補助金の採択率とは?

2024/07/11

2024/7/10

この記事の監修

株式会社SoLabo田原広一

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原 広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

補助金を探している方の中には、補助金の採択率はどのくらいか気になっている人もいますよね。また自身の事業状況にあった補助金に応募したい人もいるでしょう。

当記事では、補助金の採択率を解説します。各補助金の過去の採択率や補助金を選ぶ時の視点も説明するため、申請する補助金を探している人は当記事を参考にしてみてください。

採択率とは補助金の審査に通る割合のこと

補助金の採択率とは、補助金の審査に通る事業者数の割合のことです。採択率は補助金の応募者数と採択者数から算出することができます。

【採択率の計算】

採択者数÷応募者数×100=採択率(%)

応募者数が15,132件、採択数が7,745件の場合の計算例

7,745件÷15,132件×100=51.1%

※小数点第二位以下は切り捨て

採択率を知ることにより、補助金の審査に通過する難易度の参考にすることができます。採択率が51.1%であれば、おおよそ2人に1人が審査に通っていることになります。

ただし、採択率は補助金の公募回や申請枠、応募者数などさまざまな要因によって変動する可能性があります。過去の採択率だけでは補助金の難易度を一概に判断することはできないため、申請を検討する際の参考程度に留めておきましょう。

補助金の採択率は補助金ごとに異なる

補助金の採択率は、補助金ごとに違います。補助金ごとに、応募者数や採択数が異なるためです。今回は「事業再構築補助金」「小規模事業者持続化補助金」「ものづくり補助金」「IT導入補助金」を例に挙げて解説します。

【最新の補助金の採択率】

制度名

採択率

※少数点第2位以下切捨て

事業再構築補助金

(第11回)

26.4%

小規模事業者持続化補助金

(第14回)

62.5%

ものづくり補助金

(18次)

35.8%

IT導入補助金2024

(3次締切)※通常枠

75.7%

IT導入補助金2024(通常枠)の3次締切における採択率は70%以上を超え、応募者の3分の2以上が採択されています。それに対して、事業再構築補助金の第11回公募における採択率は26.4%と応募者の半分以下となっています。

補助金の採択率は、補助金の制度や公募回によって大幅に異なります。補助金の応募を検討している人は、最新の採択率が高くても公募回によって難易度が変わる可能性があることに留意して応募を検討しましょう。

事業再構築補助金の過去の採択率

事業再構築補助金の過去の採択率は、第6回の公募回まで50%未満でした。最新である公募回の第7回で、51.1%と初めて採択率が50%を超えました。

【事業再構築補助金における各公募回の採択率】

公募回

採択率

第1回

36.0%

第2回

44.8%

第3回

44.4%

第4回

44.7%

第5回

46.1%

第6回

49.9%

第7回

51.1%

第8回

51.2%

第9回

45.4%

第10回

48.1%

第11回

26.4%

※小数点第2位以下切捨て

参考:採択結果|事業再構築補助金

事業再構築補助金の採択率は、第1回から第8回までは上昇傾向にありました。しかし、第9回からは50%を下回り、第11回の採択率は26.4%と大幅に下落しました。

採択率は公募回だけでなく各申請枠によっても異なります。第11回においては、採択率が最も高い「グリーン成長枠」の採択率は31.3%であり、採択率が最も低い「大規模賃金引上促進枠」の採択率はが12.2%でした。事業再構築補助金の採択率を確認する際は、申請する枠の採択率も確認してみましょう。

事業再構築補助金の採択率は「事業再構築補助金における採択率の推移と不採択時の対応を解説」の記事で詳しく解説しているので、事業再構築補助金へ申請予定の人は参考にしてみてください。

小規模事業者持続化補助金の過去の採択率

小規模事業者持続化補助金の過去の採択率は、第1回が一番高く90%を超えています。第2回以降は、44%から69%を推移している状況です。

【小規模事業者持続化補助金における各公募回の採択率】

公募回

採択率

第1回

90.8%

第2回

65.1%

第3回

51.6%

第4回

44.2%

第5回

53.9%

第6回

69.0%

第7回

69.8%

第8回

62.9%

第9回

64.0%

第10回

63.4%

第11回

58.9%

第12回

55.6%

第13回

57.0%

第14回

62.5%

第15回

41.8%

※小数点第2位以下切捨て

参考:小規模企業支援|中小企業庁

小規模事業者持続化補助金の過去の採択率は、第1回が最も高く90.8%でした。小規模事業者持続化補助金の採択率は複数の公募回において50%を超え、2人に1人以上が採択されている傾向にあります。

しかし、第15回のように41.8%と採択率が半数に満たない公募回もあります。同じ補助金制度であっても、公募回によって採択率が大幅に変動する場合もあるため、採択率から難易度を一概に判断することはできない点に留意しておきましょう。

なお、小規模事業者持続化補助金の採択率は「小規模事業者持続化補助金の採択率と採択事例を解説」の記事で詳しく解説しているので、小規模事業者持続化補助金へ申請予定の人は参考にしてみてください。

ものづくり補助金における過去の採択率

ものづくり補助金の過去の採択率は、公募回によって30%以下から60%以上と採択率に幅があります。

【ものづくり補助金における各公募回の採択率】

公募回

採択率

1次

62.4%

2次

57.1%

3次

38.0%

4次

33.0%

5次

44.1%

6次

47.4%

7次

50.2%

8次

59.7%

9次

62.1%

10次

60.8%

11次

59.3%

12次

58.5%

13次

58.0%

14次

50.7%

15次

50.2%

16次

48.8%

17次

29.4%

18次

35.8%

※小数点第2 位以下切捨て

参考:採択結果|ものづくり補助金

ものづくり補助金において、最も高い採択率となったのが1次の62.4%です。一方で、最も低い採択率となったのが17次の29.4%であり、応募者の3割程度しか採択されていないことから公募回によって採択率の差が大きいことがわかります。

ものづくり補助金における採択数は「ものづくり補助金の補助率と採択率は?申請前の判断基準として解説」の記事で詳しく解説しているので、ものづくり補助金への申請を検討している人は参考にしてみてください。

IT導入補助金2024における過去の採択率

IT導入補助金2024では、申請者からの応募があった締切回においてはすべて50%以上の採択率となっています。しかし、IT導入補助金2024においては申請枠ごとに申請者の数が大幅に異なるため、申請者数も考慮した上で難易度の参考にする必要があります。

【IT導入補助金2024における各公募回の採択率】

締切

申請枠

採択率

1次締切分

通常枠

75.4%

インボイス枠(インボイス対応類型)

95.2%

インボイス枠(電子取引類型)

0%(応募なし)

セキュリティ対策推進枠

77.7%

複数社連携IT導入枠

50%

2次締切分

通常枠

75.3%

インボイス枠(インボイス対応類型)

94.1%

インボイス枠(電子取引類型)

100%

セキュリティ対策推進枠

95.8%

3次締切分

通常枠

75.7%

インボイス枠(インボイス対応類型)

94.3%

インボイス枠(電子取引類型)

0%(応募なし)

セキュリティ対策推進枠

90.9%

4次締切分

インボイス枠(インボイス対応類型)

94.9%

5次締切分

インボイス枠(インボイス対応類型)

94.2%

6次締切分

インボイス枠(インボイス対応類型)

94.5%

※小数点第2以下切り捨て

参考:交付決定事業者一覧|IT導入補助金2024

複数社連携IT導入枠の1次締切分における採択率は50%でした。ほかの申請枠と比較して採択率が低いですが、通常枠の申請者数は1,576件だったのに対し複数社連携IT導入枠の申請者数は2件だったことから、必ずしも複数社連携IT導入枠の方が採択されにくいと判断することはできません。

また、インボイス枠(電子取引類型)の2次締切分における採択率は100%でした。数値だけ見ると難易度が低く審査に通りやすいように思えますが、申請者数は1件のみだったことから、必ずしもインボイス枠(電子取引類型)の難易度が低いと判断することはできません。

IT導入補助金は、申請枠ごとに申請者数が大幅に異なる傾向があります。IT導入補助金2024の各申請枠について詳しく知りたい人は「IT導入補助金2024の採択率を解説」を参考にしてみてください。

補助金を選択するときは採択率以外にも概要を確認する

補助金を選択するときは、採択率以外に補助金の概要も確認してみましょう。補助金によって対象者や対象経費が異なり、申請予定の経費が補助の対象外であることも考えられるためです。

【申請する補助金を選ぶときの視点】

項目

視点

対象者

補助金の対象者に当てはまるか

申請要件

応募の際に満たす必要のある条件は何か

申請枠

事業の目的にあった枠かどうか

補助上限額

補助事業の費用に対していくらまで補助されるか

補助率

補助事業の費用に対してどれくらい補助されるか

対象経費

自身の購入したい設備やサービスが対象になっているか

スケジュール

年に何回申請できるか

次回の公募スケジュールに間に合うか

たとえば、IT導入補助金を利用してWEBサイトを作成したい場合、IT導入補助金の対象経費にWEBサイトが含まれるかどうかを確認します。IT導入補助金2024において、ホームページやECサイトなどのWEB制作関連費は対象外となっているため、WEBサイト制作に補助金を利用したい人は別の制度を探す必要があります。

補助金は申請すれば必ずもらえるものではなく、補助金の目的に合った取り組みとして認められた場合に限り支援を受けることができます。また、受け取れる金額も補助金の制度によって異なるため、申請する補助金を選ぶときには自社の希望に合った補助を受けられるかもあわせて検討しましょう。

事業再構築補助金の概要

事業再構築補助金は、経済社会の変化に対応するための事業再構築を支援する補助金です。ウィズコロナ・ポストコロナの時代に対応するため、新分野展開や業態転換など、思い切った事業再構築をする中小企業等の挑戦の支援を目的としています。

【事業再構築補助金の概要】

項目

概要

対象者

中小企業・中堅企業

(個人事業主含む)

申請要件

  • 認定支援機関と事業計画を策定する
  • 補助事業終了後に付加価値額の目標を達成する事業計画を策定する
  • 事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義該当する事業であること

公募要領から申請要件一部抜粋

申請枠

①成長分野進出枠(通常類型)

②成長分野進出枠(GX進出類型)

③コロナ回復加速化枠(通常類型)

④コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)

⑤サプライチェーン強靭化枠

⑥卒業促進上乗せ措置

⑦中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置

補助額

中小企業:100万円~1億円

中堅企業等:100万円~1.5億円

(※申請枠や従業員数によって異なる)

補助率

1/3~3/4

※申請枠や従業員数によって異なる)

対象経費

①建物費

②機械装置・システム構築費

③技術導入費

④専門家経費

⑤運搬費

⑥クラウドサービス利用費

⑦外注費

⑧知的財産権等関連経費

⑨広告宣伝費・販売促進費

⑩研修費

⑪廃業費

参考:公募要領(第12回)|事業再構築補助金

事業再構築補助金では、応募する枠によって補助額の範囲や補助率がことなります。また、申請要件も異なるため、枠ごとの申請要件について詳しく知りたい人は「事業再構築補助金の申請要件とは?枠ごとの要件も解説」を確認してください。

小規模事業者持続化補助金の概要

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓や業務効率改善を支援する補助金です。地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と、持続的な発展を図ることを目的としています。

【小規模事業者持続化補助金の概要】

項目

概要

対象者

小規模事業者・一定要件を満たす特定非営利活動法人

(個人事業主含む)

申請要件

  • 商工会・商工会議所の支援を受けながら事業支援計画書や補助事業に取り組む
  • 申請する枠ごとの条件を満たす 他

公募要領から申請要件一部抜粋

申請枠

①通常枠

②賃金引上げ枠

③卒業枠

④後継者支援枠

⑤創業枠

補助額

通常枠:最大50万円

通常枠以外(特別枠):最大200万円

※インボイス特例の該当者は上記に50万円を上乗せ

補助率

2/3

※賃金引上げ枠に申請する赤字事業者は3/4

対象経費

①機械装置等費

②広報費

③ウェブサイト関連費

④展示会等出展費

⑤旅費

⑥新商品開発費

⑦資料購入費

⑧借料

⑨設備処分費

⑩委託・外注費

参考:第16回 公募要領(P.13~)|小規模事業者持続化補助金

たとえば、現在の事業の売上向上を目的とした、販路開拓のための宣伝用のチラシの作成やWebサイトの新規作成などに、小規模事業者持続化補助金を利用できます。

なお、小規模事業者持続化補助金では、商工会や商工会議所の支援が必須です。小規模事業者持続化補助金に応募する人は、商工会や商工会議所を探しましょう。

小規模事業者持続化補助金の概要を知りたい人は「小規模事業者持続化補助金とは?対象者や活用例をわかりやすく解説」を確認してみてください。

ものづくり補助金の概要

ものづくり補助金は、経営革新や生産プロセス改善を行う際の、設備投資等に使える補助金です。中小企業や小規模事業者等が、働き方改革やインボイス導入等への制度対応で生産性を向上させる際の、設備投資等を支援することが目的です。

【ものづくり補助金の概要】

項目

概要

対象者

中小企業・小規模事業者等

(個人事業主含む)

申請要件

  • 3つの基本要件を満たしていること
  1. 給与支給総額を年平均成長率1.5%以上増加
  2. 地域別最低賃金+30 円以上
  3. 付加価値額を年平均成長率3 %以上増加
  • 申請する枠ごとの条件を満たす  他

公募要領から申請要件一部抜粋

申請枠

①省力化(オーダーメイド)枠

②製品・サービス高付加価値化枠(通常類型)

③製品・サービス高付加価値化枠(DX・GX)

④グローバル枠

補助額

省力化(オーダーメイド)枠:最大1億円

製品・サービス高付加価値化枠(通常類型):最大2,250万円

③製品・サービス高付加価値化枠(DX・GX):最大3,500万円

④グローバル枠:最大4,000万円

※従業員数によって上限額が異なる

補助率

1/3~2/3

※申請枠や事業規模によって異なる

対象経費

①機械装置・システム構築費

②技術導入費

③専門家経費

④運搬費

⑤クラウドサービス利用費

⑥原材料費

⑦外注費

⑧知的財産権等関連経費

<グローバル枠のみ>

⑨海外旅費

⑩通訳・翻訳費

⑪広告宣伝・販売促進費

参考:公募要領 18次締切分(P.7)|ものづくり補助金

ものづくり補助金は、新商品や新サービスの開発、生産管理システムの導入、海外への市場開拓などの事業で利用できます。ただし、ものづくり補助金を利用するには、どの型や枠でも税抜きで単価50万以上の設備投資が必要です。

なお、ものづくり補助金へ複数回申請することも可能ですが、過去3年以内に1回交付決定している事業者は減点対象です。また、過去3年以内に2回以上交付決定している事業者は応募対象外です。

ものづくり補助金への申請を検討している人は、「ものづくり補助金の要件とは?基本要件の詳細も解説」の記事で詳しい要件を確認してみてください。

IT導入補助金の概要

IT導入補助金は、日々の業務の効率化や自動化などの、ITツールの導入に使える補助金です。また、インボイス制度への対応やサイバー攻撃への対策、地域のDXなども支援します。

【IT導入補助金2024】

項目

概要

対象者

中小企業・小規模事業者等

(個人事業主含む)

申請要件

  • 交付申請時点において日本国内で法人登記され日本国内で事業を営む者
  • 申請者が営む事業場内の最低賃金が法令上の地域別最低賃金以上であること
  • 各申請枠の要件を満たすこと

※一部抜粋

申請枠

  • 通常枠
  • インボイス枠(インボイス対応類型)
  • インボイス枠(電子取引類型)
  • セキュリティ対策推進枠
  • 複数社連携IT導入枠

補助額

通常枠:最大450万円

インボイス枠(インボイス対応類型):最大350万円(ハードウェアは最大20万円)

インボイス枠(電子取引類型):最大350万円

セキュリティ対策推進枠:最大100万円

複数社連携IT導入枠最大3,200万円

※導入するITツールや事業規模によって異なる

補助率

1/2~4/5

対象経費

  • ソフトウェア
  • ハードウェア
  • オプション
  • 役務費用

参考:IT導入補助金2024 公式サイト

IT導入補助金2024では、申請枠によって申請要件や対象経費が異なります。たとえば、ハードウェアが対象となるのはインボイス枠(インボイス対応類型)のみであり、ソフトウェアと合わせて導入する場合に限り、補助対象として認められます。

IT導入補助金への申請を検討している人は「IT導入補助金とは?図解を用いてわかりやすく解説」の記事を参考に、補助金の仕組みや枠ごとの要件を確認してみてください。

まとめ

採択率とは補助金の審査に通る確率のことで、審査の難易度のおおよその目安となります。また、同じ補助金でも公募回や申請枠によって採択率が異なrるため、補助金への応募を検討している人は採択率の変遷や申請枠ごとの採択率も併せて参考にしてみてください。

補助金を選択する際は、補助金ごとに対象者や申請要件などが異なるため、採択率以外にも応募に必要な要件を確認する必要があります。補助金ごとの詳細は公募要領で確認できるため、応募したい補助金がある人は各補助金の公式サイトから公募要領を確認してみましょう。

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