事業再構築補助金における建設業の採択事例と申請の条件を解説
2024/05/08
2021/5/14
建設業を営んでいる人の中には、事業再構築補助金の利用を検討している人もいますよね。また、事業再構築補助金を建設業でどのように活用できるのかを知りたい人もいるでしょう。
当記事では、事業再構築補助金における建設業の採択事例と申請の条件を解説します。
なお、当記事は事業再構築補助金の第12回公募要領をもとに作成しています。
建設業の採択事例
建設業の採択事例には、新型コロナウイルスや物価高騰による売上減少に対応するため異なる事業や業種へ挑戦する取り組みがあります。事業再構築補助金は、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するために中小企業等の事業再構築を支援する補助金であるため、申請を検討している人はその前提を踏まえておきましょう。
事業再構築の種類 | 内容 |
新市場進出
(新分野展開・業態転換) |
<主力事業:リフォーム事業> 【取り組みの背景】
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<主力事業:土木一式工事事業など> 【取り組みの背景】
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<主力事業:建築板金施工事業> 【取り組みの背景】
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業種転換
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<主力事業:ブロックやレンガ工事事業など> 【取り組みの背景】
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<主力事業:建築一式工事やインテリア工事事業など> 【取り組みの背景】
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<主力事業:土木外構工事やビニールハウスの解体事業など> 【取り組みの背景】
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事業転換
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<主力事業:建築関連事業> 【取り組みの背景】
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<主力事業:事業> 【取り組みの背景】
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<主力事業:塗装事業> 【取り組みの背景】
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参考:採択結果|事業再構築補助金
たとえば、リフォーム工事を営んでいる事業者が、新型コロナウイルスにより売上減少から回復するため、市場機会が拡大している注文住宅の請負事業へ新たに進出した事例があります。
また、新型コロナウイルスの影響により仕事がなくなった塗装業者が、地元のニーズをくみ取り解体工事業へ事業転換した事例もあります。
事業再構築補助金は、建設業から新分野への展開や、業種および事業の転換に挑戦できます。建設業の他の採択事例が見たい人は「事業再構築補助金の採択事例と取り組みが成果につながった事例を解説」を参考にしてみてください。
なお、事業再構築補助金では不動産の賃貸のように実質的な労働をともなわない事業は不採択になります。 駐車場経営や金融資産の運用など、資産を所有しているだけで利益が出る事業には活用できないことに留意して事業計画を考えましょう。
路面標示工事事業から外装材アスベスト除去工事事業への新分野展開
新分野展開の採択事例では、路面標示工事事業から外装材アスベスト除去工事事業へ挑戦した取り組みもあります。2021年にアスベスト飛散防止対策が強化されることで、除去工事業者が不足することを予測し、事業再構築に挑戦しました。
具体的には、アスベスト含有外装材の安全かつ作業負担を減らした除去工法を、自社で確立し、環境改善事業へ参入する取り組みです。「安全性」「省力化」「環境」に配慮し、廃棄物減容化することで、アスベストの脅威のない社会実現を目的としています。
路面標示工事事業から、新たな分野である外装材アスベスト除去工事事業へ挑戦した事例です。新分野への挑戦をしたいと考えている人は、事業再構築補助金の利用を検討してみてください。
建築工事業から不動産のコンサルティング事業への業種転換
業種転換の採択事例には、建築工事業から不動産のコンサルティング事業への転換に挑戦した事例があります。物価高騰による断熱材の変更や、主要取引先のコロナ倒産の影響による売上減少を受けて、新たな業種への転換に挑戦に挑戦しました。
具体的には、遊休不動産の多く集まる地域で、人とまちを結ぶ不動産のコンサルティング事業を実施し、空き家や空き地の流通促進に貢献する取り組みです。「遊休不動産活用コンサルティング事業」や「狭小地活用コンサルティング事業」を展開し、使用されていない不動産を有効活用します。
建築工事業者が、遊休不動産に着目し不動産のコンサルティング事業へ転換した事例です。売上や利益の減少により、おもな業種を変更したいと考えている事業者も、事業再構築補助金の活用を検討してみてください。
注文住宅事業から木製家具事業への事業転換
事業転換の採択事例には、注文住宅事業から木製家具事業への転換に挑戦した取り組みがあります。新型コロナウイルスにより変化した生活様式や、少子高齢化による注文住宅の受注の減少を懸念し、事業再構築に挑戦しました。
具体的には、新型コロナウイルスの影響で家にいる時間が増えたことに注目し、顧客生涯価値を軸に住空間の満足度を高める事業として、建築技術のノウハウを活かして木製家具事業に転換しました。時代の変化に応じた事業に進出し、企業の利益を安定させることが目的です。
既存の事業の先行きを考え、これからの顧客ニーズに合わせた事業を実施するために、思い切った事業再構築をした事例です。業種は変えず、おもな事業の変更を考えている人も、事業再構築補助金の利用を検討してみてください。
建設業における申請の条件
事業再構築補助金を活用する際は、申請の条件を確認しておきましょう。
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申請の際は、補助対象になる経費や事業計画をたてる際にそれぞれの条件を満たす必要があります。事業再構築補助金へ申請を検討している人は、参考にしてみてください。
経費項目にあてはまる費用を申請する
事業再構築補助金において補助対象になる経費は、公募要領に定められている経費項目にあてはまる費用です。建設業においては、油圧ショベルやブルドーザなどの「作業場において作業することを目的とする重機の購入費」や建物の改修費などが補助の対象となります。
経費項目 | 建設業における経費の例 |
①建物費 | 新事業で活用する施設や店舗の建築・改修、建物の撤去など |
②機械装置・システム構築費 (リース料を含む) |
新事業に必要な建設機械や導入するシステムの専用ソフトウェアの購入費など |
③技術導入費 | ライセンス契約や特許・商標登録のある技術・サービスを導入するときのライセンス料など |
④専門家経費 | 販売やWEBサイト運用に関するコンサルティングを依頼する際のコンサル料や謝金など |
⑤運搬費 | 運搬料、宅配・郵送料など |
⑥クラウドサービス利用費 | 新事業のデジタル改革で活用するWEBツールなどのクラウドサービス利用費 |
⑦外注費 | 新事業に要する商品の加工、設計やWEBサイトデザインなどの外注費用 |
⑧知的財産権等関連経費 | 商品や技術の特許権に関する士業の手続代行費用など |
⑨広告宣伝・販売促進費 | 新事業のパンフレットや動画などの広告作成、媒体掲載、展示会出展など |
⑩研修費 | 新事業に必要な教育訓練費、講座受講 などの費用 |
⑪廃業費 | 廃止手続費、解体費などの費用 |
参考:第12回「公募要領」|事業再構築補助金
たとえば、油圧ショベルやブルドーザなどの重機を購入する場合、重機の購入費は「機械装置・システム構築費」として経費を申請できます。作業場において作業することを目的とする建設機械は機械装置に該当するためです。
ただし、公道を自走できる自動車や、船舶および航空機の購入費は補助の対象外となります。補助される経費は、あくまで補助事業のみで使用される経費に限られます。
また、施設や工場を建設および改修する場合は「建物費」として経費を申請できます。ただし、自社施工する場合の自社の人件費は補助の対象外となるため、自社施工を考えている人は、人件費が補助されないことに留意して事業計画をたてましょう。
事業再構築補助金では、重機の購入費や建物の改修費などが補助対象となります。補助対象になる経費を詳しく知りたい人は「事業再構築補助金における補助対象経費は何か?対象外になる経費も解説」を参考にしてみてください。
なお、建設業許可が必要な規模の建物を経費にする場合に、建設業許可を取得していない業者からの見積もりが発覚した際には不採択または交付取消となるため注意しましょう。
事業計画をたてる際は事業再構築の定義をひとつ選択する
事業計画をたてる際は、方向性を定めるために事業再構築の定義をひとつ選択します。第12回公募の場合、事業再構築の定義は「新市場進出」「業種転換」「事業転換」「事業再編」「国内回帰」「地域サプライチェーン維持・強靭化」の6つの中から選ぶことになります。
定義(類型) | 概要 |
①新市場進出 (新分野展開・業態転換) |
おもな業種は変えず、新たな商品やサービスで新たな市場に進出する 例:「建築解体工事事業」の建設業が新たに「再生砂利製造・販売事業」に進出 |
②業種転換 | 既存の業種から新たな業種へ転換する類型 例:建設業から製造業へ転換する (業種は総務省「日本標準産業分類」の大分類を参考) |
③事業転換 | おもな業種を変えずに主力の事業を転換する 例:建設業のまま事業を「塗装事業」から「足場工事事業」へ転換する (事業は総務省「日本標準産業分類」の中分類以下を参考) |
④事業再編 | 事業再編を通して事業を再構築する 例:合併や事業譲渡など組織再編したうえで「新市場進出」「事業転換」「業種転換」に取り組む (事業再編は会社法上の組織再編行為を行う必要がある) |
⑤国内回帰 |
海外で製造等する製品の国内生産拠点を整備する |
⑥地域サプライチェーン維持・強靱化 | 地域のサプライチェーンにおいて不可欠かつ供給に不足が生じ得る製品の国内生産拠点を整備する |
※⑤⑥はサプライチェーン強靭化枠に申請する事業者のみ選択可 |
参考:第12回公募要領|事業再構築補助金公式サイト
新市場進出を選択した場合、新分野への参入や業態の変更に取り組むことになります。たとえば、建設業者が新たに、コンクリート廃材を使った再生砂利の製造や販売を行う取り組みや、土木建設業がICT設備を導入し防災工事に対応した建設施工体制を構築する取り組みができます。
業種転換を選択した場合は、現在のおもな業種を変更する事業再構築を実施することになります。たとえば、建設・解体工事を営む建設業者が建設業界に特化した情報セキュリティ対策強化サービス事業を行う情報通信業へおもな業種を変更するような取り組みが該当します。
事業転換を選択した場合は、現在のおもな事業を変更する事業再構築を実施することになります。たとえば、塗装業を営む建設業者が、感染症等の影響を受けにくい足場工事業に挑戦する取り組みが該当します。
事業再編を選択した場合は、合併や事業譲渡などの会社法上の組織再編行為を実施してから「新市場進出」「事業転換」「業種転換」のいずれかに取り組む必要があります。事業再構築補助金における会社法上の組織再編行為は「事業再構築指針の手引き(P18)」で確認しましょう。
事業再構築の定義には、それぞれ満たす必要のある要件も定められています。事業再構築の定義ごとの要件が知りたい人は「事業再構築補助金の事業再構築要件とは?類型ごとの要件も解説」を参考にしてみてください。
申請には事業再構築の目的にあった申請枠の選択が必要
申請には、事業再構築の目的にあった申請枠の選択が必要です。事業再構築補助金では、申請枠ごとに補助金額の上限や補助率などの申請要件(申請時に満たす必要のある条件)が決まっているためです。
申請枠 | 概要 |
成長分野進出枠 (通常類型) |
ポストコロナに対応した、成長分野への事業再構築を支援する枠 |
成長分野進出枠 (GX進出類型) |
グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題解決の取り組みを支援する枠 |
コロナ回復加速化枠 (通常類型) |
コロナで抱えた債務の借り換えを行っている事業者や、事業再生に取り組む事業者の事業再構築を支援する枠 |
コロナ回復加速化枠 (最低賃金類型) |
コロナ終息後において最低賃金引上げの影響を大きく受ける事業者の事業再構築を支援する枠 |
サプライチェーン強靭化枠 | 海外で製造する製品の国内回帰などを通じ、国内サプライチェーンの強靱化及び地域産業の活性化に資する取組を支援する枠 |
卒業促進上乗せ措置 | 補助事業を通して、中小企業等から中堅企業等に成長する事業者に対する上乗せ支援 |
中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置 | 大規模な賃上げに取り組む事業者に対する上乗せ支援 |
参考:第12回「公募要領」|事業再構築補助金
「卒業促進上乗せ措置」と「中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置」は上乗せ支援措置であり、成長分野進出枠またはコロナ回復加速化枠に申請した人のみが利用できます。また、2つの上乗せ措置は同時に申請できないため、どちらか一方を選ぶ必要があります。
事業再構築補助金に申請する際は、目的に合った申請枠を選びましょう。また、申請枠を選んだあとは、各申請枠に設定されている申請要件を満たすことも求められます。
事業再構築補助金の申請要件を詳しく知りたい人は「事業再構築補助金における申請要件を解説」を参考にしてみてください。
審査の観点を参考に事業計画をたてる
事業再構築補助金において、採択される事業計画をたてるときは審査の観点を参考にしましょう。審査の観点には、審査の際に事業計画が要件を満たした適切な内容になっているかの確認事項が記載されています。
【事業再構築補助金における審査項目】※全ての事業類型に共通する項目のみ
審査項目 | 内容 |
補助対象事業としての適格性 | 事業再構築補助金の要件や目的に沿った取り組みか |
新規事業の有望度 |
補助事業として取り組む事業に成長性はあるか 参入可能かつ他社との差別化は可能か |
事業の実現可能性 |
遂行方法やスケジュールが明確かつ妥当か |
公的補助の必要性 |
費用対効果は高いか 地域のサプライチェーンに貢献し得るか 補助なしで取り組める事業ではないか |
政策点 |
日本経済の構造転換に資するか 技術の活用によって日本の経済成長を牽引し得るか 地域における雇用の創出や経済成長を牽引し得るか |
※その他、申請枠ごとの審査の観点が設けられている場合がある |
参考:第12回「公募要領」|事業再構築補助金
審査項目に沿って提出した事業計画書が審査され、採択が決まります。審査項目は全ての枠に共通する項目以外にも、枠ごとに設定されているものがあるため、申請する枠の審査項目を確認しておく必要があります。
審査の観点は、事業計画書に記載したからと言って必ず採択されるわけではありません。しかし、審査の観点を参考に事業計画を記載することで、何もしない場合より採択される可能性は上がります。
審査で採択される可能性を上げるため、審査の観点を参考に申請の条件を満たしていることが第3者にもわかるよう、図表を用いて示しましょう。事業計画書の記載例や書き方は「事業再構築補助金の事業計画書の書き方と記入例を解説」を参考にしてみてください。
この記事のまとめ
建設業の採択事例には、新型コロナウイルスや物価高騰による売上減少のため、異なる事業や業種へ挑戦する取り組みがあります。ただし、事業再構築補助金では、不動産の賃貸のように資産を所有しているだけで利益が出る事業は、不採択または採択取消になるため注意が必要です。
申請の際は、補助対象になる経費や審査の観点など申請における条件の確認が必要です。取り組む事業が審査項目に沿っていることは事業計画書によって確認されるため、事業計画書を作成する際は図表を用いて第3者にも伝わりやすい工夫をしてみてください。