リスキリングに使える補助金を解説

会社で社員に別の役割をさせたり、資格を取らせたりしたい人の中には、リスキリングに使える補助金を探している人もいますよね。その際、「自社は補助金の対象になるのか」「いくらもらえるのか」など、疑問点がいくつも出てくることでしょう。

当記事では、事業者がリスキリングに使える補助金の一覧を紹介します。会社員や個人事業主として個人で使える補助金も一覧で紹介するため、リスキリングに使える補助金を利用したい人は、当記事を参考にしてみてください。      

リスキリングに使える事業者向けの補助金一覧

事業者向けのリスキリングに使える補助金を一覧にしました。事業者が従業員に使える制度には、厚生労働省の「人材開発支援助成金」や東京都の「DXリスキリング助成金」があります。

【リスキリングに使える事業者向けの補助金・助成金等の一覧】
厚生労働省が管轄する制度
業種
制度の名称 概要
業種問わず
人材開発支援助成金
「人材育成支援コース」
  • 職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練を計画に沿って実施した場合に、 訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成
  • e-ラーニングや通信教育も含む
  • 支給限度額は1,000万円/年度(1人最大50万円)

    人材開発支援助成金
    「教育訓練休暇等付与コース」

    • 教育訓練休暇制度を導入し、労働者が当該制度を利用して自発的に訓練を受けた場合に、事業主に助成
    • 制度導入に対して30万円を補助

    人材開発支援助成金
    「事業展開等リスキリング支援コース」

    • 新規事業の立上げ等に伴い、新たな分野で必要となる知識や技能を習得させるための訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成
    • 支給限度額は1億円/年度(1人最大50万円)

    人材開発支援助成金
    「人への投資促進コース」

    • デジタル人材・高度人材を育成する訓練、等を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成
    • 支給限度額は2500万円/年度

    業務改善助成金

    • 最低賃金の引き上げとともに、生産性向上に資する設備投資や教育訓練等を行う際の費用の一部を助成
    • 支給限度額は最大600万円
    建設業

    人材開発支援助成金
    「建設労働者認定訓練コース」

    • 事業者が労働者に行う認定職業訓練または指導員訓練のうち、建設関連の訓練を実施した場合に経費の一部を助成
    • 支給上限額は1,000万円/年度
    建設業

    人材開発支援助成金
    「建設労働者技能実習コース」

    • 事業者が若年者等の育成と熟練技能の維持・向上を図るため、キャリアに応じた技能実習を実施した場合に経費の一部を助成
    • 支給限度額は最大10万円/人

    自治体 が管轄する制度

    地域
    制度の名称

    概要

    東京都

    DX リスキリング助成金

    • 都内中小企業者等が労働者に対し、民間の業者が提供するDXに関する職業訓練を実施した場合に、経費の一部を助成
    • 支給限度額は最大64万円/年度

    事業内スキルアップ助成金

    • 都内の中小企業等が従業員に対して、短時間の研修を実施した際の経費の一部を助成
    • 支給限度額は150万円
    愛知県

    あいち中小企業応援ファンド新事業展開応援助成金

    • 愛知県内の事業者が新製品・新商品の開発や販路拡大、これらにつながる人材育成をする際にかかる経費を一部助成
    • 支給限度額は最大300万円

    厚生労働省の「人材開発支援助成金」には、「人材育成支援コース」や「教育訓練休暇等付与コース」など複数のコースがあります。この中で、人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」は令和4年から8年度の期間限定の支援制度です。

    助成金の種類やコースにより、OJTなどの訓練の経費のみが支給される「経費助成」と、労働者の時給も支給される「賃金助成」があります。たとえば、人材開発支援助成金の「人材育成支援コース」の場合、経費助成・賃金助成・OJT実施助成と3種の助成を受け取れます。

    東京都や愛知県などの自治体も、リスキリング(人材育成)に使える補助金を実施しています。年度や自治体により実施状況は変わるので、最新情報については各自治体の公式ホームページで確認してみてください。

    人材開発支援助成金の対象は雇用保険適用事業所の事業主

    リスキリングの補助金として厚生労働省の「人材開発支援助成金」に申請する場合、雇用保険適用事業所の事業主である必要があります。この他、各補助金や助成金には要件(満たさなければならない条件)が設定されているため、あらかじめ要件も調べておくと申請の際にスムーズです。

    【人材開発支援助成金の概要】
    対象事業者
    • 雇用保険適用事業所の事業主である
    • 労働組合等の意見を聴いて「事業内職業能力開発計画」と「職業訓練実施計画届」を作成し、計画の内容を労働者に周知している
    • 職業能力開発推進者を選任していること
    • 従業員に職業訓練等を受けさせる期間中も、当該従業員に対して賃金を適正に支払っている
    • 事業展開等実施計画(様式第2号)を作成する
    対象事業者の規模
    • 資本金は5,000万円~3億円以下
    • 従業員数は50人~300人以下
    対象の労働者
    • 訓練実施期間中において、雇用保険の被保険者である
    • 訓練を受講した時間数が、実訓練時間数の8割以上である
    • 訓練等の受講を修了している
    助成対象の経費
    • 部外の講師への謝金・手当
    • 部外の講師の旅費
    • 施設・設備の借上費
    • 学科や実技の訓練等を行う場合に必要な教科書・教材の購入費 など
    経費助成 助成率:75%(60%)
    上限:50万円(30万円)
    ※(カッコ)は中小企業以外
    賃金助成 960円(480円)
    上限:1人1訓練1200時間
    ※(カッコ)は中小企業以外

    たとえば、対象事業者の職業能力開発推進者とは、従業員の職業能力開発や向上を担当する人のことです。通常は、人事・教育訓練等を担当する部署の部長などが選ばれています。

    また、事業内職業能力開発計画とは、経営方針や人材育成の基本方針などが記載された書類です。厚生労働省の公式ホームページに作成方法の「手引き」が掲載されています。

    事業者向けのリスキリングに使える補助金には厚生労働省の「人材開発支援助成金」が多いですが、その際、事業者は雇用保険適用事業所であることが大前提です。事業者が人材開発支援助成金を検討する際は、雇用保険適用事業所であるかを確認してみてください。

    リスキリングの目的により多種多様なコースを選べる

    リスキリングに使える「人材開発支援助成金」では、リスキリングの目的により多種多様なコースを労働者のために選べます。コースによっては座学で知識を得る訓練だけでなく、外部のセミナーやe-ラーニングなども含まれます。

    【人材開発支援助成金を使った社員のリスキリング教育の利用例】
    コース名 利用例
    人材育成支援コース

    ①人材育成訓練

    • スーパーでの接客を教えるために、従業員へ外部のマナー講師に依頼してOFF-JTを10時間以上受講してもらう

    ②認定実習併用職業訓練

    • 2年以上勤務している社員に向け、プロジェクトリーダーになってもらうため、社内でOJT、OFF-JTで資料作成セミナーを受講してもらう

    ③有期実習型訓練

    • 営業として雇った1年契約の派遣社員を正社員に切り替えるため、社内でOJT、OFF-JTで管理職研修を受講してもらう

    教育訓練休暇等付与コース

    社内でインボイスに精通した人材を育てるため、経理の社員にセミナー受講のための有給休暇を5日付与し、インボイス実務セミナーを受講してもらう

    事業展開等リスキリング支援コース

    農業の人材不足解消でドローンを導入するため、OFF-JTで専門家

    からドローンの操縦や実務への取り入れ方を10時間以上受講する

    人への投資促進コース
    1. 高度デジタル人材訓練
    2. 情報技術分野認定実習併用職業訓練
    3. 定額制訓練
    4. 自発的職業能力開発訓練
    5. 長期教育訓練休暇等制度

    たとえば、小売業のスーパーの場合、労働者に10時間以上クレーム対応や組織について外部研修を受講させると、「人材育成支援コース」の対象になります。仮に外部研修の費用が3万円だとすると、経費助成として13,500円(助成率45%の場合)、賃金助成として合計7,600円が支給されます。

    リスキリングの補助金を使うと、事業者は国に費用の半数以上を負担してもらい、従業員のスキルアップを実現できます。いまの従業員を別の部署へ移動させる際や、リーダーなどに昇格を計画している際は、国や自治体のリスキリング向け補助金を活用してみましょう。

    なお、各制度の要件は随時改訂される場合があります。最新の情報については、公式サイトも確認してみてください。

    申請は電子申請となりGビズIDが必要

    国の補助金に申請する際は「GビズIDプライム」が必要です。GビズIDとは、国の補助金に申請する際に必要となる無料で作れるアカウントです。一度GビズIDを取得すれば、他の補助金や助成金にも使用できます。

    【GビズID作成方法】

    1. 申し込みに必要なものを準備する
    〈オンライン申請の場合〉

    • マイナンバーカード
    • パソコン
    • メールアドレス
    • カード読み取り・SMS受信用のスマートフォン

    2. GビズIDホームへアクセスする

    3. GビズIDホームを中ほどまでスクロールし、青いボタン「GビズIDプライムをオンライン申請する」をクリックする

    4. 必要事項を入力し、送信する

    GビズIDを郵送で申請したい場合は、個人事業主は「印鑑登録証明書」と印鑑、法人は「印鑑証明書」と印鑑が必要です。郵送で申請する場合は、GビズIDの取得まで数週間かかることもあるため、時間に余裕をもって申請するようにしてください。

    なお、GビズIDでは「GビズIDプライム」の他に「GビズIDエントリー」も申請できます。補助金と助成金に申請する際は、GビズIDエントリーでは申請できないので、かならず「GビズIDプライム」の方を選択するようにしましょう。

    リスキリングに使える個人向けの補助金の一覧

    個人向けのリスキリングに使える補助金を一覧にしました。個人向けには経済産業省の「第四次産業革命スキル習得講座」や厚生労働省の「専門実践教育訓練」があります。

    【リスキリングに使える個人向けの補助金・助成金等の一覧】
    厚生労働省が管轄する制度

    教育訓練給付金制度

    一般教育訓練給付金

    • ハローワークを通してパソコンや英会話などの技能を身に着ける求職者へ、講座の費用の一部を支給する
    • 助成率:20%
    • 上限額:10万円

    教育訓練給付金制度

    専門実践教育訓練

     

    • ハローワークを通して美容や介護など実践的かつ専門的な技能を身に着ける求職者へ、講座の費用の一部を支給する
    • 助成率:50%
    • 上限額40万/年

    ※資格取得後1年以内に被保険者として雇用された場合の上乗せ措置あり

    教育訓練給付金制度

    特定一般教育訓練給付金


    ハローワークを通して速やかな再就職をするための大型自動車第一種や宅地建物取引士などの資格を
    身に着ける求職者へ、講座の費用の一部を支給する

    • 助成率:40%
    • 上限額:20万円/年
    自治体が管轄する制度
    大阪府スキルアップ支援金
    • 就職やリスキリングのための資格取得講座の受講費⽤を50%〜75%補助

    【建設業、トラック・バス・タクシードライバーに関する講座】

    補助率:3/4(75 %)

    補助上限額:なし

    【その他の講座(office、CAD、キャリアコンサルタント、簿記、宅地建物取引⼠、医療事務等)】

    補助率:1/2(50%)

    補助上限額:20万円

    個人がリスキリングのために使える補助金には「教育訓練給付金制度」があります。教育訓練給付金制度は、経済産業省が認定する第四次産業革命スキル習得講座(Reスキル講座)のうち、一定の条件を満たして厚生労働省が認定した講座を受講する場合に、受講費用の一部が補助されます。

    また、大阪府が実施する「大阪府スキルアップ支援金」のように、地方自治体が独自に行っている補助金などの支援制度もあります。地域の支援情報は、中小機構のポータルサイトJ-Net21の「支援情報ヘッドライン」でも検索できるため、お住まいの地域の補助金や助成金を知りたい人は利用してみてください。

    まとめ

    事業者向けのリスキリングに使える補助金を一覧にしました。事業者が従業員に使える制度には、厚生労働省の「人材開発支援助成金」や東京都の「DXリスキリング助成金」などがあります。

    リスキリングの補助金として厚生労働省の「人材開発支援助成金」に申請する場合、雇用保険適用事業所の事業主である必要があります。この他、各補助金や助成金には要件(満たさなければならない条件)が設定されているため、あらかじめ要件も調べておくと申請の際にスムーズです。

    また、個人向けのリスキリングに使える補助金を一覧にしました。個人向けの補助金や助成金には厚生労働省の「教育訓練給付金制度」のほか地方自治体が独自に実施する支援制度もあるため、中小機構のポータルサイトなどを活用して自身が申請できる補助金を検索してみてください。

    女性が起業するときに使える助成金を解説

    起業を考えている女性の中には、資金調達に悩んでいる人もいますよね。助成金や補助金を探している人もいるでしょう。

    当記事では、女性の起業に使える助成金を解説します。創業にかかわる補助金や女性の起業に使える支援制度も解説するので、これから起業を考えている人は参考にしてみてください。

    女性が起業するときに使える助成金がある

    女性が起業するときには、国や自治体が実施している女性向けの助成金を活用できます。起業するにあたって助成金を探している女性は、国や各自治体のホームページで女性の起業にかかわる支援制度がないか確認してみましょう。

    【女性が起業するときに使える助成金の例】
    東京都

    【助成金】

    【概要】

    • 東京都内の商店街で、新たに店舗を開業しようとする人の開業にかかる経費を
      一部助成する制度

    【対象者】※以下すべてにあてはまる人

    • 創業予定者または開業する個人事業主
    • 申請要件にあてはまる人

    【助成対象となる経費と上限金額】

    • 事業所整備費:400万円(助成対象となる事業所整備費の3/4以内)
    • 実務研修受講費:6万円(助成対象となる実務研修受講費の2/3以内)
    • 店舗賃借料:1年目15 万円/月、2年目12 万円/月
      (助成対象となる店舗賃借料の3/4以内)
      参考:募集要項(P2)

    【助成金入金の流れ】

    ① 事業計画作成
    ② 申請
    ③ 審査
    ④ 事業計画の実施&報告
    ⑤ 助成金額確定&支払い

    女性向けの助成金には、東京都が実施している「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」があります。東京都内の商店街で開業したい女性もしくは若者の創業にかかる経費を一部助成する制度です。

    東京都内の商店街で開業したいと考えている女性は、東京都の若手・女性リーダー応援プログラム助成事業の活用を検討してみてください。

    ただし、多くの助成金や補助金は後払いであり、開業にかかる経費を一旦自己負担する必要があります。助成金や補助金の利用を検討する際は、開業資金を自己負担する必要があることに留意しましょう。

    なお、資金面の支援制度には補助金もあります。厚生労働省が実施している支援は「助成金」、経済産業省が実施している支援は「補助金」という名称を使っている傾向がありますが、支援内容に大きな違いはないため、資金面の支援を受けたい人は補助金の利用も検討してみてください。

    起業にかかわる助成金や補助金は各自治体で設置されていることがある

    各自治体には女性に限らず、要件を満たせば使える起業向けの助成金や補助金があります。創業支援制度は各市区町村で実施していることが多いため、起業予定の地域に助成金や補助金がないか、自治体のホームページを確認してみましょう。

    【令和5年度に実施された起業にかかわる助成金や補助金の例】

    令和5年度には、各自治体で起業する人を支援する補助金が多く設置されていました。令和6年度の継続は令和6年2月22日現在未定ですが、年度ごとに助成金や補助金を設置している自治体もあるため、令和6年度に起業予定の人は自治体のホームページをこまめにチェックしておきましょう。

    なお、国が行う全国の事業者を対象とした補助金もあります。たとえば、小規模事業者持続化補助金は小規模事業者向けに販路開拓などを支援する補助金で、最大250万円が補助されます。そのほか、自社の事業内容や業種から使える補助金があるかなどを知りたい人は無料診断をお試しください。

    持続化補助金は利用できる?無料診断

    起業の悩みがある女性は各自治体の相談窓口や講座を活用する

    起業をするにあたって悩みがある人は、各自治体の相談窓口や講座を活用しましょう。各自治体で女性の起業を支援する活動をしており、女性ならではの起業に関する悩み相談や、起業を目指す女性同士で交流できる場があります。

    【各自治体における女性の起業支援活動の例】

    たとえば、札幌市では、起業を目指す女性ための相談窓口や女性起業家を招いての交流会などを実施しています。交流会では、起業に興味がある人や起業を目指している女性が、先輩女性起業家の話を直接聞くことができます。

    あいち・ウーマノミクス推進事業「ヒトハナ」は、愛知県の女性起業家を支援するプログラムです。女性起業家の事業のサポートや人脈を広げる場を設けており、起業して間もない人や興味のある人も参加できます。

    起業に関する悩みがある女性は、自身の地域で実施している女性起業家の支援活動を活用してみてください。

    起業のための資金調達を考えている人は融資の活用も検討する

    起業のための資金調達をする際は、融資を活用する方法もあります。融資は資金調達方法のひとつであり、返済の義務はありますが、前払いでお金を借りて起業のための資金に充てることができます。

    自身が使える助成金や補助金がない人は、国や各自治体で実施している融資制度の活用も検討してみましょう。

    【起業に使える融資制度】

    たとえば、日本政策金融公庫には、新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)という融資制度があります。新たに事業を始める女性や事業開始後7年以内の女性であれば、年齢問わず利用することが可能で、事業の設備資金や運転資金に活用できます。

    各都道府県でも融資制度を設けていることが多いため、後払いの助成金や補助金だけでなく前払いの融資の利用も検討したい人は、各都道府県のホームページなどで融資制度を検索してみてください。

    まとめ

    女性が起業するときには、国や自治体が実施している助成金や補助金を活用できます。これから起業を予定している女性は、国や各自治体のホームページで女性の起業にかかわる支援制度がないか確認してみましょう。

    要件を満たすことで使える、起業向けの補助金もあります。各自治体でそれぞれ補助金の内容は異なるため、補助金を探している人は自治体のホームページを確認してみてください。

    ただし、助成金や補助金は後払いであることがほとんどであるため、開業に必要な資金を一旦自己負担する必要があります。自己負担する資金に悩んでいる人は、融資の活用を検討するか、相談窓口などを利用して専門家に相談しましょう。

    補助金における消費税の税区分と返還の義務をわかりやすく解説

    補助金の申請を考えている人の中には、補助金に消費税がかかるのか気になる人もいますよね。また、会計処理における補助金の税区分や消費税の控除について知りたい人もいるでしょう。

    当記事では、補助金を受給した場合の消費税の扱いを解説します。補助金を利用した経費の消費税に関する内容もあるため、補助金の申請を検討している人は参考にしてみてください。

    補助金における消費税の税区分は不課税取引となる

    補助金における消費税の税区分は不課税取引です。消費税の税区分は「課税取引」「非課税取引」「免税取引」「不課税取引」の4種類に分けられ、補助金の場合は「不課税取引」に該当するため、補助金を受給予定の人はその前提を踏まえておきましょう。

    【消費税の税区分】

    課税区分

    具体例

    課税取引

    • 商品の販売
    • サービスの提供
    • 資産の貸付

    非課税取引

    • 金融取引
    • 公共料金
    • 学校教育

    免税取引

    • 輸出取引
    • 国際郵便
    • 免税店での販売

    不課税取引

    • 補助金や助成金
    • 給与や賃金
    • 無償の試供品

    消費税は商品やサービスの取引に対して課される税金です。 商品の販売やサービスの提供など、大半の取引は消費税の課税対象として「課税取引」に区分され、商品やサービスの価格に消費税が上乗せされることになります。

    一方、消費税の課税対象に区分されない取引も存在し、それらの取引は原則として消費税の課税対象外です。補助金や助成金など、事業者や個人の取り組みを支援するお金は消費税の課税対象外として「不課税取引」に区分され、消費税を含まない取引となります

    なお、「非課税取引」「免税取引」「不課税取引」はいずれも消費税の納税義務のない取引ですが、課税売上割合の計算における扱いが異なります。補助金の場合は不課税取引として課税売上割合を計算することになるため、補助金を受給予定の人は留意しておきましょう。

    補助金を受給した場合は納税額が変動する可能性がある

    補助金を受給した場合は納税額が変動する可能性があります。受け取った補助金に消費税は含まれていませんが、補助金は会計処理において収益として加算される関係上、納税額が変動する可能性があるため、補助金を受給予定の人はその前提を踏まえておきましょう。 

    たとえば、申請者が法人の場合は法人税を納税することになります。法人税は年間の所得金額に応じて税率が変動しますが、補助金は会計処理における収益として加算されるため、補助金を受給したことにより、法人税の納税額が変動する可能性があります。

    また、申請者が個人事業主の場合は所得税を納税することになります。所得税は年間の所得金額に応じて税率が変動しますが、補助金は会計処理における収益として加算されるため、補助金を受給したことにより、所得税の納税額が変動する可能性があります。

    なお、事業が赤字の場合は原則として法人税や所得税の納付が不要です。課税対象がないものとみなされ、補助金を受給したとしても会計処理における収益として加算されることはないため、補助金を受給予定の人は予備知識として覚えておきましょう。

    返還の義務が発生するのは仕入税額控除が適用されたとき

    仕入税額控除が適用された場合、補助金を利用した経費における消費税分の金額に対して、返還の義務が発生することがあります。補助金の性質上、仕入税額控除によって本来は消費税として納めるべき金額 も控除の対象となるためです。

    仕入税額控除の仕組み

    仕入税額控除が適用されると、「売上に含まれる消費税」から「仕入にかかった消費税」を差し引きできます。商品やサービスの取引において売上と仕入の両方に消費税が掛かっている場合、仕入の際に掛かった消費税を控除できるため、消費税の二重課税を防げます。

    補助金を受給した場合、補助金を利用した経費の消費税も仕入税額控除の対象となります。不課税売上である補助金を使用して課税仕入れを行うことにより、本来支払うべき消費税も控除されることになるため 、経費の消費税に相当する金額には返還の義務があります。

    なお、補助金の中には、消費税分を差し引いて申請するよう求めている制度もあります。事前に消費税額分を差し引いて申請することにより、仕入税額控除が適用された場合でも返還の必要はなくなるため、補助金の申請を検討する際は留意しておきましょう。

    返還の対象外となる条件を確認しておく 

    補助金を受給予定の人は、仕入税額控除において返還の対象外となる条件も確認しておきましょう。経費の内容や事業者の性質によっては返還の対象外となる場合があるため、補助金を受給予定の人は自身が返還の対象であるかを確認する必要があります。

    【返還の対象外となる条件】

    • 免税事業者の場合
    • 簡易課税方式で申告している事業者の場合
    • 公益法人等であり、特定収入割合が5%を超えている場合
    • 個別対応形式において、補助金の対象経費が非課税売上げに要する課税仕入のみの場合
    • 補助対象経費が非課税仕入のみである場合

    返還の対象外となる条件のひとつとして「免税事業者の場合」が挙げられます。免税事業者には消費税の納付義務がなく仕入税額控除を行う必要もないため、補助金を受給した場合も消費税に関する返還の義務が発生することはありません。

    また、返還の対象外となる条件のひとつとして「補助対象経費が非課税仕入のみである場合」が挙げられます。人件費や家賃など消費税が掛からない経費のみに補助金を充てる場合は 、補助金を受給した場合も消費税に関する返還の義務が発生することはありません。

    なお、仕入税額控除における返還の義務がない場合でも、仕入控除税額の報告は必須です。免税事業者や簡易課税方式を採用している事業者など、返還額が0円であっても「返還額0円」として各補助金の所定の方法により報告を行ってください。

     

    消費税の扱いに不安がある人は専門家に相談する

    補助金における消費税の扱いに不安がある人は、専門家に相談することも検討してみてください。専門家に相談することにより、補助金を受給した場合の消費税の計算方法や申告方法など、消費税の扱いをわかりやすく教えてもらえる可能性があります

    【相談先の具体例 】

    相談先

    特徴

    金融機関

    税金のほか資金調達に関する幅広い相談ができる

    士業(税理士、行政書士等)

    知識が豊富な専門家に相談できる

    商工会議所

    中小企業向けのさまざまな支援サービスを提供している

    民間のコンサル会社

    補助金の申請から受給後まで幅広くサポートを依頼できる

    消費税に関する相談先の具体例として挙げられるのは「金融機関」「士業」「商工会議所」「民間のコンサル会社」です。消費税に関する相談のほか、補助金の申請や資金調達に関するさまざまなサポートを依頼できる場合もあります。 

    ただし、専門家に相談する場合は依頼料として所定の費用がかかることがあります。無料相談を受け付けている機関もありますが、相談先やサポート内容によって費用が異なるため、専門家への相談を検討する際は留意しておきましょう。

    まとめ

    補助金における消費税の税区分は「不課税取引」です。消費税は商品やサービスの取引に対して課される税金ですが、補助金は商品やサービスの対価として支払われるお金ではないことから、消費税の対象外となります。

    しかし、補助金を受給する場合には納税額に影響を及ぼす場合があります。補助金は会計処理において収益として扱われるため、収益に応じて納税額が変動する所得税や法人税が、補助金を受給しない場合と比較して高くなる可能性があります。

    また、仕入税額控除が適用された場合、補助金を利用した経費の消費税分に対して返還の義務が発生する場合があります。返還の有無は補助金の用途や企業の状況によって異なるため、利用する制度の公式サイトや公募要領から消費税の扱いを確認しておきましょう。

    補助金を受給したときは確定申告が必要なのか?ポイントを交えながら解説

    補助金を受給したときは確定申告が必要なのか?ポイントを交えながら解説

    補助金を受給予定の人の中には、確定申告の要否が気になる人もいますよね。確定申告が必要になるならば、「勘定科目」「課税対象」「減価償却」など、それぞれの観点から確定申告するときのポイントが知りたい人もいるでしょう。

    当記事では、補助金における確定申告の要否を解説します。確定申告するときのポイントを交えながら解説するため、補助金を受給することにより、確定申告に関する不安や疑問がある人は参考にしてみてください。

    補助金の名称を含む支援制度は確定申告が必要になる

    補助金の名称を含む支援制度は確定申告が必要になる傾向があります。国や自治体の支援制度はいろいろありますが、補助金の名称を含む支援制度は確定申告が必要になる傾向があるため、補助金を受給予定の人はその前提を踏まえておきましょう。

    【補助金の名称を含む支援制度】

    • ものづくり補助金
    • IT導入補助金
    • 事業再構築補助金
    • 小規模事業者持続化補助金

    補助金の名称を含む支援制度として挙げられるのは「ものづくり補助金」です。試作品の開発や生産プロセスの改善など、ものづくり補助金は設備投資を支援する補助金のことですが、ものづくり補助金を受給した場合は原則として確定申告が必要です。

    また、補助金の名称を含む支援制度として挙げられるのは「IT導入補助金」です。ソフトウェアやアプリなど、IT導入補助金はITツールの導入を支援する補助金のことですが、IT導入補助金を受給した場合は原則として確定申告が必要です。

    ただし、「補助金の名称を含む支援制度は確定申告が必要になる」というのは、あくまでも傾向として言えることです。確定申告の要否は補助金の種類や受給者の状況によっても異なるため、補助金を受給予定の人はその前提を留意しておきましょう。

    確定申告が不要となる支援制度もある

    補助金の名称を含む支援制度は確定申告が必要になる傾向がありますが、確定申告が不要となる支援制度もあります。とくに、特定の条件にあたる支援制度は原則として確定申告が不要となるため、補助金を受給予定の人はその点を留意しておきましょう。

    【特定の条件にあたる支援制度】

    • 不課税扱いとなる支援制度
    • 非課税扱いとなる支援制度
    • 特例措置にあたる支援制度

    たとえば、不課税扱いとなる支援制度は原則として確定申告が不要です。不課税扱いとなる支援制度はいろいろありますが、雇用や生活に関する支援制度は不課税扱いとなる傾向があるため、雇用や生活に関する支援制度は原則として確定申告が不要です。

    また、特例措置にあたる支援制度は原則として確定申告が不要です。特例措置にあたる支援制度はいろいろありますが、感染症や被災地に関する支援制度は特例措置にあたる傾向があるため、感染症や被災地に関する支援制度は原則として確定申告が不要です。

    ただし、確定申告の要否はあくまでも支援制度次第です。確定申告の要否は支援制度の種類や受給者の状況によっても異なるため、確定申告の要否が気になる人は自治体の公式サイトや所定の問い合わせ窓口から確認することを検討してみましょう。

    確定申告のポイントは補助金の扱いを確認すること

    確定申告における補助金の扱いを確認しておかなければ、確定申告の手続きに時間がかかることも考えられます。申告漏れにつながるおそれもあるため、補助金を受給予定の人は確定申告のポイントとして補助金の扱いを確認しておきましょう。

    【補助金の扱いを確認するときの項目】

    • 勘定科目
    • 課税対象
    • 減価償却

    補助金の扱いを確認するときの項目として挙げられるのは「勘定科目」「課税対象」「減価償却」です。それぞれの視点から確認することにより、確定申告を円滑に進められる可能性があるため、補助金を受給予定の人はそれぞれの項目を確認してみましょう。

    勘定科目

    補助金の扱いを確認するときのポイントのひとつは「勘定科目」です。勘定科目の観点から補助金の扱いを確認することにより、確定申告を円滑に進められる可能性があるため、補助金を受給予定の人は勘定科目の観点から補助金の扱いを確認してみましょう。

    【勘定科目の観点から見る補助金の扱い】 

    項目 勘定科目
    受給した補助金 ・雑収入
    補助金を利用して取得した商品やサービスなど ・建物費
    ・人件費
    ・仕入費
    ・消耗品費
    ・広告宣伝費 など

    受給した補助金の勘定科目は「雑収入」です。事業の対価として得たお金は収入や収益として扱うことになりますが、補助金は国や自治体から支援されたお金となるため、確定申告するときは勘定科目を「雑収入」として扱うことになります。

    また、補助金を利用して取得した商品やサービスの勘定科目はそれぞれ扱い方が異なります。「建物費」「人件費」「仕入費」など、その性質ごとに勘定科目を割り振ることになるため、確定申告するときはその性質ごとに勘定科目を区分することになります。

    受給した補助金の勘定科目は「雑収入」ですが、補助金を利用して取得した商品やサービスの勘定科目はそれぞれ扱い方が異なります。その性質ごとに勘定科目を区分することになるため、補助金を受給予定の人は留意しておきましょう。

    課税対象

    補助金の扱いを確認するときのポイントのひとつは「課税対象」です。課税対象の観点から補助金の扱いを確認することにより、確定申告を円滑に進められる可能性があるため、補助金を受給予定の人は課税対象の観点から補助金の扱いを確認してみましょう。

    【課税対象の観点から見る補助金の扱い】

    課税対象の観点から見る補助金の扱い

    法人の場合、課税対象となるのは「利益にあたる部分」です。受給者が法人ならば、「受給した補助金から取得した資産を差し引いた利益にあたる部分(計算式:受給した補助金-取得した資産=利益)」を法人税として納めることになります。

    個人事業主の場合、課税対象となるのは「所得にあたる部分」です。受給者が個人事業主ならば、「受給した補助金から取得した資産を差し引いた所得にあたる部分(計算式:受給した補助金-取得した資産=所得)」を所得税として納めることになります。

    課税対象となるのは利益や所得にあたる部分です。法人の場合は「利益にあたる部分」を法人税として納めますが、個人事業主の場合は「所得にあたる部分」を所得税として納めることになるため、補助金を受給予定の人は留意しておきましょう。

    減価償却

    補助金の扱いを確認するときのポイントのひとつは「減価償却」です。減価償却の観点から補助金の扱いを確認することにより、確定申告を円滑に進められる可能性があるため、補助金を受給予定の人は減価償却の観点から補助金の扱いを確認してみましょう。

    【減価償却の観点から見る補助金の扱い】

    減価償却の観点から見る補助金の扱い

    たとえば、補助金を減価償却の対象となる設備の取得資金に充てた場合、その設備は「有形固定資産」に該当します。補助金の受給者が減価償却するならば、その前提を踏まえつつ、減価償却における会計処理を進めることになります。

    また、補助金を減価償却の対象となるソフトウェアの取得資金に充てた場合、そのソフトウェアは「無形固定資産」に該当します。補助金の受給者が減価償却するならば、その前提を踏まえつつ、減価償却における会計処理を進めることになります。

    減価償却の対象となるのは「有形固定資産」や「無形固定資産」などの固定資産です。減価償却の対象外となる固定資産もありますが、補助金を固定資産の取得資金に充てた場合は減価償却することも考えられるため、補助金を受給予定の人は留意しておきましょう。

    確定申告に不安がある人は専門家に相談することを検討する

    補助金を受給したことにより、確定申告に不安がある人は専門家に相談することを検討してみてください。確定申告に関する不安を解消できる可能性があるため、確定申告に不安がある人は専門家に相談することを考えてみましょう。

    【確定申告における相談内容の具体例】

    項目 具体例
    提出書類に関する相談 ・必要書類や添付書類が知りたい
    ・確定申告書の書き方が知りたい
    勘定科目に関する相談 ・勘定科目を区分するときの考え方が知りたい
    ・勘定科目を区分するときの具体例が知りたい
    減価償却に関する相談 ・減価償却するときの計算方法が知りたい
    ・減価償却するときの仕訳方法が知りたい
    圧縮記帳に関する相談 ・圧縮記帳するときの計算方法が知りたい
    ・圧縮記帳するときの仕訳方法が知りたい

    相談先の候補として挙げられるのは「税理士」や「会計士」などの専門家です。税理士や会計士などの専門家は確定申告に関する相談を受け付けているため、補助金を受給したことにより、確定申告に不安がある人は相談先の候補として検討する余地があります。

    ただし、税理士や会計士などの専門家に相談する場合は原則として相談料がかかることになります。事前予約も必要になるため、税理士や会計士などの専門家に相談したい人はその前提を踏まえつつ、専門家に相談するかどうかを検討してみましょう。

    まとめ

    補助金の名称を含む支援制度は確定申告が必要になる傾向があります。国や自治体の支援制度はいろいろありますが、補助金の名称を含む支援制度は確定申告が必要になる傾向があるため、補助金を受給予定の人はその前提を踏まえておきましょう。

    また、会計処理における補助金の扱いを確認しておかなければ、確定申告の手続きに時間がかかることも考えられます。申告漏れにつながるおそれもあるため、補助金を受給予定の人は確定申告のポイントとして補助金の扱いを確認しておきましょう。

    なお、補助金を受給したことにより、確定申告に不安がある人は専門家に相談することを検討してみてください。確定申告に関する不安を解消できる可能性があるため、確定申告に不安がある人は専門家に相談することを考えてみましょう。

    補助金は返済不要なのか?その他の支援制度を交えながら解説

    補助金は返済不要なのか?その他の支援制度を交えながら解説

    補助金に関する情報を調査している人の中には、返済の有無が気になる人もいますよね。補助金の返済が不要ならば、条件や目的に合う補助金を探してみたい人もいるでしょう。

    当記事では、返済の観点から補助金を解説します。個人事業主に該当する人や中小企業に所属する人など、補助金の返済に関する情報を調査している人は参考にしてみてください。

    補助金制度により支給されたお金は原則として返済不要

    補助金制度により支給されたお金は原則として返済不要です。不正受給や不正利用などの一部の例外を除き、補助金制度により支給されたお金は原則として返済不要となるため、補助金の返済に関する情報を調査している人はその前提を踏まえておきましょう。

    たとえば、銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受ける場合は借入金の返済が必要です。金融機関(貸主)と顧客(借主)による融資契約を前提としているため、銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受けるならば、返済義務が生じることになります。

    一方、都道府県や市区町村などの自治体から補助を受ける場合は受給額の返済は不要です。事業者や個人の取り組みを支援することを前提としているため、都道府県や市区町村などの自治体から補助を受けるならば、返済義務が生じることはありません。

    ただし、補助金を受給するには、まずは所定の要件を満たしている必要があります。必ずしも受給できるとは限らず、まずは所定の要件を満たしている必要があるため、各種補助金を検討している人はその前提を踏まえておきましょう。

    補助金に関する情報が知りたい人は「補助金とは?図解を用いながらわかりやすく解説」を参考にしてみてください。

    その他の支援制度により支給されたお金も原則として返済不要

    日本国内にある支援制度はいろいろありますが、その他の支援制度により支給されたお金も原則として返済不要です。補助金の返済に関する情報を調査している人はその前提を踏まえつつ、返済の観点からその他の支援制度に関する情報も押さえておきましょう。

    【日本国内にある支援制度の具体例】

    項目

    具体例

    助成金

    ・創業助成事業(東京都)
    ・キャリアアップ助成金
    ・トライアル雇用助成金

    交付金

    ・新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金
    ・過疎地域等自立活性化推進交付金
    ・農山漁村振興交付金

    給付金

    ・新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金
    ・介護休業給付金
    ・育児休業給付金

    その他の支援制度として挙げられるのは「助成金」です。日本国内にある助成金はさまざまですが、助成金の多くは雇用や労働に関する課題解決を目的としている関係上、助成金制度により支給されたお金は原則として返済不要です。

    また、その他の支援制度として挙げられるのは「給付金」です。日本国内にある給付金はさまざまですが、給付金の多くは生活や雇用に関する課題解決を目的としている関係上、給付金制度により支給されたお金は原則として返済不要です。

    なお、日本国内にある支援制度は原則として返済不要ですが、その詳細は支援制度ごとに異なります。募集期間や申請要件など、その詳細は支援制度によっても異なるため、返済不要の観点から日本国内にある支援制度が気になる人は留意しておきましょう。

    補助金と助成金との違いが知りたい人は「補助金と助成金の違いは?相違点と共通点からそれぞれの傾向を解説」を参考にしてみてください。

    規定に反する場合は返還を求められる

    補助金は原則として返済不要ですが、規定に反する場合は返還を求められることになります。規定に反してしまえば、受給額の一括返済を求められることも考えられるため、補助金の返済に関する情報を調査している人は予備知識として留意しておきましょう。

    【規定に反する行為の具体例】

    • 不正受給に該当した場合
    • 不正利用に該当した場合

    たとえば、不正受給に該当した場合、規定に反する行為として返還を求められることになります。「売上減少を捏造した」「申請書類を偽造した」など、所定の要件を満たしていない不正受給に該当してしまえば、受給額の一括返還を求められることも考えられます。

    また、不正利用に該当した場合、規定に反する行為として返還を求められることになります。「借入金の返済に充てた」「第三者に譲渡した」など、本来の目的とは異なる不正利用に該当してしまえば、受給額の一括返還を求められることも考えられます。

    なお、補助金の不正受給や不正利用が認められれば、罰金や懲役またはその両方が科される可能性もあります。内情を知る人や融通した人も同様の処罰となる可能性があるため、補助金の返済に関する情報を調査している人は予備知識として留意しておきましょう。

    不正受給者に認定された場合は公表されるおそれもある

    補助金の不正受給者に認定されてしまえば、その事実が公表されることも考えられます。不正に受給した者として政府機関により公表されることも考えられるため、補助金に関する情報を調査している人は予備知識として留意しておきましょう。

    たとえば、厚生労働省の公式サイトにある「雇用調整助成金(不正受給関係)」には、「不正受給の調査を実施している旨」や「不正受給事案は事業主名等を公表する旨」が記載され、不正や不適正に該当する場合は自己申告するように注意喚起されています。

    また、経済産業省の公式サイトにある「持続化給付金の不正受給者の認定及び公表について」には、不正受給者に認定された個人事業主や法人が公表され、受給額や延滞金を納付していない不正受給者に関しては、所在地や代表者氏名も公表されています。

    これらは助成金や給付金を文脈としていますが、補助金においても同様、不正受給者に認定された場合は公表されるおそれがあります。政府機関により公表されることも考えられるため、補助金の返済に関する情報を調査している人は予備知識として留意しておきましょう。

    まとめ

    補助金制度により支給されたお金は原則として返済不要です。不正受給や不正利用などの一部の例外を除き、補助金制度により支給されたお金は原則として返済不要となるため、補助金の返済に関する情報を調査している人はその前提を踏まえておきましょう。

    また、日本国内にある支援制度はいろいろありますが、その他の支援制度により支給されたお金も原則として返済不要です。補助金の返済に関する情報を調査している人はその前提を踏まえつつ、返済の観点からその他の支援制度に関する情報も押さえておきましょう。

    ただし、規定に反する場合は返還を求められることになります。規定に反してしまえば、受給額の一括返済を求められることも考えられるため、補助金の返済に関する情報を調査している人は予備知識として留意しておきましょう。

    補助金とは?図解を用いながらわかりやすく解説

    補助金が気になる人の中には、補助金の意味や定義が知りたい人もいますよね。テレビや新聞などのメディアを通じ、「〇〇補助金」という言葉を目にするものの、補助金の意味や定義がわからず、補助金とはどういうものなのかを知りたい人もいるでしょう。

    当記事では、補助金とは何かを解説します。図解を用いながら解説するため、補助金の意味や定義がわからず、その仕組みが気になる人は参考にしてみてください。

    補助金とは事業者や個人の取り組みを支援するお金のこと

    補助金とは、事業者や個人の取り組みを支援するお金のことです。補助金の定義は曖昧ですが、その意味を簡単に述べるならば、事業者や個人の取り組みを支援するお金(=補助するお金)となるため、補助金の意味や定義が知りたい人はその前提を踏まえておきましょう。

    たとえば、地方公共団体の補助金における支出の根拠は地方自治法第232条の2です。「普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる」と明記され、財政援助などの各種行政上の目的をもって交付されています。

    【補助金の仕組み】

    それぞれの補助金には、あらかじめ設定された予算があります。政策目標や財政状況など、多岐にわたる要因から毎年度の予算案が作成され、議会に提出された予算案の承認が下りることにより、それぞれの補助金に予算が割り当てられることになります。

    予算が割り当てられた後は補助金の募集が開始されます。専門のサイトや自治体のサイトなど、所定のサイトから補助金の募集が開始され、それらの所定のサイトから補助金を申請することにより、その補助金における申請手続きが進むことになります。

    申請手続きの流れは補助金ごとに異なりますが、いくつかの工程は共通しています。書類の提出や審査の実施など、いくつかの工程を踏まえ、事業者や個人の取り組みが採択されれば、その取り組みを補助してもらえる(=支給額を受け取れる)仕組みです。

    なお、事業者や個人の取り組みが採択されたとしても全額補助されるとは限りません。補助率や補助上限額など、補助金ごとに所定の条件が設定され、その条件の範囲内から支給額が決まるため、補助金に関する情報を調査している人はその点を留意しておきましょう。

    助成金との違いは曖昧

    補助金と助成金の違いは曖昧です。補助金と同様、国や自治体は助成金を明確に定義しておらず、補助金と助成金の線引きが曖昧なことにより、それぞれの違いを一概に言うことはできないため、補助金と助成金の違いが気になる人はその前提を踏まえておきましょう。

    【補助金と助成金における各項目の比較】

    項目 補助金 助成金
    管轄 経済産業省、地方自治体など 厚生労働省、地方自治体など
    審査 あり あり
    交付 原則後払い 原則後払い
    返済 原則不要 原則不要

    たとえば、審査が実施される点は補助金と助成金のいずれにおいても同じです。審査項目や審査内容はさまざまですが、補助金と助成金のいずれにおいても所定の審査を受けることになるため、補助金と助成金における共通点とも言えます。

    また、返済不要となる点は補助金と助成金のいずれにおいても同じです。不正受給や不正利用にあたる場合は返還を求められる可能性もありますが、補助金と助成金のいずれにおいても返済不要となるため、補助金と助成金における共通点とも言えます。

    ただし、「経済産業省が管轄の場合は補助金」「厚生労働省が管轄の場合は助成金」など、傾向として言えることはあります。それぞれの違いを一概に言うことはできませんが、傾向として言えることはあるため、補助金と助成金の違いが気になる人は留意しておきましょう。

    補助金と助成金の違いが知りたい人は「補助金と助成金の違いは?相違点と共通点からそれぞれの傾向を解説」を参考にしてみてください。

    補助金に関するQ&A

    馴染みがないことにより、補助金に関する気になる点や知りたい点がいろいろあると思います。今回は補助金に関する情報を調査している人が気になりそうな点をQ&A方式にしたため、補助金に関する情報を調査している人は参考にしてみてください。

    【補助金におけるQ&A】

    質問 回答
    補助金はいくら貰えますか? 支給額は補助金ごとに異なる。補助金ごとに補助上限額や補助率などの条件が定められ、それらの条件から支給額が決まる。
    補助金が貰えるのはいつですか? 補助金によっても異なるが、事業や活動が認められた後に支給額が交付される後払い方式が採用されている傾向がある。
    補助金は何種類くらいありますか? 都道府県や市区町村などの自治体が募集している補助金を含めれば、数千ほどの補助金があると言われている。
    補助金は常に募集されていますか? 常に募集しているとは限らず、補助金ごとに公募期間がある。締め切りがある場合はその期間内に申請することになる。
    審査に落ちた場合は再申請できますか? 原則として再申請は可能。複数の公募回に分かれている補助金の場合は次回以降の公募回に再申請することになる。
    助成金との併用は可能ですか? 原則として補助金と助成金の併用は不可。併用が不可となる場合は公式サイトや公募要領にその旨が記載されている。

    日本国内にある補助金はさまざまです。その数は多く、都道府県や市区町村などの自治体が募集している補助金を含めれば、あらゆる補助金が存在するため、補助金が気になる人は自身の目的に合う補助金を探すところから始めてみてください。

    また、補助金に関する情報を調査している人ならば、専門家に相談することも方法のひとつです。専門家に相談することにより、補助金の仕組みや活用事例を聞くことができるため、補助金に関する情報を調査している人は専門家に相談することも検討してみましょう。

    まとめ

    補助金とは、事業者や個人の取り組みを支援するお金のことです。補助金の定義は曖昧ですが、その意味を簡単に述べるならば、事業者や個人の取り組みを支援するお金(=補助するお金)となるため、補助金の意味や定義が知りたい人はその前提を踏まえておきましょう。

    また、補助金と助成金の違いは曖昧です。国や自治体は明確に定義しておらず、補助金と助成金の線引きが曖昧なことにより、それぞれの違いを一概に言うことはできないため、補助金と助成金の違いが気になる人はその前提を踏まえておきましょう。

    なお、補助金に関する情報を調査している人ならば、専門家に相談することも方法のひとつです。専門家に相談することにより、補助金の仕組みや活用事例を聞くことができるため、補助金に関する情報を調査している人は専門家に相談することも検討してみましょう。

    障害者雇用に使える助成金を解説

    事業を営んでいる人の中には、障害のある人の雇用を考えている人もいますよね。また、雇用する際の資金や環境の整備などの支援を受けたい人もいるでしょう。

    当記事は、障害者雇用に使える助成金を解説します。雇用する際のルールも解説するので、障害のある人の雇用を考えている人は参考にしてみてください。

    障害者の雇用に使える助成金

    障害者の雇用には、厚生労働省の障害者雇用に特化した雇用関係助成金が使えます。障害者を雇う際に、事業者側が受け取れる助成金で、個人事業主も利用できます。

    【障害者雇用に特化した助成金】
    • 特定求職者雇用開発助成金
    • トライアル雇用助成金
    • 障害者雇用安定助成金
    • 障害者作業施設設置等助成金と障害者福祉施設設置等助成金
    • 人材開発支援助成金

    参考:厚生労働省公式サイト「障害者の雇用に使える助成金

    雇用関係助成金を受給するには、厚生労働省の「雇用関係助成金共通の要件」と、それぞれの助成金における受給要件を満たす必要があります。

    共通の要件には、受給できる事業主の条件や、受給する際の留意事項が記載されています。受給を検討している人は、まず雇用関係助成金共通の要件を確認しましょう。

    また、それぞれの助成金やコースによって、事業主や雇用される障害者の受給の要件が異なります。自社で活用したい助成金がある人は、該当する助成金の支給要綱も確認してください。

    なお、特定求職者雇用開発助成金やトライアル雇用助成金を受給した場合、東京都千葉県の各市区町村など、各自治体の奨励金も受け取れる可能性があります。奨励金の受給要件が知りたい人は、自治体の公式サイトを確認してみてください。

    障害者や高齢者の雇用に使える特定求職者雇用開発助成金

    障害者雇用に使える助成金に、特定求職者雇用開発助成金の特定就職困難者コースと発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースがあります。障害者や高齢者などの就職困難者、発達障害者や難病患者を雇う際に使える助成金です。

    【特定求職者雇用開発助成金】
    コース 対象となる労働者 支給額 支払方法
    特定就職困難者コース
    短時間労働者
    以外の者
    60歳以上の高年齢者
    母子家庭の母等
    60万円
    (50万円)
    30万円×2期
    (25万円×2期)
    重度障害者等を除く
    身体・知的障害者
    120万円
    (50万円)
    30万円×4期
    (25万円×2期)
    重度障者等 240万円
    (100万円)
    40万円×6期
    (33万円※×3期)
    ※第3期の支給額は
    34万円
    短時間労働者
    60歳以上の高年齢者
    母子家庭の母等
    40万円
    (30万円)
    20万円×2期
    (15万円×2期)
    重度障害者等を含む
    身体・知的
    ・精神障害者
    80万円
    (30万円)
    20万円×4期
    (15万円×2期)
    発達障害者・難治性疾患
    患者雇用開発コース
    短時間労働者以外 120万円
    (50万円)
    1~4期:30万円
    (1~2期:25万円)
    短時間労働者 80万円
    (30万円)
    1~4期:20万円
    (1~2期:15万円)

    【支給要件】

    • ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介による雇用であること
    • 雇用保険一般被保険者としての雇用であること
    • 継続雇用が確実であること など

    ※中小企業以外の場合は表内の()の数字が支給される
    参考:厚生労働省公式サイト「特定求職者雇用開発助成金

    たとえば、特定就職困難者コースを活用した中小企業が、短時間労働者以外の障害者を雇った場合は120~240万円が支給されます。支給額や助成対象期間は、抱える障害の重さによって異なります。

    発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースの場合、中小企業が短時間労働者以外の障害者を雇った場合は120万円が支給されます。支給額や助成対象期間は、企業規模によって異なります。

    ただし、支給の上限額は、支給対象期に対象労働者へ支払った賃金の額です。上限を超えた支給はされないことに留意して、申請を検討しましょう。

    なお、支給対象期とは、雇用した日から最初の6か月を1期として、以降6カ月ごとに6期まで設定されている期間のことです。特定求職者雇用開発助成金を受け取るには支給対象期ごとに申請が必要になるため、必ず支給対象期の開始日から2カ月以内に申請を行いましょう。

    試用期間を設けて障害者を雇用したい場合に使えるトライアル雇用助成金

    障害者雇用に使える助成金には、トライアル雇用助成金の障害者トライアルコースと障害者短時間トライアルコースもあります。労働者の適正や職場との相性を見極めるため、試用期間を設けることで、お互いの働き方や環境に対する認識の違いを減らすことができます。

    【トライアル雇用助成金】
    コース 対象となる労働者 支給額(支給対象者1人あたり)
    障害者トライアルコース
    ・精神障害者 月額最大8万円を3か月
    月額最大4万円を3か月
    (最長6か月間)
    ・精神障害以外の障害者 月額最大4万円(最長3か月間)
    障害者短時間トライアルコース ・週10時間以上20時間未満働く人
    ・精神障害者または発達障害者
    月額最大4万円
    (最長12か月間)

    【支給要件】

    • 継続雇用を希望している労働者であり、障害者トライアル雇用制度を理解した上で、障害者トライアル雇用も希望している者
    • ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介による雇用であること
    • 障害者トライアル雇用等の期間について、雇用保険被保険者資格取得の届出を行うこと など

    参考:厚生労働省公式サイト「トライアル雇用助成金

    トライアル期間は原則3か月となっており、要件を満たせばトライアル雇用終了後も継続して雇用することが可能です。実際に、障害者トライアル雇用助成金を活用した企業では、8割以上の労働者が継続雇用されている実績があります。

    たとえば、障害者雇用で短期離職に悩んでいた事業者が、トライアル雇用助成金を活用して、障害者を継続的に雇用するための支援を受けた企業があります。助成金を使うことで、担当者の固定や優先順位を整理した指示など、労働者の特性に応じた環境整備や職場定着に取り組めた事例です。

    助成金を活用することで、地域障害者職業センターのジョブコーチ支援も受けることができるため、障害のある労働者を職場で直接支援してもらうことも可能です。

    トライアル期間は、一人あたり月額最大8万円受け取れます。障害者を継続雇用するための支援を受けたいと考えている人は、トライアル雇用助成金の活用を検討してみてください。

    障害者が働く際のサポートをしてもらえる障害者雇用安定助成金

    障害者雇用には、障害のある人が働く際にサポートを受けられる障害者雇用安定助成金も使えます。障害者雇用安定助成金には、事業主に雇用された支援者が対象者をサポートする雇企業在籍型と、支援者が職場へ訪問して対象者をサポートする訪問型の2種類があります。

    【障害者雇用安定助成金】
    種類 対象となる労働者 雇用形態 支給額
    企業在籍型
    精神障害者
    短時間労働者以外 12万円(9万円)
    短時間労働者 6万円(5万円)
    精神障害者以外
    短時間労働者以外 8万円(6万円)
    短時間労働者 4万円(3万円)
    訪問型
    精神障害者 ①②の合計

    ・1日の支援時間が4時間以上:16,000円×日数
    ・1日の支援時間が4時間未満:8,000円×日数
    ②※1
    ・訪問型職場適応援助者養成研修に関する受講料の1/2
    精神障害者以外 ①②の合計

    ・1日の支援時間が3時間以上:16,000円×日数
    ・1日の支援時間が3時間未満:8,000円×日数
    ②※1
    ・訪問型職場適応援助者養成研修に関する受講料の1/2

    【支給要件】

    対象労働者は、①身体障害者②知的障害者③精神障害者④発達障害者⑤難治性疾患の
    ある人⑥高次脳機能障害がある人、①~⑥以外で職場適応援助者による支援が必要で
    あると認められた人であること

    ※1受講料を事業主がすべて負担し、かつ、養成研修の修了後6か月以内に初めての支援を
    実施した場合

    ※中小企業以外の場合は表内の()の数字が支給される
    参考:厚生労働省公式サイト「障害者雇用安定助成金

    企業在籍型の場合、助成金の支給額は障害の種類や雇用形態ごとに金額が異なり、月額で最大で12万円支給されます。一方で、訪問型の場合は、支援時間ごとに決まっている金額に日数をかけた額が支給されます。

    助成金の支給対象となる期間は、障害のある労働者が職場に定着できるようにサポートを実施した期間です。企業型の場合は1回最長6か月、訪問型の場合は3か月単位で期間が定められており、3か月ごとに申請が必要になります。

    障害者雇用安定助成金の受給には、①受給資格認定申請②支給申請の2回申請をします。①受給資格認定申請は企業在籍型の場合、支援計画開始日から3か月以内、訪問型の場合は支援計画を策定する日、または支援計画開始日の2週間前までに申請が必要です。

    ②支給申請は、企業在籍型の場合、支給対象期間の開始日から2か月以内に申請します。訪問型の場合は3か月ごとの支給対象期ごとに、それぞれの支給対象期間の開始日から2か月以内に申請が必要です。

    環境整備に使える障害者作業施設設置等助成金や障害者福祉施設設置等助成金

    障害者を雇用する際、作業施設や設備などの環境を整備したい人は、障害者作業施設設置等助成金や障害者福祉施設設置等助成金が活用できます。障害のある労働者に配慮した職場の建物や、設備を整備する際に活用できる助成金です。

    【障害者作業施設設置等助成金と障害者福祉施設設置等助成金】
    種類 対象となる労働者 雇用形態 支給額
    (助成率をかけた額または限度額)
    障害者作業施設
    設置等助成金
    (設置・整備)
    身体障害者
    知的障害者
    精神障害者
    短時間労働者
    以外

    第1種作業施設設置等助成金※2
    【限度額】
    ・対象者1人につき月450万円
    ※同一事業所あたり同一年度について
    4,500万円を限度
    【助成率】
    ・2/3
    【支給期間】
    ・定めなし

    第2種作業施設設置等助成金※3
    【限度額】
    ・作業施設、附帯施設:1人につき
    月13万円
    ・作業設備:1人につき月5万円
    【助成率】
    ・2/3
    【支給期間】
    ・3年間
    短時間労働者※1

    第1種作業施設設置等助成金
    【限度額】
    ・対象者1人につき月225万円
    ※同一事業所あたり同一年度について
    2,250万円を限度
    【助成率】
    ・2/3
    【支給期間】
    ・定めなし
    第2種作業施設設置等助成金
    【限度額】
    ・作業施設、附帯施設:1人につき
    月6万5千円
    ・作業設備:1人につき月2万5千円
    【助成率】
    ・2/3
    【支給期間】
    ・3年間

    障害者福祉施設
    設置等助成金
    (賃借)
    身体障害者
    知的障害者
    精神障害者
    短時間労働者
    以外
    【限度額】
    ・対象者1人につき月225万円
    ※同一事業所あたり同一年度について
    2,250万円を限度
    【助成率】
    ・1/3
    【支給期間】
    ・定めなし
    短時間労働者 【限度額】
    ・対象者1人につき月112万5千円
    ※同一事業所あたり同一年度について
    1,125万円を限度
    【助成率】
    ・1/3
    【支給期間】
    ・定めなし

    【支給要件】

    • 共通
      ・支給対象労働者:身体障害者、知的障害者、精神障害者
      ・支給額の計算式:支給額=支給対象費用×助成率
    • 障害者作業施設設置等助成金
      ・支給対象となる施設:作業施設、附帯施設、作業設備
    • 障害者福祉施設設置等助成金
      ・支給対象となる施設:福祉施設、附帯施設、付属設備
    ※1 短時間労働者:重度身体障害者、重度知的障害者または精神障害者を除く
    ※2 第1種作業施設設置等助成金:作業施設等の設置・整備を建築等や購入により行う場合
    の助成金
    ※3 第2種作業施設設置等助成金:作業施設等の設置・整備を賃借により行う場合の助成金

    参考:(独)高齢・障害・求職者支援機構「障害者作業施設設置等助成金・障害者福祉施設設置等助成金

    障害者作業施設設置等助成金は、第1種と第2種にわかれています。支給対象となる労働者は、もともと障害のある人だけでなく、途中から障害を抱えた中途障害者にも活用できます。

    第1種作業施設設置等助成金は、作業施設や整備を建物や設備の購入する場合に使える助成金です。対して、第2種作業施設設置等助成金は、作業施設や整備を建物や設備の賃借料に使える助成金です。

    一方、障害者福祉施設設置等助成金は、障害者が働く職場の保健室や休憩室、食堂などの、福祉施設を対象とした助成金です。ただし、過去に申請経験がある場合、2回目の申請の際は、同じ労働者を対象とした申請はできません。

    なお、助成金を受け取れるのは審査に通った人のみです。申請を考えている人は、審査の際、支給の要件を満たしていないと判断された人は助成金を受け取れないことに留意して、申請を検討しましょう。

    障害者の教育訓練に使える人材開発支援助成金

    障害者雇用において、教育訓練に使える助成金が人材開発支援助成金の障害者職業能力開発コースです。障害のある労働者の能力開発事業に使う施設や設備、運営費に活用できる助成金です。

    訓練対象となる労働者 支給額(支給対象者1人あたり)
    ・身体障害者
    ・知的障害者
    ・精神障害者
    ・発達障害者
    ・高次脳機能障害のある人
    ・難治性疾患を有する人
    ・ハローワークの求職者
    かつ、職業訓練が必要で
    あると認められた人
    施設や設備の設置、整備、更新
    ・助成率:3/4
    ・はじめて助成対象となる施設や設備の設置、整備の場合:上限5,000万円
    ・施設または設備の更新の場合:上限1,000万円

    運営費
    【重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者】
    ・上限月額17万円
    ・教育訓練の受講時間8割以上の場合:1人あたりの運営費
    ×4/5×8割以上の受講対象者の数
    ・教育訓練の受講時間8割未満の場合:1人あたりの運営費
    ×4/5×8割未満の受講対象者の数
    【その他障害者】
    ・上限月額16万円
    ・教育訓練の受講時間8割以上の場合:1人あたりの運営費
    ×3/4×8割以上の受講対象者の数
    ・教育訓練の受講時間8割未満の場合:1人あたりの運営費
    ×3/4×8割未満の受講対象者の数
    ※重度障害者等が就職した場合、就職者1人当たりに10万円を
    かけた額が支給される

    【支給要件】

    ①または②のいずれかにあてはまる場合
    ①障害者職業能力開発訓練事業を行うために、訓練の施設または設備の設置や整備、
    または更新を行う場合
    ②障害者職業能力開発訓練事業を行う場合

    参考:厚生労働省公式サイト「人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)

    人材開発支援助成金を活用する際は、障害者職業能力開発訓練事業を実施し、障害のある労働者の能力開発を行います。障害者職業能力開発訓練事業で行う教育訓練には10項目の要件があり、すべて満たす必要があります。

    教育訓練の要件は「①運営管理者②訓練期間③訓練時間④訓練科目⑤訓練施設以外の実習⑥訓練人員⑦訓練担当者⑧訓練施設等⑨安全衛生⑩費用」とこまかく定められています。

    たとえば、①運営管理者の要件の場合「障害者の能力開発や能力向上のための教育訓練に関する知識があること」「厚生労働大臣が定める基準の教育訓練の事業、または同等の教育訓練事業をおおむね5年以上経験していること」を満たす必要があります。

    支給額は施設や設備、運営費によって異なります。施設や設備の支給額は「設置・整備・更新の費用×3/4」ですが、運営費は、一人あたりの運営費や受講率などを求める必要があります。

    詳細な支給額の計算式や要件などは、支給要綱に記載されています。人材開発支援助成金の要件や手続きを詳しく知りたい人は、厚生労働省公式サイトにある人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)の「支給要綱」を確認してみてください。

    障害者を雇用する際のルールを確認しておく

    障害のある人の雇用においては、障害者雇用促進法に基づく制度が定められています。制度を守れなかった場合、事業主に罰則が科されることがあるため、障害者の雇用を検討している人は雇用する際のルールを確認しておきましょう。

    【障害のある人の雇用のルール】
    障害のある人の雇用のルール 内容
    障害者雇用率制度

    ・従業員数が一定以上いる場合、身体障害者や知的障害者、
    精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にするという義務

    障害者雇用納付金制度 ・障害者を多く雇用している事業主の経済的負担を軽減して、
    事業主間の負担の公平を図るため設けられた決まり
    雇用の分野における障害者の
    差別禁止および合理的配慮の
    提供義務
    ・障害者に対して差別をしてはいけないという決まり
    ・対象者の障害の特性に配慮した必要な措置を実施する決まり
    (環境整備や仕事の割り振りなど)
    障害者職業生活相談員の選任 ・障害者を5人以上雇用する事業所では「障害者職業生活
    相談員」を選任して指導や相談を受けられるようにする決まり
    障害者雇用に関する届出 ・従業員が一定数以上の事業主は、障害者雇用状況報告を
    ハローワークに報告しなければならないという義務

    参考:厚生労働省公式サイト「障害者雇用のルール

    障害者雇用促進法に基づいて作られた制度のひとつに、障害者雇用率制度があります。従業員数を一定数以上雇用している企業は、障害者を規定の人数以上雇用しなければならない、という事業主の義務です。

    厚生労働省の「障害者の法定雇用率引上げと支援策の強化について」によると、障害者雇用率は令和6年度から民間企業では2.5%となるため、従業員数を40人以上雇用している企業は、障害のある人を1人以上雇用する義務が生じます。

    また、事業主間の障害者雇用にかかわる経済的負担を調整するために、障害者雇用納付金制度が設けられています。従業員数が100人を超える事業主で障害者雇用率が未達成の場合、不足している障害者数1人につき月5万円を行政に納付する必要があります。

    事業主は、障害者を雇用する場合、法律に基づいて設けられた制度を理解しておく必要があります。障害者雇用に関する助言や支援を受けたい人は、ハローワークや独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構などに相談してみてください。

    まとめ

    障害者の雇用に使える助成金には、厚生労働省の障害者雇用に特化した雇用関係助成金があります。雇用関係助成金を受給するには、厚生労働省の「雇用関係助成金共通の要件」と各助成金の支給要綱で定められている「支給要件」を満たす必要があります。

    障害者の雇用においては、障害者雇用促進法に基づいた制度が定められており、事業主の義務となるため満たさなければ罰則が科されます。障害者の雇用を検討している人は、事前に雇用する際のルールを確認しておきましょう。