事業再構築補助金における交付申請の方法と注意点を解説
2021/8/20
2022/04/12
新型コロナウイルス感染症で誰もが新しい生活様式への転換を求められている昨今。企業もこれまでの事業体制から新しい事業体制への変革が必要になっています。そこで、社会状況に合わせて企業の事業内容や形態の変化を支援するために設けられたのが、事業再構築補助金です。今回は、事業再構築補助金の交付申請に関する必要書類と提出時の注意点について解説します。
事業再構築補助金は交付申請を行わなければ支給されない
事業再構築補助金で多くの方が力を入れて取り組んでいるのが、公募に応募する際に提出する事業計画書などの書類作成です。確かに事業再構築補助金に採択されるためには、応募段階で発生する審査に通らなくては話にならないため、応募時に提出する書類は重要です。
しかし、採択されたからと言って安心してはいけません。事業再構築補助金における採択とは「提出した事業計画が補助金の対象として認められただけ」であり、記載した経費がすべて認められたわけではないからです。
実際に事業再構築補助金の給付額が確定するのは、経費の詳細などを記載した「交付申請書」を提出して問題がないと認められたときです。
事業再構築補助金に採択されたあとの支給までの流れについては下記記事で解説していますので、ご確認ください。
事業再構築補助金は採択後が肝心!採択から支給までの流れと注意点を解説
交付申請は補助対象事業を行う前に行う必要がある
まれに採択されたタイミングで補助対象事業を行い始め、交付申請を送れて提出するというケースがありますが、これはNGです。補助対象事業は交付申請を行い、交付決定がなされてからが原則だからです。
万が一、交付申請を行う前に補助対象事業を実施してしまうと、発生した費用は補助の対象にはならないことがあるので、無駄な出費を避けるためにも焦らず、きちんとルールを守るようにしましょう。
交付申請は早めに行った方がいい
交付申請には「〇〇日までに」というような明確な期限が定められていません。基本的には採択結果が届いたらすぐに手続きをした方がいいです。
補助対象事業を行えるのは採択結果が出てから14か月以内と期間が定められているためです。交付申請が遅れると交付決定に掛かる審査も後ろ倒しになるため、結果的に補助対象事業を実施できる期間が短くなってしまいかねません。
補助金交付申請額が3千万円以上の場合は「金融機関の確認書」が必要
事業再構築補助金の交付申請額が3千万円以上になるときは「金融機関の確認書」の提出が必要です。金融機関の確認書はその名の通り金融機関が発行する書類であり、発行に当たっては時間がかかることがあります。
加えて金融機関によっては、「申請に用いる事業計画書の提出が必須」というところもあります。ぎりぎりのスケジュールで交付申請の準備を進めていると金融機関の確認書の用意が間に合わずに補助対象事業を実施する時間がなくなるというケースもあり得ます。
交付申請額が3千万円以上になるときは、特に余裕を持って交付申請を行うようにしましょう。
交付申請の審査では補助金が当初より減額される可能性もある
交付申請の審査では公募に応募したときよりもより詳細に経費等の内容がチェックされ、補助対象経費として適切なものであるかどうかが判断されます。もし不適切であると判断されても、事業再構築補助金の受給ができなくなるわけではありませんが、当初申請した補助対象経費が修正・削除され、補助金額が減額されるケースもあります。
交付申請するときは「事業を再構築する上でどうしてその費用が必要なのか」を明確にしておくことが大切です。
事業再構築補助金の交付申請の方法
事業再構築補助金の交付申請は原則jGrantsというシステムから行います。書類で提出するような手間はかからず、交付申請別紙などの必要書類はすべてダウンロードして取得することができます。
交付申請を行う際のjGrantsのマニュアルが準備されていますので、jGrantsの操作方法をこちらをご確認ください。
関連|jGrants
交付申請に必要な書類
交付申請に必要な書類は主に3つあります。それぞれ見ていきましょう。
- 費用の妥当性を証明できる書類
- 履歴事項全部証明書・確定申告書
- 交付申請書別紙
必要書類1:費用の妥当性を証明できる書類
まず建物費、機械装置・システム構築費等の費用を証明する交付申請時に有効な見積書(相見積書含む)及び設計図書・パンフレットなどが必要です。
ここでポイントとなるのが「費用の妥当性」です。一般平均価格に照らし合わせてあまりにも逸脱し過ぎた(高すぎる)費用が掛かっている場合は、価格に妥当性がなく補助対象としては不適格と判断されてしまうかもしれません。
反対に費用が高くとも「事業を運営していくうえで必要な機能を備えているために、一般価格に比べて高くなっている」など、妥当性を証明できれば補助対象として認められることもあります。
必要書類2:履歴事項全部証明書・確定申告書
会社の登記情報なども必要です。ただし、法人と個人事業主で提出するべき書類は異なります。
・法人の場合:過去3か月以内に発行された履歴事項全部証明書
・個人事業主の場合:直近の確定申告書
必要書類3:交付申請書別紙等
最後は交付申請の根幹になる書類です。交付申請書別紙は応募の際に提出された事業計画書の内容などをもとに、応募申請時以降変更になった項目や確定している内容を反映して作成し、その他提出書類と併せて提出することになります。
ケースによって必要になる書類
必須書類のほかに事業者の置かれた状況によって、必要な書類もあります。例えば、次の2つの書類などです。
- 該当の交付申請別紙2
- 海外渡航計画書<参考様式12>
該当の交付申請別紙2
技術導入費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費を補助対象とする際に提出が求められる書類です。
海外渡航計画書<参考様式12>
海外旅費を補助対象にしたい事業者の方は提出する必要がある書類です。
事業再構築補助金の交付申請に当たっての注意点
事業再構築補助金の交付申請では、申請する補助額の妥当性のほかにも気をつけなければいけない点があります。
特に気をつけていただきたいのは次の2つのポイントです。
- 提出書類の費用は消費税等を差引いたものを記載する
- 期限切れの提出書類がないかどうか
注意点1:提出書類の費用は消費税等を差引いたものを記載する
交付申請書提出の際、ついついやってしまいがちなのが消費税を込みの金額を記載してしまうということです。しかし、事業再構築補助金では税金は補助の対象になりません。そのため消費税及び地方消費税額等仕入控除税額を減額して記載する必要があります。
注意点2:期限切れの提出書類がないかどうか
また、提出書類の種類によっては効力に有効期限が設定されているものがあります。「早く取得し過ぎて交付申請したときには有効期限切れ」などとなっては残念です。交付申請をするときは提出書類の有効期限にも目を向けるようにしてください。
この記事のまとめ
事業再構築補助金で誰もが力を入れるのが応募時の事業計画書などですが、実際に受給するためにはその後の交付申請などの手続きも重要です。交付申請にしなければいけない期限はありませんが、交付決定が遅れると結果的に補助対象事業の実施期間も短くなります。交付申請では補助額の妥当性を証明するために多くの書類が必要になることも考慮し、採択されたらすぐに交付申請の準備に取り掛かるようにしましょう。