補助金ガイド

ものづくり補助金でNPO法人は対象?申請要件と申請方法も解説

2024/05/02

2022/12/20

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

NPO法人(非営利活動法人)が対象の補助金を探している際、候補としてものづくり補助金を見つけた人もいることでしょう。その際、NPO法人がものづくり補助金を利用できるのか、条件を知りたい人もいますよね。

当記事では、対象となるNPO法人の要件と申請要件を紹介します。NPO法人で申請できる補助金を探している人は、参考にしてみてください。

なお、当記事は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版」を元に作成しています。

NPO法人はものづくり補助金の対象になる

2018年8月から、要件を満たすNPO法人はものづくり補助金の対象になりました。ものづくり補助金にNPO法人が申請する場合、「NPO法人ならではの要件」と「ものづくり補助金の要件」の両方を満たす必要があります。

【NPO法人がものづくり補助金に申請するための2種類の要件】

1. NPO法人ならではの要件
2. 申請者すべてが満たすべき要件

たとえば、「NPO法人ならではの要件」を満たすNPO法人がデジタル枠に申請する場合、NPO法人が基本要件を満たすことに加え、デジタル枠の要件も満たせば、ものづくり補助金を利用できます。

ものづくり補助金でNPO法人は対象になるものの、全てのNPO法人が対象になるわけではありません。NPO法人としてものづくり補助金の利用を考えている人は、NPO法人の要件と共通する要件の内容を把握しておきましょう。

なお、ものづくり補助金がどのような補助金なのか、総合的な内容を知りたい人は、「ものづくり補助金とは?概要と最新情報をわかりやすく解説」を参考にしてみてください。

ものづくり補助金に申請できるNPO法人の要件

ものづくり補助金に申請できるNPO法人の要件は、3つあります。要件には収益事業をしていることや従業員数の決まりがあり、特に経営力向上計画の認定については重要な要件と言えます。

経営力向上計画とは、企業や法人が自社の経営力を向上するために立てる計画です。経営力向上計画を立てて国に認められると、税制優遇や融資などの支援措置が与えられます。

【ものづくり補助金の対象となるNPO法人の要件】

  • 収益事業をしている
  • 従業員数300人以下
  • 経営力向上計画が認定されている

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金

たとえば、ワークショップで収益を得るNPO法人の場合、職員数が300人以下で経営力向上計画に認定されていれば、ものづくり補助金のNPO法人の要件をすべて満たします。

一方で、従業員数や経営力向上計画の要件を満たしていても、無料のセミナーや慈善事業のみを行い収益事業をしない認定NPO法人は対象外になります。

NPO法人がものづくり補助金に申請する際は、他の事業者にはない要件3点が追加されます。経営力向上計画について知りたい人は、当サイトの関連サイトの記事「経営力向上計画の申請をご検討の方、必見!申請書の書き方と注意点」を参考にしてみてください。

申請するすべての事業者が満たすべき要件

ものづくり補助金で申請者すべてが満たすべき要件は、大きく分けて、基本要件と申請枠ごとの要件の2つに分けられます。どの申請枠に申請するかにより要件が変わるので、申請枠を決める際は慎重に選びましょう。

2024年の18次公募の場合、ものづくり補助金には、事業者の革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みを支援する「省力化(オーダーメイド)枠」の他に、今後成長が見込まれる分野(DX・GX)に特化した製品・サービス高付加価値化枠’(成長分野進出類型(DX・GX)」など全4つの申請枠(類型含む)があります。

【ものづくり補助金の申請枠の種類と事業計画で満たすべき要件】

申請枠の種類 満たすべき要件

省力化(オーダーメイド)枠

基本要件+ 申請枠ごとの要件

製品・サービス高付加価値化枠

(通常類型)

基本要件 + 申請枠ごとの要件

製品・サービス高付加価値化枠(成長分野進出類型(DX・GX))

基本要件 + 申請枠ごとの要件

グローバル枠

基本要件 + 申請枠ごとの要件

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金

2024年の18次公募の場合、すべての申請枠と類型で個別の要件が設定されています。たとえば、製品・サービス高付加価値化枠(通常類型)の場合、基本要件と別に製品・サービス高付加価値化枠(通常類型)の要件が設定されています。

ものづくり補助金に申請する際は、選択する申請枠の要件も確認し、基本要件と申請枠の要件を両方満たす必要があります。各申請枠では追加の提出書類も求められるので、ものづくり補助金に申請する際は申請枠ごとの必要書類も揃えましょう。

なお、ものづくり補助金での必要書類に興味がある人は、「ものづくり補助金で申請時に必要な書類の揃え方と記載例」を参考にしてみてください。

基本要件

ものづくり補助金の基本要件とは、すべての申請者が満たさなければならない目標が定義された申請要件です。基本要件は、事業計画の中に反映させる必要があるため、ものづくり補助金に申請するNPO法人は、基本要件を満たす事業計画書を作成することになります。

【ものづくり補助金の基本要件】

  • 付加価値額を年平均成長率3%以上あげる
  • 給与支給総額を年平均成長率1.5%以上あげる
  • 事業場内最低賃金を地域別最低賃金から30円以上あげる

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金

たとえば、「付加価値額の年平均成長率が3%以上ある」という要件を満たすには、付加価値額を上げる計画を立てる必要があります。付加価値額は営業利益、人件費、原価償却費の合算なので、営業利益や人件費を向上させれば要件を満たせます。

ものづくり補助金の基本要件は、主に人件費や賃金に関する内容です。ものづくり補助金で設備投資を補助してもらいたい人は、NPO法人の職員の賃金や収益増加の計画を立て、要件を満たせるかを検討してみましょう。

なお、ものづくり補助金の事業計画の作成方法が知りたい人は、「ものづくり補助金で採択される事業計画書の書き方」を参考にしてみてください。

申請枠の要件

ものづくり補助金には申請枠ごとの要件とは、「省力化(オーダーメイド)枠」「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」に設定されている要件です。そのため、通常枠以外に申請するNPO法人は、各申請枠の要件を確認してみましょう。

【ものづくり補助金の申請枠ごとの要件】

申請枠の種類

追加要件

省力化(オーダーメイド)枠 3年~5年の事業計画期間内に、設備投資前と比較して労働生産性が 2倍以上となる事業計画を立てる

製品・サービス高付加価値化枠

(通常類型)

(1)3年~5年の事業計画期間内に、新製品・サービスの売上高の合計額が、企業全体の売上高の 10%以上となる事業計画を立てる

(2)金融機関からの資金調達をするる場合 は、金融機関による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書を提出する

製品・サービス高付加価値化枠(成長分野進出類型(DX・GX))

DX:DXに資する革新的な製品・サービスの開発であること

グローバル枠

 

  • 金融機関からの資金調達をするる場合 は、金融機関による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書を提出する
  • 海外への直接投資に関する事業であること など複数

※令和元年度補正・令和3年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領(13次締切分)1.0版を元に、株式会社ソラボが作成

ものづくり補助金には申請枠ごと要件が設定される場合があり要件の内容は公募回により変わる可能性があります。申請枠ごとの要件を満たさないと不採択になるので、申請する際は申請枠ごとの要件にも留意しましょう。

ものづくり補助金の申請はスケジュールに余裕をもつ

ものづくり補助金に申請するときは、スケジュールに余裕をもちましょう。申請準備や事業計画の作成など、ものづくり補助金を申請する際に必要な手続きが複数あるからです。

【ものづくり補助金の申請の流れ】

1. スケジュールを確認し、どの公募回でどの申請枠に申請するか決める
2. 各申請枠の最新の公募要領の全体を読む
3. 基本要件と申請枠の要件を公募要領で確認する
4. 認定経営革新計画に申請する
5. GビズIDプライムアカウントを取得する ※
6. 申請に必要な書類を準備する
7. ものづくり補助金に電子申請する
8. (事業者が設備投資をして補助事業を行う)

※Gビズプライムアカウントの申請から取得にかかる日数は、約3週間です。

たとえば、ものづくり補助金の申請枠で省力化(オーダーメイド)枠やグローバル枠を選ぶ場合、まずは申請枠の要件を満たせるのかを確認します。そのうえで、申請枠ごとの通常枠とは別の必要書類を用意することになります。

ものづくり補助金に申請するには複数の手続きをすることになります。ものづくり補助金を利用する際は、スケジュールに余裕をもち、ものづくり補助金の公募要領に沿った申請をするよう心がけましょう。

なお、ものづくり補助金で支払う設備投資のための資金は、最初に事業者が支払います。採択されてからすぐに発注や支払いができるよう、資金を準備しておきましょう。

申請スケジュールの確認方法 

ものづくり補助金のスケジュールの確認は、ものづくり補助金の公式サイトの上部「スケジュール」をクリックすると確認できます。ものづくり補助金は通年で公募している補助金で、2023年までは3~4ヶ月に一度締切がありました。

【例、ものづくり補助金の18次公募スケジュールの場合】

公募スケジュール 日程
公募開始

2024年 1月 31日(水)17:00~

申請受付

2024年 3月 11日(月)17:00~

応募締切 2024年 3月 27日(水)17:00まで

参考:スケジュール|ものづくり補助金

たとえば、18次の公募会の場合、公募開始は1月31日で、申請受付は3月11日となっています。公募開始はものづくり補助金の公式サイトで公募要領が公開される日で、申請受付日はものづくり補助金の公式サイトの上部「電子申請」から電子申請が受付開始となる日です。

申請日から逆算すると、Gビズプライムアカウントの取得や申請書類の作成をいつまでにすればよいのか、申請者の行動スケジュールも決められます。ものづくり補助金のスケジュールを見て申請したい公募する回が決まったら、申請したい申請枠も決めましょう。

必要書類を揃える

ものづくり補助金に申請する場合、「賃上げ」に関わる書類を含め、事業者は複数の書類を揃えることになります。NPO法人は経営力向上計画の作成も必要なので、ものづくり補助金に申請する際は、必要書類の種類を確認し、申請日までに漏れなく必要書類を揃えるようにしましょう。

【ものづくり補助金の基本的な必要書類】

  • 事業計画書
  • 賃金引上げ計画の誓約書
  • 決算書等
  • 従業員数の確認資料
  • 労働者名簿
  • 経営向上計画

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金

ものづくり補助金公式サイト「データポータル」によると、事業計画書の作成時間のうち最も採択率の高い時間は「40時間以内」でした。次いで採択率が高い時間は「50時間以内」でした。このことから事業計画書の作成には、数十時間かかることが推察されます。

また、経営力向上計画や労働者名簿など、事業計画書以外にも必要書類があります。書類の準備にかかる時間を予想してスケジュールに余裕を持って行動しましょう。

事業計画書

ものづくり補助金に申請するNPO法人は、ものづくり補助金の基本要件を満たす事業計画書を提出します。ものづくり補助金は申請するすべての事業者が採択される補助金ではなく、公募要領に沿った事業計画を立てる事業者が採択される仕組みなので、事業計画書の内容は大切です。

【ものづくり補助金の事業計画書で記載すべき審査項目4点】

(1)補助対象事業としての適格性
  • 基本要件を満たす3年~5年の事業計画を策定し、取組目標を達成する
(2)技術面
  • 新製品・サービスの革新的な開発であるか
  •  課題の解決方法が明確か
(3)事業化面
  • 社内外の体制や財政面から実行可能な補助事業であるか
  • 実行にあたり、市場ニーズを把握し、補助事業が影響するユーザーマーケットを考慮しているか
(4)制作面
  • 地域の特性を活かして高い付加価値を創出しているか
  • ニッチ分野において、適切なマーケティング、即時性の高い製品・サービス開発などにより差別化を行っているか

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金

たとえば、医療や介護事業の増進活動を行うNPO法人の場合、医療法人や介護法人からの委託業務をスムーズにするための設備投資であれば、事業計画の審査項目の1部を満たす可能性があります。

ものづくり補助金では、基本要件を満たし審査項目を説明する3年~5年の事業計画が採択の対象です。なお、採択された場合、補助事業に必要な費用は事業者であるNPO法人が先に支払うので、資金の用意もしておきましょう。

労働者名簿

ものづくり補助金に申請するNPO法人は、従業員数が20人を超える場合、労働者名簿を提出します。一方、従業員に関わる書類「従業員の確認書類」は、ものづくり補助金の必要書類のひとつで、すべてのNPO法人が提出する書類です。

労働者名簿と従業員の確認資料は、内容が異なります。また、提出するタイミングも異なるため、申請の際は労働者名簿と従業員の確認資料の違いを把握しておきましょう。

【労働者名簿と従業員の確認資料の違い】

項目 労働者名簿 従業員の確認資料
概要
  • 事業者名
  • 従業員数
  • 従業員
  • 氏名
  • 生年月日(西暦)
  • 雇入れ年月日(西暦)
  • 従事する業務の種類

の記載があるものを作成し提出

〈法人の場合〉
法人事業概況説明書の写し
〈個人事業主の場合〉
所得税青色申告決算書または所得税白色申告収支内訳書の写し
提出するタイミング 〈応募申請時〉
応募申請時の従業員数が21名以上で、従業員数の確認資料における期末の従業員数が20名以下の場合のみ提出
〈採択後〉
確定検査時に全員提出
応募申請時
※応募申請時に未提出の場合は交付申請の際に提出

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金

たとえば、労働者名簿の場合、NPO法人で常時雇用される従業員の数が20名未満の場合は、提出しなくてよい書類です。一方、従業員数の確認資料の場合、従業員の数に関わらず、申請社すべてが提出する書類となっています。

なお、NPO法人が労働者名簿や従業員数の確認資料を提出する場合、株式会社とは違い、社員は役員の意味を持ちます。労働者名簿を作成する際は、法人の意思決定をしない通常業務をする従業員は「職員」として記入しましょう。

経営向上計画

経営力向上計画とは、中小企業庁が主催している経営サポートの1つです。事業者が人材育成や設備投資などの取組みを申請書に記入し、取組みに関わる事業分野の所管省庁に認定されると、税制や補助金申請の権利などの優遇措置が与えられます。

【経営力向上計画の概要】

  • 中小企業庁が主催している経営サポートの1つ
  • 人材育成やコスト管理、設備投資に取組む事業者を支援する制度
  • 事業者が認定されると、税制面の優遇、融資や信用保証での優遇、補助金での優先採択などの措置がある
  • 申請のサポートとして「経営革新等支援機関」がある

参考:経営力向上計画策定の手引|中小企業庁

たとえば、NPO法人が全国の支店と連携するシステム構築を導入する場合、経営力向上計画にシステム構築の内容を記入し提出すれば、認定される可能性があります。

ものづくり補助金に申請するNPO法人は、ものづくり補助金に申請する前に設備投資や試作品開発の計画を、経営力向上計画として申請しましょう。

なお、経営力向上計画の申請の流れについて知りたい人は、当サイトの関連サイトの「経営力向上計画の申請の流れは?提出先はどこ?」を参考にしてください。

この記事のまとめ

ものづくり補助金で対象のNPO法人は、「収益事業をしている」「従業員数が300人以下」「経営力向上計画に認定された」NPO法人です。対象のNPO法人の場合、ものづくり補助金の基本要件と申請枠の要件を満たせば、申請できます。

ものづくり補助金は年間を通じて公募されている補助金ですが、申請には複数の申請書類の準備が必要です。ものづくり補助金の公式サイトの「スケジュール」に公募予定が記載されているので、公募したい回を決めてから、事業計画の作成計画やGビズID取得などの作業計画を立ててみましょう。

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