事業再構築補助金は飲食店でどのように活用できるのかを解説
2024/05/08
2022/3/25
飲食店を営んでいる人の中には、事業再構築補助金の利用を検討している人もいますよね。また、事業再構築補助金は飲食店でどのように活用できるのか、知りたい人もいるでしょう。
当記事では、事業再構築補助金は飲食店でどのように活用できるのかを解説します。事業再構築補助金の利用を検討している人は、参考にしてみてください。
なお、当記事は事業再構築補助金の第12回公募要領をもとに作成しています。
事業再構築補助金を活用した飲食店の採択事例
事業再構築補助金の採択事例は、事業再構築補助金の公式サイト「補助金交付候補者の採択事例紹介」から確認できます。事業再構築補助金において、事業再構築補助金の審査に通ったことを「採択」、事業計画に記した再構築する事業を「補助事業」といいます。
業種 | 内容 |
飲食サービス業 | 【事業再構築の背景】 コロナ禍による来店者減少 【事業内容】 店舗依存型経営からEC販売への新分野展開 |
飲食サービス業 | 【事業再構築の背景】 コロナ禍により売上が7割減少 【事業内容】 テイクアウトとデリバリー形式による小売業態への進出 |
食料品製造業 | 【事業再構築の背景】 コロナの影響で取引先の小売店の来客減少にともない売上減少 【事業内容】 試験販売で販売実績のあるカフェ事業を本格的に事業化 |
参考:「採択事例紹介」|事業再構築補助金
事業再構築補助金は、コロナや物価高騰の影響から、新たな市場や業種への挑戦をする中小企業支援が目的の補助金です。飲食店の採択事例では、コロナ禍で増加したテイクアウトやデリバリー、インターネットを通じたEC販売に挑戦する取り組みが見受けられます。
事業再構築補助金の公式サイト「補助金交付候補者の採択結果」では、飲食業を営む事業者が採択された事業内容を確認できます。申請にあたりどのような事業が採択されているのかを参考にしたい人は、過去の採択者の情報を確認してみてください。
なお、飲食店経営の事業から新たに1次産業に参入する事業は不採択や採択取消になります。ただし、原材料の栽培など1次産業にあたる事業に参入する場合でも「敷地内にある工場や店舗で、加工や調理を専任する社員を雇い、料理などを提供する取り組み」は2次または3次産業に該当するため、採択される可能性があります。
店舗依存型経営からECサイト販売への新分野展開
採択事例のひとつに、店舗依存型経営からEC販売への新分野展開をした事例があります。コロナ禍による来客数減少と、原価や物価高騰の影響による仕入れ商品の値上がりで苦しい経営状況を打開するため、事業再構築に挑戦しています。
具体的には、コロナ禍で増加したEC販売の需要にともない、食品のEC市場へ参入し、店舗依存型の経営から脱却を図る計画です。幅広いニーズに対応できるEC販売を開始して新たな収益経路を確保しています。
EC販売においては、既存事業とは異なり幅広い顧客をターゲットにしているため、幅広いニーズにあった新メニューの開発と価格設定をしています。メニューはおもに、市場調査と既存事業との相乗効果を考え、和牛を中心とした肉料理を全国の顧客に提供していきます。
テイクアウトとデリバリー形式による小売業態への進出
事業再構築補助金の採択事例には、テイクアウトとデリバリー形式による小売業態への進出をした事例もあります。コロナの影響により、経営しているレストランの売上が7割減少する事態に陥ったことから、新たな収入源の確保のため、事業再構築を活用しています。
具体的には、地元産食材にこだわる既存事業の強みを活かし、レストラン8店舗中1店舗を地産地消セレクトショップに改装して、商品開発と販売に挑戦しています。また、従業員の業務効率化と集客のため、非接触型オーダーアプリを開発予定です。
店舗の改装は、新しくセントラルキッチンを整備し、販売する食品の加工と既存店舗のレストランの仕込みを一緒に行える構造にすることで、生産性の向上を図ります。補助事業終了後5年目には売上比率20.7%、従業員一人あたりの付加価値額24.1%増加させる計画です。
試験販売で販売実績のあるカフェ事業を本格的に事業化
採択事例の中には、取引先の小売店の来客減少にともなう売上の減少をきかっけに、食品の製造業からカフェ経営の事業化を目指した取り組みもあります。試験販売において販売実績を積んだカフェ事業を本格的に事業化するため、事業再構築補助金を活用しました。
具体的には、創作和菓子カフェ事業で和菓子を販売しています。観光名所に出店し、既存事業でつくっているお餅と地元産のフルーツをあわせた和菓子の新商品を提供することで、地域活性化にも貢献できます。
また、新たな事業では、既存事業と異なる客層となる観光客や若年層をターゲットとしており、SNSを活用することで、顧客の獲得を図る計画です。さらに、新たにECサイトも開設します。
経費項目にあてはまるものが補助対象経費として申請できる
事業再構築補助金では、11種類の経費項目にあてはまるものが、補助対象経費として申請できます。事業再構築補助金に申請する事業者は、補助事業に必要な経費を洗い出し「補助対象の経費項目にあてはまるか」を確認する必要があります。
経費項目 | 詳細 |
①建物費 | 新店舗の開業で必要な建物の建築・改修、建物の撤去などの費用 |
②機械装置・システム構築費 (リース料を含む)※1 |
レジや厨房機器などの機械装置、 ECサイトの構築費用や情報システムの購入などの費用 |
③技術導入費 | 特許が必要な料理の特許権や商標権のライセンスなどの費用 |
④専門家経費 | システム導入時のITコンサルや専門家への謝金などの費用 |
⑤運搬費 | 運搬、宅配・郵送などの費用 |
⑥クラウドサービス利用費 | WebツールやECサイト保守などのクラウドサービス利用費用 |
⑦外注費 | 製品開発に要する加工、設計やデザイン制作などの費用 |
⑧知的財産権等関連経費 | 特許権に関する士業の手続き代行などの費用 |
⑨広告宣伝・販売促進費 | ポスター制作やWeb広告、媒体掲載、展示会出展などの費用 |
⑩研修費 | フランチャイズ加盟時の運営・営業指導、 教育訓練費、講座受講などの費用 |
⑪廃業費 | 廃止手続き費、解体費などの費用 |
参考:第12回公募要領|事業再構築補助金
たとえば、飲食店の開業で建物を改修する場合、建物の改修費は「建物費」にあてはまるため補助対象として申請できます。また、飲食店で配膳ロボットを導入する場合は「機械装置・システム構築費」にあてはまるため、補助対象として申請が可能です。
また、補助対象経費は、補助事業でのみ使用することが前提となります。事業再構築補助金に申請する際は、他の事業でも使用する経費は補助対象にならないことに留意しましょう。
事業再構築補助金における補助対象経費は、公募要領に定められている経費項目にあてはまるものです。事業再構築補助金の補助対象経費を詳しく知りたい人は「事業再構築補助金における補助対象経費は何か?対象外になる経費も解説」を参考にしてみてください。
なお、補助対象経費は交付決定時に確定します。交付申請時に、補助対象経費にかかわる必要書類を提出して事務局が承認後、補助対象経費が確定し、補助金額も算出されます。申請時に計上した経費がすべて補助されるわけではないことを留意しましょう。
新店舗の開業に必要な不動産の購入費は補助の対象外になる
事業再構築補助金において、新店舗の開業で必要な不動産の購入費は補助の対象外です。事業再構築補助金では、購入した建物を補助事業で活用する必要があり、単に建物を購入するだけでは補助事業で必要な経費と認められないためです。
【補助対象外となる経費の具体例】
- 土地や建物など不動産の購入費
- 公道を自走できる自動車などの車両の購入費
- 汎用性のあるPCやプリンタ、家具
- フランチャイズ加盟料
- 販売する商品の原材料費
たとえば、飲食店を移転する予定の土地を購入した場合、土地の購入代は補助の対象外です。また、キッチンカー事業をはじめようとキッチンカー用の自動車を購入した場合、自動車の購入費は補助の対象外になります。
他にも、補助事業以外でも利用できるPCやプリンタ、家具などは「補助事業でのみ使用することが明らかである場合をのぞいて」補助の対象外となります。事業再構築補助金に申請予定の人は、再構築する事業で使いたい経費が対象外でないことを確認しておきましょう。
補助金を受け取るまでに1年以上かかる可能性がある
事業再構築補助金は、補助金を受け取るまでに1年以上かかる可能性がある制度です。事業再構築補助金は、審査や手続きを行い、思い切った業種転換などの事業を実施したのち、諸々の手続きを経て受け取れる補助金です。
【事業再構築補助金の申請から入金までの流れ】
参考:事業再構築補助金第12回公募要領をもとに株式会社SoLaboが作成
たとえば、コロナで飲食店経営に打撃を受け、新たな収益源を確保するために新しい分野で事業をはじめる場合は、補助事業に必要な資金を準備する必要があります。場合によっては融資を受け、補助事業にかかる経費を立て替えなければなりません。
事業再構築補助金は後払いの制度のため、申請してすぐに受け取れる補助金ではないことに留意して申請を検討しましょう。事業再構築補助金の詳しいスケジュールが知りたい人は「事業再構築補助金のスケジュールは?申請や入金の時期も解説」を参考にしてみてください。
事業再構築の定義や申請枠を選択する必要がある
事業再構築補助金に申請する際は、事業再構築の定義や申請枠を選択する必要があります。そのため、申請予定の人は、事業再構築の目的や事業計画の全体像を明確にしておくことが求められます。
事業再構築の定義 |
①新市場進出(新分野展開、業態転換) ②事業転換 ③業種転換 ④事業再編 ⑤国内回帰 ⑥ 地域サプライチェーン維持・強靱化 |
申請枠 |
【事業類型】 ①成長分野進出枠(通常類型) ②成長分野進出枠(GX進出類型) ③コロナ回復加速化枠(通常類型) ④コロナ回復加速化枠(最低賃金類型) ⑤サプライチェーン強靭化枠 【上乗せ措置】 ⑥卒業促進上乗せ措置 ⑦中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置 |
事業再構築の定義を選択する際は「既存事業とは異なる事業を行う」「業種を変更する」など、事業再構築の方向性を定めます。申請枠は「賃上げを行いたい」「グリーン分野に資する取り組みを行いたい」など、事業の目的で選択します。
また、事業再構築の定義や申請枠には、それぞれ満たす必要のある要件が定められています。新市場進出の場合は「新たな製品・商品・サービスを提供すること」「新たな市場に進出すること」「新製品の売上が総売上高の10%以上となること」が要件です。
事業再構築補助金に申請する際は、事業再構築の方向性や目的によって分けられた項目を選択します。申請枠は、要件だけでなく補助金額や補助率も異なるため、申請枠を選ぶ際は、要件とあわせて確認しておきましょう。
なお、事業再構築の定義や申請枠について詳しく知りたい人は「事業再構築補助金とは?対象や要件など概要をわかりやすく解説」を参考にしてみてください。
申請するには提出書類をそろえる必要がある
事業再構築補助金に申請するには、提出書類をそろえる必要があります。事業計画書の場合、A4サイズで15ページ以内(補助金額1,500万円以下の場合は10ページ以内)でどのような補助事業を行い、事業再構築を目指すかを明記することが求められます。
【事業計画書の記載例(1ページ目)】
参考:第12回事業再構築補助金 「公募要領」をもとに株式会社ソラボが作成
事業計画書には「事業再構築補助金の定義を満たしていること」「補助事業の具体的な取り組み」「収益計画」などを記載します。事業再構築補助金の審査で使われる書類であるため、図や表を使って第3者にも内容が伝わるように記載することが求められます。
また、事業再構築補助金の必要書類は、すべての申請枠で共通する書類に加えて、申請枠によって異なる書類を準備する必要があります。申請枠によって準備する書類の量が異なるため、申請枠を選ぶときにあわせて必要書類も確認しておくことが望ましいです。
事業再構築補助金の申請には、事業計画書をはじめとした必要書類の提出が求められます。事業計画書の作成の仕方がわからない人は認定支援機関に相談することもできるため、事業計画の作成をはじめる際に認定支援機関を検索してみてください。
なお、事業再構築補助金における認定支援機関について知りたい人は「事業再構築補助金における認定支援機関とは?選び方や役割を解説」を参考にしてみてください。
この記事のまとめ
飲食店が事業再構築補助金を活用する場合、コロナ禍で増加したテイクアウトやデリバリー、EC販売に挑戦することができます。事業再構築補助金の採択事例が知りたい人は、事業再構築補助金の公式サイト「補助金交付候補者の採択事例紹介」から確認してみましょう。
事業再構築補助金における補助対象経費は、公募要領で定められた経費項目にあてはまるものです。飲食店開業のための建物の改修費や配膳ロボットの導入費などが補助対象経費として申請できます。
事業再構築補助金は申請時に必要書類を提出し、審査や手続きを経て受け取る補助金です。申請から入金までに1年以上かかる場合もあり、すぐに受け取れる補助金ではないことに留意して申請を検討しましょう。