補助金ガイド

事業再構築補助金における宿泊業の採択事例や対象となる条件を解説

2024/04/26

2021/8/18

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

宿泊業を営んでいる人の中には、事業再構築補助金の利用を検討している人もいますよね。また、実際に審査に通った事業者の採択事例を知りたい人もいるでしょう。

当記事では、宿泊業による事業再構築補助金の採択事例と対象となる条件を解説します。採択事例とあわせて、申請の対象となる条件を知りたい人は参考にしてみてください。

なお、2024年4月23日に第12回公募要領が公開されました。公募要領の改訂にともない記載内容の一部が変更となっている可能性があるため、最新の公募内容やスケジュールは事業再構築補助金の公式サイトから確認してください。

事業再構築補助金における宿泊業の採択事例

事業再構築補助金は、宿泊業から新たな分野への挑戦や異業種から宿泊施設の開業などの取り組みに活用できます。第10回公募の採択結果によると「宿泊業、飲食サービス業」の事業者は5,205件中572件採択されていました。

【宿泊業に関する採択事例】
No.
宿泊業から事業再構築を行った事例
既存の事業内容 事業再構築の概要
1 ホテルおよび
スーパー銭湯の経営事業
【事業再構築の理由】
  • 新型コロナウイルスと物価高騰による影響
【内容】
  • 水温を選べる水風呂を備えた完全個室のサウナ専門店を
    出店
  • ホテルやスーパー銭湯の経営で培った経験を活用
2 旅館および海の家の
経営事業
【事業再構築の理由】
  • 新型コロナウイルスや原油高および物価高の影響による
    売上減少および利益率の減少
【内容】
  • ワーケーション対応の宿泊施設&カフェ&
    コワーキングスペースを新設
  • 自社の強みである歴史と景観の良さを活用
3 旅館経営事業 【事業再構築の理由】
  • 売上や利益を増加させること
【内容】
  • 既存事業のノウハウやネットワークを活かし、観光地に
    寿司割烹を新規開業
  • インバウンドの獲得を目指し事業構造を変革する
4 民泊事業 【事業再構築の理由】
  • 住空間への関心の増大や省エネ意識の高まりなどの
    新たなニーズへの対応
【内容】
  • 住空間の関心や省エネ意識の高まりなどのニーズに応える
    ZEH(※)リノベーション事業を実施
  • 地域の再生支援に取り組む
※ZEH(ゼッチ):Net Zero Energy Houseの略。
省エネルギー効率、断熱性能、太陽光発電などの活用で、
生活で消費するエネルギーをゼロにする住宅のこと。
5 ホテル経営事業 【事業再構築の理由】
  • 新しいサービスを作り集客を図る
【内容】
  • ゴルフシュミレーション施設の運営
  • ホテル事業と相性が良い「室内ゴルフ練習場」の経営で
    事業再構築を図る
No.
異業種から宿泊業への事業再構築の事例
既存の事業内容 事業再構築の概要
1 アルミドロス処理装置の
製造事業(製造業)
【事業再構築の理由】
  • 物価高騰による厳しい経営状況
  • 自動車業界等で予想されるアルミ素材離れ
【内容】
  • ジオパーク内での子育て世代向け宿泊施設の運営に挑戦
  • 新たに「旅育」「アドベンチャーツーリズム」市場へ進出
2 和雑貨卸売および
着物レンタル事業
(卸売業、小売業)
【事業再構築の理由】
  • 若年個人客を中心とした顧客層の偏在化を解消する
【内容】
  • 法人契約を見据え、空き家をワーケーション宿泊施設に
    改修し、宿泊事業を実施
  • 人材リソースの再配置により生産性および効率性の改善を
    図る
3 伝統建築や社寺建築など
(建設業)
【事業再構築の理由】
  • 新たな収益事業の確立
【内容】
  • 地域ストック(※)を利用したインバウンド需要を含む
    観光や宿泊および交流施設の開業
  • 自社の強みである古民家再生および伝統的な日本建築
    ノウハウを活用
※地域ストック:地域の空き家や未使用の施設
4 カフェ経営事業
(飲食サービス業)
【事業再構築の理由】
  • 地域活性化に貢献
【内容】
  • 自社の強みである古民家DIYを活かし、グランピング施設
    を開業
  • 地域に根差す事業者たちと連携して地域の魅力を発信し、
    滞在型観光への誘客を目指す
5 観光農園や直売所および
カフェ事業
(飲食サービス業)
【事業再構築の理由】
  • 最低賃金引上げに必要となる原資確保
【内容】
  • 伝統的な日本家屋での民泊事業および賃貸事業
  • インバウンド旅行者とペット連れ国内旅行者をターゲット
    とする

参考:事業再構築補助金公式サイト「採択結果>第10回(全体版)事業計画の概要」をもとに株式会社SoLaboが作成

宿泊業の採択事例には、既存事業である旅館経営のノウハウや人脈を活かし、寿司割烹の飲食店を開業した取り組みがあります。インバウンドの獲得を見込んで観光地に出店し、事業構造の変革を目指す計画です。

また、異業種から宿泊業を始める取り組みには、最低賃金を引き上げる原資を確保するため、直売所やカフェの経営をしている事業者が民泊事業に挑戦した事例があります。これから需要が見込まれるインバウンドや国内の観光客をターゲットにした取り組みです。

事業再構築補助金に申請するには、申請の対象や要件を満たす必要があります。自社が申請の対象になるのか知りたい人は、当メディアを運営する株式会社SoLaboに無料診断からお問い合わせください。

なお、事業再構築補助金は、審査や補助事業(※)および手続きが完了した後に補助金が受け取れる制度です。そのため、補助事業を実施する際は、経費を立て替える自己資金が必要になります。

※補助事業:3~5年の事業計画全体のうち「補助金を活用する事業(12か月~14か月)」のみを示す言葉

無料診断電話で相談0120-188-117

民泊から旅館業への事業転換

事業再構築補助金の具体的な事例には、民泊から旅館業を開業した取り組みがあります。制限がある中での民泊の営業や集客、感染対策の限界などの問題を解決するため、新たな顧客層をターゲットにした旅館業への事業再構築を実施しました。

事業計画は、個室を増やして感染リスクを減らし、大手の予約サイトで集客を図る内容となっています。また、旅行客以外のファミリー層やビジネス層を呼び込むため、1~2週間の中長期滞在プランをサービスに取り入れる計画です。

補助事業では旅館業の営業許可を取得するため、建築基準法に基づいた建物の改修と消防法に基づいた消防設備の導入を行います。また、新規プランのプロモーションのため、既存のSNSや自社ホームページでの広報に加え、パンプレットを制作し広報活動の幅を広げます。

ホテル経営によるワーケーション関連事業の展開

事業再構築補助金の具体的な事例には、ホテル経営をしている企業がワーケーションの関連事業を展開した取り組みもあります。新型コロナウイルスによる移動制限や周辺地域の衰退、新規事業者の参入などの課題を解決するため、ワーケーション市場へ進出しました。

事業計画は、ワーケーション施設を開業し、既存の観光と個人向けの宿泊だけでなく、ワーケーション施設とホテル宿泊が一体となる、サブスクリプション型法人向けサービスを提供する内容となっています。企業従業員の継続滞在を対象にツアー事業や滞在コンシェルジュ事業も行う計画です。

補助事業では新たに、保有しているビルの全面改修や、管理システムおよび業務用家具などの設備導入を実施します。また、新事業の広報のため、WEBサイトの構築やコンテンツ制作にも取り組みます。

物品賃貸業によるグランピング施設の開業

事業再構築補助金の具体的な事例には、物品賃貸業をしている企業がグランピング施設を開業した取り組みもあります。新型コロナウイルスの影響による市場縮小や大手レンタル企業の参入で営業赤字が続いたことから、事業再構築に挑戦しました。

事業計画は、全天候型のドッグランコートを備えたグランピング施設を開業する内容となっています。愛犬を安心して走らせることができるプライベート空間や、冷暖房完備の宿泊施設を設置することで、今後需要が見込まれるペットやアウトドアのニーズを取り入れます。

補助事業では、グランピング施設にかかわる設備投資を行います。施設で使用する機器やメンテナンスなどは、既存の資産やノウハウの活用で費用を抑え、顧客に低価格のサービスを提供する計画です。

グランピング事業やインバウンドが対象の事業は成長枠に申請できる

グランピングおよびキャンプ事業、インバウンドが対象の事業に取り組む場合は、成長枠に申請できます。

成長枠とは、成長分野への事業再構築に取り組む企業が申請できる枠であり、補助事業で取り組む事業内容が、基本的に「成長枠対象業種・業態リスト」に記載がある業種および業態に限られます。

宿泊業は成長枠の対象ではありませんが「キャンプ場・グランピング施設宿泊業」および「インバウンド顧客をターゲットとした宿泊業」に限り、成長枠対象業種・業態リストに記載があるため、成長枠を活用した事業再構築に取り組めます。

補助事業として「キャンプ場・グランピング施設宿泊業」または「インバウンド顧客をターゲットとした宿泊業」に取り組む予定の事業者は、成長枠への申請を検討してみてください。

中堅企業以下が申請の対象となる

事業再構築補助金は、資本金10億円未満かつ従業員2,000人以下の中堅企業以下が申請の対象となります。そのため、中小企業者も申請の対象となりますが、中小企業者の定義は、業種ごとに資本金額や従業員数が異なります。

【中小企業者(会社または個人事業主)の定義】※一部抜粋
業種 資本金 従業員(常勤)
サービス業
(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く)
~5,000万円 ~100人
旅館業 ~5,000万円 ~200人

参考:第11回事業再構築補助金「公募要領」をもとに株式会社SoLaboが作成

宿泊業の場合、対象者の条件では「サービス業」に該当します。資本金額5,000万円または従業員数300人以下の企業であれば、中小企業者にあてはまります。仮に、民泊を経営している、資本金額か従業員数が基準の数値以下の中小企業者であれば「サービス業」に該当し、申請の対象となります。

旅館業の場合は、宿泊業とは異なり、資本金額5,000万円または従業員数200人以下であれば中小企業者となります。宿泊業に該当する中小企業者は、申請を検討する際、中小企業者の条件が宿泊業と旅館業で異なることに留意して、公募要領を確認しましょう。

事業再構築補助金において申請の対象となる事業者は、中堅企業以下です。事業再構築補助金の申請におけるその他の条件が知りたい人は「事業再構築補助金における申請要件を解説」を参考にしてみてください。

既存の建物の改修費やWEBサイトの構築費などが補助の対象になる

事業再構築補助金では、既存の建物の改修費やWEBサイトの構築費などが補助の対象になります。補助対象となる経費は全部で11項目あり、申請枠によって使える経費が決まっている項目もあります。

【補助対象経費の項目】
経費項目 宿泊業における経費の例
①建物費 新事業で活用する宿泊施設の建築・改修、建物の撤去など
②機械装置・システム構築費
(リース料を含む)※1
新事業に必要な設備や業務用機器などの機械装置、
システム構築費用や専用のソフトウェアの購入など
③技術導入費 ライセンス契約や特許、商標登録のある技術およびサービスを
導入するときのライセンス料など
④専門家経費 マーケティングやWEBサイト運用などのコンサルティングを
依頼した場合のコンサル料や専門家への謝金など
⑤運搬費 運搬料、宅配や郵送料など
⑥クラウドサービス利用費 新事業のデジタル改革で活用するWEBツールなどの
クラウドサービス利用費
⑦外注費 WEBサイトのグラフィックデザインの委託(請負)費用など
⑧知的財産権等関連経費 商品や技術の特許権に関する士業の手続代行費用など
⑨広告宣伝・販売促進費 新商品やサービスのパンフレットなどの広告作成、媒体掲載、
展示会出展など
⑩研修費 新事業に必要な教育訓練費、講座受講 などの費用
⑪廃業費 ※1 事業の廃止手続費、解体費、リースの解約などの費用
※1 産業構造転換枠のみ利用可能

参考:第11回事業再構築補助金「公募要領」をもとに株式会社SoLaboが作成

申請の際は、公募要領に定められた「補助対象となる経費項目」にあてはまる経費を計上する必要があります。

たとえば、補助事業でワーケーション事業を始める場合、ワーケーションの設備に必要な内装工事は「建物費」にあてはまります。補助事業にかかわる広告を作成において、SNSや動画作成をする経費は「広告宣伝・販売促進費」として経費を申請します。

ただし、補助対象となる経費は補助事業のみで使う経費に限られます。他の事業でも使用できる汎用性のある経費は、補助事業のみで使うことが明らかと認められなければ補助の対象外となります。

事業再構築補助金では、宿泊施設の建設費や新事業のWEBサイト構築費用などが補助対象となります。補助対象になる経費の確定時期や準備する書類などが知りたい人は「事業再構築補助金における補助対象経費は何か?対象外になる経費も解説」を参考にしてみてください。

土地や建物の購入費は補助の対象外になる

事業再構築補助金において、土地や建物の購入費は補助の対象外です。不動産の購入費だけでなく、塀や青空駐車場などの構築物や自社の人件費は対象外となります。

【補助の対象外となる経費例】
  • 土地や建物など不動産の購入費
  • 構築物の購入費
  • 事業にかかる自社の人件費や旅費
  • 汎用性のある経費
  • 既存事業に活用するなど、補助事業のために使用されると認められない経費 など

参考:第11回事業再構築補助金「公募要領」をもとに株式会社SoLaboが作成

仮に、申請の際に計上した経費の大半が補助の対象外である場合、不採択または採択取消になります。経費を申請する際は、補助対象外の経費が含まれていないかを確認しましょう。

令和5年度の事業再構築補助金は第12回公募で最後になる予定

令和5年度の事業再構築補助金は第12回公募で最後になる予定です。事業再構築補助金の公式サイトにある「事業再構築補助金の概要」には「令和5年度末までに3回程度の公募を実施予定」である旨が記載されています。

第10回公募の申請締切から第11回の申請受付開始日までは、令和5年6月30日~9月13日の約2カ月半でした。そのため、第12回公募の申請受付開始日は、第11回公募の申請締切の10月6日の約2カ月半後である12月または翌年1月であると考えられます。

次回の第12回公募のスケジュールは、令和5年12月12日現在公開されていません。事業再構築補助金に申請を検討している人は、公式サイトの「NEWS」をこまめに確認しておきましょう。

この記事のまとめ

事業再構築補助金は、宿泊業から新分野への挑戦や異業種から宿泊業を開業するなどの取り組みに活用できます。補助事業の内容が「キャンプ場・グランピング施設宿泊業」や「インバウンド顧客をターゲットとした宿泊業」にあてはまる場合は、成長枠の活用を検討できます。

申請の対象は、資本金10億円未満かつ従業員2,000人以下の中堅企業以下の事業者です。補助対象の経費は、既存の建物の改修費やWEBサイトの構築費など公募要領に定められた11項目にあてはまる経費であり、不動産の購入費は補助の対象外となります。

令和5年度で最後の予定となる第12回公募の情報は、令和5年12月12日現在公開されていません。次回公募に申請予定の人は、公式サイトのNEWSをこまめに確認しておきましょう。

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