補助金ガイド

ものづくり補助金で採択される事業計画書の書き方

2024/05/07

2022/5/19

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

ものづくり補助金を検討している人の中には、これから事業計画書を書く人もいますよね。その際、どのように事業計画書を書けばよいのか分からない人もいるでしょう。

当記事では、ものづくり補助金で採択される事業計画書の書き方を解説します。事業計画書の記載例もあわせて紹介するので、これからものづくり補助金の事業計画書を作成する人は当記事を参考にしてください。

ものづくり補助金で採択される事業計画書の書き方

ものづくり補助金で採択される事業計画書を書く際は、公募要領に記載されているルールに従い、基本要件と審査項目を意識して記載することが大切です。なぜなら、ものづくり補助金の公式サイトには「公募要領をよく読み」申請手続きをするように注意書きがあるためです。

公募要領には事業計画書や申請手続きに関するさまざまな取り決めが記載されています。事業計画に関する内容は書き方のルールと満たすべき基本要件、そして、事業計画書を審査する基準の審査項目の3点が記載されています。

【公募要領に記載されている事業計画書に関する決まり】

項目 内容
書き方のルール 公募要領に記載されたルール通りの書き方をする
基本要件 基本要件を満たす賃上げの取組みと数値目標を記載する
審査項目 公募要領に記載されている審査項目を意識して記載する

1つ目の書き方のルールは、書式(フォーマット)と内容・配置に関するルールです。ものづくり補助金では、事業計画書は決められた書式・フォーマットと内容・配置に従って作成します。

2つ目の基本要件は、賃上げと付加価値額に関する要件です。ものづくり補助金は従業員の賃上げや生産性の向上につながる設備投資を支援する補助金なので、事業計画書にも給与支給総額や付加価値額などの数値を記入します。

3つ目の審査項目は、ものづくり補助金の審査員が審査をする際の基準です。審査項目は補助対象事業としての適格性や技術面など4つの項目があり、ものづくり補助金の審査員は審査項目に沿って事業計画を審査します。

ものづくり補助金の事業計画書を書く際は書き方のルールに加え、基本要件、審査項目を意識して作成することが大切です。一つでも欠けると採択の可能性は低くなるため、事業計画書を書く際は書き方のルール、基本要件、審査項目の3つを満たすように工夫しましょう。

なお、ものづくり補助金の事業計画書の作成において、専門的な支援が必要な場合は認定支援機関に相談できます。当サイトを運営する株式会社SoLaboも認定支援機関として、基本要件や審査項目を盛り込んだものづくり補助金の書類作成サポートをしています。ものづくり補助金の審査に通りそうか、自社に合った書類作成の方法を知りたい人は無料診断をお試しください。

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公募要領のルールに沿った事業計画書の書き方

公募要領のルールに沿った事業計画書を書くには、全体を3部構成に分け、PDF形式で10ページ以内にまとめます。10ページの事業計画書を3部構成で書くということは、1部につき約3ページ〜4ページ以内に収めるということになります。

事業計画書の3部構成については、ものづくり補助金の公募要領に具体的な内容が記載されています。その1として補助事業の具体的取組内容を、その2として将来の展望を、その3として会社全体の事業計画を記載します。

【3部構成で記載すべき必要項目と記載内容】

項目 記載内容

その1「補助事業の具体的取組内容」

 

① 今までの自社での取組の経緯・内容
② 機械装置を導入しなければならない必要性
③ 今回解決したい課題の内容
④ 課題解決に必要な工程ごとの開発内容、材料や機械装置等
⑤ ④の具体的な目標と達成手段
その2「将来の展望」 今回の取組をすることにより、どのようなユーザー、マーケット、市場規模が影響するか
その3「会社全体の事業計画」 申請時点を基準年度とし、3年から5年後までの売上、営業利益、経常利益、人件費、伸び率などを記載する表

その1「補助事業の具体的取組内容」では、事業者がものづくり補助金で新たに行う取組み「補助事業」をなぜ行うのかという理由や今まで行った事業内容、課題を記載します。そして、補助事業の取組内容と目標などを記載します。

その2「将来の展望」では、今回の取組のターゲットである顧客や、市場などのマーケティングの要素について記載します。補助事業の属する市場がどのくらいの規模なのか、その市場において事業者はどのような立ち位置にいるのかを分析し、説明します。

その3「会社全体の事業計画」では、主に補助事業の数値やスケジュールについて記載します。ものづくり補助金に申請する年度を「基準年度」とし、ものづくり補助金により設備やシステムを導入することで売上や経常利益がどう変化するのかという見込み値を記入します。

ものづくり補助金の事業計画書を作成する際の構成はその1、その2、その3の3部構成にします。書き方のルールを守ると公募要領に記載された書くべき内容を網羅できるので、事業計画書を作成する際は3部構成を意識して事業計画を組み立てていきましょう。

その1「補助事業の具体的取組内容」の記載例 

その1「補助事業の具体的取組内容」の記載例を「茨城県で減農薬のトマト栽培をしている生産者」という設定で紹介します。その1では、なぜ申請者がものづくり補助金に応募申請するのかについて、主に5つの内容に分けて記載します。

ものづくり補助金の公募要領には、その1「補助事業の具体的取組内容」で書く内容の指示が5つの内容に分かれて記載されています。主に書く内容は、前半に「事業者の事業説明と課題」、後半に「課題解決のために行う補助事業と具体的な目標」を記載します。

【その1:補助事業の具体的取組内容の記載例】

記載内容
①今までの自社での取組の経緯・内容

これまで当社は茨城県で10年間、減農薬のトマトを家族経営で栽培・出荷している。

②機械装置を導入しなければならない必要性

創業者〇〇が2023年5月、健康上の理由から引退をし、それに伴う人材の流出が発生しトマトの品質が低下した。また、近年はトマト市場でブランド化がすすみ、高品質なトマトでないとなかなか売れない、という現状がある。

そのため、当社では高品質なトマトを新たに開発することとし、開発のためにスマートIoT機器(※)を導入することとした。

※スマートIoT機器:インターネットに接続して相互に情報を交換し、制御・自動化を行う機器

③今回解決したい課題の内容

①トマトのB品を減らし、出荷量を増やす
トマトの室温、温度、CO2濃度の最適化を少人数で実現し、トマトのB品を減らし、結果的に出荷量を増やしたい

②甘くて栄養価の高くハリとツヤのあるブランドトマトを開発する日射量、日射強度、土壌水分、窒素成分を最適化し、減農薬だけを売りにするのではなく、安心かつ美味しいトマトを開発したい

④課題解決に必要な工程ごとの開発内容、材料や機械装置等

<課題解決に必要な工程>
①スマートIoTの導入(トマトの室温、温度、CO2濃度の最適化)
1.スマートIoT機器の勉強会を実施する
2.スマートIoT機器を導入する
3.スマートIoT機器を使ったチェック体制を構築する
4.トマト栽培の結果を定点観測する

②トマトの日射量、日射強度、土壌成分、窒素成分の最適化
1.十分な日射量を確保するため、天候の悪い時期に設置するための「高圧ナトリウムランプ」や「LED」を購入する
2.トマトの土壌成分をPH5.5~6.5で保つため、肥料「MリンPK」を購入する
3.購入物の設置時期と担当者の計画を立てる(別紙)

<課題解決に必要な機械装置・システム>
①スマートIoT機器一式(間欠起動タイマ付き電源装置、小型コンピュータ、Webカメラ)×10セット

②温湿管理システム

④の具体的な目標と達成手段 目標 達成手段
  • トマトの出荷量を2022年度の1.5倍にする
  • トマトのB品該当率を35%以上削減する
  • スマートIoTと温室管理システムを導入し、従業員全員が使い方を把握すること
  • 高圧ナトリウムランプやLEDを購入し、日射量を確保する
  • トマトの窒素成分を常にPH5.5~6.5で保つ

公募要領では、その1について「必要であれば図表や写真を用い、具体的かつ詳細に記載してください」と補足されています。そのため、記載例の場合は、トマト畑や出荷設備の画像、取引先一覧の表などを加えてもよいでしょう。

また、公募要領では「応募申請する枠に応じて、国が定める「指針」または「ガイドライン」と事業計画書に関連性があると説明してください」との補足もあります。指針には業種ごとの技術、ガイドラインには生産性向上のための取組が記載されているので、その1の本文を書く際に引用することも可能です。

ものづくり補助金の「その1」に書くべき内容は、事業者がこれまで行ってきた事業の自己紹介と課題、そして、機械設備やシステムの導入についてです。課題を丁寧に書くと設備が必要な理由に説得力がでるので、その1を記載する際は自社の課題をできるだけ詳細に書いてみてください。

なお、17次公募で新設された「省力化(オーダーメイド)枠」の場合は、事業計画期間中に労働者一人当たりの生産性(労働生産性)が 2 倍以上となる具体的な内容と根拠を書く必要があります。応募申請する枠が違う場合は書くべき内容が違うこともあるので、事業計画書を作成する際は、応募申請する申請枠の要件にも留意しましょう。

その2「将来の展望」の記載例

その2「将来の展望」で記載例を「トマト生産者がスマートIoTを導入する」という設定で紹介します。その2を書く際は、「今回の取組をすることにより、どのようなユーザー、マーケット、市場規模が影響するか」と「目標となる時期・売上規模・量産化時の製品等の価格等」を記載します。

【その2:将来の展望の記載例】

<現在、当社が抱える顧客>
当社のターゲット顧客は、茨城県〇〇町の住民(約1,000人)

・現在は約25社のスーパーや小売店へ卸売りをしている

・〇〇地域からも注文したいとの問い合わせが過去にあった

・品質管理を行う従業員が不足しており、追加対応ができない

<今後の新たな顧客>
・今までよりも安定的に出荷数を確保できるようになる

・トマトブランドを好むユーザーを新規顧客にできる

<新たに追加されるユーザー像>

  • 20~40代の女性

-健康やライフスタイルへの意識が高い

-20代~40代の共働き世帯

-美容への意識が高い

-トマトのリコピンやGABAの成分に魅力を感じる

  • 更年期や消化不良の女性

-更年期の体のだるさや体調不良がある女性

-トマトに含まれるリコピンに魅力を感じる更年期の女性

<適応するマーケット>
①トマトの美容成分を打ち出す「美容トマト」ブランド市場
-ドロップファームの美容トマト
-ピュレマルシェ
-銀座トマト

②トマトでの更年期対策を打ち出す「更年期向けトマトブランド市場」

<市場規模>
・当社が属する茨城県は、トマトの売上高主要4地域に含まれている

・茨城県〇〇市はトマトの生育に必須の日照が十分確保できる

・2020年の売上高と比べ2023年の売上高は2.5倍となった

<目標となる時期>
①2024年7月中旬:
-トマトの苗を植える

②2024年8月初旬:
-トマトのパッケージデザインの決定、発注
-トマトの宣伝用リーフレット、ポスターの決定、発注

③2024年9月中旬:
トマトの収穫、試食会

④2024年9月下旬:
-トマトの出荷
-トマトブランドのPR開始
-トマトの出荷開始

(予想スケジュール)
①2024年6月初旬:ものづくり補助金の採択結果
②2024年6月下旬:ものづくり補助金の交付申請
③2024年7月下旬:ものづくり補助金の補助事業開始

<目標となる売上規模>

現在:平均2,600万円(2020年~2023年の合計)

今後:平均3,600万円(2025年~2028年の合計)

<量産化時の製品等の価格>

現在:600円(中玉トマト2つ)

今後:450円(中玉トマト2つ)

参考価格:
A社  700円
B社  550円
C社  600円

コスト削減目標:
1年目 150万円、2年目、200万円、3年目 250万円

公募要領では、その2についても「必要であれば図表や写真を用い、具体的かつ詳細に記載してください」と補足があります。そのため、記載例の場合は自社のトマト市場での立ち位置のイメージ図や競合他社のトマト価格表などを加えてもよいでしょう。

また、公募要領にある「その2」の説明では、参考情報として経済産業省の統計分析ツール「グラレスタ」が紹介されています。グラレスタとは、国が公開する業界別の過去の5年〜10年分のデータをグラフにできるツールで、グラフを事業計画に入れると事業計画の客観性が増す可能性があります。

事業計画書の「その2:将来の展望」では、事業者が行う補助事業を第三者的な目線で売ることを前提に分析します。事業計画はできるだけ事実やデータに基づくことが求められるので、競合他社を調べた結果や自社のアンケート結果などのデータがあれば、参考資料として挿入してください。

その3「会社全体の事業計画」の記載例

その3「将来の展望」の記載例を紹介します。その3を書く際は、事業者が行う事業全体の数値計画を売上高や営業利益などの表にして記載します。

数値計画ではものづくり補助金に申請する年度の数値を「基準年度」とし、事業計画を実施する年度までの数値を見込み値として記載します。

【その3:会社全体の事業計画の記載例】

基準年度
( 年 月期)
1年後
( 年 月期)
2年後
( 年 月期)
3年後
( 年 月期)
①売上高 2,5,000,000 2,6,000,000 2,7,000,000 2,8,000,000
②営業利益 21,500,000 22,500,000 23,500,000 24,500,000
③経常利益 21,620,000 21,740,000 21,860,000 21,980,000
④人件費 17,000,000 18,000,000 19,000,000 20,000,000
⑤減価償却費 1,000,000 1,000,000 1,000,000
付加価値額(②+④+⑤) 38,500,000 39,655,000 40,844,650 42,069,989
伸び率(%) 3% 3% 3%
⑥設備投資額 1,000,000 1,000,000 1,000,000
⑦給与支給総 17,000,000 17,255,000 17,513,825 17,776,532
伸び率(%) 1.5% 1.5% 1.5%

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金

たとえば、トマトの生産者の現在の年間の売上高が2,500万円だとします。その2で記載する表には、現在の年間売上2,500万円を基準年度という一番左の列に記入し、その後の推移となる見込み値を右側の列に記載します。

また、その3の表で2か所に記載する「伸び率」は、ものづくり補助金の基本要件を意味するため重要な数値です。1つ目の伸び率は「付加価値額」の伸び率を、2つ目の伸び率は「給与支給総額」の伸び率を表します。

その3の表に記載する数字を根拠のない数字にすると、ものづくり補助金では不採択となってしまいます。ものづくり補助金の添付書類に「事業計画書算出根拠」があるように、その3で記載する数値は決算書等の書類を元にした数値を記載してください。

適格性を満たす事業計画書の書き方

事業計画書の審査項目の1つ「補助対象事業としての適格性」を満たすには、対象事業や対象者の要件と基本要件を満たすことを意識したます。ものづくり補助金で採択されるには、基本要件を満たすことはもちろん、対象者や対象事業の要件も同時に満たす必要があります。

1点目の「対象事業や対象者の要件」については、事業計画に開業していること、革新的な製品やサービスに関する事業であることなどを記載します。また、電子申請システム「Jグランツ」にも同じように記載します。

2点目の「基本要件を満たすか」は、賃上げと付加価値額の増加に関する要件です。

ものづくり補助金では申請時にどれくらいの金額の賃上げや付加価値額の増加を見込めるのか、事業計画とJグランツに具体的な数値を記載する必要があります。

【補助対象事業としての適格性(基本要件)の記載例】

≪公募要領に記載された対象事業や対象者の要件を満たすか≫

<対象事業>

当社は創業20年の事業用窓ガラスを生産する企業である。このたび都市のヒートアイランド減少を改善するクール効果のある窓ガラスの試作を実施するため、オンデマンド細胞アレイ化機器を導入する。

<対象者>
資本金:5,000万円
従業員数:35人

<申請枠>

今回、当社は省力化(オーダーメイド)枠へ申請するが、同申請枠の要件である3~5年の事業計画期間内に、補助事業において、設備投資前と比較して労働生産性が2倍以上となる事業計画」を策定している。

具体的には、3年の間に従業員を25名雇い、労働時間×労働人数で計算される労働生産性は現在の28.5の2倍以上の60となる計画を実施する。

<補助対象経費>

事業全体にかかる費用:1,000万円

そのうち補助対象経費として申請する経費:600万円

内訳:

①機械設備・システム構築費(オンデマンド細胞アレイ化機器):400万円

②技術導入費(フォトリソグラフィー ):100万円

③専門家経費(光応答性ハイドロゲル):100万円

≪公募要領に記載された基本要件を満たすか≫

<補助事業実施前>
現在の付加価値額:3億円
現在の給与支給総額:1億円
現在の事業場内最低賃金:1,200円
<補助事業実施後>
3年後の付加価値額:4億円
3年後の給与支給総額:2億円
3年後の事業場内最低賃金:1,300円

たとえば、製造業の人が事業内容を記載する際、「当社は創業20年の~」と創業年数を記載すると、事業歴のある企業だとアピールできます。その際、「ヒートアイランド減少を改善する」といった具体的な製品内容を記載すると、ものづくり補助金のテーマにあった補助事業を行うこともアピールできます。

また、製造業の人がJグランツに入力する際に、事業者情報として資本金を5,000万円以下、従業員数を35人以下で入力したとします。製造業の対象事業者の要件は資本金3億円以下従業員数300人以下なので、製造業の人は対象事業者だと判断されます。

採択される事業計画書には、「対象事業者や対象事業に関する要件」と「基本要件」の両方を満たす記述が必要です。電子申請システム「Jグランツ」に入力する数値と事業計画書に記載する数値が一致しないと不採択になるので、提出前に一度確認してみてください。

なお、ものづくり補助金の対象の事業者や対象事業の要件は、業種ごとに異なる場合があります。事業計画書を作成する前に対象の要件を知りたい人は「ものづくり補助金の対象事業者や対象経費を解説」を参考に確認してみましょう。

賃金引上げ計画で賃上げを宣言する

基本要件の一つである「事業場内最低賃金≧地域別最低賃金+30円」を満たすには、「賃金引上げ計画の誓約書」で賃上げを宣言します。賃金引上げ計画とは、ものづくり補助金に申請する事業者が「基本要件を満たすために、賃金をいくら引き上げますよ」と宣言する計画です。

「賃金引上げ計画の誓約書」で賃上げを宣言するには、電子申請の際に電子申請システム「Jグランツ」の中にある「賃金引上げ計画の誓約書」へ入力します。「事業所のある都道府県」や「現在の時給」などの必要項目に入力して送信すると、事業場内最低賃金の基本要件を満たすことができます。

【賃金引上げ計画の概要】

項目 概要
形式 電子申請「Jグランツ」での入力
内容 ①申請時点の直近月の事業場内最低賃金
②直近決算における給与支給総額

注意点として、賃金引上げ計画は単に宣言すればよいものではないという点が挙げられます。補助金を受け取ったあとに賃上げをしていると事務局が確認できない場合は、事業者は補助金を返納しなくてはなりません。

ものづくり補助金の事業計画書では、賃上げの基本要件を満たすことを証明する必要がありますが、電子申請時の事業計画書で賃上げを宣言すれば証明できます。ただし、設定した賃上げ計画を実現できない場合は補助金の返納が求められる可能性があるため、電子申請で賃上げを宣言する際は実現可能な数値を入力しましょう。

なお、賃金引上げ計画は以前は添付書類としての提出が義務付けられていました。いまは電子申請システム「Jグランツ」での入力になりましたが、どのような内容を入力するのか気になる人は「賃金引上げ計画」の書式見本を確認してみてください。

付加価値額の求め方

付加価値額とは、営業利益+人件費+減価償却費の合計なので、事業者の営業利益や人件費の金額が分かれば求められます。ものづくり補助金の基本要件では事業計画の実施前と実施後の付加価値額を比較するため、計算する際は申請時の付加価値額と3年〜5年後の付加価値額の両方を算出します。

事業計画の実施前の付加価値額のことを、基準年度の付加価値額と言います。たとえば、2024年3月にものづくり補助金へ申請するなら、決算書を参考に2023年3月〜2024年2月までの1年分の営業利益、人件費、減価償却費を足すと、基準年度の付加価値額が求められます。

次に、事業計画を実施したあとの付加価値額を計算します。たとえば、3年間で事業計画を立てる場合は、基準年度から1年後、2年後、3年後の付加価値額をそれぞれ計算すれば、3年の事業計画後の付加価値額を求められます。

【3年の事業計画で付加価値額を計算する例】

基準年度の付加価値額 1年後の付加価値額の例 2年後の付加価値額の例 3年後の付加価値額の例
条件 営業利益 2,000万円
人件費 1,000万円
減価償却費 500万円
営業利益 2,030万円
人件費 1,050万円
減価償却費 520万5千円
営業利益 2,060万円
人件費 1,135万円
減価償却費 590万円
営業利益 2,090万円
人件費 1,100万円
減価償却費 6,100万445円
計算式 【付加価値額の求め方】
営業利益+人件費+減価償却費
【年度ごとに付加価値額が3%増額となる付加価値額の求め方】
新しい付加価値額=基準年度の付加価値額×(1+100÷3)
計算 付加価値額:
2,000万円+
1,000万円+
500万円
=3,500万円
付加価値額:
2,030万円+
1,050万円+
520万5千円
=3,605万円

※基準年度よりも105万円増額

付加価値額:
2,060万円+
1,080万円+
568万6,500円
3,713万1,500円

※1年目よりも108万1,500円増額

付加価値額:
2,090万円+
1,100万円+
6,100万445円
=3,824万5,445円

※2年目よりも111万3,945円増額

付加価値額の増額率 約3% 約3% 約3%

たとえば、基準年度の付加価値額3,500万円の事業者が1年後に付加価値額の基本要件を満たすには、まず1年後の付加価値額を計算する必要があります。1年後の付加価値額は「3,500万円×1.03=3,550万5千円」と計算できます。1年後の付加価値額は現時点では分からないので、目標とする付加価値額の増額率(伸び率)3%をかけると「3,500万円×3%=105万5千円」となり、1年後に目標とする付加価値額は105万5千円を足した3,605万5千円計算できます。

また、1年後の付加価値額が3,605万5千円となるように事業計画の数値を立てるには、「3,605万5千円」から基準年度の付加価値額3,500万円」を差し引きます。その際に求められた金額105万5千円を1年後の営業利益や人件費で増額すると、1年後の付加価値額3%の基本要件を満たす事業計画となります。

付加価値額の計算は、電子申請システム「Jグランツ」へ営業利益、人件費、減価償却費の数値入力を入力します。付加価値額は年平均成長率 3%以上でないと基本要件を満たせないので、3%以上になる数値を記載できる計画を立てていきましょう。

事業計画書の「その3:会社全体の事業計画」で作成した表の左列真ん中にある項目に「付加価値額」があります。付加価値額は②営業利益+④人件費+⑤減価償却費の合算なので、付加価値額が基本要件の「年平均成長率 3%以上」を超える数値計画を立てていきます。

公募要領に記載の審査項目をすべて反映する書き方

採択される事業計画書は、審査項目を反映する書き方で作成されている可能性があります。なぜなら、ものづくり補助金の公募要領には「書面審査は審査項目を基準に行う」と明記されており、複数の審査項目が並んでいるからです。

ものづくり補助金の審査項目は4つのカテゴリに分かれており、具体的には「補助対象事業としての適格性」「技術面」「事業化面」「政策面」の4つとなっています。

【ものづくり補助金の審査項目】

項目名 内容
①補助対象事業としての
適格性(基本要件)
  • 公募要領に記載の対象事業、対象者、申請枠の要件、補助対象経費の要件等を満たすか
  • 3年~5年で以下の数値を達成する事業計画を立て、実行するか
付加価値額の年平均成長率 +3%以上/年
給与支給総額の年平均成長率 +1.5%以上/年
事業場内最低賃金≧地域別最低賃金+30円
②技術面
  • 新製品・新サービスの革新的な開発または省力化、生産性向上に向けた取組となっているか
  • 「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」または「中小企業の特定ものづくり基盤技術及びサー ビスの高度化に関する指針」に沿った取組であるか
  • 試作品・サービスモデル等の開発における課題と目標が明確になっていて、達成度も明確に設定しているか
  • 課題の解決方法が明確かつ妥当であり、優位性が見込まれるか
  • 補助事業実施のための技術的能力が備わっているか
③事業化面
  • 社内外の体制や最近の財務状況等から、補助事業 適切に遂行できると期待できるか
  • 実施する事業計画が市場ニーズ、ユーザー、市場規模を考慮したものであるか
  • 事業計画の実施におけるスケジュールや実施方法も妥当であるか
  • 実施する事業計画のコストパフォーマンスが優れており、実際に実現できそうか
④政策面
  • 地域の特性を活かし、地域に雇用や高い経済的効果をもたらす取組であるか
  • ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行っているか
  • グローバル市場でもトップの地位を確保できる取組であるか
  • 先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、環境に配慮した事業の実施など、我が国のイノベーションを牽引し得る取組か など

1つ目の「補助対象事業としての適格性」の場合、基本要件を満たす事業計画書の書き方と同様です。基本要件を満たす事業計画書の書き方で記載すると、審査項目の一つ目は満たせます。

2つ目の「技術面」の場合、補助事業が革新的な製品・サービスの開発や生産プロセスの改善に関係するのかを問われています。たとえば「新製品・新サービスの革新的な開発」を実現するには、「当社の半導体技術は、市場では珍しい国産として高い品質を誇ります」といった書き方が有効です。

3つ目の「事業化面」の場合、補助事業が実際に行われる組織体制や資金調達ができているのかを問われています。たとえば「社内外の体制や最近の財務状況」の場合、社内と社外の組織図や貸借対照表の一部を引用し、事業化ができる体制が整っているとアピールする書き方が有効ですす。

4つ目の政策面の場合、国の政策に寄り添う事業者なのかという点が問われています。たとえば、「地域の特性を活かし、地域に雇用や高い経済的効果をもたらす取組であるか」の場合、「補助事業のために何名の新規雇用を計画している」といった計画を記載することで政策面を反映できます。

ものづくり補助金の審査項目の1つ目は基本要件や対象要件となるので、2つ目から4つ目をいかに反映するかが重要です。すべての審査項目を反映するのは簡単ではありませんが、できるだけ多くの審査項目を反映できるように工夫して事業計画書を作成していきましょう。

(1)補助対象事業としての適格性の記載例

補助対象事業としての適格性では、公募要領に定められた要件を満たしていると記載することが大切です。具体的には、電子申請「Jグランツ」に記載する従業員の数や「その3:会社全体の事業計画」の数値を入力することにより要件は満たせます。

たとえば、飲食店の場合、従業員数の要件は100人以下となるため、従業員数を2人で申請すれば「補助対象事業としての適格性」の一部を満たすことが証明できます。

審査項目「補助対象事業としての適格性」は、電子申請時の入力や「その3:会社全体の事業計画」の作成で反映できます。電子申請で入力する事業計画が添付する事業計画書と異なると不採択になるので、電子申請をする際は数値や文章が添付の事業計画書と同一になるよう留意してください。

(2)技術面の記載例

審査項目の技術面では、自社の事業計画が革新的な製品・サービスであるか、課題に対する解決方法が明確で具体的であるかが大切です。ものづくり補助金は単に大型の機械やシステムを補助してくれる補助金ではないので、事業者が革新的な補助事業をする点をアピールしていきます。

【技術面の記載例】

<補助事業が革新的製品・サービスである理由>

  • 価格面

現在、減農薬で糖度7度以上、ハリとツヤのあるトマトは中玉単価250円前後と高額である。
しかし、当社の補助事業により減農薬かつ美味しいトマトが中玉単価145円程度で提供できることになる。

  • 栄養面

トマトに含まれるリコピンの健康への寄与は、癌や心疾患・血管疾患へ効果があることが証明されている。

今回の補助事業によりスマートIoTを導入することで、トマトにおけるリコピンの含有率が7%アップする見込みである。

<当社の課題>

  • 減農薬にこだわり続けることでの価格の競争力低下

当社は1980年より茨城県で減農薬のトマト栽培を行うパイオニアである。当社のトマトは農薬を極力抑えているため、一般的な中玉トマトが単価100円前後のところ、当社は単価145円前後と約1.5倍の価格となっている。

  • 人手不足

当社は創業当時より家族経営を貫いてきたため、労働者の高齢化が進んでいる。現在、従業員数は代表を含め6名であるが、2023年の5月に創業者の〇〇が引退し、人手不足が顕著となっている。

今回の補助事業によりスマートIoTを導入することで、温度や湿度管理がデジタルで自動化されるため、人件費が30%抑えられ、B品のトマト率が約35%減少する見込みである。

技術面の書き方では、事業者の課題における達成度を具体的な数値で表すことも大切です。たとえば、トマトの生産者の場合、「現在はトマトのリコピン含有率は100gあたり約4g~8gだが、補助事業を行うことにより約3倍の約12g〜24gとなる」といった書き方ができます。

事業計画書で技術面に触れる際は、事業計画の3部構成の中のその2「将来の展望」の中で記載します。ものづくり補助金で採択された事例には、高い技術を誇る事業計画が複数見受けられたので、事業計画書を書く際は自社の技術面が伝わるように工夫してみましょう。

なお、17次と18次で公募される「省力化(オーダーメイド)」枠の場合は、省力化とオーダーメイド方式を反映する設備投資であることを事業計画書に記載しなければなりません。「省力化(オーダーメイド)」枠に申請する際は、省力化につながるオーダーメイド設備の導入を事業計画に加えましょう。

(3)事業化面の記載例

事業化面では「スケジュールが具体的であるか」「製品サービスの市場性があるか」「企業の収益性・生産性は向上するか」という視点での記載が大切です。どんなに素晴らしい事業計画であっても、実際に実行できないと補助事業としては成功と言えないからです。

【事業化面の記載例】

スケジュール

・当社は茨城県〇〇にあり、年間の平均気温は22度

・県内他地域よりも暖かい環境である

・トマト栽培は「暖地」のスケジュールに乗っ取り実施する

①2024年6月中旬:
-トマトの苗を植える

②2024年7月初旬:
-トマトのパッケージデザインの決定、発注
-トマトの宣伝用リーフレット、ポスターの決定、発注

③2024年8月中旬:
トマトの収穫、試食会

④2024年8月下旬
-トマトの出荷
-トマトブランドのPR開始
-トマトの出荷開始

製品サービスの市場性

・当社では、トマトの購入層を分析した

・2024年1月に株式会社〇〇にトマトの購入層のリサーチを依頼(別紙参照)

・その結果、トマトの購入層には以下のような結果が得られた

・この結果、オーガニックトマトを食す機会は通常のトマトよりも少なかった

・主に「病気にならないため」「広告やメニューをみて興味を持った」という理由が主である

・一方、〇〇の調査によると、海外での有機野菜の消費量は年々増えている

・このため、〇〇や□□等の施策により国内市場にも開拓できる余地があると分析する

<打開策>
①オーガニック食品の国内最大通販「〇〇」への出店
②補助事業で生産するトマトのリーフレットの作成

(既存顧客への配布、近隣スーパーへの置きチラシの依頼)
③美容系女性誌への広告出稿(別途見積もりあり)
④CO-OPいばらきへの営業と取扱依頼(既に一度打ち合わせ済み)

企業の収益性・生産性の向上

<収益性について>
補助事業により、当社の収益性は2023年度と比べ、2026年までに40.5%増加する見込みである

<生産性について>
補助事業により、当社の生産性は2023年度と比べ、2026年までに2.5倍に増加する見込みである

事業化面の内容は、事業計画の3部構成のすべてに少しずつ記載します。たとえば、スケジュールは「その3:会社全体の事業計画」で記載し、製品サービスの市場性は「その2:将来の展望」で記載します。

事業化面で書く内容は、事業計画全体に関係します。事業化面をしっかり書くと「実現化のためにしっかり練っている事業計画だ」と判断してもらえる可能性もあるので、できるだけ実際的な数値や表も含めるように工夫してみてください。

(4)政策面の記載例

政策面では「地域経済への貢献する取組か」「適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発をしているか」などの視点で記載します。政策面で大切なのは、事業者が国の政策を理解しているのか、国の政策に協力しているのかという2点です。

ものづくり補助金の採択事例を参考にすると、地域で雇用を増やす補助事業や地域のネットワークを活かした補助事業が複数採択されています。

【政策面の記載例】

<地域経済へ貢献する取組である理由>

  • 介護施設への提供

当社の開発する減農薬トマトは減農薬以外のトマトに比べリコピンの含有量が高く、高齢者や介護を必要とする人たちへの健康に貢献できる。個人向けの消費としてスーパーや小売店に卸すのと平行し、茨城県〇〇市の介護施設「〇〇〇」と2023年10月に契約。一週間にL階級のトマトを10パックずつ出荷する。

  • 小学生のトマト収穫体験

当社の畑のある800m先に、茨城県立〇〇小学校がある。当社は1990年より同小学校へトマト収穫体験を3年生〜6年生へ向け年6回実施している。今回の取組でスマートIoT機器を導入するため、農業へのデジタル機器の活用という視点で小学生の農業教育・食育へ寄与するものである。

事業計画書に政策面を書く際は、補助事業に「地域社会に貢献する」「ニッチ分野の世界で戦える製品・サービスである」といった面があるかを確認します。政策面が弱い補助事業の場合は、政策面の内容を補助事業に反映し、補助事業自体を政策面に寄り添ったものに改善するということも検討してみましょう。

事業計画書には事業計画書算出根拠を添付する

事業計画書の算出根拠の書き方は、事業計画書に記載した「その3:会社全体の事業計画」の数値がなぜそうなったのかの根拠を書きます。具体的には、事業計画書の「その3:会社全体の事業計画」に記載の「営業利益」「人件費」「減価償却費」それぞれの数値を分解した数値を記載します。

【事業計画書算出根拠の書き方】

営業利益の場合 基準年度
( 年 月期)
1年後
( 年 月期)
2年後
( 年 月期)
3年後
( 年 月期)
材料費 3,000,000 3,100,000 3,200,000 3,300,000
労務費 17,000,000 18,000,000 19,000,000 20,000,000
経費 1,500,000 1,400,000 1,300,000 1,200,000
人件費の場合 給与・賞与 10,000,000 11,000,000 12,000,000 13,000,000
各種手当 3,500,000 3,500,000 3,500,000 3,500,000
複利厚生費 3,500,000 3,500,000 3,500,000 3,500,000
減価償却費の場合 機械装置費 1,000,000 1,000,000 1,000,000

たとえば、営業利益の場合、事業計画書には「営業利益」と記載しますが、事業計画書算出根拠では「材料費」「労務費」「経費」などの具体的な内訳を書きます。

事業計画書算出根拠とは、事業計画書に記載する「その3:会社全体の事業計画」で書く数値の内訳です。事業計画書算出根拠は公募回により提出補法が異なり、事業計画書と別に添付することもあるので留意しましょう。

電子申請の記載内容も審査対象となる

ものづくり補助金では電子申請の記載内容も審査対象となります。そのため、ものづくり補助金の事業計画書を作成する際は、WordやExcelで作成する事業計画書だけでなく、電子申請時に入力する内容にも留意することが大切です。

電子申請は、公式サイトの電子申請ページから行います。その際、GビズIDプライムアカウントというIDを使ってログインすることになります。また、電子申請時にはかならず「工場や店舗等の事業実施場所が確定している」という項目にチェックを入れる必要があります。

【電子申請の入力時に注意すること】

  • 電子申請をする前にGビズIDプライムアカウントを取得する
  • 電子申請までに工場や店舗等の事業の実施場所が確定していること
  • 常時使用する従業員数の入力を間違えないこと
  • 電子申請の内容と添付する事業計画書の内容に相違がないように留意する

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金

電子申請では、申請する事業者の住所や代表者の名前などの基本情報と、事業計画書、加点について入力します。この時、常時使用する従業員数を間違えると補助率や補助金額などの数値もずれるので、注意が必要です。

また、ものづくり補助金には審査項目だけでなく「加点」もあります。加点とはものづくり補助金の審査で有利になる項目のことで、任意ですが取得すれば審査での評価が高まります。

電子申請を入力する際は、電子申請の入力内容に気を配り、加点を取得することが大切です。電子申請の内容と添付する事業計画書の内容に相違があると不採択になるので、電子申請時に入力する内容は添付する事業計画書の内容に一致させるように細かい部分も見直してみてください。

電子申請の記載内容には審査項目と加点項目を反映する

ものづくり補助金の電子申請に入力する際は、事業計画書と同じように、記載内容にも審査項目を反映させることが大切です。また、加点項目を取得した際は、電子申請の入力時に反映させるようにします。

【事業計画書の種類と審査項目・加点項目の関係】

審査項目 加点項目
電子申請での入力フォームの事業計画書 補助対象事業としての適格性
(基本要件)
すべての加点項目
電子申請時に添付する
PDF形式の事業計画書
  • 技術面
  • 事業化面
  • 政策面

たとえば、電子申請の入力フォームの場合、審査項目の1つ目「補助対象事業としての適格性
(基本要件)」とすべての加点項目について入力できます。

一方、添付する事業計画書の場合は、審査項目の「技術面」や「事業仮面」の説明を書くことは可能ですが、加点項目については書くスペースがありません。加点は電子申請の事業計画の中で選択し、添付書類として加点の証拠書類を送信することで証明できます。

ものづくり補助金の事業計画書を作成する際は、ExcelやWordで作成する事業計画書だけでなく、フォーム入力の内容や加点の内容も重要です。ものづくり補助金で採択されるには、審査項目を反映する補助事業、正しい書き方の事業計画書、そして複数の加点が必要だと留意してください。

加点が少ないと審査で不利になる可能性がある

採択される事業計画書を作成するには、加点項目を満たすことが欠かせません。なぜなら、ものづくり補助金の公式サイトにある「データポータル」をみると、ものづくり補助金では加点を多く取得する事業者ほど採択率が高いことがわかるからです。

【加点と採択率の関係】

加点の個数 採択者の割合
(13次~16次の合算)
最新回(16次)の採択率
0 20.5% 33.4%
1 27.3% 43.3%
2 25.4% 53%
3 18.2% 57.2%

参考:データポータル|ものづくり補助金

たとえば、ものづくり補助金の16次公募の場合、加点の数が0個だった人は採択率が33.4%でした。これに対し、加点の数が3個だった人は採択率が57.2%となり、加点が0個の人よりも採択率が23.8%増加した多いことがわかります。

ものづくり補助金の加点の種類は、公募要領に記載があります。18次公募では「成長性加点」「政策加点」「災害加点」「賃上げ加点」「女性活躍等の推進の取り組み加点」の5つのカテゴリがあり、全18種の加点があります。

ものづくり補助金で採択される事業計画書を作成するには、加点の取得が欠かせません。加点を取得すれば、電子申請システム「Jグランツ」で加点を申請することができるので、ものづくり補助金での採択を目指している人は1つでも多くの加点の取得を目指しましょう。

なお、加点の取得の難易度はさまざまです。条件に当てはまれば必要書類を添付するだけで取得できるものもあれば、取得するために何か月もかかる加点もあります。加点の取得方法を知りたい人は「ものづくり補助金の加点の取得方法を解説」を参考にしてみてください。

電子申請でも伸び率や給与支給総額の入力が必要となる

電子申請でも伸び率や給与支給総額の入力が必要となります。伸び率や給与支給総額は事業計画書の3部構成の「その3」の表に記載しますが、電子申請においては、「会社全体の事業計画」で売上高や営業利益の数値を入力します。

【電子申請で入力する「会社全体の事業計画」の例】

項目 入力例
売上高 2,5,000,000
営業利益 21,500,000
経常利益 21,620,000
人件費 17,000,000
減価償却費
付加価値額 38,500,000
伸び率
設備投資額
給与支給総額 17,000,000
伸び率
【自動入力される項目】
付加価値額増率:4%
給与支給総額増率:2%
地域別最低賃金:1,113円

電子申請で「会社全体の事業計画」を入力する際も、事業計画の「その3:会社全体の事業計画」と同じように、売上高や営業利益の数値を入力します。電子申請で入力をすると、入力欄の下にある「付加価値額増率」「給与支給総額増率」「地域別最低賃金」の3つの右側の数値が変わります。

付加価値額増率とは、事業計画の「その3:会社全体の事業計画」にある付加価値額の伸び率のことです。たとえば、会社全体の事業計画にある付加価値額の数値を38,500,000から40,000,000に変更すると、付加価値額増率が自動的に4%から5.03%に変化します。

給与支給総額増率とは、事業計画の「その3:会社全体の事業計画」にある給与支給増額の伸び率のことです。たとえば、会社全体の事業計画にある給与支給総額の数値を17,000,000から20,000,000に変更すると、給与支給総額増率が2%から3.17%に変化します。

地域別最低賃金とは、賃金引上げ計画で入力する地域ごとの最低賃金のことです。たとえば、東京都にある事業所の場合、2024年3月20日現在の地域別最低賃金は1,113円なので、事業者が電子申請で事業所の住所を入力すると、自動的に地域別最低賃金が1,113円に変化します。

ものづくり補助金の電子申請で事業計画を入力する際は、基本要件を満たせるよう、「付加価値額増率」や「給与支給総額増率」の数値に留意します。付加価値額増率は3%以上、給与支給総額は1.5%以上であれば基本要件を満たすので、送信する前に確認をしましょう。

事業計画書以外に必要な書類も用意する

ものづくり補助金に申請する際は、事業計画書以外に必要な書類も用意します。書類に不足があると不採択になるため、あらかじめ申請に必要な書類の種類と書き方を知っておきましょう。

【ものづくり補助金の必要書類の種類と概要】

必要書類の種類 概要
事業計画書
  • ものづくり補助金を使って、どのような事業を、どのような機械設備で行うのかを示す計画書
  • 書式に関する指定はないので、ExcelやWordで作成する
  • 全10ページ以内、PDF形式で保存する
決算書等

直近2年間の貸借対照表、損益計算書※、製造原価報告書、販売管理費明細、個別注記表

※特定非営利活動法人は活動計算書

従業員数の確認資料 【法人の場合】 法人事業概況説明書
【個人事業主の場合】 所得税青色申告決算書
労働者名簿
  • 様式の定めはない
  • 「事業者名」「従業員数」「従業員氏 名」「生年月日(西暦)」「雇入れ年月日(西暦)」「従事する業務の 種類」の記載があるものを作成する
※応募申請時の従業員数が21名以上で、上記(5)従業員数の確認資料 における期末の従業員数が20名以下の場合のみ必要

この他、申請時または交付申請時に必要な書類には「見積依頼書」があります。見積依頼書とは、事業者が導入する機械設備・システムの取り扱い業者へ見積を依頼する際に作成する書類で、採択された場合は交付申請の際に提出する必要があります。

ものづくり補助金で採択されるには、完成度の高い事業計画書に加え、不足のない添付書類を提出することも大切です。ものづくり補助金で事業計画書以外に必要な書類の揃え方を調べたい人は「ものづくり補助金で申請時に必要な書類の揃え方と記載例」を参考にしてみてください。

この記事のまとめ

ものづくり補助金で採択される事業計画書を書く際は、公募要領に記載されている「ルール」に従い、「基本要件」と「審査項目」を意識して記載することが大切です。なぜなら、ものづくり補助金の公式サイトには「公募要領をよく読み」申請手続きをするように注意書きがあるためです。

公募要領のルールに沿った事業計画書を書くには、全体を3部構成に分け、さらにPDF形式で10ページ以内にまとめます。10ページの事業計画書を3部構成で書くということは、1部につき約3〜4ページ以内に収めるということになります。

経済産業省と中小企業庁が運営する「ミラサポ」には「ものづくり補助金の書き方」という記事があります。ものづくり補助金の事業計画書を書く際は、当記事の記載例や「ものづくり補助金の書き方」を参考にして公募要領に沿った内容で自社の補助事業をアピールしていきましょう。

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