補助金ガイド

農業者に向けて小規模事業者持続化補助金の利用方法を活用例も交えて解説

2024/04/01

2022/2/10

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

農業を経営する人の中には「最新機器を導入し、業務効率を高めたい」「ネットを利用し、新たな販路を開拓したい」と思う人もいますよね。

しかし、新しい機械の導入やシステムの構築などには費用がかかるため、補助金や助成金を検討する人もいるのではないでしょうか。

当記事では、農業者に向けた小規模事業者持続化補助金の利用方法を解説します。補助金の概要に合わせて注意点も解説するので、小規模事業者持続化補助金を調べている農業経営者のかたは参考にしてみてください。

なお、当記事は2024年度小規模事業者持続化補助金の第15回「公募要領」を元に作成しています。

小規模事業者持続化補助金は農業の販路開拓に利用できる

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓や生産性向上(業務効率化)を目指す取組みを支援する制度です。そのため、小規模事業者持続化補助金は、農業の販路開拓や生産性向上に繋がる取組みに利用できます。

たとえば、ECサイトを制作し、ネット販売を開始することは「販路開拓」に繋がります。また、ドローンを導入した防除作業や肥料の散布作業は「業務の効率化」を目指せます。

農業に小規模事業者持続化補助金を利用するためには、事業の販路開拓や生産性向上に繋がる取組みを行う必要があります。また、小規模事業者持続化補助金に申請する際は「対象者の要件」を満たさなければなりません。まずは自身が要件を満たしているかどうかを確認しましょう。

系統出荷のみを行う農業者は小規模事業者持続化補助金の対象外

小規模事業者持続化補助金は、販路開拓を行うすべての農業者が対象というわけではありません。系統出荷による収入のみである農業者は小規模事業者持続化補助金の補助対象にならないためです。

系統出荷とは、国内でいえばJA(農業協同組合)を通して出荷することを指します。そのため、小規模事業者持続化補助金を利用する農業者は「JA以外にも農産物を卸している」または「系統出荷以外の事業も行っている」ことが必須です。

【系統出荷以外の事業の一例】
・インターネットや直売を通じて農作物を消費者に直接販売している
・道の駅や小売店などでJA以外に農作物を卸している

また、系統出荷のみを行っている事業者が「小規模事業者持続化補助金の補助事業として系統出荷以外の事業を開始する」という場合も補助対象外です。あくまでも、申請時点で系統出荷以外の事業も行っている必要があることを留意しておきましょう。

小規模事業者持続化補助金の概要

小規模事業者持続化補助金の申請を検討する際は、対象者の要件や利用できる経費の項目、受けられる補助金額などの概要をおさえておきましょう。概要を理解できると、小規模事業者持続化補助金を活用して事業を行うイメージがつきやすくなります。

【小規模事業者持続化補助金の概要】

項目

概要

対象者の要件

・常時従業員の数が5人~20人以下の小規模事業者であること

宿泊業・娯楽業以外の商業、サービス業は5人以下

宿泊業・娯楽業、製造業その他は20人以下(農業の対象)

・開業して事業を開始している事業者事業者

※対象にならない事業者や対象外の事業は公募要領内に記載有り

補助金の目的

小規模事業者の販路開拓、生産性向上(業務効率化)の取組みを支援

申請枠

・通常枠

・特別枠(賃金引上げ枠、卒業枠、創業枠、後継者支援枠)

※枠ごとに申請要件有り

補助率

2/3(賃金引上げ枠の赤字事業者の場合のみ3/4

補助上限額

・通常枠50万円

・特別枠200万円(賃金引上げ枠、卒業枠、創業枠、後継者支援枠)

 ※インボイス特例が適用される場合は一律50万円の上乗せ

対象経費

①機械装置等費、②広報費、③ウェブサイト関連費、④展示会等出展費、

⑤旅費、⑥開発費、⑦資料購入費、⑧借料、⑨設備処分費、

⑩委託・外注費

申請方法

電子申請、郵送申請 

※郵送申請は第12回公募回より減点対象

※小規模事業者持続化補助金<一般型>第15公募要領を参考に株式会社SoLaboが作成

まずは対象者の要件として、農業の場合は常時使用する従業員数が20人以下の小規模事業者である必要があります。また、税務署に開業届を提出し、事業を開始していることが必須です。そのため、開業前に就農資金として小規模事業者持続化補助金を利用することはできません。

つぎに、小規模事業者持続化補助金に申請する際は、自社の事業状況によって要件を満たせる枠を1つ選んで申請します。各申請枠には、枠ごとの要件や必要書類が設定されており、補助率や補助上限額においても申請する枠によって異なります。

なお、補助事業に活用できる「対象経費」が幅広く用意されていることも小規模事業者持続化補助金の特徴の1つです。小規模事業者持続化補助金に申請する場合は、補助事業に使える経費の項目や活用例をあらかじめ確認しておきましょう。

小規模事業者持続化補助金の概要の詳細が気になる人は「小規模事業者持続化補助金とは?対象者や活用例をわかりやすく解説」も参考にしてみてください。電子申請やインボイス特例に関しても説明されています。

農業の販路開拓には10種類の補助対象経費を活用できる

小規模事業者持続化補助金の補助対象経費は全部で10種類用意されています。小規模事業者持続化補助金に申請する事業者は、農業の販路開拓に繋がる「補助事業計画」を立てて提出することになります。

その際、補助金の申請者は、用意されている補助対象経費の項目の中から事業計画の実施に必要な経費を組み合わせて申請することになります。

【小規模事業者持続化補助金の補助対象経費】

補助対象経費科目

活用事例

①機械装置等費

補助事業の遂行に必要な製造装置の購入などの経費

ビニールハウスや温度管理装置、ドローンなどにも利用可

広報費

新サービスを紹介する、看板の設置などの経費

広告チラシの作成や、看板製作・設置費用などにも利用可

③ウェブサイト関連費

ウェブサイトやECサイトなどの構築、更新、改修、開発、

運用に係る経費

※集客から受注に繋がる自社ECサイト制作やターゲットを絞った

リスティング広告にも利用可

④展示会等出展費

展示会・商談会の出展料に係る経費 

※農産物商談会や農業イベントへの出展にも利用可

⑤旅費

販路開拓(展示会などの会場との往復を含む)を行うための旅費

⑥開発費

新商品の試作品開発に伴う経費

※農産物を使った加工品食材の開発費としても利用可

⑦資料購入費

補助事業に関連する資料・図書にかかる経費

⑧借料

機器・設備のリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの)

⑨設備処分費

新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備処分

に係る経費

⑩委託・外注費

店舗改装など自社では実施困難な業務を第3者に依頼する経費

(契約必須)

※商品ブランド化のためのロゴ作成やパッケージデザインの外注

などにも利用可

※小規模事業者持続化補助金「<一般型>ガイドブック」を参考に株式会社SoLaboが作成

たとえば、農業商談会に出展する際の費用は「展示会等出展費」を活用できます。あわせて商談会やイベントで配布するチラシ作成は「広報費」を活用します。チラシにはQRコードを掲載し、自社ECサイトやSNSへの導線につなげ、販路開拓を目指します。

また、トマトの生産農家が商品のブランド化を目指し「機械装置等費」で最新機器を導入し、ハウス栽培のテクノロジー化を行った例があります。あわせて「委託・外注費」で商品のロゴ制作やパッケージの一新を行い、事業計画を具体化させました。

なお、小規模事業者持続化補助金では、車両やパソコンなどの補助事業以外でも使用できる汎用性が高いものの経費が対象外です。しかし、トラクターや農業用の車両に関しては対象になる場合もあります。

小規模事業者持続化補助金の「対象にならない経費」や「対象となる車両」の詳細を確認したい人は、第15公募要領(p.14~)をご確認ください。

小規模事業者持続化補助金を利用して農業の自動化を目指す

小規模事業者持続化補助金で販路開拓や生産性を向上させた事業を継続し、農業の自動化を目指しましょう。自動化することで、事業者本人が疲弊せずに「収穫、販売、収益」のサイクルを構築できれば、更なる事業にエネルギーを費やすことが可能となるためです。

【自動化に向けた取り組みの一例】
・毎年の収穫が見込める果樹の選定、管理
・ITテクノロジーを導入した農作物の生産
・農産物を使用した加工商品の開発・商品化
・商品のブランド化
・EC構築・SNSを利用したクローズドマーケットへの紐づけ・販路開拓
・バイヤーとのつながり、スーパーの棚を確保

たとえば、毎年種をまく必要のある葉物野菜に比べ、果樹の場合は管理次第で毎年実をつけるため、生産する農作物の選定においての自動化に繋がります。また、農作業のIT化により、防除作業や肥料散布、ハウス栽培に不可欠な温度管理なども自動化できます。

販売の場面では、ECの構築で24時間営業のネットショップが「眠っている間にも注文を確定」「SNSで顧客に向けて定期的な情報発信」などの自動化が見込めます。

天候や自然災害の被害を受けやすい農業では、リスク分散のために「種類の違う作物の生産」や「質の違う販路の確保」を検討する必要性があります。自動化に向けた事業計画は、一歩踏み出して地域の商工会や商談会などに出向くことで、さまざまなヒントを得ることができます。

小規模事業者持続化補助金の補助金額は最大で250万円

小規模事業者持続化補助金で販路開拓や業務効率化のために利用できる補助上限額は、通常枠の場合は100万円、特別枠の場合は250万円です。申請枠ごとに、補助金額を計算する際の「補助率」や「補助上限額」が定められています。

【小規模事業者持続化補助金の補助率と補助上限額】

一般型

通常枠

特別枠

申請枠

通常枠

賃金引上げ枠

卒業枠

後継者支援枠

創業枠

補助率

2/3

2/3

赤字事業者は3/4

2/3

補助上限額

50万円

200万円

インボイス特例が適用された場合

100万円

250万円

※小規模事業者持続化補助金<一般型>第15回公募要領を参考に株式会社SoLaboが作成

たとえば、インボイス特例対象外の事業者が創業枠で機材装置等費と広報費を合わせて330万円の申請をした場合の補助金額は、約218万円です。しかし、創業枠の補助上限額は200万円のため、実際に受けられる補助金額は200万円となります。

一方で、インボイス特例が適用される事業者の場合は、枠の上限額に50万円が上乗せされるため、218万円までの補助金額がそのまま受けられます。

なお、補助対象経費の中の「ウェブサイト関連費」を活用する場合は、補助金額の計算方法が一部異なります。ウェブサイト関連費の上限額は算出された補助金額の全体の1/4までの金額と定められているため、計算の工程が増えることになります。

ウェブサイト関連費を含めた補助金額の計算方法は「いくら受け取れる?小規模事業者持続化補助金の補助率と補助金額の関係性を解説」を参考にしてみてください。

農業者の小規模事業者持続化金活用事例

中小企業庁の「ミラサポplus」では、小規模事業者持続化補助金の採択審査に通過した事業者の採択事例を確認することができます。サイト内の検索ワードの窓に「農業 販路開拓」などのキーワードを入力して検索すると、農業の採択事例が表示されます。

【小規模事業者持続化補助金を利用した農業者の採択事例】

米中心の

農産物

製造・販売

【事業内容】

・米消費量の少ない若い女性をターゲットに新製品「MY(米)WEEK!」を開発、

販売。6種の美容効果がある自社米に、それぞれに合わせた炊き方のレシピを添え

、誰でもおいしく炊けるお米に工夫を凝らした

・パッケージにはデザイン性を凝らし、レシピには土鍋を用いて流行の

「インスタ映え」を意識した女性層による商品の拡散を狙った

【事業の効果】

・「フードメッセin新潟」で商品を出品した結果、百貨店や専門店との商談の機会を

得たほか、3件の受注を受けた

・各種メディアからも注目を浴び、東京で行われた試食会においては地元テレビ局

からの密着取材を受けた

いちごを主

とした農産物

の生産・

販売・流通

【事業内容】

1月から本格化する「いちご狩り」等、一般客に対する認知度向上でBtoCの直販10%

(年間240万円)増加を図るため、農場への視認性とデザイン性に優れた看板を設置

WEBサイトにEC機能を導入、売れ筋商品をランキング形式で表示したことにより、

季節によるおすすめをWEB上で提案

2パック入りの規格パッケージ開発と袋デザインの試作でこれまでBtoB用の商品のみで

出荷していた販売手段をBtoC用としても確立、一般消費者向けに販路を開拓

【事業の効果】

・看板設置により観光客に加え地元住民に対してもPRでき、口コミ効果と相まってJR常磐線

再開発で訪れるお客様の取り込みを図れた

WEBサイト開設により顧客に対して新しい情報の提供が可能になり、業販扱い直販対前年比

20%の増加

・パッケージ開発により海外展開が可能となった

※中小企業庁「ミラサポplus」を参考に株式会社SoLaboが作成

農業の採択事例では、ターゲットのニーズに合わせた商品やパッケージの開発、WEBサイトを活用した販促などが見受けられました。

また、農業商談会は「生産者とバイヤーのマッチング」を目的とする場であるため、農産物をバイヤーに紹介し、取引の機会を得る可能性が高まります。

過去の採択者が実施した補助事業の内容は、小規模事業者持続化補助金の事業計画を立てる際に参考になります。さまざまな採択事例に目を通し、経費の使い方をイメージしてみましょう。

申請は商工会や商工会議所の支援を受けながら進める

小規模事業者持続化補助金に申請する際は、地域の商工会や商工会議所の支援を受けながら手続きを進めましょう。小規模事業者持続化補助金の一部の申請書類は、商工会または商工会議所に確認や発行を依頼する必要があるためです。

【小規模事業者持続化補助金の申請手順の一例】
① 電子申請の際に必要なGビズIDプライムアカウントの申請・取得
② 「経営計画書兼補助事業計画書」と「補助事業計画書」を作成
③ 作成した書類の写しを商工会または商工会議所に提出し「事業支援計画書」
の発行を依頼する
④ その他の書類(持続化補助金事業に係る申請書、補助金交付申請書、
宣誓・同意書、その他申請枠や申請条件によって必要な書類)を記入
⑤ 後日、作成の終わった事業支援計画書を受け取り、②④の書類と共に提出する

たとえば、小規模事業者持続化補助金の必要書類の1つに「事業支援計画書」があります。事業支援計画書は、申請者が作成した「経営計画書」や「補助事業計画書」の写しを商工会か商工会議所に提出した際に作成を依頼するという流れです。

経営計画書や補助事業計画書は、採択審査の観点となる書類であり、明確で説得力のある内容を作成する必要があります。申請者が書類の作成に慣れていない場合は、地域の商工会や商工会議所の担当者に相談することも可能です。

なお、GビズIDとは、電子申請システム「Jグランツ」を利用する際に必要なIDであり、IDアカウントの申請から発行までには約2週間かかります。また、事業支援計画書は依頼から受け取りまでに約1週間かかります。

小規模事業者持続化補助金に申請する際は、取得するまでに時間を要するものから手配し、申請締切りまでに余裕を持って準備を進めましょう。

小規模事業者持続化補助金の必要書類に関する詳細は「小規模事業者持続化補助金の必要書類を申請者の条件別に解説」も参考にしてみてください。

この記事のまとめ

小規模事業者持続化補助金を農業で利用する場合、農業の「販路開拓」や「生産性向上」に繋がる取組みを計画し、実施することが求められます。農業の場合は「従業員数が20人以下の小規模事業者であること」「開業して事業を開始していること」が必須の要件です。

また、系統出荷のみで収入を得ている農業者は、小規模事業者持続化補助金の補助対象外です。しかし、JA以外にも道の駅や小売店などに直接農作物を卸している場合やネット市場で消費者に直接農作物を販売している場合は補助対象になります。

小規模事業者持続化補助金の補助対象経費は全部で10種類用意されており、農業のテクノロジー化や自動化に繋がる機械導入やEC構築などに活用できます。しかし、車両やパソコンなど汎用性の高いものの経費は対象外となるため、経費を申請する際は留意しておきましょう。

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