請が不採択となるうえ罰則が科される恐れもあります。

      補助金の申請代行が認められていない場合でも、補助金に関する相談や書類作成のアドバイスなど「申請サポート」を受けることは可能です。申請業務は原則として申請者自身が行う必要がありますが、申請サポートを依頼することにより、申請の不備を防ぐことやスムーズな申請を行うことにつながります。

      補助金の申請代行やサポートを行う業者を選ぶときは、複数の業者を比較してみましょう。「サポート内容」「報酬」「専門分野」「支援実績」など、業者ごとに異なる項目を比較したうえで、自社の希望に合ったサービスを提供している業者への依頼を検討してみてください。

      会社における補助金の使い道と会計処理の方法を解説

      会社で新たな取組みを実施したい場合、設備導入やシステム開発、広報活動など、まとまった資金調達が必要になることがあります。その際、補助金をうまく活用できれば、かかった経費の一部を補填することができ、リスクをおさえながら新たな施策にチャレンジすることが可能です。

      しかし「補助金をどんなことに使えるのか」や「補助金は課税対象なのか」といった疑問も思い浮かぶのではないでしょうか?

      当記事では、会社における補助金の使い道や会計処理を解説します。新たな事業で補助金の申請を検討している人や、補助金を活用した際の会計処理が気になる人は参考にしてみてください。

      会社が取り組む課題に応じて補助金の使い道はさまざま

      国や地方自治体が用意している補助金の種類は多岐にわたり、会社が取組む課題に応じてさまざまな使い道があります。まずは補助金の種類や活用例を確認し、自社の課題解決に向けた取組みに適応するものを検討してみましょう。

      【補助金の利用項目と活用例】

      項目 活用例
      生産性向上、業務効率化 <自動化機械の導入>
      製造現場にロボットや自動化システムを導入し、作業時間を短縮と人件費削減を目指す。

      <務管理システムの導入>
      ERP(統合基幹業務システム)を導入し、在庫管理や販売管理の一元化と業務効率の向上を目指す。
      新規事業、第二創業 <新規サービス・製品の提供>
      新たなマーケットに参入するため、新商品や新サービスの開発・提供に向けた資金に充てる。

      <事業拡大のための資金調達>
      既存事業から派生する形で新しいビジネスを立ち上げ、拡大するための資金を調達する。
      ものづくり、新商品開発 <試作品の開発>
      新しい製品を開発し、その試作品の製造に必要な設備や材料を購入する費用に充当する。

      <製造設備の拡充>
      新商品の生産を開始するために、新しい製造ラインを構築し、生産能力を向上させる
      設備投資 <生産設備の更新>
      古くなった生産設備を新しいものに置き換え、生産性を向上させることで、製品の品質を安定させる。

      <工場のリニューアル>
      老朽化した工場を改装し、働きやすい環境を整えることで、労働環境の改善や作業効率の向上を図る。
      販路開拓 <ECサイト制作>
      自社商品のオンライン販売を強化するため、ECサイトの構築や運営費用に補助金を活用する。

      <展示会や広告の活用>
      国内外の展示会に出展し、商品を宣伝するためのブース設営費や、オンライン広告に充当する。

      経営改善 <財務・人事システムの改善>
      新しい会計ソフトや人事管理システムを導入し、経理業務の効率化や人事管理を自動化する。

      <コンサルティングの活用>
      経営戦略や財務改善のために、外部コンサルタントを雇い、経営改善のプランを策定する。
      特許、知的財産 <特許取得>
      新製品や技術の特許取得にかかる申請費用や、弁理士への依頼費用を補助金で賄う。
      <商標登録>
      新ブランドやサービスの商標を登録するための申請費用や、調査費用を補填する。
      デジタル化 <業務のIT化>
      業務プロセスをデジタル化し、ペーパーレス化や、電子化による業務の効率化を進める。

      <クラウドシステムの導入>
      クラウドベースのシステムを導入し、データの一元管理やリモートワーク環境の整備を行う。
      地域活性、まちづくり <地域特産品の開発>
      地域の特産品を活かした新商品の開発やブランド化を進め、地元産業の振興を図る。

      <観光イベントの開催>
      地域の観光資源を活用したイベントを開催し、地域経済の活性化を目指す。
      省エネ、畜エネ <省エネ機器の導入>
      エネルギー効率の高い機器を導入し、電力消費を削減することで環境負荷を軽減する。

      <蓄電設備の導入>
      太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーを蓄電し、効率的に活用するための設備を導入する。
      観光、インバウンド <観光施設の新設>
      外国人観光客向けの観光施設や宿泊施設を新設し、地域のインバウンド需要を取り込む。

      <インバウンド向けの販売促進>
      外国人観光客をターゲットとした広告やウェブサイトの多言語化など、販促活動を行う。
      防犯、防災、BCP <監視カメラの設置>
      事務所や工場に防犯カメラを設置し、セキュリティ対策を強化する。

      <事業継続計画(BCP)の策定>
      自然災害や緊急事態に備えた事業継続計画を策定し、実行するための対策費用を補助する。

      たとえば、販路開拓に補助金を活用する場合、展示会に出展して自社商品を宣伝することや、ECサイトを制作してオンラインでの販売を強化することができます。また、既存事業とは異なる分野で新しいビジネスを展開する際の設備導入や、マーケティング費用を補助金で賄うことも可能です。

      補助金には、会社のさまざまな課題やニーズに合わせて、多岐にわたる活用方法があります。自社の取り組みたい課題に合った補助金を有効活用することで、資金不足のリスクをおさえつつ、事業の持続的な成長を目指しましょう。

      雇用や労働環境に関する支援制度は助成金と称される

      従業員の雇用や労働環境の改善などに関する支援制度は「助成金」と称されています。補助金と助成金の違いは一概には言えないものの、補助金は「売上や生産性の向上」を目的とし、助成金は「現状の職場環境の改善」を目的としている支援金である傾向があります。

      【補助金と助成金の違い】

      項目 補助金 助成金
      管轄省庁 経済産業省・中小企業庁 厚生労働省
      目的
      • 売上向上
      • 生産性向上
      • 新規事業の立ち上げ
      • 設備投資、技術開発など
      • 雇用維持
      • 職場環境改善
      • 従業員のスキルアップ
      • 育児・介護対応など
      支給条件
      • 審査に通過する
      • 予算内に入る必要があるなど
      • 雇用保険の加入
      • 従業員の研修、育児・介護対応など
      支給の確実性 申請しても必ず受給できるとは限らない 条件を満たせば基本的に100%支給される
      申請難易度 申請には説得力のある事業計画が必要 条件を満たせば申請が可能
      返済義務 返済不要 返済不要
      主な対象分野
      • 新規事業開発
      • 設備投資
      • 技術革新
      • 販路開拓
      • 製品開発など
      • 雇用維持
      • 従業員の育成
      • 職場環境改善
      • 育児・介護対応など

      たとえば、会社に障がい者や高齢者を雇い入れる場合は「就職が困難とみなされる求職者」の雇入れを支援する助成金を活用することができます。また、従業員が育児や介護のための休暇を取得し、仕事と家庭を両立できる環境を整える場合にも、関連する助成金が用意されています。

      会社で新たな従業員の雇入れや雇用環境の改善に関する取組みを実施する場合は、助成金を活用できます。雇用の目的にあわせてさまざまな助成金が用意されているため、申請を検討する場合は厚生労働省や都道府県の募集状況を確認してみてください。

      なお、助成金の種類や活用方法の詳細は「雇用に関する助成金はどのように活用できるのか?」の記事も参考にしてみてください。

      補助金で得た収入は会計処理が必要

      補助金で得た収入は、会社の財務状況に反映させるよう、適切な会計処理が必要です。補助金は本業の売上とは異なる収入であり、正確に仕訳けなければ財務が正しく把握できなくなるため、正しい処理方法を確認しましょう。

      会社のお金の流れを帳簿に記録する「会計処理」において、補助金はお金が入ることから「収入」と仕訳けされます。また、本業以外の収入になるため、勘定科目の仕訳は「雑収入となります。

      【会計の記載例】

      借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
      預金(普通・当座) 100万円 雑収入 100万円

      複式簿記では、現金で何かを購入する取引があった場合、資産の増加と減少の両方を記録します。その際、購入したことで資産が増える項目を「借方」、支払ったことで減るお金の項目を「貸方」と呼びます。

      また、借方と貸方の勘定科目を選び、それぞれ同じ金額を記入する作業のことを「仕訳け」といいます。会計処理で「仕訳」を行うことで、取り引きの両側面を正確に把握することができます。

      補助金を受け取った際の会計処理は、雑収入の勘定科目で仕訳けをします。さらに、補助金の支給が決算期をまたぐ場合や、補助金で固定資産を購入した場合などは、異なる仕訳け方法が必要になるため、それぞれの処理方法も確認しましょう。

      決算期をまたぐ場合は未収入金として計上する

      補助金が会社の口座に入金されるのが決算期をまたぐ場合は「未収入金」の勘定項目で仕訳けて計上します。補助金が入金されることは決まっているものの、現時点でまだ受け取っていない状況のため、一旦「未収入金」という項目で計上しておく必要があるためです。

      【決算期をまたぐ場合の会計の記載例】

      借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
      未収入金(補助金) 100万円 雑収入 100万円

      会計処理において、補助金の収入を計上する時期は、基本的に「給付(支給)決定通知書」が届いた日付けで仕訳けを行います。しかし、実際の入金日が決算期をまたいでしまう場合はまず、借方に「未収入金」貸方に「雑収入」の勘定科目を記載します。

      【決算後に補助金が入金された場合の会計の記載例】

      借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
      預金(普通・当座) 100万円 未収入金 100万円

      つぎに、決算後に補助金が入金された際の勘定科目を書き換える仕訳け処理を行います。その際は、借方の勘定科目を「預金(普通・当座)」、貸方の勘定科目を「未収入金」と書きかえて処理することになります。

      補助金の会計処理は、入金時期によって仕訳が異なります。特に決算期をまたぐ場合は、入金確定時と入金時の2回の仕訳が必要になります。会計ソフトを利用している場合は、システムが自動で処理してくれることもありますが、仕訳内容が的確であるかを把握できるようにしておきましょう。

      補助金は法人税の課税対象となる

      補助金は、原則として法人税の課税対象となります。会社が受け取った補助金は利益を増やすものとされ、税法上「収益の増加」として課税範囲に含まれます。

      たとえば、新製品開発のために補助金を受け取った場合、その金額は「雑収入」として会計処理され、法人税の計算に組み込まれます。また、高額な固定資産を取得して税負担が大きくなる場合、翌年度以降に課税額を分けることで、税務負担を調整することも可能です。

      補助金は会社の利益を増やす収益として法人税の課税対象となります。補助金の適切な会計処理や税務負担を最適化することが難しい場合には、専門家に相談することも検討してみましょう。

      補助金や助成金に関する相談先は「補助金の相談は誰にする?相談できる内容に合った相談先を解説」の記事も参考にしてみてください。

      補助金にかかる法人税の負担を分割する方法がある

      補助金にかかる法人税の負担を分割するための「圧縮記帳」という方法があります。補助金を一度に収益として計上すると、その年の税負担が大きくなりますが、圧縮記帳を活用することにより税金の支払いを複数年に分け、資金繰りの負担を抑えることが可能です。

      【圧縮記帳のステップと記載例】

      ステップ 借方 貸方 金額
      1.補助金の受け取り 預金(普通・当座) 雑収入 1,000万円
      2.機械装置の購入 固定資産(機械装置) 預金(普通・当座) 1,500万円
      3.圧縮損の計上 圧縮損 固定資産(機械装置) 1,000万円
      4.残りの減価償却(毎年) 減価償却費 固定資産(機械装置) 500万円を耐用年数に応じて分割

      圧縮記帳を活用する際は、補助金を「雑収入」として計上し、同額を「圧縮損」として計上することで、その年の収益を圧縮します。収益の圧縮とは、固定資産の購入に対する税負担を次年度以降に分割して支払う方法です。

      たとえば、1,500万円の機械装置を購入し、そのうち1,000万円を圧縮損として処理した場合、残りの500万円を耐用年数に応じて毎年「減価償却費」として費用に計上します。こうした圧縮記帳の活用は、税負担を抑え、会社の財務状況を安定させる効果があります。

      圧縮記帳は、補助金に対する課税が企業の資金不足を引き起こすことを防ぐため、租税政策や産業政策の観点から設けられた制度です。しかし、圧縮記帳はあくまでも税金を単年で納付することを避けるための対策であり、課税が免除されるものではないことを留意しておきましょう。

      消費税は不課税となる

      補助金は、消費税が不課税となります。補助金は、国や地方自治体からの支援金であり、商品の販売やサービスによる収入とは性質が異なります。消費税は、ものやサービスの対価に課税されるため、補助金はその対象から外れます。

      たとえば、新規事業の立ち上げや商品開発を支援するための補助金を受け取る場合は、事業の売上ではなく、事業支援のための給付です。そのため、補助金は本業の売上とは別の収入として扱われ、消費税はかかりません。

      補助金を受け取る際、その金額に対しては消費税が課税されません。消費税が不課税である点を理解し、資金管理や税務処理を適切に行いましょう。

      なお、会計処理における補助金の税区分や消費税の控除を解説した「補助金における消費税の税区分と返還の義務をわかりやすく解説」の記事も公開しています。「非課税」と「不課税」の区分の違いなど、さらに詳細な情報を知りたい人は参考にしてみてください。

      まとめ

      補助金は、会社の成長や事業の新たな取組みをサポートする資金として利用できます。設備導入や新事業の立ち上げなど、補助金の使い道は多岐にわたり、うまく活用すれば資金調達時のリスクをおさえながら事業を進めることが可能です。

      補助金は基本的に法人税の課税対象となり、会計上は「雑収入」として計上します。決算期をまたいで補助金が入金される場合は「未収入金」として計上し、入金が確定した時点で「預金」として処理を行い、正確な財務状況を把握しましょう。

      また、補助金の税負担を軽減するためには「圧縮記帳」が有効です。圧縮記帳を使うことで、補助金を収益として一度に計上するのではなく、税金の支払いを数年に分けて行うことが可能です。これにより、資金繰りの負担を抑え、会社の財務を安定させることができます。

      補助金をクラウドファンディングに活用する方法を解説

      補助金やクラウドファンディングは、事業の資金調達や社会的課題の解決に有効な手段です。

      補助金は、自己資金を投じて一通りの補助事業を実施したのちに、国や自治体からの支援金を受け取れる制度です。一方、クラウドファンディングは、賛同した支援者から集めた資金を投じて事業を進めていきます。

      ただし、クラウドファンディングを利用する際にも利用料や手数料などの費用は発生します。

      当記事では、補助金をクラウドファンディングにどう役立てるかを解説します。また、補助金とクラウドファンディングを併用する際の注意点も紹介するので、2つの資金調達を検討している人は参考にしてみてください。

      クラウドファンディングを支援する補助金がある

      国や都道府県では、クラウドファンディングの利用者向けに補助金を公募しています。クラウドファンディングの利用時にかかる費用の一部を補助することで、新規事業への挑戦や社会的課題の解決を促進することを目的としています。

      【クラウドファンディング向けの補助金の対象経費例】

      対象経費の例 内容
      プラットフォーム利用料
      • プラットフォームの利用手数料

      プロジェクトページ作成費用

      • ページデザイン
      • 画像作成
      • ライティング
      • 映像制作費用 など

      広報・広告費用

      • SNS広告、WEB広告
      • 地元新聞や雑誌広告

      クラウドファンディング向けの補助金では、プラットフォームの利用手数料にかかる経費の一部が支援されます。各補助金に設定されている補助率に基づき、経費の1/2〜3/4が補助されるため、結果的にかかった費用を半分以下に削減できる可能性があります。
      また、利用手数料のほかにも、プロジェクトページを作成する際のデザイン費用や、プロジェクトを宣伝するための広報活動費なども支援される場合もあります。

      クラウドファンディングを支援する補助金を活用することで、事業を始める際のコストを軽減しながらプロジェクトを進めていくことが可能です。クラウドファンディング向けの補助金の情報は、国や自治体の公式サイトを確認してみてください。

      プラットフォーム利用料

      クラウドファンディングを利用する際には、プラットフォームの利用料が発生します。利用料の設定額は、選ぶクラウドファンディングサイトによって異なり、通常、調達額の10%〜20%がサイト運営会社へ支払われます。

      また、プロジェクトに賛同してくれた支援者がクレジットカードや銀行振り込みで資金を送ると、その取引を処理するための決済サービスを利用する手数料がかかります。決済手数料は概ね5%に設定されています。

      【クラウドファンディング利用料の記載例】

      A社 B社 C社 D社
      調達額の10% 調達額の20%
      (決済手数料5%を含む)

      成功時に20%

      調達額の13%+初期費用+決済手数料4%

      たとえば、クラウドファンディングで100万円を調達した場合、プラットフォーム利用料として10万円〜20万円、さらに決済手数料として約5万円が差し引かれると、手元に残る金額は75万円〜85万円になります。

      その際、プラットフォーム利用料の2/3が補助される補助金を活用すれば、15万円〜25万円の利用料のうち10万円〜約17万円が補助され、経費を削減できます。結果として、約88万円〜92万円の金額を手元に残すことが可能です。

      クラウドファンディングのプラットフォーム利用料や手数料は、調達額から決まった割合のまとまった費用を差し引かれます。クラウドファンディングを支援する補助金は、サイトの利用料金や手数料の負担額を軽減できるため、費用を削減する手段として検討してみましょう。

      プロジェクトページの作成費用

      補助金は、クラウドファンディングのプロジェクトページを作成する費用にも利用できる場合があります。

      クラウドファンディングを成功させるためには、支援者が興味を持ち、投資したくなるようなプロジェクトページの作成がポイントです。しかし、デザインや文章作成を専門業者に委託する場合、それに伴う費用が発生します。

      たとえば、デザイナーに依頼してページのデザインや画像を作成すると、数万円から10万円以上かかることがあります。また、支援者の理解や共感を得るための文章作成を依頼する場合は追加の費用も必要です。

      その際、プロジェクトページ作成費用の2/3が支援される補助金を活用することができれば、10万円の作成費用が実質的に3万円程度の負担におさえられます。

      プロジェクトページの作成費用は、クラウドファンディングを成功させるための必要経費として予算に組み込むことをおすすめします。補助金を活用して質の高いプロジェクトページの作成を検討してみてください。

      掲載したプロジェクトの広告費用

      クラウドファンディングでプロジェクトページを作成した後、認知度を高めるための効果的な広告戦略が必要です。プロジェクトが支援者に知られなければ、十分な支援を得ることが難しくなるため、SNSやWEB広告を活用してターゲット層にアプローチし、資金調達の成功率を高めることが求められます。

      たとえば、SNS広告に1日1,000円、WEB広告に月3万円を投じることで、プロジェクトの認知度が大幅に向上し支援額の増加が期待できます。これらの広告運用には一定の予算が必要ですが、補助金を活用することで広告費用の一部を補填でき、より効果的な広告展開が可能になります。

      また、通常は高額となる地元媒体への広告掲載も、補助金を活用すれば現実的な選択肢となります。たとえば、20万円の広告費に対して2/3の補助が適用されれば、自己負担は約7万円に抑えられ、地域での認知拡大を効率的に進めることができます。

      クラウドファンディングを支援する補助金の中には、広告費用にも適用できるものがあります。広告費用を効果的に使ってプロジェクトの認知度を高めるために、補助金の活用を検討してみましょう。

      補助金とクラウドファンディングの併用も可能

      補助金とクラウドファンディングを併用することは、資金調達や事業拡大のために有効な方法です。それぞれが持つ強みを組み合わせることで、自己資金の負担を軽減しながら、販路拡大やテストマーケティングにも活用できます。

      【補助金とクラウドファンディングを併用する利点】

      • 補助事業の資金調達にクラウドファンディングを利用できる
      • 自社商品やサービスの販売開始前にテストマーケティングとして利用できる
      • 商品やサービスを売り出す前の販路を確保できる

      クラウドファンディングで得た資金は、会計上「融資」ではなく「資金」として扱われるため、負債を増やさずに資金調達ができます。そのため、補助金を申請する際に財務の健全性を示すことができ、審査に通る可能性が高まります。

      また、クラウドファンディングは、商品のニーズを事前に測る「テストマーケティング」にも利用できます。クラウドファンディングは、支援者が事前に商品を購入する形式であることから、市場に出す前の商品への反応や需要を確認できるためです。

      補助金とクラウドファンディングを併用することで、資金調達と販路開拓の両面でリスクを軽減し、事業の成功率を高めることができます。補助金とクラウドファンディングそれぞれの特徴を理解し、併用する際のポイントを確認しておきましょう。

      補助事業の資金調達としてクラウドファンディングを利用する

      クラウドファンディングを利用することで、補助事業に必要な資金調達を効率的に行うことができます。クラウドファンディングに利用できる補助金は原則として後払いのため、自己資金が不足する場合、補助事業の実施が難しくなります。

      その際、クラウドファンディングで先に資金を集めておくことで、必要な事業資金を確保しつつ、事業をスムーズに進められます。また、クラウドファンディングの資金は返済不要の出資として扱われるため、補助金と併用することで自己資金の負担を減らせます。

      たとえば、一部の自治体では「クラウドファンディング型ふるさと納税」を活用した補助金制度があり、地域の課題解決や事業推進に必要な資金をクラウドファンディングで調達し、その後の補助金申請が可能となっています。この仕組みを利用することで、住民主体の事業でも自己資金の負担を軽減し、効率的に資金を調達できます。

      クラウドファンディングは、個人や企業から直接資金を集める方法で、特に補助金では賄いきれない部分の資金を調達するのに適しています。また、補助金審査時に観点となる財務状況において、クラウドファンディングで得た資金は負債ではなく純資産となるため、財務の健全性を示せます。

      補助事業の資金調達の一手段として、クラウドファンディングは自己資金の投入を抑える効果的な方法です。クラウドファンディングと補助金を併用し、健全な財務状態を維持しながら事業を進めましょう。

      商品やサービスのテストマーケティングとしても利用できる

      クラウドファンディングは、商品やサービスのテストマーケティングとしても利用できます。事業開始前に市場の反応を確認できるため、販売前にニーズを把握し、適切な価格設定や製品改良が可能になります。

      たとえば、特定の地域向けの新しい食品を開発した場合、クラウドファンディングで試験販売を行い、購入数や支援者のコメントをもとに製品の改善や価格設定を見直しができます。

      出資が集まらない場合は、商品の市場性が低いことがわかり、逆に多くの出資を得られた場合には、その商品に高い需要があることが確認できます。支援者の反応を参考にすることで、商品を実際の市場に出す前に最適化できることは利点になります。

      テストマーケティングの結果は、補助金申請時に提出する「事業計画」にも活かせます。顧客ニーズを明確に示すことで、補助金審査の採択率向上につながります。クラウドファンディングを活用し、補助金と併用することで事業を強化しましょう。

      補助金申請前にクラウドファンディングで販路を確保できる

      補助金申請前にクラウドファンディングを活用することで、これから売り出す商品やサービスの販路を事前に確保することが可能です。補助金の審査では、事業の安定性や実行可能性が問われるため、既に販売先が見込まれていると事業計画に信頼性が増します。

      通常であれば、商品やサービスの開発は「商品開発のあとに販売」という流れになるのに対し、クラウドファンディングでは「販売のあとに商品開発」という逆の流れとなります。発売前に資金と販路が確保できるため、補助事業における販路開拓や資金調達の両面に対するリスクを軽減することができます。

      事前に販路を確保することで、商品開発や事業の進行に対するリスクが低くなり、結果として補助金の採択率も向上します。新事業を開始する前に販路を確保することは、補助金とクラウドファンディングを併用する際のポイントになることをおさえておきましょう。

      併用する際の注意点

      補助金とクラウドファンディングを併用する際の注意点を事前に確認しておきましょう。補助金の公募要領に記載されている規定を守れていない場合や、クラウドファンディングが目標通りに進行しなかった場合には、当初予定していた資金調達が叶わなくなる可能性があるためです。

      【補助金とクラウドファンディングを併用する際の注意点】

      • 申請する補助金によって指定のクラウドファンディング事業者が決まっている
      • 申請する補助金によってクラウドファンディングの開始時期が異なる
      • 申請する補助金によって対象経費が異なる
      • クラウドファンディングの目標額から乖離する場合は補助金審査で信頼を得られない

      たとえば、クラウドファンディングには「購入型」や「寄付型」など複数の形態があり、目標に応じて適切なサイトを選ぶ必要があります。その際、指定のクラウドファンディング事業者以外を利用すると補助対象外となる場合があるため、事前に確認が必要です。

      また、補助金の公募要領によって、クラウドファンディングの開始時期が異なることがあります。「クラウドファンディングの実施後にかかった経費を申請する」流れと「交付申請を受けてからクラウドファンディングを実施する」流れと2つのパターンがあり、規定を守れていない場合は補助金の利用ができなくなります。

      クラウドファンディングで得た資金や見込み客などは、補助金申請の際にアピールできる強みになります。その半面、目標額から乖離した結果となった場合、補助金審査においても不利になる可能性があります。プロジェクトの開始後は広報活動を強化し、目標額の達成を目指しましょう。

      まとめ

      補助金とクラウドファンディングは、事業の資金調達に効果的な手段です。補助金は事業完了後に支給されるため、自己資金が必要となります。
      一方、クラウドファンディングは、事前に支援者から資金を集めることで、資金不足を補うことができます。ただし、クラウドファンディングを行う際にはプラットフォーム利用料がかかる点を考慮する必要があります。

      補助金をクラウドファンディングに活用することは有効な手段であり、利用料や広告費用などの一部を補うことができます。また、クラウドファンディングは商品のテストマーケティングや販路の確保に役立ち、事前にニーズや価格設定を確認できます。

      補助金とクラウドファンディングを併用することで、自己資金の負担を軽減しつつ、資金調達や販路拡大を図ることが可能です。ただし、公募要領の規定を守れていないと補助対象外となる場合があることや、クラウドファンディング実施時は目標額の達成に向けた広報活動の必要性があることを念頭に置かなければなりません。

      エステサロンにおける補助金の活用方法を解説

      エステサロン経営者が利用できる補助金にはさまざまな制度があります。また、店舗整備や美容機械の導入といった補助金の活用方法も多岐にわたります。

      当記事では、エステサロンにおける補助金の活用方法を解説します。エステサロン経営に利用できる補助金を調べている人は、参考にしてみてください。

      エステサロンにおける補助金の活用方法

      エステサロンが利用できる補助金には、店舗整備やITツール導入などさまざまな活用方法があります。エステサロン経営に関する補助金を利用する場合は、どのような活用方法があるのか確認してから補助金を探してみましょう。

      【エステサロンにおける補助金の活用方法】

      • 店舗整備
      • 業務効率化
      • 美容機械導入
      • 広告宣伝
      • 労働環境改善

      たとえば、対象経費に改装費がある補助金であれば、店舗整備にかかる費用に活用することが可能です。補助金によっては、新たにエステサロンの店舗を建てる工事費用が対象経費に該当する場合があります。

      また、ITツールの購入費が対象経費にある補助金であれば、業務効率化につながるITツールを導入することが可能です。補助金をエステサロン経営に活用したい場合は、自社の目的や活用方法に合った制度を選びましょう。

      なお、補助金は、消耗品などの補助事業以外でもさまざまな用途で利用できる経費は対象外となる傾向にあります。補助金を利用する際は、補助事業の遂行に必要な経費または補助対象外に該当していないか確認が必要です。

      店舗整備

      エステサロンが活用できる補助金の中で、開業やリニューアルなどの際に「店舗整備」に活用できる補助金があります。店舗整備を行うことで、顧客の店舗に対するイメージや店舗の利便性を向上させ集客力を高められる可能性があります。

      【補助金を活用した店舗整備の例】

      店舗整備

      新築・改装・設備工事

      • 床や壁などの貼り替え
      • 遮音シートの設置
      • 受付カウンターの設置 等

      空調設備・電気設備・給排水設備工事

      • コンセントの増設
      • 洋式トイレの設置
      • 空調設備の増設 等

      施術用備品購入

      • 施術用ベッドの設置
      • 施術スペースを仕切るパーテーション設置 等

      たとえば、エステサロンの店舗をリフォームする場合、補助金を活用して壁の貼り替えや防音対策の実施が可能です。リフォームの際に、施術用ベッドを新たに設置することで顧客が快適に施術を受けられ、顧客満足度の向上につながります。

      また、自宅で個人サロンを開業する場合、補助金を活用して電気設備工事やコンセントの増設が可能です。出力の強い美容機械を作動させるには、電気設備を整えることが必要となります。

      なお、補助金によっては、申請する際に開業していない創業予定者は申請できない場合があります。エステサロンを開業する際にかかる店舗整備の費用を補助金で賄いたい場合は、インターネットにて「補助金 開業 店舗整備」といったキーワードを用いて開業時に利用できる補助金に絞って探してみましょう。

      業務効率化

      エステサロンで業務効率化を行いたい場合は、補助金を利用してITツールを導入することも可能です。ITツールを利用して業務のデジタル化を進めることで、業務で発生する人為的ミスを防ぐことや作業工数を減らすことができます。

      【補助金を活用したITツール導入の例】

      ITツール

      できること

      POSレジ

      • 自動釣銭
      • キャッシュレス決済
      • 売上データのメニュー別分析
      • 顧客情報、電子カルテの一元管理
      • 予約情報の一元管理
      • LINEや外部の予約システムと連携可能 等

      電子カルテ

      • 予約情報の一元管理
      • 顧客情報、電子カルテ一元管理
      • メール自動配信
      • POSレジ連携 等

      会計ソフト

      • 仕訳・記帳の自動処理
      • データから決算書を自動作成
      • POSレジシステム連携 等

      たとえば、補助金を活用してエステサロンにPOSレジを導入する場合、予約システムとの連携が可能です。ネット予約が24時間自動対応が可能なPOSレジの場合、顧客とのやり取りが不要のため予約管理にかかる時間を減らせます。

      また、補助金を活用してエステサロンに電子カルテを導入する場合、顧客情報の一元管理を行うことが可能です。紙のカルテに比べて、データが検索しやすく時間が短縮され、探す手間を省くことができます。

      なお、補助金を活用してITツールを導入する場合、インターネット回線の整備も行うことが重要です。電子カルテを閲覧する際や顧客がスマートフォンを利用する際に、店舗でインターネットの不具合が起きないように整えておきましょう。

      美容機械導入

      エステサロンが活用できる補助金では、業務用脱毛機や業務用エステ機械の購入費の一部を補助できる場合があります。美容機械を導入することで、新たなメニュー展開が可能となるほか、集客力の向上につながります。

      【美容機械の例】

      • 業務用痩身機
      • 業務用脱毛機
      • 美顔器 等

      たとえば、業務効率化を目的とする補助金を活用して、業務用痩身機を導入できる可能性があります。業務用痩身機を活用することで、オールハンドより施術時間を短縮できることから店舗の回転率を上げられるため、安定した品質を提供することができます。

      また、販路開拓を目的とする補助金を活用して、業務用エステ機械を導入できる可能性があります。業務用エステ機械を導入することで、施術メニューを増やせるため、顧客のニーズにより応えられるようになり、顧客層の幅が広がり集客効果が期待できます。

      なお、補助金は補助事業を適切に実施した後に受け取れる「後払い制」が実施されている場合があります。高額な美容機械の導入を検討している事業者は、美容機械購入にかかる費用をまずは自己資金で支払えるか確認が必要です。

      広告宣伝

      自社のサービスを効果的に伝えるための広告宣伝にかかる費用に、補助金を活用することが可能です。SNSを利用した広告やチラシ配布を効果的に行うことにより、店舗の認知度の向上が期待できます。

      【補助金を活用した広告宣伝の例】

      • パンフレット・チラシ配布
      • WEB広告制作
      • ホームページ制作
      • 看板設置 等

      たとえば、パンフレット配布やチラシ配布にかかる費用に補助金を活用することができます。チラシ配布は、手に取ってもらいやすく視認性が高いほか、普段インターネットを使用しない顧客にも情報提供することが可能です。

      また、ホームページ制作にかかる費用に補助金を活用することができます。ホームページを制作することで幅広い顧客層に認知される可能性があり、より多くの顧客の目に留まることによって問い合わせ件数を増やすことにつながります。

      なお、補助事業の完了が対象期間を過ぎた場合、採択されていても補助対象外となり補助金は支給されない場合があります。補助対象期間中にホームページをウェブ上で公開することが補助事業の完了となるため、外部の事業者へ依頼する際には納期の確認をしておきましょう。

      労働環境改善

      エステサロンが活用できる補助金の中には、労働環境改善や人材雇用が目的の制度があります。補助金を活用することで、人手不足の解消やエステに関するスキルを向上させることが可能です。

      たとえば、従業員の待遇の改善に活用できる補助金があります。賞与や退職金制度を新たに設けることで労働環境が改善され、離職率の低下につながる可能性があります。

      また、従業員のスキル向上に活用できる補助金があります。研修や訓練にかかる費用の一部が補助され、従業員のエステに関する専門知識や接客面でのスキルをあげることが可能です。

      補助金を労働環境改善に活用することで、従業員の育成や従業員の待遇の改善とともに労働環境改善にかかる費用の負担が軽減されます。費用負担を抑えながら、労働環境の改善や人材の育成に力を入れたいエステサロン経営者は、労働環境改善が目的の補助金を探してみましょう。

      エステサロンが利用できる補助金の具体例

      国や自治体が実施する補助金の中には、エステサロンが活用できるさまざまな制度があります。補助金の目的や活用方法は制度によって異なるため、自社に合った補助金を探しましょう。

      【エステサロンが利用できる補助金の具体例】

      補助金名

      特徴

      エステサロンでの活用方法

      小規模事業者持続化補助金

      (経済産業省)

      販路開拓等のための取組を行う事業者を支援する制度

      • 美容機械導入
      • 広告宣伝
      • 店舗改装 等

      ものづくり補助金

      (経済産業省)

      革新的な製品・サービスの開発や生産性を向上させるための設備投資を支援する制度

      • 美容機械導入 等

      事業再構築補助金

      (経済産業省)

      新市場進出や事業・業種転換等といった事業再構築を行う事業者を支援する制度

      • 店舗改装
      • 広告宣伝 等

      IT導入補助金

      (経済産業省)

      自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する費用の一部を支援する制度

      • ITツール導入

      チャレンジショップ支援事業補助金

      (北海道虻田郡洞爺湖町)

      新築店舗、空き家および空き店舗を活用してサービス業などを新たに始める事業者を支援する制度

      • 店舗新築、改装
      • 備品購入
      • 家賃 等

      空き店舗活用事業補助金制度

      (神奈川県秦野市)

      商店街区域内の空き店舗を活用して開業し地域の活性化に貢献できる事業者を支援する制度

      • 店舗改装
      • 賃借料
      • 広告宣伝 等

      キャリアアップ助成金

      (厚生労働省)

      従業員の正社員化、労働環境改善の取組を実施した事業者を支援する制度

      • 賞与・退職金制度導入
      • 賃金規定等改定 等

      人材開発支援助成金

      (厚生労働省)

      職務に関連した専門的な知識および技能を習得させるための訓練等を実施した事業者を支援する制度

      • 人材育成 等

      たとえば、経済産業省が実施している「IT導入補助金」の場合、自社の課題に合ったITツール導入費に補助金を活用することができます。POSレジや電子カルテを導入することで、ペーパーレス化となりコスト削減が行えます。

      また、北海道洞爺湖町が実施している「チャレンジショップ支援事業補助金」の場合、店舗新築費や空き店舗等の改修費に補助金を活用することができます。地域に根ざした特色ある店舗を新規開業する事業者が対象の補助金です。

      なお、公募要項に記載されている申請要件をすべて満たし書類審査で採択されなければ補助金を受け取ることはできません。自社に合った補助金を探す場合は、申請要件をすべて満たせるかどうかの確認を必ず行いましょう。

      まとめ

      エステサロンにおける補助金の活用方法はさまざまあります。自社が解決したい課題によって活用方法が異なるため、補助金を探す前は必ず制度を活用する目的を明確にしておきましょう。

      エステサロンの経営者が利用できる補助金では、「店舗整備」「業務効率化」「美容機械導入」「広告宣伝」「労働環境改善」などに活用できます。補助金は店舗の開業時やリニューアルの際にかかる費用の負担を軽減できる制度のため、資金調達方法に悩みがある事業者は方法のひとつとして覚えておきましょう。

      ただし、補助金の目的に合っていない取組は補助対象外となり、補助金を受け取ることができません。補助金を申請予定の人は、実施したい取組が補助対象となるかどうか、申請を検討している補助金の公募要項を確認しておきましょう。