事業再構築補助金の審査のポイントを解説
2024/07/02
2024/5/14
事業再構築補助金の要件は多岐にわたるため、ポイントを押さえて準備をすることが重要です。まずは事業者自身が事業再構築補助金の要件を満たしているかを確認し、申請の際にはポイントを押さえた事業計画書を提出しましょう。
当記事では、事業再構築補助金の審査で採択されるのに必要なポイントを「①事業計画書」と「②審査」の2つに分け、わかりやすく解説していきます。
なお、当記事は事業者持続化補助金の第12回公募要領をもとに作成しています。
事業再構築補助金の審査の2つのポイント
事業再構築補助金は公式サイトや公募要領など、補助金事務局からさまざまな情報発信がされています。それらを熟読し内容を理解することが採択につながります。
しかし、公募に関する要件は多岐にわたるため、すべてを理解することは容易ではありません。そこで、これから事業再構築補助金の申請を検討している人は、まず以下の2つのポイントを押さえましょう。
(ポイント1)事業計画書
事業再構築補助金は、事業者が「事業再構築」をするための事業計画を立て、認定支援機関がチェックすることが要件となっている補助金です。申請のための提出書類は複数ありますが、「事業計画書の完成度が採択を左右する」といっても、決して過言ではありません。
第一のポイントとして、事業計画書を作成する際に押さえておくべき内容を解説します。なお、大前提として事業再構築補助金に申請するには、以下の要件を満たす必要があります。
【すべての申請枠に共通する要件】
要件 |
内容 |
①事業再構築要件 |
事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること |
②金融機関要件 |
事業計画について金融機関または認定支援機関の確認を受けること |
③付加価値額要件 |
補助事業終了後 3~5 年で付加価値額(または従業員1人あたりの付加価値額)の年平均成長率 3 .0~5.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること |
これらの共通の要件に加えて、申請する枠ごとにも要件が設けられています。枠ごとの要件を詳しく知りたい人は「事業再構築補助金の申請要件とは?枠ごとの要件も解説」の記事を参考にしてみてください。
事業計画全体では「理想像⇒現状⇒間を埋めるプラン」を記載
事業計画では、まず事業者がどのような事業をしたいのかという理想像を説明し、そのためにどのような設備が必要であり、いくら補助してほしいのかという流れで説明しましょう。
事業計画書の中の補助事業は、「理想と現状の差を埋めるための事業」という位置づけです。提出する事業計画書の中ではあなたの思い描く理想の事業と現状の事情をしっかり説明し、その差を埋めるために補助金が必要です、という組み立てで事業計画を展開しましょう。
事業再構築補助金の公募要領に記載の審査項目に忠実に沿って事業計画を記入すれば、上記の理想像、現状、間を埋めるプランを網羅できます。
なお、事業計画書の審査は人間による目視での確認作業です。審査員は膨大な量の事業計画書を見なければならないので、結論をはっきり書くことを意識して作成していきましょう。
今までは何やってて、これから何をするのかを端的に記載する
事業計画書を見る審査員は、あなたが本当はどんな人で普段はどんな生活をしているのかは全く知りません。その審査員に向け、これから行う事業計画を伝えるのが「事業計画書」となります。
事業計画書では、「今までは〇〇の事業をしていて、これからは〇〇の事業をしたい」という部分がはっきり分かるように意識して作成しましょう。
今まで何をしていて、これから何をするのか明確に書くポイントは、できるだけ事業計画書の最初の方に記載することです。そのうえで、「なぜなら、コロナ禍で売り上げが減少したため」「なぜなら、我々の〇〇の技術が感染症対策に適するため」などの理由を書きます。
わかりやすく図表・写真を用いて15ページ以内で記載する
事業再構築補助金の公募要領では、事業計画書は15ページ以内のPDFにまとめるようにとの指示が掲載されています。また、希望補助金額が1,500万円以内の場合は10ページ以内に納めます。
補助金額1,500万円以下 |
PDFで10ページ以内 |
補助金額1,500万円超~ |
PDFで15ページ以内 |
ページ数が長いほど採択率が高くなるわけではありませんが、公募要領に書かれている審査項目の4点(①補助事業の具体的取組内容 ②将来の展望 ③本事業で取得する主な資産 ④収益計画)がすべて書かれていなければ、減点の対象となります。
事業計画をわかりやすくするためには、以下のポイントも押さえておきましょう。
- 専門用語は誰が見てもわかる言葉で表現するように努める
- 抽象的ではなく具体的な数字や事例を書く
- ダラダラと長く説明せず、要点を押さえてコンパクトに
数値にはっきりとした根拠を示すこと
前の見出しでも触れましたが、事業計画書には複数の箇所で「数字」を書く場面があります。具体的には、以下の項目で事業者はできるだけ正確な数値を記載する必要があるのです。
- 将来の展望
- 補助事業で取得する主な資産
- 収益計画
「事業を始める前から具体的な数字なんて書けない!」と思う方が多いと思いますが、融資の審査と同様に、補助金の審査でも具体的な数値のない事業計画では採択される可能性は低くなります。
そこで、例えばマーケットの優位性を証明するためには、「2024年に池袋駅周辺のファッションビル内のテナントを借りてテストサンプルを販売したしたところ、1週間で100個の販売へとつながり、売上高は40万円だった」など、事業者が実際に行ったアンケートやサンプル配布結果、または業者を通して実行したアンケート結果などを積極的に書いていきましょう。
- 将来の展望⇒テストサンプルを販売したなどの、具体的な根拠
- 補助事業で取得する主な資産⇒なぜその取得金額になるのかの他社との相見積や市場調査結果などの根拠
- 収益計画⇒補助事業でどのように収益を上げられるのかの根拠(同じようなビジネスモデルの事業者の公開データを参照、メルマガ会員などへのアンケート結果を添付など)※付加価値額も算出すること
事業計画書の文章ではストーリーを立てわかりやすい表現にしつつ、数字については根拠(エビデンス)をもった数値を記入していくことが大切です。
なぜその事業再構築なのかの理由を明確に
事業再構築をする理由は、思わず審査員が「なるほど~」と声をあげるほどの説得力があるのが理想的です。補助金をもらうには、なぜその事業が必要なのか?なぜその設備が必要なのか?という点が、審査において厳しく追及されます。
そのため、事業再構築をする理由は以下のように「説得力があり」「納得できる」ものをチョイスすると良いでしょう。
- 社会の変化(雑誌・新聞離れの加速、子供の数が少ない、高齢者が多い、リモートワーカーが増えた など)
- 自分の身の回りの変化(家族や親戚がなくなった、土地を相続した、不動産の老朽化、子供が資格を取った など)
- 世界情勢の変化(プラスチックごみを減らす、感染症対策を講じる、デジタル化を導入する、日本円が安くなった など)
例えば、以下のように社会の変化のひとつである「新聞の売上部数の伸び悩み」を理由にすれば、社会問題と事業者の売上減が補助事業で解消されるため、地域社会に貢献する補助事業であると評価される可能性があります。
例)新聞の売上部数が減っていて、間に挟みこむチラシの依頼も減っているので倉庫やデリバリー人材に空きがある。そのリソースを使い、昼間のアイドルタイムにデリバリーで飲食をスタートする。 |
(ポイント2)審査
大きなポイントの2つ目は、審査についてです。事業者として、時間をかけて作成した事業計画書がどのように審査されるのかは気になるところだと思います。審査については、以下のポイントを押さえておきましょう。
すべての要件を満たしているか入念にチェックする
事業再構築補助金には「①事業再構築の定義に該当する事業であること」「②事業計画について金融機関または認定支援機関の確認を受けること」「③補助事業により付加価値額を増加させること」という3つの共通の要件があります。
これらに加え、応募する補助枠(例:成長分野進出枠)と選ぶ事業再構築の種類(例、新分野展開)により満たさなければいけない要件があります。
事業再構築補助金では、どんなに良い事業計画を提出しても、要件を満たさなければシステムで不受理となってしまいます。不受理となる理由の中には、つけるべき添付書類がついていないという添付書類のミスのほか、要件を間違って解釈して不受理となってしまうこともあります。
自分が選んだ申請枠、事業再構築の定義に沿っていない事業計画書を作成してしまうと、一貫性がない事業計画書という判断をされてしまうため注意しましょう。
添付などの物理的なミスがないかをチェック
審査ではケアレスミスが理由で不採択としてはじかれることも多いようです。事業再構築補助金の過去の公募では、以下のミスで不採択となったケースが多いと公式サイトで発表されています。
【要件を満たさなかった申請の事例】
- 事例①:売上高減少要件に必要な月別売上高を証明する書類が添付されていない。
(売上高減少として選択された年月とは異なる年月の書類が添付されている。) - 事例②:「認定経営革新等支援機関による確認書」 に記載された法人名等が申請者と異なる。
(認定経営革新等支援機関ではなく、申請者名で確認書が作成されている。) - 事例③:経済産業省ミラサポplusからの「事業財務情報」が添付されていない。
- 事例④:添付された書類にパスワードがかかっている、ファイルが破損している。
準備にしっかり時間をかけること、第三者のアドバイスを受けること、公募要領や特設サイトを熟読することでケアレスミスを防ぎましょう。
5つの審査項目をすべて満たしているかチェック
事業再構築補助金の公募要領には、審査の基準として5つの項目が記載されています。審査では、以下の5点を満たす補助事業なのかどうかを総合的に判断されるため、事業計画書を作成する際は審査項目をアピールできる内容となるよう意識しましょう。
【事業計画書の審査項目】
補助対象事業としての適格性 |
|
新規事業の有望度 |
|
事業の実現可能性 |
|
公的補助の必要性 |
|
政策点 |
|
参考:第12回公募要領|事業再構築補助金
なお、これらの審査項目に加え、取得することにより審査において有利となる「加点項目」や、該当する場合に審査において減点となる「減点項目」もあります。加点や減点について詳しく知りたい人は「事業再構築補助金における加点項目を解説」の記事も参考にしてみてください。
第12回公募では口頭審査が追加された
第12回公募では、事業計画書による書面審査に加えて口頭審査が追加されました。口頭審査はすべての申請者に対して行われるものではなく、一定の基準を満たした事業者の中から必要に応じて行われるものであり、該当者には事務局から案内があります。
【口頭審査の概要】
項目 |
内容 |
審査内容 |
申請した事業計画について、事業の適格性、革新性、優位性、実現可能性等を審査 |
審査方法 |
オンライン(Zoom等) |
審査時間 |
15分程度 |
準備するもの |
|
審査には申請者自身が1名で対応する必要があり、支援事業者が代わりに対応することや複数名での対応は認められません。また、インターネットの接続不良などにより審査が中断された場合に再審査を行うことはできません。
なお、口頭審査の対象となる基準や審査の具体的な内容は公表されていません。これらの内容に関する問い合わせに対しては回答できない旨の記載があるほか、口頭審査の内容を口外することは禁止されているため注意しましょう。
この記事のまとめ
・事業再構築補助金は要件が多く提出書類も多い補助金ですが、事業計画や要件に真剣に取り組むことでこれまでの事業を見直すきっかけになるため、事業者にもメリットがあります。
・事業再構築補助金では「事業計画書」と「審査」のポイントを押さえることが大切です。申請の要件や審査項目を公募要領でよく確認して申請を行いましょう。
・事業再構築は簡単なことではないですが、時代の大きな転換期にただ元の状態に戻ることを待っていても、事態は改善しないことでしょう。ぜひ事業再構築補助金を積極的に活用し、ビジネスを新たなステージへと進化させていきましょう。