補助金ガイド

事業再構築補助金の審査のポイントを解説

2022/08/31

2021/9/13

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

事業再構築補助金は令和3年度に創設された事業者向けの大型補助金ですが、その要件は多岐にわたるため、ポイントを押さえて準備をすることが重要です。

まずは事業者自身が事業再構築補助金の要件を満たしているかを確認し、申請の際にはポイントを押さえた事業計画書を提出しましょう。

今回の記事では、事業再構築補助金の審査で採択されるのに必要なポイントを①事業計画書②審査の2つに分け、わかりやすく解説していきます。

事業再構築補助金の審査の2つのポイント

事業再構築補助金には特設サイト公募要領動画など、補助金事務局からさまざまな情報発信がされています。それらをすべて熟読し理解することが、採択されやすくなる第一歩かと思われます。

しかし、本業で忙しい事業者の方には難しいといえます。そこで、これから事業再構築補助金の申請をお考えの方は、まず以下の2つのポイントを押さえましょう。

(ポイント1)事業計画書

事業再構築補助金は、事業者が「事業再構築」をするための事業計画を立て、認定支援機関がチェックすることが要件となっている補助金です。申請のための提出書類は複数ありますが、「事業計画書の完成度が採択を左右する」といっても、決して過言ではありません。

第一のポイントとして、事業計画書を作成する際に押さえておきたいポイントを解説します。なお、大前提として事業再構築補助金に申請するには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 既定の期間内(コロナ前とコロナ禍)で比較し、売上が5または10%以上減少している
  • 事業再構築に取り組む予定で、認定支援機関にチェックされた事業計画書がある
  • 取り組む事業再構築では付加価値額アップの見込みがある

要件の詳細については以下の関連記事もぜひご覧ください。

事業再構築補助金の申請要件とは?枠ごとの要件も解説

事業計画全体では「理想像⇒現状⇒間を埋めるプラン」を記載

補助金を得るためには、まず事業者がどのような事業をしたいのかを説明し(理想像)、そのためにどんな設備が必要で(現状)、そのためにいくら補助してほしいのかという流れで事業計画を立てると読みやすくなります。わかりやすくするために、以下にイメージ図を挿入します。

理想像、現状、間の図
画像素材:補助金ガイド

事業計画書の中の補助事業は、「理想と現状の差を埋めるための事業」という位置づけです。提出する事業計画書の中ではあなたの思い描く理想の事業と現状の事情をしっかり説明し、その差を埋めるために補助金が必要です、という組み立てで事業計画を展開しましょう。

具体的に言うと、事業再構築補助金の公募要領に記載の審査項目に忠実に沿って事業計画を記入すれば、上記の理想像、現状、間を埋めるプランを全て網羅できます。事業再構築補助金の審査項目は、以下の通りです。

第三者に見せる視点をもつ

事業計画書の内容を審査は、人間による目視での確認作業です。審査員は膨大な量の事業計画書を見なければならないので、できるだけ結局何が言いたいのかの結論をはっきり書くように意識して作成していきましょう。

今までは何やってて、これから何をするのかを端的に記載する

事業計画書を見る審査員は、あなたが本当はどんな人で普段はどんな生活をしているのかは全く知りません。その審査員に向け、これから行う事業計画を伝えるのが「事業計画書」となります。

事業計画書では、「今までは〇〇の事業をしていて、これからは〇〇の事業をしたい」という部分がはっきり分かるように意識して作成しましょう。

例)これまでは焼き肉屋をやっていて、これからはラーメン屋をやりたい

今まで何をしていて、これから何をするのか明確に書くポイントは、できるだけ事業計画書の最初の方に記載することです。そのうえで、「なぜなら、コロナ禍で売り上げが減少したため」「なぜなら、我々の〇〇の技術が感染症対策に適するため」などの理由を書きます。

例)ラーメン屋をオープンしたいです。なぜならこの地域には焼き肉屋は多いがラーメン屋は少ないので。トップに焼き肉が乗っているラーメンを提供したいです。

わかりやすく図表・写真を用いて15ページ以内で記載する

事業再構築補助金の公募要領では、事業計画書は15ページ以内のPDFにまとめるようにとの指示が掲載されています。また、希望補助金額が1,500万円以内の場合は同じく10ページ以内に納めます。

補助金額1,500万円未満

PDFで10ページ以内

補助金額1,500万円以上

PDFで15ページ以内

ページ数が長いほど採択率が高くなるわけではありませんが、公募要領に書かれている審査項目の4点(①補助事業の具体的取組内容 ②将来の展望 ③本事業で取得する主な資産 ④収益計画)がすべて書かれていなければ、減点となります。

事業計画をわかりやすくするためには、以下のポイントも押さえておきましょう。

  • 専門用語は誰が見てもわかる言葉で表現するように努める
  • 抽象的ではなく具体的な数字や事例を書く
  • ダラダラと長く説明せず、要点を押さえてコンパクトに

数値にはっきりとした根拠を示すこと

前の見出しでも触れましたが、事業計画書には複数の箇所で「数字」を書く場面があります。具体的には、以下の項目で事業者はできるだけ正確な数値を記載する必要があるのです。

  1. 補助事業の将来性・市場規模・マーケットでの優位性
  2. 補助事業で取得する主な資産額
  3. 収益計画

「事業を始める前から具体的な数字なんて書けない!」と思う方が多いと思いますが、融資の審査のように、補助金の審査でも具体的な数値のない事業計画には補助はおりません。そこで、例えばマーケットの優位性を証明するためには、「2020年に池袋駅周辺のファッションビル内のテナントを借りてテストサンプルを販売したしたところ、一週間で100個の販売へとつながり、売上高は40万円だった」など、事業者が実際に行ったアンケートやサンプル配布結果、または業者を通して実行したアンケート結果などを積極的に書いていきましょう。

  1. 補助事業の将来性・市場規模・マーケットでの優位性⇒テストサンプルを販売したなどの、具体的な根拠
  2. 補助事業で取得する主な資産額⇒なぜその取得金額になるのかの他社との相見積や市場調査結果などの根拠
  3. 収益計画⇒補助事業でどのように収益を上げられるのかの根拠(同じようなビジネスモデルの事業者の公開データを参照、メルマガ会員などへのアンケート結果を添付など)※付加価値額も算出すること

中小企業庁経営支援部長・村上氏からのフィードバックでは、第一回公募では全体的に事業計画書での数値の根拠が弱いとされていました。事業計画書の文章ではストーリーを立てわかりやすい表現にしつつ、数字については根拠(エビデンス)をもった数値を記入していくことが大切です。

なぜその事業再構築なのかの理由を明確に

事業再構築をする理由は、思わず審査員が「なるほど~」と声をあげるほどの説得力があるのが理想的です。当たり前ですが補助金をもらうには、なぜその事業が必要なのか?なぜその設備が必要なのか?という点が、審査ではかなり厳しく追及されます。

そのため、事業再構築をする理由は以下のように「説得力があり」「納得できる」ものをチョイスすると良いでしょう。

  • 社会の変化(雑誌・新聞離れの加速、子供の数が少ない、高齢者が多い、リモートワーカーが増えた など)
  • 自分の身の回りの変化(家族や親戚がなくなった、土地を相続した、不動産の老朽化、子供が資格を取った など)
  • 世界情勢の変化(プラスチックごみを減らす、感染症対策を講じる、デジタル化を導入する、日本円が安くなった など)

例えば、以下のように社会の変化のひとつである「新聞の売上部数の伸び悩み」を理由にすれば、社会問題と事業者の売上減が補助事業で解消されるため、地域社会に貢献する補助事業であると評価されます。

例)新聞の売上部数が減っていて、間に挟みこむチラシの依頼も減っているので倉庫やデリバリー人材に空きがある。そのリソースを使い、昼間のアイドルタイムにデリバリーで飲食をスタートする。

(ポイント2)審査

大きなポイントの2つ目は、審査についてです。事業者として、時間をかけて作成した事業計画書がどのように審査されるのかは、非常に気になるところだと思います。審査については、以下のポイントを押さえていきましょう。 

すべての要件を満たしているか入念にチェックする

事業再構築補助金には、①コロナ禍での売上減少②事業再構築計画を認定支援機関がチェック③補助事業で付加価値額アップという最低3つの要件があります。これらに加え、応募する補助枠(例、通常枠)と選ぶ事業再構築の種類(例、新分野展開)により満たさなければいけない要件があります。

3種の要件
画像素材:補助金ガイド

事業再構築補助金では、どんなに良い事業計画を提出しても、要件を満たさなければシステムで不受理となってしまいます。2021年の5月20日(木)~7月2日(金)に募集された第二回公募では、応募者20,800者のうち不備があり不受理となったのは2,467者でした。不受理となる理由の中には、つけるべき添付書類がついていないという添付書類のミスが多く目立ちましたが、要件を間違って解釈して不受理となってしまうケースもあるかと思います。

自分が選んだ補助枠、事業再構築の型に合わないストーリーの事業計画書を作成してしまうと、一貫性がない事業計画書という判断をされてしまいます。

※参考※

2021年10月現在、事業再構築補助金で応募できる補助枠と事業再構築の種類は以下の通りです。

<補助枠>

補助枠

要件

通常枠

基本の4要件

大規模賃金引上枠

基本の4要件 +

・補助事業実施期間の終了時点を含む事業年度から 35年の事業計画期間終了までの間、事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引き上げること【賃金引上要件】

・補助事業実施期間の終了時点を含む事業年度から3~5年の事業計画期間終了までの間、従業員数を年率平均1.5%以上(初年度は 1.0%以上)増員させ ること【従業員増員要件】

卒業枠

基本の4要件 +

・事業計画期間内に、事業再編、新規設備投資、グローバル展開のいずれかにより、資本金又は従業員を増やし、「2.補助対象事業者」に定める中小企業者等の定義から外れ、中堅・大企業等に成長すること【事業再編等要件】

グローバルV字回復枠

基本の4要件 +

・グローバル展開を果たす事業であること【グローバル展開要件】

緊急事態宣言特別枠

基本の4要件 +

・緊急事態宣言による売上高等減少要件

※詳細は以下参照URLの公募要領PDFからP13下をご確認ください。

最低賃金枠

基本の4要件 +

・【最賃売上高等減少要件】を満たすこと。

202010月から2021年6月までの間で、3か月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員数の 10%以上いること【最低賃金要件】

※詳細は以下参照URLの公募要領PDFからP14上をご確認ください。

参照URL:事業再構築補助金 特設サイト|令和二年度第三次補正 事業再構築補助金 公募要領 (第3回)

hojyokin

通常枠以外は、全部追加の要件がありますね。補助枠とは、補助金の電子申請時に事業者がセレクトします。補助枠は第三回公募より種類が4種類から6種類に増えました。

コンセプトや補助金額に加え、自分が要件を満たすことのできる補助枠をセレクトしましょう。

<事業再構築の類型と要件>

①新分野展開

メインの事業を変えることなく、新たな製品またはサービスを提供し、新しい市場に進出すること

例)肉屋⇒肉屋が配達するお弁当デリバリー

②事業転換

メインの事業を変更し、新たな製品またはサービスを提供すること

例)カラオケ店⇒防音設備付き楽器練習室

③業種転換

メインの事業だけでなく業種も変更し、新たな製品またはサービスを提供すること

例)スポーツバー⇒スポーツアプリの開発

④業態転換

製品やサービスの提供方法を相当程度変更すること

例)テナントでの学習塾経営⇒ZOOMでのオンライン学習サービス

⑤事業再編

合併や会社再編などの組織再編行為を行い、新たな事業形態のもとで①~④の事業再構築を行うこと

例)小売店とECサイトが合併⇒新たなサイト構築でネット販売

参照URL:事業再構築補助金 特設サイト|令和二年度第三次補正 事業再構築補助金 公募要領 (第3回)

hojyokin
事業再構築については「これって業種転換に入るの?」などとよくわからないことも出てくることかと思います。事業再構築についての不明点は、経済産業省から公表されている「事業再構築補助金の手引き」が参考になります。

具体的に事業再構築ってどういうことすればいいの?と迷われる方は、以下関連記事にて具体例をご紹介していますので、合わせてご覧ください。

なお、公募要領の内容は公募回ごとに変化するため、事業再構築補助金の準備期間中は最新の公募要領や特設サイトから情報を得るようにしましょう。

事業再構築補助金 公式サイト

添付などの物理的なミスがないかをチェック

審査ではケアレスミスが理由で不採択としてはじかれることも多いようです。事業再構築補助金の第二回公募では、以下のミスで不採択となったケースが多いと公式に発表されています。

<要件を満たさなかった申請の事例>

  • 事例①:売上高減少要件に必要な月別売上高が証明する書類が添付されていない。
    売上高減少として選択された年月とは異なる年月の書類が添付されている。
  • 事例②:「認定経営革新等支援機関による確認書」 に記載された法人名等が申請者と異なる。
    認定経営革新等支援機関ではなく、申請者名で確認書が作成されている。
  • 事例③:経済産業省ミラサポplusからの「事業財務情報」が添付されていない。
  • 事例④:添付された書類にパスワードがかかっている、ファイルが破損している。

準備にはしっかり時間をかけること、第三者のアドバイスを受けること、公募要領や特設サイトを熟読することでケアレスミスは防げます。

4つの審査項目をすべて満たしているかチェック

事業再構築補助金の公募要領には、審査の基準として4つの項目が記載されています。審査では、以下の4点を満たす補助事業なのかどうかを総合的に判断しています。この中で、特に事業者が見落としがちな内容と思われるものは太字にしました。逆に、デジタルの活用やコロナ渦の影響で売り上げが下がったという部分は、過去に採択された事業者の計画をみると「オンライン化」や「コロナ渦で売り上げが半分になった」などで多くの事業者が難なくクリアできる審査項目だと思います。

<4つの審査項目の主な内容>※要約※

①補助対象事業としての適格性

  • 公募要領P12の「4.補助対象事業の要件」を満たすか。
  • 補助事業終了後3~5年計画で「付加価値額」年率平均3.0%(【グローバル V 字回復枠】については 5.0%))以上の増加等を達成する取組みであるか

②事業化点

  • 補助事業を十分に遂行できる能力・体制・資金調達ができるのか
  • 市場ニーズの把握・競合他社同行の把握など、マーケティングをしっかりやったうえでの補助事業計画であるか
  • 補助事業はコスパがよく魅力的であり、何を解決すればいいのかの課題と解決方法も明確であるか。

③再構築点

  • 大胆で思い切った事業再構築であるか。
  • コロナ禍により多大な影響を受け、事業再構築を行う必要性が高いか。
  • 市場ニーズと自社の強みを踏まえ、「選択と集中」ができているか。
  • 最先端のデジタル技術の活用や新しいビジネスモデルの構築を通し、地域社会への貢献ができるか

④政策点

  • 我が国の課題(先進的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用など)を解決し、経済をけん引できる補助事業であるか
  • 地域の高い付加価値や雇用を創出し、地域社会をけん引する経済効果の高い補助事業であるか
  • 異なるサービスを提供する事業者同士が協力し、共通のプラットフォームを構築し、単独では難しい課題の解決を実現しているか

参照URL:令和二年度第三次補正 事業再構築補助金 公募要領 (第3回)

審査項目は4点ですが、各項目で4点ほど内容が記載されているため、合計で14もの内容が審査項目として挙げられています。しかしながら、実際は各審査項目で内容がかぶっているものも多く(デジタル技術の活用、地域社会の発展など)、言葉を変え何度も出現する「デジタル」や「地域」は特に事業再構築補助金として重視している審査項目なのだと考えることもできます。

この記事のまとめ

・事業再構築補助金は要件が多く提出書類も多いハードルの高い補助金ですが、事業計画や要件に真剣に取り組むことで、これまでの事業を見直すきっかけになるため、事業者にもメリットがあります。

・事業再構築はなかなか簡単なことではないですが、時代の大きな転換期にただ元の状態に戻ることを待っていても、事態は改善しないことでしょう。ぜひ事業再構築補助金を積極的に活用し、ビジネスを新たなステージへと進化させていきましょう。

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