事業再構築補助金における製造業の採択事例と申請の条件を解説
2024/05/13
2021/8/18
事業再構築補助金への申請を検討している製造業の人の中には、どんな事業が採択されているのか気になる人もいますよね。また、申請の条件を知りたい人もいるでしょう。
当記事では、事業再構築補助金における製造業の採択事例と申請の条件を解説します。申請の対象となる企業の条件や対象となる経費についても解説するので、参考にしてみてください。
なお、当記事は事業再構築補助金の第12回公募要領をもとに作成しています。
目次
新製品開発や新たな分野へ参入する製造業の取り組みが採択されている
事業再構築補助金において製造業はおもに、新製品開発のための設備投資や新たな分野へ参入する取り組みが採択されています。経営回復のために思い切った取り組みをしたいと考えている製造業の人は、事業再構築補助金の活用を検討してみてください。
事業再構築の種類 | 内容 |
新市場進出
(新分野展開・業態転換) |
<主力事業:金属製品製造事業> 【取り組みの背景】
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<主力事業:縫製事業> 【取り組みの背景】
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<主力事業:自動車産業> 【取り組みの背景】
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業種転換
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<主力事業:仏具や神具の製造事業> 【取り組みの背景】
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<主力事業:オーダー家具、木製建具製造事業など> 【取り組みの背景】
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<主力事業:各種衣料用繊維製品のプリント加工事業など> 【取り組みの背景】
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事業転換
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<主力事業:食品製造業> 【取り組みの背景】
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<主力事業:手作り総菜、弁当のテイクアウト専門店経営事業> 【取り組みの背景】
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<主力事業:電子機器用部品の製造、販売事業など> 【取り組みの背景】
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参考:採択結果|事業再構築補助金
たとえば、オーダー家具や木製建具製造事業を営んでいた事業者が、建設業へ業種転換した事例があります。最新設備の導入や既存の木工製作力を活用して、壁面収納階段を使った住空間拡張リフォーム事業を展開する予定です。
また、手作り総菜や弁当のテイクアウト専門店を営んでいた事業者が、焼き菓子製造に特化したカフェ事業に事業転換した事例もあります。既存のメニュー開発力を活かして、成長性のある菓子市場へ参入し、EC販売にも挑戦する計画です。
事業再構築補助金は、新型コロナウイルス流行後の社会変化や物価高騰に対応するための思い切った事業の再構築に使える補助金です。事業再構築補助金の公式サイトにある「採択結果」では、各都道府県の採択結果も確認できるので、気になる人は参考にしてみてください。
なお、事業再構築補助金は後払いの制度であり、申請してすぐに受け取れる補助金ではありません。申請時に計画した事業に取り組み、各種手続きを経て受け取れる補助金であることに留意して、事業再構築補助金の活用を検討してください。
食料品製造および飲食店経営からレトルト食品事業に進出
製造業の取り組みには、食料品製造業・飲食店経営事業からレトルト食品事業に進出した事例があります。新型コロナウイルスの想定外の長期化によって、カフェと土産店の売上が40%減少するという厳しい状況を補うため、新たな事業に挑戦しました。
事業再構築では、既製品で培った密閉製法の技術を活用し、レトルト食品事業へ進出する取り組みを実施しています。少量のテスト販売から始めたい飲食店や食品企画事業者などの顧客ニーズに応えるため、独自製法を活用した保存食品を50個という少ない数から受託する計画です。
また、既存事業で培ったノウハウやつながりを活かし、商品企画に関する相談から販路開拓、販売までをワンストップで提供します。事業再構築の取り組みでOEM生産(※)のための設備投資を実施し、補助金を使った事業終了後4年目で売上78.7%増を目指す想定です。
※OEM生産…他社のブランドの企画や設計を受託して生産する生産方法のこと
繊維工業および染色整理業からシルクの高付加価値加工事業への挑戦
製造業の取り組みには、繊維工業・染色整理業からシルクの高付加価値加工による新分野展開を実施した事例もあります。長年減少し続ける和装の需要と、新型コロナウイルスにより生産量が低下した現状を打破するため、新分野へ挑戦しました。
新型コロナウイルスの流行により、マスクの抗菌や抗ウイルス加工の受注が増加し、安全と健康志向に対応した繊維製品への加工ニーズの高まりを受け、シルクの高付加価値加工事業を実施しました。補助金を使って、シルクに抗菌や抗ウイルスおよび撥水といった付加価値をつける加工設備を導入します。
また、加工場の効率化とコスト削減および品質向上を進めるため、余熱を利用して省エネ設備の導入や業務改善に努めます。補助金を使った事業で設備投資を実施することで、補助金を使った事業終了後5年目で、新規事業の売上比率11.1%を目指す事業計画です。
プラスチック製品の製造事業から蓄電池部品の製造事業に挑戦
製造業の取り組みには、プラスチック製品の製造業から蓄電池部品の製造事業に挑戦した事例もあります。現在の発泡プラスチック成形機や金型の製造事業では、おもに食品容器や建築資材を販売していますが、プラスチック使用量削減や新築住宅戸数の減少の影響で需要が減少したため、事業再構築に挑戦しています。
新事業では、電気自動車向けバッテリーケースの製造や量産化に向けた成形機などを設計および導入します。自社の成形加工や金型設計ノウハウを活かして、特殊な設備と技術が必要な量産化技術の実用化を目指す計画です。
また、専用成形機と付帯設備を他者メーカーに販売して、メンテナンスサービスも実施します。付加価値額を伸ばすため、IoTやAIを使って業務管理を行い、補助金を使った事業終了後5年で新規事業の売上比率16%、平均付加価値額15.2%増加させる想定です。
事業再構築補助金は中堅企業以下の事業者が申請の対象となる
事業再構築補助金の申請の対象となるのは、中小企業または資本金10億円未満か従業員2,000人以下の中堅企業以下の企業です。中小企業の場合は、業種ごとに資本金や従業員数の条件が異なります。
業種 | 資本金 | 従業員(常勤) |
製造業 | ~3億円 | ~300人 |
ゴム製品製造業 (自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに 工業用ベルト製造業を除く) |
~3億円 | ~900人 |
参考:第12回「公募要領」|事業再構築補助金
事業再構築補助金の申請の対象者において、製造業とゴム製品製造業では申請の条件が異なります。製造業は、資本金3億円以下または従業員300人以下であるのに対し、ゴム製品製造業は、資本金3億円以下または従業員900人以下となっています。
ただし「自動車や航空機用タイヤおよびチューブ製造業」「工業用ベルト製造業」は、ゴム製品製造業ではなく、製造業に含まれます。
事業再構築補助金において申請の対象となるのは、中堅企業以下の事業者です。自社が事業再構築補助金に申請できるか確認したい人は、事業再構築補助金の申請サポートをしている株式会社SoLaboにご相談ください。
6つの定義の中から事業の方向性を定める
事業再構築補助金は「①新市場進出」「②業種転換」「③事業転換」「④事業再編」「⑤国内回帰」「⑥地域サプライチェーン維持・強靭化」の6つの定義の中から事業の方向性を定めます。事業計画をたてる際は、まず事業再構築補助金を活用して実施したい事業が、どの定義にあてはまるのかを選択しましょう。
【事業再構築の6つの定義】
事業再構築の定義 |
概要 |
①新市場進出 |
【例】 製造業のまま「ガソリン自動車のエンジン部品製造事業」から新たに「ハイブリッド車用部品製造事業」に進出 |
②事業転換※1 |
【例】 製造業のまま事業を「食品製造事業」から「食品生産設備機器製造事業」へ転換する |
③業種転換※1 |
【例】 製造業から建設業へ転換する |
④事業再編 |
【例】 吸収合併による組織再編後、新たな分野へ参入する |
⑤国内回帰※2 |
海外で製造を行う製品の国内拠点を整備する |
⑥地域サプライチェーン維持・強靭化※2 |
地域のサプライチェーンにおいて不可欠であり供給に不足が生ずるおそれのある製品の国内生産拠点を整備する |
※1 転換する事業や業種は総務省「日本標準産業分類」を参考 ※2 サプライチェーン強靭化枠の申請者のみ選択可 |
参考:事業構築指針の手引き 4.0版|事業再構築補助金
新市場進出を選択した場合は、新分野への参入や業態の変更に取り組むことになります。たとえば、食品の製造事業を営んでいる製造業者が、製造した食品を使った飲食店経営事業を始める取り組みや、パンの製造事業を営んでいる製造業者が、ベーカリーカフェやEC販売に挑戦する取り組みがあてはまります。
業種転換を選択した場合は、現在のおもな業種を変更する事業再構築を実施することになります。たとえば、オーダー家具や木製建具の製造事業を営んでいる製造業者が、リフォーム事業を行う建設業へ業種を変更するような取り組みがあてはまります。
事業転換を選択した場合は、現在のおもな事業を変更する事業再構築を実施することになります。たとえば、弁当や総菜の製造事業をおもな事業としてテイクアウト専門店を営んでいる製造業者が、焼き菓子製造に特化したカフェの経営に挑戦する取り組みがあてはまります。
事業再編を選択した場合は、合併や事業譲渡などの会社法上の組織再編行為を実施してから「新市場進出」「事業転換」「業種転換」のいずれかに取り組む必要があります。事業再構築補助金における会社法上の組織再編行為は「事業再構築指針の手引き」で確認しましょう。
事業再構築の定義には、それぞれ満たす必要のある要件も決められています。事業再構築の定義ごとの要件が知りたい人は「事業再構築補助金の事業再構築要件とは?類型ごとの要件も解説」を参考にしてみてください。
設備投資のための建物の改修や備品の購入費に活用できる
事業再構築補助金は、設備投資のための建物の改修や備品の購入費に活用できます。事業再構築補助金において補助される対象経費の項目はあらかじめ決められているため、定められた経費項目にあてはまる経費を申請する必要があります。
経費項目 | 製造業における経費の例 |
①建物費 | 新事業で活用する工場や施設の建築・改修、建物の撤去など |
②機械装置・システム構築費 (リース料を含む)※1 |
新製品開発に必要な機械装置、専用のソフトウェアの購入など |
③技術導入費 | ライセンス契約や特許・商標登録のある技術・サービスを導入 するときのライセンス料など |
④専門家経費 | 生産・販売管理のコンサルティングを依頼した場合の コンサル料や専門家への謝金など |
⑤運搬費 | 運搬料、宅配・郵送料など |
⑥クラウドサービス利用費 | 新事業のデジタル改革で活用するWebツールなどの クラウドサービス利用費 |
⑦外注費 | 製品開発に要する加工、設計などの外注費用 |
⑧知的財産権等関連経費 | 製品や技術の特許権に関する士業の手続代行費用など |
⑨広告宣伝・販売促進費 | 新製品のパンフレットなどの広告作成、媒体掲載、 展示会出展など |
⑩研修費 | 新製品開発に必要な教育訓練費、講座受講 などの費用 |
⑪廃業費 ※1 | 廃止手続費、解体費などの費用 |
参考:第12回「公募要領」|事業再構築補助金
たとえば、新たな事業で新製品開発のための機器を購入する場合は「機械装置・システム構築費」で経費を申請できます。また、新製品を製造するための工場を建設する場合は「建物費」で経費を申請できます。
ただし、新たに工場を建設する場合は「新築の必要性に関する説明書」に、新築の工場が事業に必要不可欠であり、代替手段がないことを示す必要があります。
また「新築の必要性に関する説明書」を提出したとしても、新築にかかる費用が必ず補助されるわけではありません。事業再構築補助金で新築の建物にかかる経費を申請する際は、必ず補助されるとは限らないことに留意して事業計画をたてましょう。
事業再構築補助金では、建物費や機械装置・システム構築費にあてはまる経費が申請できます。対象経費の項目や補助の対象外となる経費が知りたい人は「事業再構築補助金における補助対象経費は何か?対象外になる経費も解説」を参考にしてみてください。
採択される事業計画をたてるためには審査の観点を取り入れる
事業再構築補助金において、採択される事業計画をたてる場合は、審査の観点を取り入れる必要があります。審査の観点から事業計画に記載が必要な情報を確認し、図表や写真などを用いて、事業再構築が必要かつ実現可能であることを示しましょう。
おもな審査項目 | 内容 |
①補助対象事業としての適格性 |
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②新規事業の有望度 |
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③事業の実現可能性 |
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④公的補助の必要性 |
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⑤政策点 |
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参考:第12回公募要領(サプライチェーン強靭化枠は別「公募要領」)|事業再構築補助金
審査の観点は、事業計画書に記載したからと言って必ず採択されるというわけではありません。しかし、審査の観点を取り入れて事業計画を記載することで、取り入れない場合より採択される可能性は上がります。
審査で採択される可能性を上げるため、審査の観点を取り入れて申請の条件を満たしていることを第3者にもわかるように、図表を用いて示しましょう。事業計画書の記載例や書き方は「事業再構築補助金の事業計画書の書き方と記入例を解説」を参考にしてみてください。
この記事のまとめ
事業再構築補助金において製造業はおもに、新製品開発のための設備投資や新分野へ参入する取り組みが採択されています。事業再構築補助金の採択結果を確認したい人は、事業再構築補助金の公式サイトにある「採択結果」を参考にしてみてください。
事業再構築補助金における申請の対象者は、中小企業および資本金10億円未満か従業員2,000人以下の中堅企業以下の企業です。補助対象となる経費の項目は、あらかじめ公募要領で定められており、おもに設備投資のための建物の改修や備品の購入費に活用できます。
事業計画をたてる際は「新市場進出」「業種転換」「事業転換」「事業再編」「国内回帰」「地域サプライチェーン維持・強靭化」の6つの中から事業再構築の定義を選択し、事業計画の方向性を定める必要があります。審査で採択される可能性を上げる場合は、審査の観点を取り入れた事業計画書を作成しましょう。