補助金ガイド

事業再構築補助金の小売業・卸売業の採択事例と補助対象経費

2024/04/26

2022/3/25

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

小売業や卸売業の事業者の事業再構築補助金での採択事例について事業の類型別に紹介します。また、小売業や卸売業が申請した事業計画で、補助対象となる主な経費項目についても解説します。

事業再構築補助金では、多くの小売業・卸売業の事業者が創意工夫をもとに事業を再び構築し直す計画を立て、第4回公募までで約5,100以上の事業者が採択されています。

アパレルや店舗販売を含む一般消費者向けの小売業、小売店に商品を卸す卸売業を営む事業者が採択された事業計画の傾向とともに、小売業・卸売業が事業再構築補助金を申請した場合、どのような経費を補助対象とできるのかについてご紹介します。

なお、2024年4月23日に第12回公募要領が公開されました。公募要領の改訂にともない記載内容の一部が変更となっている可能性があるため、最新の公募内容やスケジュールは事業再構築補助金の公式サイトから確認してください。

事業再構築補助金の小売業・卸売業の採択傾向

事業再構築補助金の対象となる事業者になるためには、公募要領に書かれた複数の要件を満たし、申請する必要があります。

事業再構築補助金で小売業・卸売業がどれくらい採択されてきたか、小売業・卸売業の事業再構築の傾向について見てみましょう。 

 四回までの小売業・卸売業の採択率

事業再構築補助金は現在、第四回公募までの採択結果が発表されています。小売業・卸売業の応募率は全業種の15~16%前後、採択率は12~15%で推移しています。

公募回

応募率(採択率)採択者数

第1回公募

14.9%(12.4%)約993名

第2回公募

15.4%(14.1%)約1,316名

第3回公募

16.3%(15.3%)約1,470名

第4回公募

16.3%(15.1%)約1,330名

※採択者数は申請が受理された数より算出

事業再構築補助金の応募者と採択者の内訳は、第1回公募から第4回公募まで、応募・採択ともに①製造業 ②宿泊・飲食サービス業 ③建設業の3分野が最も多く、小売業・卸売業は4番目に多い業種です。

これまで述べ5,100以上の事業者が、小売業・卸売業としてさまざまな事業計画が事業再構築補助金で採択されています(2022年3月記事作成時点)。

小売業・卸売業の事業再構築の傾向

小売業・卸売業の事業再構築の傾向を見ると、小売業では「製造も自分で行う」、「卸売業では「販売まで自社でする」事業の転換が目立ちます。 

事業再構築補助金を申請することを前提に事業を再構築する場合、次のいずれかの類型(タイプ)で事業の見直しを行います。 

  1. 新分野展開:主要な事業・業種を変えず、新製品等を新市場に投入する
  2. 事業転換:別の事業に変える
  3. 業種転換:新しい製品・サービスの開発を伴い、新事業の売上比重を高くする
  4. 業態転換:扱う商品やサービスそのものは変えず、扱い方や売り方を変える
  5. 事業再編:複数の事業を整理する

事業再構築の類型(タイプ)について、詳しくは関連記事「事業再構築補助金の事業再構築要件とは?類型ごとの要件も解説」をご覧ください。

また、小売業と卸売業は直接消費者の声を多く聞く業種であるためか、顧客からの要望があり」「こんな事業をしてほしいという声を受けて」といった事業再構築のきっかけが他業種よりも多く見受けられます。

事業再構築補助金の事業計画書で「なぜ事業再構築補助金に応募したか」の経緯に盛り込める、事業の再構築を後押しする要素と言えます。

事業再構築補助金の小売業の採択事例

メーカーが生産した製品を直接消費者に届ける事業を行っているのが、小売業です。

小売業が扱う商品は商品の種類は多岐にわたり、日用品・食品・アパレル、家電製品・医薬品などがあります。それぞれ、採択事例を見ていきましょう。

なお、事業再構築補助金は中小企業者と中堅企業者を対象とするため、コンビニチェーン店や大手スーパーなどの大手事業者は対象外です。

中小企業者は「資本金1億円以下かつ常勤の従業員数100人以下」で、小規模事業者については「資本金の規定なしで、常勤の従業員数5人以下」という規定があります。

なお、要件を満たせば、個人事業主と小規模事業者も、中小企業者に含まれます。

焼きたてパンの製造・販売⇒焼成後冷凍パンの製造・販売(事業転換)

2番目は、焼き立てパン屋が冷凍パンの製造・販売へ事業転換した採択事例です。

この事業者は地元食材を使用した焼きたてパンとして評判の高いパン屋の店舗を経営していましたが、パンの賞味期限の短さと廃棄、店内在庫、回転率の悪さという課題を抱えていました。

解決には集客を増やす方法もありますが、店の立地や社会情勢を考え、すぐに解決できるものではありませんでした。 

瞬間冷凍機を購入し、焼きたてのパンを瞬間冷凍して、ECサイトを通じて全国に届ける事業計画を立てました。

食品廃棄などのSDGsを含む課題が解決しつつ、元々ある評判の高いパンという強みを活かしながら、ECサイトの活用での集客・販路拡大が見込めています。

専門食品卸売⇒食品メーカーへ転換(業種転換)

3つ目は、これまで干し芋をメーカーから卸販売する事業者が、干し芋専門の食品メーカーへ業種転換した採択事例です。

この事業者は干し芋の取引に関する豊富な経験をもとに、サツマイモの生産者に対する干し芋コンサルティングも行ってきていました。

事業自体は順調でしたが、サツマイモの生産者からサツマイモの売上減少や後継者不足などの悩みを聞きながらのメーカーとのやりとりと卸売業の両立が難しく、課題に感じていました。

これまでの事業の業務効率化と収益アップ、さらに地元サツマイモ農家を買い支えのため、自らが干し芋メーカーへの転換を図る事業計画を立てました。

これまでの干し芋に特化した豊富な経験や、生産者とのコネクションなど既存事業とのシナジーによる成長が見込めます。

呉服店⇒オンラインショップ・着物撮影スタジオ(業態転換)

4番目は、20年以上前から地元で呉服店・着物の小物販売・着物のお直し事業を行ってきた事業者がオンラインショップ・着物撮影スタジオに業態転換した採択事例です。

近年は安価なネットショップなどに押され、収入が減少。着物人口の減少から既存顧客をつなぎとめるDM発送や囲い込みも順調ではなく、新規一転、ネットショップを立ち上げ、新規顧客を開拓する事業再構築を行いました。

これまで店内で商品撮影をしていたフローを変更し、着物撮影専用のスタジオを新設し、ネットショップとして新入荷した着物や小物類の撮影だけでなく、着物を着て撮影したい顧客のためのレンタルスタジオにも流用する、建築資産を有効活用した事業計画です。

携帯キャリア店舗運営事業⇒ケーキショップ運営(事業再編)

小売店の採択事例では、事業再編するケースが多く見受けられました。

最後にご紹介するのは、携帯キャリア店舗運営事業の強みを活かして事業再編し、ケーキショップ運営をする採択事例です。

この事業者は、創業から地域での携帯キャリアショップ運営という小売業とともに、子供向けのプログラミング教室の教育サービス事業と2業種を展開していた事業者ですが、地元の老舗ケーキショップが惜しまれつつ閉店したニュースを聞きました。

これまで2業種の店舗運営の経験を活かして事業再編し、地元の協力も得て、ケーキ店の名前とケーキ作りのノウハウを吸収、老舗ケーキショップの閉店から約1年後、再構築した事業としてケーキショップ運営事業を立ち上げています。

事業再構築補助金の卸売業の採択事例

小売業と生産者をつなぐ卸売業は、国内には数多く存在します。

なお、事業再構築補助金が申請できるのは、中小企業者と中堅企業者です。

中小企業者は「資本金1億円以下かつ常勤の従業員数100人以下」で、小規模事業者については「資本金の規定なしで、常勤の従業員数5人以下」という規定があります。

要件を満たせば、個人事業主と小規模事業者も中小企業者に含まれますが、大手事業者を対象外です。

家電・雑貨の輸入と卸売販売⇒食品メーカー(新分野展開)

1つ目は、過去に食品の卸売業をし、飲食店経営(レストラン)を行ってきた事業者が食品メーカーとして新分野展開した採択事例です。

飲食店を経営してきましたが、売上減少により、以前行っていた卸売業での取引先やレストラン経営で培ったノウハウをもとに、自宅でレストランの味を手軽に再現できるミールキットを新たに開発・販売する食品メーカーとして事業を再構築することにしました。

酒類の卸売業・氷の仕入れ販売⇒業務用冷凍食品販売・冷凍食品自動販売機事業(事業転換)

2つ目は、これまで酒類の卸売と氷の仕入れ販売を行っていた事業者が、業務用冷凍食品販売・冷凍食品自動販売機事業に転換した採択事例です。

小売店からの酒類および氷の発注数が減ったことから、卸売業で培った取引ルートやノウハウを活かし、今後さらに需要が見込まれる冷凍食品の販売事業に転換しました。

主な投資は、大型冷凍庫と非接触で販売できる冷凍食品用の大型自動販売機です。自動販売機を導入することで、接客担当のスタッフを雇用しなくても事業が進められます。

自社商品の卸売業⇒工場兼販売所を立ち上げ内製化(業種転換)

3つ目は、卸売業から食品の自社工場兼販売所を立ち上げて内製化した業種転換の採択事例です。

この事業者はこれまで主に食品を製造販売し、地元近隣の小売店に販売してきましたが、小売店と折衝をする人材の確保に苦難し、製品の箱詰めや出荷などを行う人材が折衝も兼ねると、業務効率が落ちる課題がありました。

卸売業から製造と販売と行うべく、自社工場兼販売所を新設し、自社製品をつくるだけでなく販売まで一貫して行うOEM事業への転換を図りました。

自社工場兼販売所を新設によって地域の雇用をうみ、作業効率と収益がアップします。

土産物の化粧品の卸販売⇒自社化粧品の製造・ECサイト構築経由の販売(業態転換)

4つ目は、観光地で販売する土産物の化粧品を複数卸売していた事業者が、ECサイト構築して自社化粧品の製造・販売へ業態転換した採択事例です。

観光に関わる化粧品の卸売の事業者をしていて、観光需要に左右されるだけでなく、観光シーズンか否かでも波がある点を課題としていました。自社でECサイトを立ち上げ、自社オリジナルの化粧品も製造・販売するだけでなく、既存メーカーからも取り寄せた数々の化粧品を販売することを思いつきました。

これまでの卸売の経験を強みとして活かしつつ、収益を得られるチャネル(集客経路)を複数もてます。

野菜の卸売業⇒高齢者需要の高い調剤薬局事業(事業再編)

最後にご紹介するのは、これまで野菜やきのこなど生産者として近隣の小売店に卸売をしていた事業者が、高齢者需要の高い調剤薬局事業へ事業再編した採択事例です。

もともと野菜の生産者として事業を行っていましたが、元々の野菜販売に需要と供給の波があり、近隣にスーパーが新規出店されたことで収入の不安定さ・売上減少が課題になっていました。商工会に相談したところ「地元の医者が薬局を立ててほしいという声があがっている。現在の野菜の作業場は病院の近くで立地がよい。薬局としてやり直さないか」という要望を受け、不足分のノウハウや人材を事業統合し、調剤薬局事業へと事業再編を行いました。

小売業・卸売業が事業再構築補助金で申請できる補助対象経費

小売業・卸売業が事業再構築する内容は、多岐にわたりますが、どのような事業計画でも、実際に事業再構築補助金に応募するときに、経費として申請できる「補助対象経費」であるかを確認したうえで、立案する必要があります。

小売業・卸売業に限らず、事業再構築補助金の補助対象経費は、補助事業(新たに事業再構築として行う事業)でのみ使える項目に限ります。

例えば、乗用車、事務所、パソコンなどの情報端末、従業員の給与、製品の原材料など、既存の事業でも併用できるものは補助の対象外で経費にできません。

ここでは、小売業・卸売業が事業計画を立案した場合、利用すると思われる主要な補助対象経費についてご説明します。

建物費

建物費は、補助事業でのみ使える建物が補助の対象となります。

第五回公募では、第四回から建物費の補助対象経費のルールが変わっています。第六回公募でも変更される可能性があるので、公募要領で確認が必要です。

建物費

  1. 専ら補助事業のために使用される事務所、生産施設、加工施設、販売施設、検査施設、共同作業場、倉庫その他事業計画の実施に不可欠と認められる建物の建設・改修に要する経費
  2. 補助事業実施のために必要となる建物の撤去に要する経費
  3. 補助事業実施のために必要となる賃貸物件等の原状回復に要する経費
  4. 貸工場・貸店舗等に一時的に移転する際に要する経費(貸工場・貸店舗等の賃借料、貸工場・貸店舗等への移転費等)※4

参照:令和二年度第三次補正 事業再構築補助金 公募要領 (第5回)|事業再構築補助金

機械装置・システム構築費

小売業から製造業に移行する場合、卸売業が宅配業に移行する場合など、機械装置・システム構築費がかかります。

事業再構築補助金では、次の通り、補助事業でのみ使う機械装置・システム構築費が補助の対象であり、その設置や改良・修繕・運搬等も補助の対象となります。

①ら補助事業のために使用される機械装置、工具・器具(測定工具・検査工具等)の購入、製作、借用に要する経費
②専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システム等の購入・構築、借用に要する経費
③①又は②と一体で行う、改良・修繕、据付け又は運搬に要する経費

(引用:令和二年度第三次補正 事業再構築補助金 公募要領 (第5回)|事業再構築補助金事務局 P.23)

運搬費

運搬費は、運搬料、宅配・郵送料等に要する経費のことで、工場新設のために必要となる物品の運搬費や宅急便の代金などが対象です。

機械装置・システム構築で機材などを運搬する場合、機械装置・システム構築費の方に含めます。

クラウドサービス利用費

クラウドサービス利用費は、各種IT企業等が販売しているクラウドサービスの加盟料・登録料・利用料などに関わる経費を指します。

ECサイトを構築して事業再構築を行う場合など、ECサイトのクラウドサービス利用費を補助対象経費として計上できます。

なお、ECサイト構築を伴う事業再構築補助金の採択事例や補助対象経費については、関連記事をご覧ください。

広告宣伝・販売促進費

補助事業に関わる広告宣伝・販売促進費とは、パンフレット、写真、動画等の作成及び媒体掲載、展示会出展(海外展示会を含む)、セミナー開催、市場調査、営業代行利用、マーケティングツールの活用等に関わる経費のことです。

これまで行っていた事業を別の方向に舵を切るため、事業を説明し、アピールするチラシや冊子を作ります。

この記事のまとめ

・事業再構築補助金では、小売業・卸売業が毎回の公募で4番目に多い業種として採択されており、これまでのべ5,100事業者が採択されています。

・小売業・卸売業の採択事例では製品・商品を販売するだけでなく製造に回る事業者や、地元の高齢者や商工会に打診されて全く別の業種に転換するケースが見受けられます。

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