補助金ガイド

事業再構築補助金は新規事業でどのように活用できるのか解説

2024/05/14

2023/9/15

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

事業再構築補助金の利用を検討している人の中には、補助金をどのように活用できるのかを知りたい人もいるでしょう。また、これから取り組む新規事業に補助金を活用したい人もいますよね。

当記事では、事業再構築補助金は新規事業でどのように活用できるのかを解説します。新規事業で補助金を使いたいと考えている人は参考にしてみてください。

なお、当記事は事業再構築補助金の第12回公募要領をもとに作成しています。

事業再構築補助金は新規事業による経営回復への取り組みに活用できる

事業再構築補助金は新規事業による経営回復への取り組みに活用できます。具体的には、新業種への転換や新分野への挑戦などの取り組みがあてはまります。

【新規事業の採択事例】
製造業
【法人:オリジナル家具の製造や販売業】
<背景>
コロナや材料費高騰で経営状況が悪化
<取り組み>
オリジナル建築資材の製造販売やリフォーム業をはじめる
【法人:アパレル製造業】
<背景>
アパレルの事業拡大の厳しさに直面
<取り組み>
新規事業で永年の希望であった上海料理店の開業
【個人事業主:アパレル製造業】
<背景>
ポストコロナに向けて自社商品のみの販売を見直す
<取り組み>
環境に配慮した製品をあつかうセレクトショップの開業
卸売業・小売業
【法人:体質改善サポート商品販売業】
<背景>
ヘルスケア市場の拡大を受け更なる事業の成長を図る
<取り組み>
新規事業にて自然栽培野菜の宅配を開始
【個人事業主:呉服の訪問販売業】
<背景>
コロナやロシア・ウクライナ戦争の影響からの業績回復
<取り組み>
ECによる着物販売とリフォームを中心事業に変革
宿泊業・飲食サービス業
【法人:肉バル業態の店舗経営事業】
<背景>
コロナによる影響で売上に大打撃
<取り組み>
新鮮な魚介や野菜を提供する炉端焼き専門店を開業
【個人事業主:洋風居酒屋経営事業】
<背景>
外出自粛、営業時短要請の影響で売上高が大幅に減少
<取り組み>
上野の来訪者向けの焼き鳥専門店開業

参考:「採択結果」|事業再構築補助金

事業再構築補助金で一番申請の多い業種は製造業です。続いて卸売業および小売業、宿泊業および飲食サービス業となっています。おもに、コロナや物価高騰の影響を受けたことから、既存の技術を活かした新製品の開発や異なる販売形態への転換をした採択事例があります。

製造業の事例には、オリジナルの家具の製造から販売までしていた事業者が、新規事業で製造技術を活かした「オリジナルの建築資材の製造と販売事業」や「リフォーム事業」などに挑戦する取り組みがあります。

事業再構築補助金は思い切った事業の再構築に活用できる補助金です。実際にどのような事業に取り組めばいいのかわからない人は、事業再構築補助金の公式サイト「採択結果」から、どのような事業が採択されているのかを参考にしてみてください。

新規事業は事業再構築の定義にあてはまる事業内容であること

事業再構築補助金を活用して新規事業を行う場合は、事業再構築の定義にあてはまる事業内容であることが求められます。事業再構築補助金には「事業再構築の定義」が定められており、定義を満たさない事業内容は審査の際に不採択(不合格)となります。

【事業再構築の6つの定義】

事業再構築の定義

概要

①新市場進出

  • 既存の業種のまま新分野への参入や業態の変更を行う

【例】

喫茶店経営⇒新たに食品の販売、焼き肉店開業

②事業転換※1

  • おもな業種を変更せず、事業内容を変更する

【例】

美容室経営⇒ネイルサロン経営

③業種転換※1

  • おもな業種を変更する

【例】

製造業⇒建設業

④事業再編

  • 会社法上の組織再編行為を実施後、「新市場進出」「事業転換」「業種転換」のいずれかの事業再構築に取り組む

【例】

吸収合併後、新たな分野へ参入する

⑤国内回帰※2

海外で製造を行う製品の国内拠点を整備する

⑥地域サプライチェーン維持・強靭化※2

地域のサプライチェーンにおいて不可欠であり供給に不足が生ずるおそれのある製品の国内生産拠点を整備する

※1 転換する事業や業種は総務省「日本標準産業分類」を参考
(例:事業=中分類以下、業種=大分類)

※2 サプライチェーン強靭化枠の申請者のみ選択可

参考:事業構築指針の手引き 4.0版|事業再構築補助金

事業再構築の定義は6つあり、定義をどれかひとつ選ぶ必要があります。

また、それぞれの定義には要件が定められており、選んだ定義の要件を満たす事業に取り組むことが求められます。たとえば、事業転換であれば「①新たな製品・商品・サービスを提供すること」「②新たな市場に進出すること」「③主要な業種が細から中分類レベルで変わること」という3つの要件を満たす必要があります。

事業再構築補助金で行う取り組みは、事業再構築の定義に沿う内容であることが求められます。事業再構築の定義について詳しく知りたい人は、事業再構築指針の手引きを参考にしてみてください。

新分野への挑戦や業態の変更は新市場進出にあてはまる

事業再構築の定義において、新分野への挑戦や業態の変更をする事業は新市場進出にあてはまります。新市場進出の定義は、既存の業種や事業を変更せずに新しい市場や新しい商品の開発に取り組むことです。

新市場進出には3つの要件が定められています。

【新市場進出(新分野展開・業態転換)の要件】

  • 新たな製品・商品・サービスを提供すること、又は提供方法を相当程度変更すること
  • 新たな市場に進出すること
  • 新規事業の売上高が総売上高の10%以上になること(付加価値額の場合は15%以上)

新市場進出の例には、ガソリン車の部品製造業者が新規事業において、ハイブリット車の部品製造分野に挑戦する取り組みが挙げられます。この場合、事業計画終了時点でハイブリット部品製造の売上高が、総売上高の10%以上になる計画をたてることで、要件を満たすことになります。

おもな業種や事業を変えずに新分野へ挑戦する取り組みは、新分野展開の定義にあてはまります。今後、新しい取り組みに挑戦したいという人は、事業再構築補助金の利用を検討してみてください。

異なる事業に変更する取り組みは事業転換にあてはまる

事業再構築の定義において、異なる事業に変更する取り組みは事業転換にあてはまります。事業転換の定義は、新たな製品や商品を製造し、おもな業種を変更せずに事業内容を変更することです。

事業転換には3つの要件が定められています。

【事業転換の要件】

  • 新たな製品・商品・サービスを提供すること
  • 新たな市場に進出すること
  • 主要な業種が細から中分類レベルで変わること

事業転換は、おもな業種を変えずに主力の事業を転換する類型であり、主要な業種は総務省「日本標準産業分類」における細分類または中分類レベルで変更する必要があります。たとえば、日本料理店が新たに焼き肉店を新規開業する取り組みが挙げられます。

おもな業種は変えずに事業を変える取り組みは、事業転換の定義にあてはまります。事業再構築補助金において、どのような事例があるか知りたい人は事業再構築補助金の公式サイト「採択事例」を参考にしてみてください。

異なる業種へ変更する取り組みは業種転換にあてはまる

事業再構築の定義において、異なる業種へ変更する取り組みは業種転換にあてはまります。業種転換の定義は、新たな製品や商品をつくり、おもな業種を変更することです。

業種転換には3つの要件が定められています。

【業種転換の要件】

  • 新たな製品・商品・サービスを提供すること
  • 新たな市場に進出すること
  • 主要な業種が大分類レベルで変わること

業種転換は、既存の業種から新たな業種へ転換する類型であり、主要な業種は総務省「日本標準産業分類」における大分類レベルで変更する必要があります。たとえば、レンタカー事業を営んでいる事業者が既存事業と組み合わせた宿泊プランを提供する、貸し切りペンションの経営事業をはじめる場合は業種転換に該当します。

おもな業種を変更する取り組みは、業種転換の定義に該当します。事業再構築補助金において、どのような事例があるか知りたい人は事業再構築補助金の公式サイト「採択事例」を参考にしてみてください。

合併や事業譲渡する場合は事業再編にあてはまる

事業再構築の定義において、合併や事業譲渡する場合は事業再編にあてはまります。事業再編の定義は、補助事業開始後に「合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡など」を行い、新しい事業形態で「新市場進出、事業転換、業種転換」のいずれかに取り組むことです。

事業再編には2つの要件が定められています。

【事業再編の要件】

  • 会社法上の組織再編行為(「合併」「会社分割」「株式交換」「株式移転」「事業譲渡」)を行うこと
  • 新市場進出、業種転換、業態転換のいずれかを行うこと

組織再編を行ったあとに事業再構築に取り組む場合は、事業再編の定義にあてはまります。企業の合併や事業譲渡を行い、かつ新規の事業をはじめる予定の人は、事業再構築補助金の利用を検討してみてください。

事業再編の要件を満たす事業計画書を作成する際には「会社法上の組織再編行為を行うこと」と「新市場進出、業種転換、事業転換のいずれかの要件を満たすこと」を表やグラフなどを用いて示しましょう。

海外で製造している製品の国内生産拠点を整備する場合は国内回帰にあてはまる

事業再構築の定義において、海外で製造している製品の国内生産拠点を整備する場合は事業再編にあてはまります。国内回帰の要件は「海外製造等要件」「導入設備の先進性要件」「新事業売上高10%等要件」の3つあります。

【国内回帰の要件】
要件 詳細
海外製造等要件 ①海外で製造および調達している製品であること
②国内に生産拠点を整備する計画であるということ
導入設備の先進性要件

①先進的な設備を導入すること

②導入設備の導入効果を証明すること

新事業売上高10%等要件

新たな製品や製造方法などの売上高が、総売上高の10%以上となること

(総付加価値額の15%以上でも可)

参考:第12回「公募要領(サプライチェーン強靭化枠)」|事業再構築補助金

海外製造等要件の①海外で製造や調達をしている製品であることを示すには「2020年以降に海外で製造または海外から調達した実績」と「2020年1月以降に海外から納品している事実」がわかる説明や添付書類が必要です。

②の国内の生産拠点を整備する計画を示すには、国内拠点の整備場所や面積、国内で生産する製品の生産計画などを事業計画書に記載します。

事業再編の要件を満たす事業計画書を作成する際には「海外で製造調達して先進的な国内拠点をつくること」と「3年~5年の事業計画終了時点で、売上高が基準値以上になっていること」を表やグラフなどを用いて示しましょう。

地域において不可欠な製品の生産拠点を整備する場合はサプライチェーン維持・強靭化にあてはまる

事業再構築の定義において、地域において不可欠な製品の生産拠点を整備する場合は事業再編にあてはまります。地域サプライチェーン維持・強靭化の要件は「地域不可欠性要件」「導入設備の先進性要件」「新事業売上高10%等要件」の3つあります。

【地域サプライチェーン維持・強靭化の要件】
要件 詳細
地域不可欠性要件 ① 地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠かつ供給に不足が生じ得る製品であること
②国内に生産拠点を整備する計画であるということ
導入設備の先進性要件

①先進的な設備を導入すること

②導入設備の導入効果を証明すること

新事業売上高10%等要件

新たな製品や製造方法などの売上高が、総売上高の10%以上となること

(総付加価値額の15%以上でも可)

参考:第12回「公募要領(サプライチェーン強靭化枠)」|事業再構築補助金

地域不可欠性要件を満たすには、「地域未来投資促進法に基づく基本計画における地域の特性の活用戦略に沿った事業であること」もしくは「地方公共団体が独自に策定する産業戦略に沿った事業であること」を示します。

また、補助事業において製造する製品が地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠かつ供給に不足が生じ得ることを事業計画書の表紙などで示す必要があります。

地域サプライチェーン維持・強靭化の要件を満たす事業計画書を作成する際には「地域のサプライチェーンにおいて必要不可欠な製品製造の先進的な国内拠点をつくること」と「3年~5年の事業計画終了時点で、売上高が基準値以上になっていること」を表やグラフなどを用いて示しましょう。

補助事業のみで使う経費が補助対象になる

事業再構築補助金では、補助事業のみで使う経費が補助対象になります。補助対象になる経費項目はあらかじめ決まっており、全部で11種類あります。

たとえば、新規開業のために既存の建物の一部を改修工事する場合、建物の改修費を「建物費」として申請できます。また、新規事業でインターネットを使ったEC販売をはじめる際、ECサイトの構築費用は「機械装置・システム構築費」として申請可能です。

ただし、他の事業と共同で使う経費は補助の対象外です。事業再構築補助金は、あくまで「事業を再構築するために行う補助事業に使われるお金」に対する補助金であるためです。

事業再構築補助金における補助対象になる経費は、補助事象のみで使う経費であることが前提です。事業再構築補助金の補助対象経費を詳しく知りたい人は「事業再構築補助金における補助対象経費は何か?対象外になる経費も解説」を参考にしてみてください。

新規開業のために購入した建物の購入費は補助の対象外になる

事業再構築補助金において、新規開業のために購入した建物の購入費は補助の対象外になります。事業再構築補助金では、土地や建物などの不動産の購入費は補助の対象外であるためです。

【補助対象外になる経費例】
  • 土地や建物など不動産の購入費
  • 公道を自走する車両
  • PCやプリンタなど汎用性のある経費
  • 事業にかかる人件費や旅費
  • 事務所の家賃
  • フランチャイズ加盟料 など

たとえば、新規事業でグランピング施設を開業する際、購入した土地や建物は補助の対象外です。また、新規でキッチンカー事業をはじめる際、購入した車両も補助の対象外です。

事業再構築補助金では、他の事業でも使える汎用性のある経費は補助の対象外になります。ただし、補助事業のみで使うことが明らかな経費は補助対象になる可能性があります。

建物や土地の購入費は、事業再構築補助金において補助の対象外になります。事業再構築補助金に申請を検討している人は、使いたい経費が補助対象になるかを公募要領で事前に確認しておきましょう。

中堅企業から個人事業主まで申請の対象になる

事業再構築補助金では、中堅企業から個人事業主まで申請の対象になります。中堅企業は「資本金額が10億円未満および従業員数が2,000人以下」、中小企業は業種ごとに資本金額や従業員数の条件が異なります。

【中小企業者(会社または個人事業主)の定義】※一部抜粋
業種 資本金 従業員(常勤)
製造業、建設業、運輸業 ~3億円 ~300人
卸売業 ~1億円 ~100人
サービス業
(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)
~5,000万円 ~100人
小売業 ~5,000万円 ~50人
ゴム製品製造業
(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに
工業用ベルト製造業を除く)
~3億円 ~900人
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 ~3億円 ~300人
旅館業 ~5,000万円 ~200人
その他の業種(上記以外) ~3億円 ~300人

参考:第12回「公募要領」|事業再構築補助金

中小企業の飲食店経営をしている事業者の場合、事業再構築補助金では「宿泊業、飲食サービス業」に該当するため、対象者の表ではサービス業にあてはまります。サービス業は資本金額が5,000万円以下、または従業員数100人以下の事業者が申請の対象です。

また、個人事業主の場合は資本金がないため、従業員数によって申請対象であるかを判断します。飲食店経営をしている個人事業主の場合、サービス業にあてはまるため従業員数が100人以下であれば申請の対象となります。

事業再構築補助金は、中堅企業から個人事業主までの幅広い事業者が申請できます。当記事を運営している株式会社SoLabo(ソラボ)は無料で申請相談を行っています。事業再構築補助金の申請で悩んでいる人は、無料診断からお問い合わせください。

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この記事のまとめ

事業再構築補助金は新規事業による新たな業種への転換や、新分野への挑戦などの取り組みに活用できます。過去の採択事例は事業再構築補助金の公式サイトで公開されているため、事業計画をたてる際の参考にすることができます。

また、事業再構築補助金を活用して新規事業を行う場合は、事業再構築の定義を満たす必要があります。定義を満たさない事業内容は審査の際に不採択(不合格)となるため、事前に公募要領で要件を確認しておかなければなりません。

事業再構築補助金は、中堅企業から個人事業主までの幅広い事業者が申請できます。ただし、補助対象外となる経費もあるため、自社で申請したいものが補助対象経費となるかを確認しておきましょう。

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