事業再構築補助金における従業員の定義を解説
2023/07/18
2021/8/20
事業再構築補助金の第三回公募から、従業員の数により補助金額の上限が決まるという内容に変更されました。そのため、これまで以上に事業再構築補助金の申請では従業員の数が重要になっていきます。
当記事では、事業再構築補助金において従業員とはどのような定義なのかを解説していきます。そもそも従業員を雇っていない自営業の方や、パート従業員しか雇っていない会社は、どうすればいいのかのついても解説するので、事業再構築補助金への申請を検討している人は参考にしてみてください。
事業再構築補助金で定義する「従業員」とは?
事業再構築補助金の公募要領での「常勤」という言葉は中小企業基本法にある「常時使用する従業員」を指します。そのため、前もって解雇通知をするべき従業員かどうかが判断基準となります。
常勤従業員は、中小企業基本法上の「常時使用する従業員」をいい、労働基準法第 20 条の規定に基づく「予め解 雇の予告を必要とする者」と解されます。これには、日々雇い入れられる者、2 か月以内の期間を定めて使用される 者、季節的業務に 4 か月以内の期間を定めて使用される者、試みの使用期間中の者は含まれません。
参照URL:事業再構築補助金 公募要領 第3回
なお、「最低何名以上の従業員を雇うこと」という要件は事業再構築にありません。そのため、一人社長(事業主のみの会社)も事業再構築補助金の申請は可能です。
パートが従業員に入るかどうかは個別に判断する
中小企業庁のホームページのFAQによると、以下のように中小企業の「パート」についての解釈が記載されています。
‘’Q3:中小企業基本法上の「常時使用する従業員」の定義を教えてください。また、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、非正規社員及び出向者並びに会社役員及び個人事業主は「常時使用する従業員」に該当するか教えてください。
A:中小企業基本法上の「常時使用する従業員」とは、労働基準法第20条の規定に基づく「予め解雇の予告を必要とする者」を従業員と解しています。具体的には参考をご参照ください。
よって、 パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、非正規社員及び出向者については、当該条文をもとに個別に判断されると解されます。
こちらを参照すると、一概にパート従業員が「あらかじめ解雇の予告を必要とするもの」であるかどうかは言えず、個別に判断されると説明されています。つまり、事業所として事前に解雇通知をすべきパートさんであれば従業員としてカウントすべきであり、そうでない場合のパート従業員は従業員としてカウントしない、という解釈が可能です。
みなし大企業の条件にあてはまる場合は大企業とみなされる
従業員(役員)についての規定は、事業再構築補助金の公募要領で「みなし大企業」についての説明されている箇所でも、記載されています。みなし大企業とは、「本来は中小企業や中堅企業であるが、ある条件にあてはまる場合は大企業としてみなしますよ」という考え方です。
事業再構築補助金の対象は中小企業者または中堅企業者であり、大企業(資本金10億円以上)は対象外です。加えて、以下の(1)~(5)のいずれかに該当する場合、たとえ資本金が10億円未満の中小企業だとしても、みなし大企業と判断され事業再構築補助金の対象外となります。
- 発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業者
- 発行済株式の総数又は出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業者
- 大企業の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の2分の1以上を占めている中小企業者
- 発行済株式の総数又は出資価格の総額を(1)~(3)に該当する中小企業者が所有している中小企業者
- 1~3に該当する中小企業者の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の全てを占めている中小企業者。
- 応募申請時点において、確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者
ここで気を付けたいのは、上記1、2のように中小企業の株式を親企業が持っている、大企業の役員が当該中小企業の役員も兼任しているケースです。また、5のように役員(兼職員)しかいない中小企業者もみなし大企業に該当します。
【みなし事例】持株会社は申請OK。ただし同一法人とみなされる
事業再構築補助金は大手企業(資本金10億円以上が目安)としていますが、それ以外にも上記の「みなし大企業」の要件に当てはまる場合は、対象外となります。また、持株会社は事業再構築補助金の申請自体は可能とされていますが、株の保有先の会社は同一の会社とみなされ、別途申請することはできません。
申請するケース |
申請可否 |
持株会社 |
〇 |
親会社が持株会社として事業再構築補助金に 申請する際の子会社 |
× |
みなし大企業が中堅企業者として申請する |
× |
子会社の代わりに親会社が申請する |
× |
A社とB社 がそれぞれ申請することが可能か ●A社:株主構成 α氏(個人)100% ●B社:株主構成A社40%、α氏(個人)20% |
〇 個人と法人は別個の人格であり、A社は、B社の50%超の議決権を有しないため、 |
B社は第2回公募以降申請することが可能か ●A社:親会社(第1回公募採択) ●B社:A社の100%子会社(未申請) |
× 採択事業者は再度申請することができないため できません。 |
参照URL:事業再構築補助金 よくあるご質問【補助対象者】
従業員の数を示す書類は何を提出すればいい?
事業再構築補助金に申請する際は、事業再構築に関わる事業計画を立て、必要な提出書類を準備します。申請方法・書類については「事業再構築補助金の申請方法と申請書類を解説|GビズIDの取得が必須」で詳しく解説していますので、ご確認ください。
事業再構築補助金に申請する際の書類はさまざまありますが、「通常枠」「大規模賃金引上枠」「緊急事態宣言特別枠」「最低賃金枠」の4つの補助枠に申請する場合、従業員の数を示す書類を申請時に提出する必要があります。(電子申請のためPDFで)
※令和3年7月30日(金)から開始の第三回公募より追加となった補助枠です |
従業員の数を示す書類とは、具体的には労働者名簿のことです。労働者名簿とは、労働基準法により職場で必ず置かなければいけない書類として定められているものです。労働者名簿には原則、全社員の名前や情報が書かれており、入社退社等で常に更新されるべきものです。
労働者名簿は、特にどこかの機関に提出しなければいけないものではありませんが、例えばハローワークを通じて労働基準監督局から提出を求められることもあります。労働者名簿の書式は、厚生労働省のホームページ「厚生労働省|主要様式ダウンロードコーナー」からダウンロードできます。
この記事のまとめ
・事業再構築補助金の規定では、従業員とは事前に通告して解雇する対象である「常時使用する」従業員のことを言います。
・その職場での規定に従い、パート従業員も従業員としてカウントする場合があります。