ものづくり補助金のグローバル枠の概要と採択率を解説
2024/04/18
2022/6/3
ものづくり補助金のグローバル枠は、いまのビジネスを海外市場でも展開したい事業者や、インバウンド向けのサービス等を始めたい事業者などに適した補助金です。
中小企業が利用できるグローバル系の補助金はいくつかありますが、ものづくり補助金のグローバル枠は、主に設備投資に使える補助金です。
今回の記事では、ものづくり補助金のグローバル展開型に申請したい事業者向けに、グローバル展開型の対象や補助金額などの概要と、ものづくり補助金の一般型と比べた採択率について解説します。
なお、この記事は18次ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の公募要領を元に作成しています。
Contents
ものづくり補助金のグローバル展開型は国内および海外で事業展開する人向け
ものづくり補助金のグローバル枠は、主に国内の事業拠点をもちながらグローバルに事業展開する、中小企業者向けの補助金です。ものづくり補助金のグローバル枠の主な目的は、国内の中小企業者の海外事業の拡大・強化です。
【ものづくり補助金のグローバル枠】
補助金額 |
1,00万円~3,000万円 (従業員数に制限なし) |
補助対象経費 |
|
補助事業の実行期間 | 2024年12月10日まで |
※グローバル枠のうち、 海外市場開拓(輸出)に 関する事業のみ |
参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金
ものづくり補助金のグローバル枠は省力化(オーダーメイド)枠や製品・サービス高付加価値化枠と異なり、補助対象経費に海外旅費や通訳・翻訳費を含みます。国内で海外向けの事業をしていて、海外拠点への直接投資や海外事業の強化をしたい人は、グローバル枠を検討してみましょう。
なお、ものづくり補助金全体の概要について興味のある人は、「ものづくり補助金とは?概要と最新情報をわかりやすく解説」が参考になります。
グローバル枠には4つの事業がある
ものづくり補助金のグローバル枠には、①海外への直接投資②海外市場開拓(輸出)③インバウンド対応に関する事業④海外事業者との共同事業の4つの類型があります。ものづくり補助金のグローバル枠に応募する事業者は、①~④の事業から1つを選択して申請します。
【グローバル枠における4つの事業の特徴】
事業 | 特徴 |
①海外への直接投資 |
国内に所在する本社を補助事業者とし、国内と海外支店の両方に設備投資をする |
②海外市場開拓(輸出) |
国内に補助事業実施場所をもち、事前のマーケティングをしつつ製品等の販売先の2分の1以上が海外となる計画を立てる |
③インバウンド対応に関する事業 |
国内に補助事業実施場所をもち、事前の調査をしつつ製品・サービス等の販売先の2分の1以上が訪日外国人で、計画期間中の補助事業の売上累計額が補助額を上回る計画を立てていること |
④海外事業者との共同事業 |
国内に補助事業実施場所をもち、外国法人と共同研究などを行い、応募申請時に共同研究契約書又は業務提携契約書を提出すること |
参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金
ものづくり補助金のグローバル枠の「①海外への直接投資」以外の事業に申請する場合、事業者が補助事業を行う場所は、国内に限られます。また、「①海外への直接投資」以外の補助事業を行う場合も、補助事業を行う事業者の本社所在地は国内のみに限られます。
そのため、海外に本社をもち日本に本社がない企業(日本支店のみの場合)は、グローバル枠であっても、ものづくり補助金の対象外です。ただし、日本に本社がある企業が、海外の子会社と補助事業をすることは認められています。
また、ものづくり補助金で得た機械設備などは、海外子会社が補助事業の実施主体である場合は、海外子会社も利用できます。その場合、国内親会社と海外子会社の間で、レンタル契約書を書面で交わして実績報告で提出する必要があります。
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無料診断ものづくり補助金のグローバル枠の対象は4つの条件を満たす事業者
ものづくり補助金のグローバル枠の対象となる事業者は、4つの条件をすべて満たす事業者です。
【グローバル枠の対象となる4つの条件】
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ものづくり補助金のグローバル枠に申請したい事業者は、それぞれの条件の詳細を確認し、ものづくり補助金のグローバル枠の対象に当てはまることを確認してみましょう。
基本要件をすべて満たす
ものづくり補助金のグローバル枠に応募する事業者は、ものづくり補助金の基本要件をすべて満たす必要があります。ものづくり補助金の基本要件は大きくわけて3つあります。
【ものづくり補助金の基本要件】
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引用元:令和元年度補正・令和三年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領 (18次締切分)|ものづくり補助金
付加価値額とは、営業利益と人件費と原価償却費を足したものです。ものづくり補助金に応募する事業者は、自らが作成する3~5年の事業計画の中で、3つの基本要件をクリアする必要があります。
なお、事業計画に書いた数値を実際に達成できない場合、「補助金の一部の変換を求める」と公募要領に記載されています。ものづくり補助金に応募する人は、目標達成の実現可能性を考えて計画を立てましょう。
申請する事業の要件を満たす
ものづくり補助金のグローバル枠に応募する事業者は、事業者が申請する事業の要件も満たす必要があります。そのため、ものづくり補助金のグローバル枠に応募する事業者は、事業ごとに設定された個別の要件を確認する必要があります。
【グローバル枠の事業の個別要件】
海外への直接投資 |
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海外市場開拓(輸出) |
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インバウンド対応に関する事業 |
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海外事業者との共同事業 |
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参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金
各事業の要件を満たしていることを確認できたら、各事業にあった事業計画書を作成します。また、グローバル枠に申請する際は、海外事業の準備状況を示す書類として事業内容に応じた書類提出が必要です。ものづくり補助金の必要書類については、「ものづくり補助金で申請時に必要な書類の揃え方と記載例」から確認できます。
事業ごとの必要書類を揃える
グローバル枠では、ものづくり補助金の基本的な必要書類以外に事業ごとの書類が必要です。グローバル枠に申請する人は、実施する予定の事業でどの書類が必要になるのかあらかじめ確認しましょう。
【グローバル枠の必要書類】
①海外への直接投資 |
海外子会社等の事業概要等 (海外子会社等の事業概要・財務諸表・株主構成が分かる資料) |
②海外市場開拓(輸出) |
海外市場調査報告書 (事前のマーケティング調査に基づく、想定顧客が具体的に分かる海外 市場調査報告書) ※製品等の最終販売先の2分の1以上が海外顧客である ことが分かる資料 |
③インバウンド対応に関する事業 |
インバウンド市場調査報告書 想定顧客が具体的に分かるインバウンド市場調査報告書 ※製品・サー ビス等の販売先の2分の1以上が訪日外国人であることが分かる資料 |
④海外事業者との共同事業 |
共同研究契約書または業務提携契約書 (共同研究契約書又は業務提携契約書) ※検討中の案を含む |
参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金
これらの必要書類を作成する際は、日本語で作成または日本語訳を添付します。グローバル枠へ申請する際は、事業計画書や決算書などの他に海外事業に関する書類が必要なので留意してください。
設備投資の財源を確保する
ものづくり補助金のグローバル枠に応募する事業者は、設備投資の財源を確保する必要があります。事業者が設備費用を支払うタイミングは、ものづくり補助金が手に入るよりも前だからです。
事業者が設備投資のために用意する金額は、事業者が設備投資にいくらかけるのかによって変わります。グローバル枠でキャッシュバックされるのは、事業者が設備投資で実際に支払う金額に補助率(中小企業者:1/2、小規模事業者等:2/3)をかけた金額で、100万円~3,000万円の範囲です。
たとえば、国内で販売している製品を海外に展開する場合、設備の導入に2,000万円が必要だとします。その際、事業者は最初に3,000万円を自費で用意して機械設備やシステムの導入を行います。
事業者はものづくり補助金で補助金を受け取る前に、申請時に申告した補助対象経費を支払うことになります。たとえばグローバル枠に申請して2,000万円の経費を支払った場合、中小企業であれば補助率が1/2なので、採択後に1,000万円を補助金として受取れます。
ものづくり補助金は設備投資を支援する補助金なので予め用意しなければならない金額も自ずと高くなります。ものづくり補助金のグローバル枠に応募する事業者は、設備投資の財源を確保できるよう準備しておきましょう。
グローバル展開型の採択例は公式サイトから確認できる
グローバル枠ではありませんが、過去に公募されたグローバル展開型の採択例は、ものづくり補助金の公式サイトの「採択結果」から確認できます。過去の採択事例には、グローバル展開型に採択された企業名や都道府県名、事業計画のタイトルが掲載されています。
たとえば、企業名等をネット検索すれば、ものづくり補助金に採択された事業計画がどのような内容なのかを詳しく知る糸口となります。公式サイトを確認すると、第4回~第10回までのグローバル展開型の採択例には、以下のような例があります。
公募回 | 採択例 |
第4回 |
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第8回 |
|
第9回 |
|
第10回 |
|
参考:採択結果|ものづくり補助金
ものづくり補助金のグローバル枠に応募する予定の人は、公式サイトの採択事例も参照してみましょう。
加点が多いほど採択されやすい
ものづくり補助金では加点が多い事業者ほど、採択されやすいです。そのため、ものづくり補助金のグローバル枠に採択されたい事業者は、要件のあう加点申請を探すことが審査を有利に進めるための対策のひとつになります。
加点が採択率に関係する根拠は、ものづくり補助金の「データポータル」にあるグラフです。データポータルには応募・採択に関わるグラフが公開されています。加点数が0個よりも1個、1個よりも2個の事業者のほうが、採択率が高いことがわかります。
加点の個数 |
採択率 |
0 |
29.4% |
1 |
49.9% |
2 |
63.9% |
3 |
73.0% |
参考:データポータル|ものづくり補助金
なお、加点申請はあくまでも任意です。加点には成長性加点や政策加点など4種類あり、それぞれ異なる要件と必要書類があります。加点についてのくわしい内容は、関連記事「ものづくり補助金の加点とは?採択率との関係性も解説」で確認できます。
グローバル枠に申請するときの流れ
ものづくり補助金のグローバル枠に申請する際の流れを解説します。申請の流れは大きくわけて、「公募要領の確認」「書類の用意」「電子申請」の3つです。
ものづくり補助金のグローバル枠に申請する人は、それぞれの工程を確認し不備のない申請ができるように準備していきましょう。
公募要領の確認
ものづくり補助金に申請する方が最初にすべきことは、公募要領の確認です。ものづくり補助金の「公募要領」とは、申請する事業者が守るべきルールや、申請時の書類の種類などについて書かれた、ルールブックです。ものづくり補助金の公募要領は公募回ごとに新しいものが公式サイトで公開されます。
公募要領を確認しないと、せっかく時間をかけて書類を申請しても、不受理になることがあります。公募要領にはグローバル展開型独自の細かいルールもすべて書かれています。
たとえば、グローバル展開型の補助対象計の1つ:海外旅費の適用は「一度の渡航での海外旅費の使用は、事業者3名まで」「1人あたり最大50万円を限度 とします」といった内容が、公募要領に書かれています。
事業計画書などの必要書類の用意
次に事業者がすべきことは、事業計画書などの必要書類の用意です。ものづくり補助の必要書類は、以下のとおりです。
この中の事業計画書は、公募要領に書かれている審査項目という名の4つのポイントすべてを満たす必要があります。また、書類を提出する際にはファイル名やページ数について規定があるので、公募要領を見ながらルールを守った形に整えます。ものづくり補助金の事業計画書の書き方については、こちらの記事「ものづくり補助金で採択される事業計画書の書き方」で確認できます。
なお、回復型賃上げ・雇用拡大枠などの通常枠以外に応募する場合は、「確定申告書類」などの別の書類も必要になります。加点申請する場合も、加点の内容に関わる書類の用意が必要です。ものづくり補助金の必要書類については、こちらの記事「ものづくり補助金で申請時に必要な書類の揃え方と記載例」を参考にしてみてください。
電子申請システムから申請
ものづくり補助金の申請は、電子申請システムから行います。電子申請システムには、ものづくり補助金の公式サイト「電子申請」をパソコンのブラウザで表示させ、「電子申請システムへ」というボタンからアクセスできます。
ものづくり補助金の電子申請システムは、GビズIDという行政システムを使用しています。ものづくり補助金の電子申請をするためには、GビズプライムIDという無料アカウントを作成する必要があります。アカウントの申請には2~3週間かかりますので、ものづくり補助金の申請準備をする際に、忘れずに申請しましょう。
なお、ものづくり補助金の申請方法を詳しく知りたい人は「ものづくり補助金の申請方法と流れを解説」を参考にしましょう。
この記事のまとめ
ものづくり補助金のグローバル枠は、いまのビジネスを海外市場でも展開したい事業者や、インバウンド向けのサービス等を始めたい事業者などに適した補助金です。
グローバル枠には4つの事業があり、それぞれ異なる要件と提出書類が設定されています。グローバル関連の申請枠展開型は他の申請枠一般型よりも採択率が低いものの、加点の個数が多ければ多いほど採択率は高まります。 グローバル枠に応募する事業者は、応募する回の公募要領をよく読み、加点の申請も検討してみましょう。