補助金ガイド

事業再構築補助金の建物費とは?対象範囲や必要書類を解説

2024/05/02

2023/5/15

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

事業再構築補助金の申請を検討している人の中には、建物費を利用したいと考えている人もいますよね。建物費は具体的にどんなものが対象になるかを知りたい人もいるでしょう。

当記事では、事業再構築補助金の建物費を解説します。建物費の対象範囲や必要書類も説明するので、建物費が具体的に何に使えるかを知りたい人は参考にしてみてください。

なお、当記事は事業再構築補助金の「第12回公募要領」および「第10回公募以降用 補助事業の手引き」を参考に作成しています。

事業再構築補助金の建物費は建物の建設や改修などの費用に使える

事業再構築補助金の建物費は、補助事業で利用する建物の建設や改修などの費用に使えます。補助金を利用できる経費は対象範囲や細かい条件が定められているので、建物費の利用を検討している人は「公募要領」の確認が必要です。

【建物費の区分】
①補助事業のために使われる事務所、工場、倉庫などの建物の建設や改修費用
②建物の撤去費用
③賃貸物件等の原状回復費用
④貸工場・貸店舗等に一時的に移転する際に要する費用
※サプライチェーン強靭化枠は①のみ

参考:第12回公募要領(サプライチェーン強靭化枠は別「公募要領」)|事業再構築補助金

たとえば、建物費は、新事業に必要な事務所や新製品を作るための施設の建設および改修費用に利用できます。また、貸工場・貸店舗などへの移転時に係る費用には「貸工場・貸店舗等の賃借料」「貸工場・貸店舗などへの移転費」などが挙げられます。

事業再構築補助金の建物費は、補助事業で必要な場合に限り利用できます。そのため、他の事業でも利用できる建物や、賃貸物件の契約満了にともなう原状回復などは補助対象になりません。建物費の利用を考えている人は、補助事業だけで利用する経費か確認しましょう。

なお、建物費の「建物の撤去費用」と「賃貸の原状回復費用」のみの事業計画は、事業再構築補助金の支援対象とならず、建物や機械装置など有形や無形の事業資産へ相応規模の投資が必要です。建物費の利用範囲の詳細は「公募要領」を確認してください。

建物費に計上できる経費は建物や建物附属設備が対象になる

事業再構築補助金で建物費に計上できる経費は、建物や建物付属設備が対象です。建物付属設備とは家屋に固着され一体となって稼働する「冷暖房」「消火設備」「エスカレーター」などが当てはまります。

たとえば、製造業を営む事業者が、新たな商品を製造するために工場の建設が必要な場合、建設工事費用を建物費に計上できます。また、小売業を営む事業者が、飲食料の卸売り業へ挑戦する際、店内にキッチンを新設するための改修工事費用に建物費を利用できます。

事業再構築補助金の補助対象となる建物費や建物附属設備は減価償却資産の耐用年数等に関する省令により定められている品目に限られます。導入したい設備が補助対象となるかどうか事前に確認しておきましょう。

なお、建物費の利用には、入札や物件の発注先や外注先の相見積書の提出が求められます。交付申請や実績報告にも提出する資料なので、採択後に準備する必要書類が知りたい人は、事業再構築補助金の公式サイト「補助金交付候補者の採択後の流れ・資料」の最新の補助事業の手引きを参考にしてみてください。

建物の購入のみや賃貸の経費は補助対象外になる

事業再構築補助金における建物費は、建物の購入のみの場合や賃貸は補助事業以外となります。ほかにも、補助事業以外でも使用できる汎用性の高いもののなど、補助対象外となる経費があることを覚えておきましょう。

【補助対象外経費の例】
  • 建物の単なる購入
  • 土地や不動産の購入費
  • 公道を自走する車両
  • 構築物の購入費
  • 事務所の家賃(賃貸)
  • 家具
  • 事務用のパソコンやデジタル複合機 など

参考:第12回公募要領(サプライチェーン強靭化枠は別「公募要領」)|事業再構築補助金

たとえば「土地や不動産の購入費」や「公道を自走する車両」など、不動産の購入費や汎用性のある経費は補助対象外です。また、建物の取得でリース会社を利用した場合、建物の取得費は事業再構築補助金の補助対象外になります。

事業再構築補助金の「公募要領」には「計上された経費の大半が補助対象外の場合は不採択または採択取消になる」旨の記載があります。事業再構築補助金に申請予定の人は、申請予定の経費が補助対象外でないかをあらかじめ確認しておきましょう。

なお、事業再構築補助金の対象経費の詳細は「事業再構築補助金の対象経費とは?業種別の具体例とよくある質問を解説」で解説しています。

新築の建物は事務局側に認めらない場合は補助対象外になる

事業再構築補助金で「新築の建物」は、補助事業に必要だと事務局側に認めらない場合は、補助対象外です。事業再構築補助金で「新築の建物」を利用予定の人は、申請時に事務局へ「新築の必要性に関する説明書」を提出するため、事業計画書とあわせて準備しましょう。

【建物新築の必要性における判断事例】
事例 詳細
認められる場合
生鮮魚介類の加工業者が冷凍加工食品事業に進出 最も近い冷凍倉庫まで車で1時間かかり、補助事業において時間と費用の採算が取れないため既存の加工工場に隣接した冷凍倉庫を新築する。
農家が採れたて野菜を使ったレストラン運営を始める 所有している事業用の建物がなく、事業実施予定の地域に購入可能な建物がない。ブランド構築の観点から畑から取れたての野菜を提供する必要があるため、畑に隣接したレストラン用の建物を新築する。
認められない場合
温泉旅館業者がワーケーションに対応した新事業を始める 温泉客向けの既存の宿泊設備では対応できないが、現状、既存事業がコロナによる需要減少で客室の稼働率が下がっている。既存事業の縮小により施設を整えられる可能性があるため、建物の新築は不要。
金属製品製造事業者が金属製品販売業に進出 人員を増強して新たに営業部門を設置するため既存の本社建物が手狭になることから、既存の本社建物の取り壊しと新築を検討。しかし、既存の貸しオフィスの賃貸やリモートワークで代替可能であり、本社建物の老朽化は補助事業と無関係であるため新築は不要。

参考:【建物の新築について】」|事業再構築補助金

たとえば、冷凍加工食品事業を始める事業者が、冷凍倉庫までの時間と輸送費で事業の採算が取れない場合、冷凍倉庫の新築が認められます。また、レストラン運営を始める事業者で事業用の建物や購入できる建物がない場合、新築が認められる事例があります。

交付審査時に補助対象経費として認められなかった場合でも、採択されれば補助事業を行うこともできます。新築の建物が補助対象外であっても事業計画を進める予定の人は、事業再構築補助金の利用を検討してみてください。

なお、新築の建物であるにもかかわらず「新築の必要性に関する説明書」を申請時に事務局へ提出していない場合、採択されたとしても新築の建物の経費は補助対象外となります。

担保権を設定する場合は事務局の承認がないと補助対象外になる

事業再構築補助金の建物費で、抵当権や根抵当権などの担保権を設定する場合、事務局の承認がないと補助対象外になります。一度の取引で消滅する抵当権や、限度額の範囲内で何度も取引できる根抵当権を設定する人は「公募要領(p39)」を読み、条件を確認しましょう。

たとえば、補助事業で建設した建物を担保に融資を受けたい人は、補助事業で必要な場合にのみ担保権実行時に国庫納付する必要があります。

また、根抵当権が設定されている土地に建物を新築する場合は、交付申請時に追加担保差入条項が定められていないことの確認書を交付申請時に提出する必要があります。「参考様式20-1 報告書_根抵当権設定義務の免除について」を提出してください。

事業再構築補助金では、細かい条件を満たすことで抵当権や根抵当権などの担保権を設定できます。「第10回公募以降用 補助事業の手引き 」には担保権関連の必要書類の情報の記載があるため、担保権を設定する予定の人は参考にしてみてください。

なお、改修する建物に抵当権が設定されている場合、補助事業完了までに「様式第11 担保権設定承認申請書」を提出し、事務局の承認を得る必要があります。

建物費を計上する場合は追加の必要書類を揃える

事業再構築補助金の補助対象経費のうち、建物費は他の経費に比べて申請時~実績報告までに提出する必要書類が多い傾向にあります。共通の書類に加えて建物費を計上する場合の追加書類もあるため、事業再構築補助金で建物費を計上する人は、事前にどの段階で何の書類が必要になるかを確認しておくことが望ましいです。

【建物費を計上する場合の追加書類の具体例】

提出段階 書類
申請時
  • 新築の必要性に関する説明書
交付申請時
  • 設計書(建物の改修の場合は見取図)
  • 補助対象経費により取得する建物に係る宣誓書<参考様式24>
    ※応募時に「新築の必要性に関する説明書」を提出していない事業者は提出必須
実績報告時
  • 見積取得のための仕様書および見積依頼書(見積依頼時の図面等)
  • 見積書、相見積書(1者のみの場合は業者選定理由書)
  • 工事請負契約書・重要事項説明書(新築の場合)・登記事項証明書
  • 納品書・完了報告書
  • 検収書
  • 請求書
  • 銀行振込受領書(及び領収書(存在する場合))
  • 完成後の図面
  • 完成後の工事費内訳書
  • 上記に加え、抵当権設定契約書、設計図書、建築確認申請書、検査済書、工事写真、作業工程表、社内決裁資料、入出金伝票等、総勘定元帳、固定資産台帳等を準備
  • 「報告書_根抵当権設定義務の免除について」<参考様式20-1>※該当者のみ

建物費を計上する場合、実績報告時に提出する追加書類に見積書や納品書だけでなく建物の完成後の写真や工事完了後の図面が必要です。実績報告時に提出する必要書類は、補助金額を確定する判断材料になる可能性があります。

建物費を計上する場合、事前に必要書類を揃えておくことが手続きを滞りなく進めることにつながります。公募回によって提出が求められる書類が異なる可能性があるため、申請を検討している人は各公募回の「公募要領」や「補助事業の手引き」を確認し不備の無いように書類を用意しましょう。

なお、事業再構築補助金における必要書類の詳細が知りたい人は「事業再構築補助金の必要書類を申請する枠別に解説」も参考にしてみてください。

この記事のまとめ

事業再構築補助金の建物費は、補助事業で利用する建物の建設や改修などの費用に使えます。補助対象経費は、補助事業のために利用する建物や建物付属設備で、利用する際は相見積が求められます。

賃貸や建物の購入のみの場合は補助対象外になるため、申請前に計上する経費が補助対象経費であるか「公募要領」で確認しましょう。また、新築の建物や担保権の設定をする際は、事前に事務局の承認が必要です。

事業再構築補助金の補助対象経費のうち、建物費は他の経費に比べて申請時~実績報告までに提出する必要書類が多い傾向にあります。決められた様式の書類や、追加で求められる書類もあるため、各手続きの準備はスケジュールに余裕をもって行いましょう。

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