小規模事業者持続化補助金の第8回から第11回までの公募要領のポイントを解説
2023/06/06
2021/8/12
2022年3月22日に、第8回から第11回までの2022年度小規模事業者持続化補助金の公募要領が発表されました。これにより、2022年度は、第8回から11回まで4回の申請ができます。
2022年度予算では、新たに5つの枠が追加されたほか、ウェブサイトの作成や運営に関する経費はウェブサイト関連費にまとめられるようになったなど、2021年度と比較していくつかの変更点がありました。
ここでは、小規模事業者持続化補助金の第8回から第11回公募要領について、とくに以前と変更された点を中心にポイントを解説します。
なお、小規模事業者持続化補助金の概要を知りたい場合は「小規模事業者持続化補助金とは?対象者や活用例をわかりやすく解説」を参考にしてみてください。
小規模事業者持続化補助金の補助対象者
小規模事業者持続化補助金の補助対象者になるのは、以下の要件をすべて満たす事業者です。
|
参考:第11回小規模事業者持続化補助金「公募要領」
小規模事業者持続化補助金に申請できるのは開業済みの事業者だけです。申請には確定申告書が必要になりますが、決算を一度もしていない事業者に限り開業届で代用できるため、開業さえしていれば申請可能です。
第8回以降の小規模事業者持続化補助金に申請できるか、当サイトでは無料診断が可能です。上記の補助対象者に該当するか以外にも、現状の準備で採択されるか診断いたします。
無料診断第8回以降に補助対象となる経費
第8回以降の小規模事業者持続化補助金では、11項目の経費が補助対象になります。
①機械装置等費、②広報費、③ウェブサイト関連費、④展示会等出展費、⑤旅費、⑥開発費、⑦資料購入費、⑧雑役務費、⑨借料、⑩設備処分費、⑪委託・外注費 |
引用元:第11回小規模事業者持続化補助金「公募要領」
第8回以前の経費と比べると、新たにウェブサイト関連費が追加されています。また、過去に存在した専門家謝金と専門家旅費が委託・外注費に統合されました。
ウェブサイト関連費の特徴
新たに追加されたウェブサイト関連費は他の補助対象経費と比べて特殊な扱いになります。
|
参考:第11回小規模事業者持続化補助金「公募要領」
ウェブサイト関連費で交付を受けられるのは申請額の1/4が上限となるので、補助上限が50万円の通常枠では最大12.5万円まで、補助上限が200万円の枠でも50万円までになります。そのため、ウェブサイト関連費を使う時は、他の対象経費と併せての申請が必要です。
ウェブサイトの作成やウェブの運用を外注する場合は、委託・外注費でなくウェブサイト関連費で申請する必要があります。ウェブサイト関連費について詳しく知りたい人は、公募要領を確認してみてください。
第8回以降に追加された枠と申請要件
2022年度では、小規模事業者持続化補助金では第8回から第11回の申請が行われます。第8回以降では新たにインボイス枠、卒業枠、後継者支援枠、創業者枠、賃金引上げ枠が新たに追加されました。
類型 |
通常枠 |
インボイス枠 |
卒業枠 |
賃金引上げ枠 |
補助率 |
2/3 |
2/3 |
2/3 |
2/3 |
補助上限 |
50万円 |
100万円 |
200万円 |
200万円 |
引用元:第11回小規模事業者持続化補助金「公募要領」
新規で追加された枠を利用するには、それぞれの追加申請要件を満たしている必要があります。いずれの要件も満たさない場合は通常枠で申請をしましょう。
インボイス枠の追加申請要件
インボイス枠の追加申請要件は、2021年9月30日から2023年9月30日までの課税期間で免税事業者であったか免税事業者であることが見込まれる事業者が、インボイス発行事業者に登録することです。
補助事業が終了時点でインボイス発行事業者にならないと補助金の交付は行われません。インボイス枠への移行は2023年9月まで受け付けていますが、第8回の小規模事業者持続化補助金の交付が行われるのが2022年8月だとすると、交付前までにインボイス発行事業者になっている必要があります。
インボイス発行事業者になると、消費税の納付が必要になります。売上が年間1,000万円以下の事業者は消費税納付の免税を受けられるので、インボイス発行事業者になると売上が減ることになります。
しかし、今後はインボイス発行事業者にならないと、大手の事業者との取引が難しくなることが見込まれています。そのため、主要な取引先を見当の上、インボイス発行事業者になるメリットがあるようでしたら、インボイス枠の利用を検討してみると良いでしょう。
卒業枠の追加申請要件
卒業枠の追加申請要件は、小規模事業者と定義される常時使用する従業員数を超えることが要件になります。実際には、各業種で以下の数の従業員数を雇用する取組を行うことで、補助上限額が200万円に引き上げられます。
業種 |
常時使用する従業員数 |
宿泊業・娯楽業・製造業 |
21人以上 |
その他商業・サービス業 |
6人以上 |
参考:第11回小規模事業者持続化補助金「公募要領」
常時使用する従業員は、アルバイトやパート、経営者とその親族は含みません。卒業枠を利用する場合には、親族以外の正社員を規定人数以上雇用する取組を実施してください。
後継者支援枠の追加申請要件
後継者支援枠は事業承継を行う後継者が利用できる枠で、追加申請要件はアトツギ甲子園のファイナリストになっていることです。
アトツギ甲子園は毎年実施されているので、事業承継を行う予定がある人で、後継者支援枠に興味のある人は、公式サイトを確認して参加してみるか検討してみてください。
リンク:アトツギ甲子園FaceBook
創業枠の追加申請要件
創業枠の追加申請要件は、過去3年以内に認定市区町村と連携した認定連携創業支援等事業者が実施した特定創業支援事業による支援を受けていることです。
特定創業支援事業による支援を受ける条件は、各市区町村によって異なります。詳細は中小企業庁の公式サイト「産業競争力強化法に基づく認定を受けた市区町村別の創業支援等事業計画の概要」のページで確認できます。
これから創業を予定している人や、創業から3年以内の人は、開業地域の認定連携創業支援等事業者に問い合わせしてみてください。
賃金引上げ枠の追加申請要件
賃金引上げ枠の追加申請要件は、補助事業終了時点において事業場内最低賃金が地域別最低賃金よりも時給で+30円以上になっていることです。
すでに地域の最低賃金よりも時給+30円を満たしている状態でも、現状よりさらに+30円の時給を実現できれば賃金引上げ枠を利用できます。
なお、補助事業実施を通して賃金の引き上げが成されていない場合、採択後でも補助金の交付が行われません。また、申請時点で従業員がいない場合は、賃金引上げ枠を利用できません。
業績が赤字で賃金引上げを行う場合の追加要件
業績が赤字で賃金引上げ枠を行う場合は、通常の要件を満たしたうえで、直近1期または直近1年の課税所得金額がゼロ円であることが追加要件になります。
赤字で賃金引上げ枠に申請する場合、補助率が通常の2/3から3/4に引き上げられるほか、審査の際に政策加点による優先採択が行われます。従業員の雇用があり、前年度の課税所得がゼロ円の人は、赤字事業者の賃金引上げ枠の申請を検討してみると良いでしょう。
第8回以降の加点項目
小規模事業者持続化補助金には、要件を満たせば有利に審査を進められる加点制度があります。前年度の第7回までは3つの加点がありましたが、今年度の第8回以降は加点項目が増えました。
審査の観点 | 第7回 | 第11回 |
政策加点審査 | ① 事業承継加点 ② 経営力向上計画加点 ③ 災害加点 |
① パワーアップ型加点 ② 赤字賃上げ加点 ③ 経営力向上計画加点 ④ 電子申請加点 ⑤ 事業承継加点 ⑥ 東日本大震災加点 ⑦ 過疎地域加点 ⑧ 事業環境変化加点 |
参考:第7回・第11回小規模事業者持続化補助金の各公募要領を元に株式会社ソラボ作成
なお、前年度の第7回においても、重点的に支援する対象として「電子申請を行った事業者」や「過疎地域で販路拡大に取り組む事業者」に加点審査が行われていました。
今年度の第8回から第11回までの全4回の公募要領を比較すると、第9回から「事業環境変化加点」が追加され、第11回から「災害加点」が削除されたことが分かります。
加点項目に当てはまる内容で事業計画書を作成すると、加点項目を意識しない場合より審査を有利に進めることができます。第11回以降に小規模事業者持続化補助金の申請をする人は、公募要領で加点項目も確認してみましょう。
第8回以降のスケジュール
小規模事業者持続化補助金の第8回以降の申請受付は、2022年3月29日から開始されます。
また、第8回から第11回までの締め切りスケジュールは以下のようになります。
第8回締め切り:2022年6月3日(事業支援計画書は2022年5月27日) |
参考:各公募回の小規模事業者持続化補助金の公募要領
第8回以降は、およそ3か月に1度の頻度で申請が可能です。
この記事のまとめ
小規模事業者持続化補助金では、第8回から新たに5つの枠が新設されました。また、補助対象経費には、ウェブサイト関連費も追加されています。ウェブサイト関連費は、補助金交付申請額の1/4が上限のため、ウェブサイト以外の経費と併せての申請が必要です。
第8回からは、審査の観点である加点項目に政策加点審査が追加されました。また、第9回から事業環境変化加点と災害加点が追加されましたが、第11回では、災害加点のみ削除されました。
第11回の申請締切は、2023年2月20日です。事業支援計画書は2023年2月13日のため、スケジュールを確認して必要資料の作成をすることが望ましいでしょう。