補助金ガイド

印刷業でものづくり補助金を利用する事業者向け要件と採択事例の解説

2022/12/13

2022/5/19

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

ものづくり補助金は、事業者の革新的な製品・サービス等を開発するための試作品制作や生産性をあげるためのシステム構築にかかる費用を補助します。

ものづくり補助金は、印刷業者も応募が可能です。

当記事では「ものづくり補助金に応募しようかな?」と考える印刷業の事業者に向けて、ものづくり補助金の要件や採択事例について解説します。

印刷業は製造業として申請する

印刷業でものづくり補助金に応募する場合、業種は製造業として申請します。

ものづくり補助金の目的にそう事業で、資本金と従業員数が一定以内であれば、印刷業の事業者は、ものづくり補助金の対象となります。印刷業は、製造業として申請するため、資本金と従業員数の基準は次のようになります。

中小企業者
業種 資本金 常勤従業員
製造業 3億円 300人
特定事業者の一部
業種 資本金 常勤従業員
製造業 10億円未満 500人

ものづくり補助金における特定事業者とは、中小企業者の資本金額よりも大きく、大企業よりは規模の小さな中小企業~中堅企業のことです。

なお、東京都印刷工業組合や全日本印刷工業組合連合会などの印刷業に関わる組合は、ものづくり補助金では対象外となっているので注意しましょう。

ものづくり補助金の基本要件は3

ものづくり補助金に応募する印刷業者は、作成する3~5年の事業計画の中で、以下3つの基本要件をすべてクリアしなければいけません。

【ものづくり補助金の基本要件】
  1. 事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加。
  2. 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加。
  3.  事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30 円以上の水準にする。

※ものづくり補助金の公式サイトより「令和元年度補正・令和3年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領 (13次締切分)1.0版」を元に、株式会社ソラボが作成

要件のほとんどは、従業員の給与・賃金アップについてです。新たに行う設備投資と従業員への給与アップが相乗効果をうむ事業計画を立てられれば、ものづくり補助金の要件を満たすことになります。

この基本要件についての詳細は、ものづくり補助金の公式サイトからダウンロードできる公募要領より確認できます。

なお、事業計画の数値目標が達成されない場合、補助金の一部返還または全額返還を求められる可能性があります。

ものづくり補助金の補助枠

ものづくり補助金には、「一般型」と「グローバル展開型」の2つの型があります。一般型は、以下のような4つの補助枠に分かれています。

【ものづくり補助金の補助枠の種類】
申請型の名称 申請枠・型の名称
一般型
  • 通常枠
  • 回復型賃上げ・雇用拡大枠
  • デジタル枠
  • グリーン枠
グローバル展開型

応募する補助枠により、補助上限金額や追加要件などの詳細が異なります印刷業としてどのような事業計画を立てるのかをまず考え、その事業計画にあった補助枠を選びましょう。

一般型の補助額と補助率

一般型の補助額と補助率は、4つの申請枠ごとに設定されています。印刷業でものづくり補助金に申請する人は、申請枠ごとの補助額と補助率を確認する必要があります。

一般枠

通常枠とは、革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援するための枠です。

【通常枠の概要】
概要 革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援
補助額

従業員数 5 人以下 :100万円~750万円

6人~20人:100万円~1,000万円

21人以上 :100万円~1,250万円

補助率

1/2

(小規模企業者・小規模事業者、再生事業者 2/3)

※ものづくり補助金の公式サイトにある「公募要領 」をもとに株式会社ソラボ作成

通常枠に応募する印刷業者は、現在の印刷業で革新的な製品・サービスを開発するか、印刷業の生産性を高める工程の確立などで、ものづくり補助金の3つの要件を満たす事業計画を立てる必要があります。

いまの事業に付加価値を与える設備投資について、まずは事業の課題を分析するところからスタートすると良いでしょう。

回復型賃上げ・雇用拡大枠

回復型賃上げ・雇用拡大枠は、10次公募から新たにスタートした補助枠です。

回復型賃上げ・雇用拡大枠の大きな特徴は、前年度の課税所得がゼロで、従業員の給与アップや雇用拡大に取り組める事業者を対象としていることです。回復型賃上げ・雇用拡大枠を利用するには、基本の3つの要件に加えて、さらに3つの追加要件を満たす必要があります。

【回復型賃上げ・雇用拡大枠の概要】
追加要件

1)前年度の事業年度の課税所得がゼロであること

2)常時使用する従業員がいること

3)補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点において、その時点での給与支給総額、事業場内最低賃金の増加目標を達成すること。

補助金額

従業員数 5人以下 :100万円~750万円

6人~20人:100万円~1,000万円

21人以上 :100万円~1,250万円

補助率 2/3

※ものづくり補助金の公式サイトにある「公募要領 」をもとに株式会社ソラボ作成

デジタル枠

デジタル枠も、10次公募から新たにスタートした補助枠で、DX(デジタルトランスフォーメーション)をテーマにデジタル技術を駆使した設備投資を支援する補助枠です。デジタル枠の補助額と補助率は、次のとおりです。 

【デジタル枠の概要】
追加要件

(1)次の又はに該当する事業であること。

①DXに資する革新的な製品・サービスの開発

②デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善

(2)経済産業省が公開するDX推進指標を活用して、DXに関する自己診断をして、自己診断結果を提出していること。

(3)独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の 「一つ星」または「★★ 二つ星」いずれかの宣言を行っていること。

補助金額

従業員数 5 人以下 :100万円~750万円

6人~20人:100万円~1,000万円

21人以上 :100万円~1,250万円

補助率 2/3

※ものづくり補助金の公式サイトにある「公募要領 」をもとに株式会社ソラボ作成

グリーン枠

グリーン枠は日本政府が掲げるカーボンニュートラルに関する補助枠で、事業者が製品やサービスを生産する工程で二酸化炭素削減に取り組む際に補助されます。

【グリーン枠の概要】
追加要件

(1)次の又はに該当する事業であること。

①温室効果ガスの排出削減に資する革新的な製品・サービスの開発
②炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供の方法の改善

(2)3~5年の事業計画期間内に、事業場単位または会社全体での炭素生産性を年率平均1% 以上増加する事業であること。

(3)これまでに自社で実施してきた温室効果ガス排出削減の取組の有無を示すこと。

補助金額

従業員数 5 人以下 :100万円~1,000万円

6人~20人:100万円~1,500万円

21人以上 :100万円~2,000万円

補助率 2/3

※ものづくり補助金の公式サイトにある「公募要領」をもとに株式会社ソラボ作成

たとえば、印刷業では石油系物質のかわりに大豆などの植物性物質を使用するエコインクの開発などがグリーン枠の対象となります。

また、以下のような事業計画もグリーン枠の対象の候補となるでしょう。

【印刷業のグリーン枠の採択事例】
  • UV硬化インクプリンタ導入で印刷自動化
  • ラベル印刷品質管理体制の改善による効率化・不良流出ゼロ化計画
  • 検品工程自動化による広色域印刷物の短納期・低コスト生産の実現

グローバル展開型の補助額と補助率

グローバル展開型は、ものづくり補助金の一般型と並ぶ補助型です。すでに海外事業を行っている事業者が対象です。

【グローバル展開型の概要】
追加要件

海外事業を拡大・強化するための設備投資や生産性アップを支援する。本補助枠に応募する事業者は、以下①~④のいずれかに該当すること。

①海外直接投資
②海外市場開拓
③インバウンド市場開拓
④海外事業者との共同事業

補助金額 3,000万円
補助率

1/2

※小規模事業者等 2/3

※ものづくり補助金の公式サイトにある「公募要領」をもとに株式会社ソラボ作成

グローバル展開型では、一般型で通常枠などのグループに分けられていたように、海外直接投資やインバウンド市場開拓など、4つの類型に分かれています。応募の際には、公募要領に書かれた要件をよく読み、自社が要件をクリアするかを確認して申請しましょう。

【グローバル展開型の類型ごとの主な要件】

類型 要件
海外直接投資
  • 国内と海外事業所の双方が強化されること
  • 補助対象経費は海外事業所で1/2以上あること
  • 応募申請時に、海外事業所の実績がわかる資料を添付すること
海外市場開拓
  • 国内と海外事業所の双方を有し、事業計画書では補助金で支援された以上の金額で売上累計額が出せること
  • 応募時に、海外の具体的な顧客層がわかる資料を添付すること
インバウンド市場開拓
  • 国内に事業所があり、売上の1/2以上が訪日外国人(インバウンド)である事業計画書を立て、補助金で支援された以上の金額で売上累計額が出せること
  • 応募時に、海外の具体的な顧客層がわかる資料と新製品・サービス等のプロトタイプの試作時検証資料を添付すること
海外事業者との共同事業
  • 国内で補助事業を行う事業者であり、外国法人とともに共同研究や共同事業開発を行う事業計画であり、その成果の一部が国内事業者に帰属すること
  • 海外事業者の支出分は補助の対象外
  • 応募時に海外事業者との共同研究・開発における契約書・成果報告書を添付すること

※ものづくり補助金の公式サイトにある「公募要領」をもとに株式会社ソラボ作成

ものづくり補助金に申請する流れ

印刷業の事業者がものづくり補助金に申請してから補助事業を開始するまでには、以下のような手続きがあります。

【ものづくり補助金の申請の流れ】
  1. ものづくり補助金の公募・申請開始
  2. ものづくり補助金への申請
  3. 審査
  4. 採択/不採択通知
  5. (採択の場合)事業者が交付申請書の提出
  6. 交付決定日の通知
  7. 事業者による補助事業の開始(設備投資等で事業者が経費支払いをする

ものづくり補助金に応募する印刷業の事業者は、必要書類を揃え、電子申請に必要なGビズプライムアカウントに申請し、パソコンから応募することになります。ものづくり補助金の必要書類については、「ものづくり補助金で申請時に必要な書類の揃え方と記載例」から確認できます。

必要書類の中でも、ものづくり補助金の審査で特に重視されるのは、事業計画書です。

事業計画書では、新たな製品の開発や生産方式、提供方式を事業者がどのように行うのかを記載します。

なお、ものづくり補助金という名前の補助金ですが、製造業だけでなく情報サービス業などのサービス業も対象です。

ものづくり補助金の事業計画書の書き方が知りたい人は、「ものづくり補助金で採択される事業計画書の書き方」を参考にしてみてください。

ものづくり補助金の採択事例

ものづくり補助金の通常枠では、過去に以下のような事業計画で採択された事例があります。いずれも、革新的な製品またはサービスに関わるテーマですが、印刷業の通常枠では特に生産性を高める事業計画が多く採択されたように見受けられます。

【印刷業の採択事例】
  • 印刷色のコントロールを数値で押さえる「印刷物の工業製品化」を目指す
  • 労働環境の改善と高付加価値製本による内製化増で売上向上を目指す
  • バリアブル印刷ラベルの全数検査体制確立による受注の拡大 を目指す

     参考:ものづくり補助金の公式サイト「採択結果

    なお、回復型賃上げ・雇用拡大枠、デジタル枠、グリーン枠の3つの補助枠は、令和4年2月から公募されている第10次公募から、新しく追加された補助枠です。そのため、まだ採択事例はありません。

    グローバル展開型では、過去にトレーディングカードゲーム製造の内製化によるグローバル事業拡大が採択されていますが、全体的に印刷業での採択事例は一般型と比較すると少ないです。

    この記事のまとめ

    ものづくり補助金は、印刷業も対象事業です。印刷業でものづくり補助金に応募する場合、業種は製造業として申請します。応募するには基本要件を3つ満たす必要があります。また、応募する枠によっては追加要件もあるため、事前に確認しましょう。

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