補助金ガイド

事業再構築補助金とは?対象や要件など概要をわかりやすく解説

2024/05/08

2022/3/31

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

事業を営む人の中には、事業再構築補助金への申請を検討している人もいますよね。その際、概要や入金までの流れを知りたい人もいるでしょう。

当記事では、事業再構築補助金の対象や要件などを解説します。事業再構築補助金の申請締切から入金までの流れも解説するので、申請予定の人は参考にしてみてください。

なお、当記事は事業再構築補助金の第12回公募要領をもとに作成しています。

事業再構築補助金は思いきった事業再構築に使える補助金

事業再構築補助金は、思いきった事業の転換や新たな分野への挑戦に使える補助金です。もともとコロナ禍で経営難となった事業者向けに作られた補助金で、2021年から公募が行われています。

たとえば、コロナ禍で経営危機となったことから事業再構築補助金を利用して、レストランから飲食料品小売業へ業態転換した事例があります。

また、経営危機となった旅行業者では、事業再構築補助金を利用して4K対応カメラやVRなどの最新デジタル技術を活用し「地域の祭りがテーマのオンラインツアー」を事業化しました。

事業再構築補助金は、新分野展開や業種転換などで利用できる補助金です。新しく事業を始めたい人や事業転換を考えている人は、事業再構築補助金の利用を検討してみましょう。

なお、事業再構築補助金は後払いの制度です。事業再構築補助金の申請後、審査や手続き、計画した事業の実施を経て、補助金が受け取れます。事業再構築補助金を利用する際は、事業計画における経費の支払い時には自己資金が必要となる点に留意しましょう。

どんな事業再構築が採択されているかは採択事例で確認できる

採択された事業者が、どんな事業転換や新分野展開してどんな事業の再構築を行ったかは、事業再構築補助金の公式サイトで確認できます。事業再構築補助金では、事業再構築補助金に申請して審査に通ることを「採択」といい、再構築を行う事業を「補助事業」といいます。

【事業再構築補助金の採択事例】
業種 採択事例
繊維工業・
染色整理業
【事業再構築の背景】
和装需要の減少
【事業の取組内容】
絹織物の高付加価値加工による新分野展開
プラスチック
製品製造業
【事業再構築の背景】
発泡樹脂成形品の成形加工・金型の設計・製作の需要の減少
【事業の取組内容】
電気自動車向けバッテリーケースの成形機等の設計および導入
水産物卸売業 【事業再構築の背景】
飲食店向けの鮮魚と加工商品の卸売が約半分に減少
【事業の取組内容】
一般消費者向けにネット体験型定置網販売サービスを開始
飲食業 【事業再構築の背景】
団体客の減少と筑穂牛の生産者の減少による経営危機
【事業の取組内容】
畜産事業に参入し、筑穂牛の生産者となり、食肉加工・食品販売を開始

参考:「補助金交付候補者の採択事例」|事業再構築補助金

たとえば、和装用白生地の繊維・染色整理業を営む企業では、絹織物の高付加価値加工による新分野展開の補助事業を行いました。和装の需要減少で加工工場の稼働ができなくなった一方で、コロナの影響を受け、マスクの抗菌や抗ウイルス加工の受注が増加したためです。

また、同じくコロナで経営危機に陥ったミシュラン一つ星店が、店の強みであるブランド牛存続と経営回復のため、畜産業へ参入した事例もあります。2度目の申請で無事採択され、ブランド牛の生産者となり食肉加工や食品販売に取り組む補助事業を行っています。

事業再構築補助金と聞いて「どんな補助事業を行えばいいのかよくわからない」という人は、事業再構築補助金の公式サイトの「採択事例紹介」を確認してみてください。

事業再構築補助金は利用条件が細かく決まっている

事業再構築補助金は利用するための条件が細かく決まっています。「対象者」「対象経費」「申請枠ごとの要件」などの条件を満たしたうえで、事業計画書を作成し、審査を受けます。

たとえば、対象経費は「あらかじめ定められた11種類の経費項目に当てはまるもの」である必要があります。補助事業で使用する経費がすべて補助されるわけではありません。また、申請枠によってそれぞれ補助金額や補助率が異なります。

「対象者」「対象経費」「申請枠ごとの要件」の中でも、さらに細かく条件が決まっています。事業再構築補助金に申請したい人は、それぞれの条件も確認しておきましょう。

対象者は中小企業者等および中堅企業等

事業再構築補助金の対象者は中小企業等および中堅企業です。事業再構築補助金に申請予定の人は、自社が申請対象であるか「資本金」「従業員数」「業種」などをもとに確認しましょう。

【中小企業者(会社または個人事業主)の定義】※一部抜粋
業種 資本金 従業員(常勤)
製造業、建設業、運輸業 ~3億円 ~300人
卸売業 ~1億円 ~100人
サービス業
(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)
~5,000万円 ~100人
小売業 ~5,000万円 ~50人

ゴム製品製造業
(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに
工業用ベルト製造業を除く)

~3億円 ~900人
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 ~3億円 ~300人
旅館業 ~5,000万円 ~200人
その他の業種(上記以外) ~3億円 ~300人

参考:第12回公募要領|事業再構築補助金

中小企業者の定義は、業種ごとに資本金や常勤の従業員の人数が決められています。卸売業では、資本金が1億円以下で、常勤の従業員は300人以下の企業が中小企業者です。

中堅企業は「資本金の額または出資の総額が10億未満の法人」であることや「常勤の従業員が2000人以下であること」などが定められています。当サイトを運営する株式会社SoLaboは認定支援機関として補助金の申請サポートを行っているため、自身の事業が事業再構築補助金の対象になるかどうかを確認したい人は無料診断からお問い合わせください。

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補助対象経費は11種類の経費項目に当てはまるもの

事業再構築補助金の補助対象経費は、あらかじめ定められている11種類の経費項目に当てはまるものです。申請者はあらかじめ、使いたい経費が事業再構築補助金で定められている経費項目に当てはまるものか、公募要領で確認する必要があります。

【補助対象経費項目】
経費項目 詳細
①建物費 建物の建築・改修、建物の撤去など
②機械装置・システム構築費(リース料を含む) 機械装置、情報システムの購入など
③技術導入費 特許権や商標権のライセンスなど
④専門家経費 コンサル料や専門家への謝金など
⑤運搬費 運搬料、宅配・郵送料など
⑥クラウドサービス利用費 Webツールなどのクラウドサービス利用費
⑦外注費 製品開発に要する加工、設計などの費用
⑧知的財産権等関連経費 特許権に関する士業の手続代行費用など
⑨広告宣伝・販売促進費 広告作成、媒体掲載、展示会出展など
⑩研修費 教育訓練費、講座受講 などの費用
⑪廃業費  ※産業構造転換枠のみ利用可能 廃止手続費、解体費などの費用

参考:第12回公募要領|事業再構築補助金

たとえば、機械装置費の場合、補助事業のために使用される「業務用冷蔵庫」「新製品の加工機械」「導入するシステムに必要なソフトウェア」などが補助の対象になります。

しかし、塀や広告塔などの構築物や、他の事業でも利用できるような「家具」「PCやプリンタ」「車両および運搬具」などの汎用性のある経費は対象になりません。

補助対象経費の項目は、対象経費ごとにさらに細かい規定があります。補助事業で使用予定の経費が補助対象となるか知りたい人は「事業再構築補助金における補助対象経費は何か?対象外になる経費も解説」を確認してみてください。

申請枠を選んで申請枠の要件を満たす必要がある

事業再構築補助金では、事業再構築の目的によって細かく分けられた「申請枠」があります。事業再構築補助金の申請者は、事業の目的にあった申請枠を選び、申請枠ごとに設定された要件を満たすことになります。

【申請枠ごとの要件】
申請枠(事業類型) 共通の要件 申請枠ごとの要件
(A)
成長分野進出枠
(通常類型)
①事業再構築要件
②金融機関要件
③付加価値額要件

④給与総額増加要件および市場拡大要件

⑤市場縮小要件

⑥補助率等引上要(補助率引上げを受ける場合)

(B)
成長分野進出枠
(GX 進出類型)

④給与総額増加要件

⑤GX 進出要件

⑥補助率等引上要(補助率引上げを受ける場合)

⑦別事業要件(過去公募回で採択または交付決定を受けている場合)

⑧能力評価要件(過去公募回で採択または交付決定を受けている場合)

(C)
コロナ回復加速化枠
(通常類型)

④コロナ借換要件または再生要件

(D)
コロナ回復加速化枠
(最低賃金類型)

④コロナ借換要件(任意)※

⑤最低賃金要件

※満たさない場合は補助率引き下げ

(E)
サプライチェーン強靱化枠

④国内増産要請要件

⑤市場拡大要件

⑥デジタル要件

⑦事業場内最低賃金要件

⑧給与総額増加要件

⑨パートナーシップ構築宣言要件

⑩別事業要件(過去公募回で採択または交付決定を受けている場合)

⑧能力評価要件(過去公募回で採択または交付決定を受けている場合)

(F)
卒業促進上乗せ措置
事業類型(A)~(D)いずれかに申請すること

②卒業要件

(G)
中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置

②賃金引上要件

③従業員増員要件

参考:第12回事業再構築補助金「公募要領(サプライチェーン強靭化枠は別「公募要領」)」|事業再構築補助金

事業再構築補助金を利用する際には、自社が行う事業再構の目的に合った申請枠を選び、申請枠ごとの要件を満たす必要があります。申請枠ごとの要件を詳しく知りたい人は「事業再構築補助金の申請要件とは?」を参考にしてみてください。

なお、「(F)卒業促進上乗せ措置」および「(G)中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置」は単独での申請はできません。成長分野進出枠またはコロナ回復加速化枠に申請する事業者が追加で申請できる上乗せ措置であり、要件を満たすことにより受け取れる補助金額が増えるため、要件を満たせる可能性のある事業者はあわせて申請を検討してみてください。

申請枠ごとに補助金額や補助率が決まっている

事業再構築補助金では、申請枠ごとに補助金額や補助率も決まっています。従業員の人数や企業規模によって補助金額や補助率が異なるため、申請枠を選ぶ際は、いくら補助されるのかもあわせて確認しましょう。

【申請枠ごとの補助金額と補助率】
申請枠(事業類型) 補助金額 補助率

成長分野進出枠

(通常類型)

【従業員数 20 人以下】

100 万円~1,500 万円(2,000 万円)
【従業員数 21~50 人】

100 万円~3,000 万円(4,000 万円)
【従業員数 51~100 人】

100 万円~4,000 万円(5,000 万円)
【従業員数 101 人以上】

100 万円~6,000 万円(7,000 万円)

※廃業を伴う場合は廃業費を最大2,000万円上乗せ

中小企業者等1/2 (2/3)
中堅企業等1/3 (1/2)

※()は大規模な賃上げを行う場合

成長分野進出枠

(GX 進出類型)

≪中小企業者等≫
【従業員数 20 人以下】

100 万円~3,000 万円(4,000 万円)
【従業員数 21~50 人】

100 万円~5,000 万円(6,000 万円)
【従業員数 51~100 人】

100 万円~7,000 万円(8,000 万円)
【従業員数 101 人以上】

100 万円~8,000 万円(1億円)


≪中堅企業等≫

100万円~1億円

中小企業者等1/2 (2/3)
中堅企業等1/3 (1/2)
※()は大規模な賃上げを行う場合

コロナ回復加速化枠

(通常類型)

【従業員数 5 人以下】100 万円~1,000 万円
【従業員数6~20 人】100 万円~1,500 万円
【従業員数 21~50 人】100 万円~2,000 万円
【従業員 51 人以上】100 万円~3,000 万円

中小企業者等2/3(※1)

中堅企業等1/2(※2)

コロナ回復加速化枠

(最低賃金類型)

【従業員数 5 人以下】100 万円~500 万円
【従業員数6~20 人】100 万円~1,000 万円
【従業員数 21 人以上】100 万円~1,500 万円

中小企業者等 3/4(2/3)
中堅企業等 2/3(1/2)

※「コロナ借換要件」を満たさない場合は()内の補助率に引き下げ

サプライチェーン強靱化枠

1,000 万円 ~ 5億円以内

※建物費がない場合は3億円以内

中小企業者等 1/2
中堅企業等 1/3
卒業促進上乗せ措置 各事業類型補助金額上限に準じて上乗せ 中小企業者等1/2
中堅企業等1/3
中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置 100 万円~3,000 万円 中小企業者等1/2
中堅企業等1/3
(※1)従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは3/4
(※2)従業員数5人以下の場合400万円、従業員数6~20人の場合600万円、従業員数21~50人の場合800万円、従業員数51人以上の場合は1,200万円までは2/3

参考:第12回事業再構築補助金「公募要領(サプライチェーン強靭化枠は別「公募要領」)」|事業再構築補助金

成長分野進出枠(通常類型)に申請する場合、101人以上の中堅企業であれば「補助金額は100万円~6,000万円」「補助率は1/3」です。仮に、150人の中堅企業が、成長枠で対象経費の総額1,500万円の事業をするならば、補助金額は500万円となります。

事業再構築補助金では、申請枠のほか従業員数や企業規模によっても補助金額や補助率が異なります。申請したい枠が決まっている人は、自社の従業員数や企業規模を把握したうえで補助金額や補助率を確認しましょう。

事業再構築補助金の申請から入金までの流れ

事業再構築補助金の申請から入金までの流れは、1年以上の長期日程となる可能性があります。申請してすぐ補助金をもらえるわけではありません。申請から入金まではかなり個人差がありますが、1年半以上かかる場合もあります。

【事業再構築補助金における申請から入金までの流れ】

「事業再構築補助金の全体の流れ」の図

参考:事業再構築補助金の第12回公募要領をもとに株式会社ソラボが作成

過去の事業再構築補助金では、公募回によって差はあるものの申請締切から採択結果発表まではおおむね1ヶ月から2ヶ月ほどでした。交付決定通知を受け取るまで、さらに1ヶ月から2ヶ月かかっていることから、交付決定通知の受領および補助事業開始後、実績報告まで約1年以上かかる可能性があります。

また、第10回公募からは採択後に事務局が実施する説明会への参加が必須となりました。申請前の参加は任意ですが、採択後に説明会に参加しない場合は交付申請をしても事務局に受け付けてもらえないため、採択者は忘れずに説明会へ参加しましょう。

申請枠によって補助事業の最長期間が異なり、各種手続きのタイミングも申請者によって異なるため、スケジュールには非常に個人差があります。事業再構築補助金の申請を検討している人は、申請してすぐ受け取れる補助金ではないことを留意しておきましょう。

なお、事業再構築補助金では、補助金を受け取ったあとに事業化状況報告が必要です。事業化状況報告では、事業の取組状況や総売上高などを報告します。事業化状況報告の内容が知りたい人は「事業再構築補助金の事業化状況報告について解説」を確認してみてください。

金融機関や認定経営革新等支援機関の確認を受けた事業計画書が必要

申請準備では、金融機関または認定経営革新等支援機関(以下、認定支援機関)の確認を受けた事業計画書が必要です。必要書類にはすべての申請枠で共通の書類と申請枠ごとに追加で準備する書類がありますが、事業計画書はすべての申請枠で共通の必要書類です。

事業計画書は、事業再構築の必要性や事業再構築の具体的な計画、収益計画などを記載して補助事業後に見込まれる成果を事務局へ伝える書類です。

また、申請要件のひとつである「金融機関要件」において、金融機関もしくは認定支援機関に事業計画書の確認をしてもらうことが定められています。認定支援機関とは、金融機関や中小企業診断士など、中小企業支援のレベルが一定以上あると国の認定を受けた機関のことです。

事業計画書の作成に取り掛かる際は、まず認定支援機関を探しましょう。認定支援機関要件の詳細は「事業再構築補助金における認定支援機関とは?選び方や役割を解説」も参考にしてみてください。

申請にはGビズIDプライムアカウントが必要になる

事業再構築補助金の申請には「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。GビズIDプライムアカウントは、申請時のシステムへのログインや、採択後の各種申請で必要になるアカウントです。

新たにGビズIDプライムアカウントを取得する場合、発行期間が2週間~3週間程度かかります。GビズIDプライムアカウントの取得手続きが遅れた場合も事業再構築補助金の申請期限は延長できないため、発行手続きは早めにしておくことが望ましいです。

事業再構築補助金の申請には、新たにGビズIDプライムアカウントを取得する必要があります。事業再構築補助金に申請予定の人は、余裕を持ってGビズIDプライムアカウントを取得しましょう。

この記事のまとめ

事業再構築補助金は、思いきった事業再構築に使える補助金です。申請後に審査があり、審査に通った人のみが事業の再構築や手続きをしたあと、補助金が入金されます。新分野展開や事業転換などを考えている人は、事業再構築補助金の利用を検討してみましょう。

事業再構築補助金は誰でも利用できるわけではなく「対象者」「対象経費」「申請枠ごとの要件」などの条件を満たす必要があります。また、補助金額や補助率は各申請枠で異なります。最新の公募要領で対象者や対象経費を確認し、目的に合った申請枠を選択しましょう。

事業再構築補助金の申請から入金までの流れには個人差がありますが、おおむね1年半以上かかります。また、申請時に提出する事業計画書は金融機関や認定支援機関からの確認が必須です。事前に申請締切や手続き方法を確認し、余裕をもって申請準備を行いましょう。

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