事業再構築補助金における売上高等減少要件と新事業売上高10%等要件を解説
2023/10/10
2022/4/7
事業再構築補助金に申請を検討している人の中には、売上高に関する要件がよくわからない人もいますよね。売上高等減少要件と新事業売上高10%等要件の違いを知りたい人もいるでしょう。
当記事では、事業再構築補助金における売上高等減少要件と新事業売上高10%等要件を解説します。売上高に関する要件がよくわからない人は、参考にしてみてください。
なお、当記事は第11回事業再構築補助金「公募要領」をもとに作成しています。
目次
売上高に関する要件には売上高等減少要件と新事業売上高10%等要件がある
事業再構築補助金において、申請の際に満たす必要のある要件に売上高等減少要件と新事業売上高10%等要件があります。どちらも売上高に関する要件ですが、達成条件が異なります。
要件 | 内容 |
売上高等減少要件 | 【要件の概要】 「最低賃金枠」や「物価高騰対策・回復再生応援枠」に 申請する場合に満たす要件のひとつ 【達成条件】 コロナ禍の売上高と現在の売上高を比較して、 現在の売上高が10%以上減少していること |
新事業売上高10%等要件 | 【要件の概要】 事業再構築の定義「新市場進出」の要件のひとつ 【達成条件】 事業計画期間終了後に新製品の売上高が総売上高の 10%以上になる事業計画をたてること (総付加価値額が15%以上でも可) |
「売上高等減少要件」の場合、コロナ禍の売上高と比較して、2022年以降の売上高が減少していることを示す必要があります。申請の際は、売上高の減少を証明する書類の準備も求められます。
「新事業売上高10%等要件」の場合、事業計画を作成する際「新事業で開発した新商品の売上高が総売上高の10%以上」となる計画をたてることが必要です。事業計画書に記載する際は「補助事業の具体的取組内容」や「収益計画」で売上や利益の詳細を示します。
事業再構築補助金の売上高に関する要件には、売上高等減少要件と新事業売上高10%等要件があります。「最低賃金枠」や「物価高騰対策・回復再生応援枠」、または事業再構築の定義で「新市場進出」を選択した人は、それぞれの要件が満たせているかを確認しましょう。
売上高に関する要件をはじめ「自社が申請の要件を満たせているのかわからない」という人は、当メディアを運営する株式会社SoLaboの無料相談からお問い合わせください。
無料診断売上高等減少要件ではコロナ禍と比較して現在の売上高の減少を示す
売上高等減少要件では、コロナ禍と比較して現在の売上高の減少を示します。第9回公募までは、すべての申請枠で満たす必要のある要件でしたが、第10回公募から「最低賃金枠」や「物価高騰対策・回復再生応援枠」に申請する際に満たす要件に変更されました。
2022年1月以降の連続する6か月間のうち任意の3か月の合計売上高が、 対2019~2021年の同3か月の合計売上高と比較して10%減少していること |
引用:第11回事業再構築補助金「公募要領」
売上高等減少要件は「2022年の連続する6か月間のうち3か月」と同じ月の「2019~2021年の3か月」の合計売上高を比較して、2022年の売上高が10%以上減少していることを示します。2022年の半年間の3か月は任意で、連続している必要はありません。
売上高等減少要件では、コロナ禍より現在の売上高が10%以上減少していることを示します。売上高等減少要件の証明には、確定申告書やその他の書類が必要であるため、申請の際は事前に必要書類の確認をしておきましょう。
なお、申請時の必要書類を知りたい人は「事業再構築補助金の必要書類は?共通の書類と枠別の書類を解説」を参考にしてみてください。
売上高等減少要件の例
売上高等減少要件を満たすには、特定の期間の売上高が10%以上減少していることを数値で示す必要があります。
【売上高等減少要件を満たす場合の例】
参考:第11回事業再構築補助金「公募要領」をもとに株式会社SoLaboが作成
売上高等減少要件を満たしているかを確認するためには、まず2022年以降の売上高と2019~2021年の売上高をそれぞれ比較して、2022年の売上高が低い月を選択します。月を選択する際は、各年同じ月の連続した6か月間の中から3つの月を選びましょう。
次に、売上高の減少の割合を調べるため、コロナ禍の売上に対する2022年以降の売上高の割合を調べます。図の場合「2022年の売上高の合計÷2020年の売上高の合計」を計算して0.78が導き出され、減少した割合は22%となり、要件を満たしていることがわかります。
【売上高等減少要件を満たさない場合の例】
参考:第11回事業再構築補助金「公募要領」をもとに株式会社SoLaboが作成
売上高等減少要件を満たさない場合の例のように、売上高の月が「連続する6か月間」から選択されていない場合や、売上高の減少が10%未満である場合は、売上高等減少要件を満たしていないことになります。
売上高は会社の全事業の合計で要件を満たす必用があるため、既存のメイン事業の売上高が減少していたとしても、他の事業の売上高が増加している場合、売上高の減少を示せない可能性もあります。事業再構築補助金に申請を検討している人は、メイン事業単体でなく、会社全体の売上高を確認してみてください。
売上高等減少要件は付加価値額の減少でも条件を満たすことができる
売上高等減少要件は、付加価値額の減少でも条件を満たすことができます。事業再構築補助金における付加価値額は「営業利益」「人件費」「減価償却費」を足して算出します。
「2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計付加価値額が、 2019~2021年の同3か月の合計付加価値額と比較して15%以上減少していること」 |
引用:第11回事業再構築補助金「公募要領」
付加価値額の減少で売上高等減少要件を満たす場合は「2022年の連続する6か月間のうち3か月」と同じ月の「2019~2021年の3か月」の付加価値額を比較して、2022年の付加価値額が15%以上減少していることを示します。
売上高等減少要件では、売上高が10%以上減少しておらず要件を満たせない場合など、代わりに付加価値額の減少で要件を満たすことができます。売上高の減少の根拠を示せない人は、付加価値額を確認してみてください。
売上高等減少要件を満たすことを示すには証明書類が必要になる
売上高等減少要件を満たすことを示すには、証明書類が必要です。
企業形態 | 売上高の減少にかかる証明書類 |
法人 | ①確定申告書別表一の控え1枚 ※2022年1月以降の半年間のうち、任意の3か月の比較対象となる、 2019~2021年の間の同3か月の売上がわかること ②法人事業概況説明書の控え(両面) ※①の確定申告書と同年度であること ③受信通知1枚(e-Taxで申告している場合のみ) ④確定申告書別表一の控え1枚 ※申請に用いる任意の3か月の売上がわかること ⑤法人事業概況説明書の控え(両面) ※④の確定申告書と同年度であること |
個人事業主 | ①確定申告書別表一の控え1枚 ※2022年1月以降の半年間のうち、任意の3か月の比較対象となる、 2019~2021年の間の同3か月の売上がわかること ②所得税青色申告決算書の控えがあれば提出(両面) ※①の確定申告書と同年度の月別売上の記入があること ③受信通知1枚(e-Taxで申告している場合のみ) ④確定申告書第一表の控え1枚 ※申請に用いる任意の3か月の売上がわかること ⑤所得税青色申告決算書の控えがあれば提出(両面) ※④の確定申告書と同年度の月別売上の記入があること |
参考:第11回事業再構築補助金「公募要領」をもとに株式会社SoLaboが作成
たとえば、2022年の「3月」「5月」「7月」の3か月の売上高を対象とした場合、確定申告書別表一の控えを準備する際は、比較対象となるコロナ禍の2020年の「3月」「5月」「7月」の売上高がわかる確定申告書が必要です。
個人事業主で白色申告の人は、月別の売上がわかるページが確定申告書にないため、収支内訳書を添付します。また、対象月の月間売上がわかる売上台帳や、帳面などの確定申告の基礎となる書類を提出しましょう。
「最低賃金枠」または「物価高騰対策・回復再生応援枠」に申請する際には、売上高の減少の証明が求められるため、事前に確定申告書や控えなどの書類をそろえておきましょう。
なお、付加価値額の減少で売上高等減少要件を満たす場合の書類には「月別の営業利益」「人件費」「減価償却費」がわかる、確定申告書のもととなる試算表などの書類が必要です。
証明書類を提出できない場合は売上高減少の確認に係る特例を確認する
売上高等減少要件の証明書類を提出できない人は、売上高減少の確認に係る特例を確認してみましょう。通常、売上高等減少要件の根拠を示すために、申請には確定申告書や控えなどの書類の提出が必要ですが、特例にあてはまる場合は他の書類に代えて申請ができます。
法人 |
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個人事業主 |
|
参考:事業再構築補助金公式サイト「電子申請用資料>売上高減少の確認に係る特例について」をもとに株式会社SoLaboが作成
たとえば、申請日までに個人事業者から法人化した場合は、特例にあてはまります。2022年の6か月間のうち3か月、もしくは2019~2021年の同じ3か月のひと月でも法人化前に該当する場合は、法人化を行う前の個人事業主としての売上を比較対象にできます。
(例:同じ3か月……2022年1月3月5月、2020年1月3月5月)
売上高等減少要件を示す書類を準備できない人でも、事業再構築補助金に申請できる場合があるため、自社が、売上高減少の確認に係る特例に該当するかを確認してみてください。
新事業売上高10%等要件では新商品が総売上高の10%以上になる計画をたてる
新事業売上高10%等要件では、新商品が総売上高の10%以上になる計画をたてる必要があります。総売上高の10%以上を満たすことが難しい場合は、総付加価値額の15%以上になる計画をたてることで、新事業売上高10%等要件を満たせます。
事業再構築の定義 | 要件 |
新市場進出 | ① 製品等の新規性要件 ② 市場の新規性要件 ③ 新事業売上高10%等要件 |
事業転換 | ① 製品等の新規性要件 ② 市場の新規性要件 ③ 売上高構成比要件 |
業種転換 | ① 製品等の新規性要件 ② 市場の新規性要件 ③ 売上高構成比要件 |
事業再編 | ① 組織再編要件 ② その他の事業再構築要件 |
国内回帰 ※1 | ① 海外製造等要件 ② 導入設備の先進性要件 ③ 新事業売上高10%等要件 |
※1 第11回公募では国内回帰が選択不可 |
参考:事業再構築補助金公式サイト「電子申請用資料>事業構築指針の手引き」をもとに株式会社SoLaboが作成
第11回公募においては国内回帰が選択できないため、新事業売上高10%等要件を満たす必要があるのは、事業再構築の定義で新市場進出を選択した人だけです。新事業売上高10%等要件を満たすには、事業計画終了後、新商品の売上高が総売上高の10%以上、または総付加価値額の15%となる計画を作成します。
新市場進出を選択した人は、新事業売上高10%等要件を満たす事業計画を作成しましょう。事業計画書の作成の仕方や記載例が見たい人は「事業再構築補助金の事業計画書の書き方と記入例を解説」を参考にしてみてください。
なお、事業転換や業種転換の要件である売上高構成比要件は、達成条件に目標数値が定められていません。売上高構成比要件は「事業計画終了後に、新事業の売上高がすべての事業の中で最も高くなること」であり、数値目標は事業者ごとに異なります。
新事業売上高10%等要件の例
新事業売上高10%等要件を満たすには、3~5年の事業計画終了後、新事業で開発した新商品の売上高が総売上高の10%または、総付加価値額の15%になる事業計画を作成する必要があります。
項目 | 補助事業 | 1年後 | 3年後 | 5年後 | 5年後の売上の割合 |
新商品の売上高 | 5 | 15 | 35 | 50 | – |
総売上高 | 150 | 200 | 350 | 500 | 10% |
総付加価値額 | 100 | 150 | 250 | 330 | 15% |
※小数点第2以下四捨五入
たとえば、ビジネス客向けウィークリーマンション事業を営んでいる事業者が、テレワークの需要増加にあわせて、レンタルオフィス業を始める場合、事業計画終了時点で、レンタルオフィス業の売上が総売上高の10%以上になる計画であれば要件達成となります。
新事業売上高10%等要件を満たすためには、事業計画終了後の売上や利益を想定した計画をたてる必要があります。事業計画をたてる際は、新製品の単価や事業に係る人件費なども洗い出し、根拠のある計画を作成しましょう。
この記事のまとめ
事業再構築補助金において、申請の際に満たす必要のある要件に売上高等減少要件と新事業売上高10%等要件があります。売上高構成比要件もありますが、売上高等減少要件と新事業売上高10%等要件と異なり、数値目標は事業者ごとに異なります。
売上高等減少要件では、コロナ禍より現在の売上高が10%以上減少していることを示します。売上高等減少要件の証明には、確定申告書やその他の書類が必要です。また、売上高等減少要件は、付加価値額の減少でも要件を満たすことが可能です。
新事業売上高10%等要件を満たすには、事業計画終了後、新商品の売上高が総売上高の10%または、総付加価値額の15%になる事業計画を作成する必要があります。事業再構築の定義で新市場進出を選択した人は、事業計画終了後の売上や利益を想定した計画をたてましょう。