小規模事業者持続化補助金の圧縮記帳が出来る経費と計上方法を解説
2024/04/01
2022/2/18
圧縮記帳とは、補助金や保険金の受給で得た益金に課される課税を繰り延べるための会計処理です。受給した年度は益金が伸びる分、法人税や所得税が大きくなってしまうのを防ぐために認められています。
小規模事業者持続化補助金においても、圧縮記帳は可能です。ただし、全ての経費で圧縮記帳が出来るわけではないので注意が必要です。
ここでは、小規模事業者持続化補助金の圧縮記帳ができる経費と計上方法を解説します。
補助対象経費の中で固定資産にあたるものは圧縮記帳できる
小規模事業者持続化補助金の対象経費の中で、固定資産にあたるものは圧縮記帳ができます。小規模事業者持続化補助金は国庫補助金にあたり、固定資産の取得にあてた国庫補助金は圧縮記帳できると法人税法42条に記載されているためです。
そのため、機械装置等費で申請した厨房機材など、減価償却資産は圧縮記帳が可能です。一方で、外注費や専門家謝金など、減価償却資産以外にあてた経費は圧縮記帳はできません。
小規模事業者持続化補助金で圧縮記帳をする計上方法
小規模事業者持続化補助金で圧縮記帳するときには、以下の2つの計上方法があります。
- 直接減額方式
- 積立金方式
どちらの計上方法でも税金の支払額は変わりませんが、直接減額方式の方がシンプルです。
直接減額方式
直接減額方式は、固定資産の取得にあてた経費を固定資産圧縮損として補助金額の益金を相殺し、以後の固定資産圧縮損を償却期間で均等に計上していく方式です。
たとえば、小規模事業者持続化補助金で50万円の給付を受けて取得した100万円の固定資産を直接減額方式で計上する場合は次のようになります。
|
補助金受給年度 |
減価償却1年目 |
減価償却2年目 |
減価償却3年目 |
減価償却4年目 |
減価償却5年目 |
貸方 |
50 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
借方 |
50 |
-10 |
-10 |
-10 |
-10 |
-10 |
合計 |
0 |
-10 |
-10 |
-10 |
-10 |
-10 |
直接減額方式は計上がシンプルな一方、減価償却が開始してからは固定資産に対する資産価値が0円として計上されることになるので、貸借対照表で負債が増えるデメリットがあります。
積立金方式
積立金方式は、固定資産の取得に宛てた経費を圧縮積立金として扱い、圧縮記帳をしない場合の減価償却費用を積立金から崩して計上していくことなります。
たとえば、小規模事業者持続化補助金で50万円の給付を受けて取得した100万円の固定資産を積立金方式で計上する場合は次のようになります。
|
補助金受給年度 |
減価償却1年目 |
減価償却2年目 |
減価償却3年目 |
減価償却4年目 |
減価償却5年目 |
貸方 |
50 |
10 |
10 |
10 |
10 |
10 |
借方 |
50 |
-20 |
-20 |
-20 |
-20 |
-20 |
合計 |
0 |
-10 |
-10 |
-10 |
-10 |
-10 |
固定資産にかかる減価償却は毎年10万円なので、課税額は直接減額方式と変わりません。計上が直接減額方式と比較して煩雑にはなるものの、貸借対照表上では資産価値が圧縮記帳をしない場合の半分は残るので、記帳上は直接減額方式と比較して自己資金が多くなるメリットがあります。
補助金の返還が必要になる場合は差額の追加納付が必要になる
小規模事業者持続化補助金で採択が決定して、給付されるまでの間に決算を迎える場合、補助金の返還は不要として圧縮記帳をして計上することは可能です。
ただし、返還不要が確定する前に圧縮記帳をしたあと、事業実施が出来なかった場合や不正受給が発覚した場合、補助金の支払いが行われない、または返還が求められます。この場合、返還不要で圧縮記帳をしていた経費に対して税金の追加納付が必要になります。
補助金を申請したタイミングによっては、返還不要が確定する前に決算を行うリスクが生じるので、小規模事業者持続化補助金で実施する事業は遂行できるよう事業計画書を作り込んでおきましょう。
事業計画書の書き方については、次の記事を参考にしてください。
この記事のまとめ
小規模事業者持続化補助金では固定資産のみ圧縮記帳できる
固定資産以外の経費は圧縮記帳できない
返還不要が確定する前に圧縮記帳をすると追加納付が必要になるリスクがある