事業再構築補助金における申請要件を解説
2024/05/14
2022/10/6
事業再構築補助金へ申請を検討している人の中には、申請の要件が知りたい人もいますよね。また、申請する枠によっても要件が異なるのかどうか気になる人もいるでしょう。
当記事では、事業再構築補助金における申請要件を解説します。要件ごとに必要となる提出書類についても解説するので、事業再構築補助金の申請を検討している人は参考にしてみてください。
なお、当記事は事業再構築補助金の第12回公募要領をもとに作成しています。
目次
すべての申請者に共通する要件が3つある
事業再構築補助金において、すべての申請者に共通する要件は3つあります。申請者は、事業再構築の目的によってわけられた「申請枠」をひとつ選択し、申請枠に定められている要件を満たす必要があります。
【申請枠に共通する要件】
申請枠 |
申請枠に共通する要件 |
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申請枠には要件が定められており、すべての申請枠で満たす必要のある要件が「事業再構築要件」「認定支援機関要件」「付加価値額要件」の3つです。事業計画を作成する際は、すべての申請枠に共通する要件と申請枠ごとに異なる要件の両方を満たす計画をたてます。
すべての申請枠に共通する要件は事業再構築補助金に申請する際の必須の要件であるため、申請予定の人は必ず確認しておきましょう。
事業再構築要件
事業再構築要件を満たすには、事業再構築の6つの定義の中からひとつの定義を選択し、事業の方向性を決める必要があります。また、事業再構築の定義ごとに要件が定められており、定義ごとの要件を満たした事業計画を作成することで事業再構築要件を満たしたことになります。
【事業再構築の6つの定義】
事業再構築の定義 |
概要 |
①新市場進出 |
【例】 喫茶店経営⇒新たに食品の販売、焼き肉店開業 |
②事業転換※1 |
【例】 美容室経営⇒ネイルサロン経営 |
③業種転換※1 |
【例】 製造業⇒建設業 |
④事業再編 |
【例】 吸収合併後、新たな分野へ参入する |
⑤国内回帰※2 |
海外で製造を行う製品の国内拠点を整備する |
⑥地域サプライチェーン維持・強靭化※2 |
地域のサプライチェーンにおいて不可欠であり供給に不足が生ずるおそれのある製品の国内生産拠点を整備する |
※1 転換する事業や業種は総務省「日本標準産業分類」を参考 ※2 サプライチェーン強靭化枠の申請者のみ選択可 |
参考:事業構築指針の手引き 4.0版|事業再構築補助金
事業再構築要件を満たすには、6つの定義のうちひとつにあてはまる事業計画を作成する必要があります。事業再構築の定義ごとに定められた要件を知りたい人は「事業再構築補助金の事業再構築要件とは?類型ごとの要件も解説」を参考にしてみてください。
金融機関要件
認定支援機関要件を満たすには、金融機関もしくは認定経営革新等支援機関に事業計画の確認をしてもらう必要があります。認定経営革新等支援機関は国が認めた中小企業支援の専門家であり、事業再構築補助金において事業計画の確認や確認書を発行する役割を担っています。
【金融機関要件】
- 事業計画は、金融機関または認定経営革新等支援機関の確認を受けること
- 「金融機関による確認書」または「認定経営革新等支援機関による確認書」を提出すること
- 金融機関等から資金提供を受けて補助事業を実施する場合は、資金提供元の金融機関等による事業計画の確認を受けること
認定経営革新等支援機関に登録されている専門家は、金融機関や商工会および商工会議所、税理士や中小企業診断士など多様です。
また、認定経営革新等支援機関によっては、事業計画の確認や確認書の発行以外にも申請の相談や申請手続きのサポートなど、事業再構築補助金の手続きにかかわるサポートを実施している機関もあります。
事業再構築補助金の申請にかかわる相談や手続きのサポートを依頼したい人は、認定経営革新等支援機関の活用を検討してみてください。認定支援機関のサポート内容や選び方は「事業再構築補助金における認定支援機関とは?役割や選び方を解説」で確認できます。
付加価値額要件
付加価値額要件を満たすには、補助金を活用する事業である「補助事業」後に、付加価値額が増加する事業計画を作成する必要があります。補助事業後3~5年で付加価値額が年平均3~5%以上増加する事業計画をたてることで、要件を満たしていることを示します。
【付加価値額要件】※①②いずれかを満たすこと
① 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年平均成長率3~5%以上増加見込み
② 補助事業終了後3~5年で従業員1人あたり付加価値額の年平均成長率3~5%以上増加見込み
(※成果目標の比較基準となる付加価値額は、補助事業終了月の属する(申請者における)決算年度のもの)
付加価値額要件の達成条件は、申請枠ごとに達成基準となる数値が異なります。そのため、事業計画書に収益計画を記載した後は、自社が選択した申請枠の達成基準の数値を満たしているか確認が必要です。
付加価値額は「営業利益+人件費+減価償却費」を用いて計算します。また、達成条件の計算には付加価値額の伸び率を用いるため、付加価値額伸び率の計算方法も確認しましょう。
付加価値額の計算方法や、事業計画書における付加価値額の記載例が知りたい人は「事業再構築補助金における付加価値額の計算方法と記載例を解説」を参考にしてみてください。
成長分野進出枠(通常類型)における要件
成長分野進出枠(通常類型)は、補助事業において成長分野に挑戦する取り組みや事業縮小などの課題に直面している業種・業態の事業再構築を支援する申請枠です。
要件 |
内容 |
証明書類 |
給与総額増加要件 |
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市場拡大要件 |
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市場縮小要件 |
①
②
(①②いずれかを満たすこと) |
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補助率等引上要件 (※補助率引上を受ける場合のみ) |
※未達の場合は補助金額・補助率引上げ分の金額の返還が必要 |
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成長分野進出枠(通常類型)に申請する場合、共通の要件に加えて「給与総額増加要件」と「市場拡大要件」の両方、もしくは「市場縮小要件」を満たす必要があります。また、補助率引き上げを受ける場合は「補助率引上要件」もあわせて満たすことになります。
市場拡大要件を満たしたい場合、補助事業で取り組む業種や業態が「事務局が指定した業種・業態」に該当していれば「市場拡大要件を満たすことの説明書」を記載のうえ、申請の際に事業者が提出することで要件を満たすことになります。
また「事務局が指定した業種・業態」に該当しない場合でも、公的機関の統計データや業界レポートをあわせて提出することで、要件を満たしていると示すことができます。
なお、要件ごとに用意すべき申請書類の様式は事業再構築補助金公式サイト「応募申請」から確認してみてください。
成長分野進出枠(GX 進出類型)における申請要件
成長分野進出枠(GX進出類型)は、ポストコロナに対応したグリーン成長戦略「実行計画」14分野のいずれかに該当する課題解決に取り組む申請枠です。
要件 |
内容 |
証明書類 |
給与総額増加要件 |
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GX 進出要件 |
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別事業要件 (※過去に採択等を受けている場合) |
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能力評価要件 (※過去に採択等を受けている場合) |
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補助率引上要件 (※補助率引上を受ける場合) |
※未達の場合は補助金額・補助率引上げ分の金額の返還が必要 |
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成長分野進出枠(GX進出類型)に申請する場合、共通の要件に加えて「給与総額増加要件」と「GX進出要件」を満たす必要があります。また、補助率引き上げを受ける場合は「補助率引上要件」もあわせて満たすことになります。
さらに、過去の公募回において採択や交付決定を受けている場合は「別事業要件」と「能力評価要件」を満たさなければいけません。原則として事業再構築補助金の申請は1回までですが、GX進出類型では過去に採択された事業者も要件を満たせば2回目の申請が可能です。
なお、要件ごとに用意すべき申請書類の様式は事業再構築補助金公式サイト「応募申請」から確認してみてください。
コロナ回復加速化枠(通常類型)における要件
コロナ回復加速化枠(通常類型)は、コロナの影響により抱えた債務の借り換えを行っている事業者や、事業再生に取り組む事業者の事業再構築を支援する枠です。
要件 |
内容 |
証明書類 |
コロナ借換要件 |
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再生要件 |
<再生事業者の定義> 中小企業活性化協議会等において再生計画を策定中もしくは策定済かつ再生計画成立後3年以内の者 |
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コロナ回復加速化枠(通常類型)に申請する場合、共通の要件に加えて「コロナ借換要件」または「再生要件」のいずれかを満たす必要があります。
コロナ借換要件は、応募申請時においてコロナ借換保証等で既往債務を借り換えていることが必要です。過去に対象の制度を利用していていても、応募申請時に完済している場合は対象外となります。
既往債務を借り換えていることを確認するため、借換先の金融機関等による「コロナ借換要件・加点確認書」の提出が求められます。「コロナ借換要件・加点確認書」の様式は、事業再構築補助金公式サイト「応募申請」から確認してみてください。
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)における要件
コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)は、コロナ禍が終息した今、最低賃金引上げの影響を大きく受ける事業者の事業再構築を支援する枠です。
要件 |
内容 |
証明書類 |
コロナ借換要件 |
※任意の要件。満たさない場合は補助率引き下げ |
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最低賃金要件 |
(対象期間:2022年10月~2023年9月) |
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コロナ回復加速化枠(最低賃金類型)に申請する場合、共通の要件に加えて「最低賃金要件」を満たす必要があります。コロナ借換要件は任意の要件ですが、満たさない場合は補助率が引き下げられます。
最低賃金要件における従業員は、中小企業基本法における「常時使用する従業員」に該当する従業員が対象です。2か月以内の短期雇用の従業員や、試用期間中の従業員は対象外となる点に留意しましょう。
なお、事業場内最低賃金が最低賃金+50円以内であるかを確認するため「賃金台帳」の提出を求められます。その他、各要件における申請書類の様式は事業再構築補助金公式サイトの「応募申請」から確認してみてください。
サプライチェーン強靭化枠における要件
サプライチェーン強靭化枠は、海外で製造する製品の国内回帰や地域のサプライチェーンにおいて不可欠な製品の生産により、国内サプライチェーンの強靱化と地域産業の活性化に資する取組を行う中小企業等を支援する枠です。
要件 |
内容 |
証明書類 |
国内増産要請要件 |
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市場拡大要件 |
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(指定業種以外の場合) |
デジタル要件 |
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(WEB申請フォームよりIPAへ提出)
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事業場内最低賃金要件 |
(※新規立地の場合は、場内最低賃金が地域別最低賃金より30 円以上高くなる雇用計画を示す) |
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給与総額増加要件 |
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パートナーシップ構築宣言要件 |
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(ポータルサイトから宣言を公表する) |
別事業要件 (※過去に採択等を受けている場合) |
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能力評価要件 (※過去に採択等を受けている場合) |
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サプライチェーン強靭化枠に申請する場合、共通の要件に加えて「国内増産要請要件」や「デジタル要件」など6つの要件を満たす必要があります。また、過去に採択や交付決定を受けている事業者の場合は「別事業要件」と「能力評価要件」も満たさなければなりません。
さらに、サプライチェーン強靭化枠では申請時の添付書類だけでなく、DX推進指標の自己診断およびSECURITY ACTIONの宣言を実施し、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)へ申請フォームから提出することが求められています。これらの提出が確認できない場合は審査において不採択となるため、忘れずに実施しましょう。
なお、要件ごとに用意すべき申請書類の様式は事業再構築補助金公式サイト「応募申請」から確認してみてください。
上乗せ措置における要件
第12回公募では、要件を満たすことにより補助額を上乗せできる「上乗せ措置」が設けられています。上乗せ措置は2種類ありそれぞれに満たすべき要件が設定されているため、申請を検討している人は上乗せ措置の要件も確認しておきましょう。
【卒業促進上乗せ措置】
要件 |
内容 |
証明書類 |
卒業要件 |
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【中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置】
要件 |
内容 |
証明書類 |
賃金引上要件 |
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従業員増員要件 |
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卒業促進上乗せ措置を申請する事業者は「卒業要件」を満たし、中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置を申請する事業者は「賃金要件」と「従業員増員要件」の両方を満たす必要があります。
上乗せ措置に申請することにより、受け取れる補助金額が増加します。要件を満たせる可能性のある事業者は、申請枠に加えて上乗せ措置への申請も検討しましょう。
なお、上乗せ措置への申請は成長分野進出枠もしくはコロナ回復加速化枠に申請する事業者であることが前提となります。上乗せ措置単独で申請することはできない点に留意しておきましょう。
この記事のまとめ
事業再構築補助金における申請要件には、すべての申請者に共通する要件と、申請枠ごとに異なる要件があります。すべての申請者に共通する要件は「事業再構築要件」「認定支援機関要件」「付加価値額要件」の3つです。
申請枠ごとに異なる要件は、それぞれ補助金額や補助率、補助事業の実施期間や要件が設定されており、計算方法や提出書類が異なります。事業再構築補助金に申請する前には、最新の公募要領で申請要件の確認が必要です。