小規模事業者持続化補助金の経費区分の考え方について解説
2021/8/12
2021/09/29
小規模事業者持続化補助金はその名の通り、従業員数の少ない事業者や個人事業主などの「小規模事業者」が対象の補助金です。補助金や助成金は2~3年で制度自体がなくなってしまうケースもありますが、小規模事業者持続化補助金はその設置からすでに7年ほど経過しており、補助金の中でも事業者によく知られた存在です。
そんな小規模事業者補助金ですが、事業者が支払う経費であればすべて補助してくれるわけではありません。対象の経費区分に合った経費でないと、申請しても採択されません。
そこで今回は、小規模事業者補助金の補助対象経費について詳しく説明したいと思います。小規模事業者持続化補助金に申請予定の方は、利用予定の経費が経費区分に含まれているのか、ぜひこの記事を使ってチェックしてみてください。
Contents
小規模事業者持続化補助金の経費区分
小規模事業者持続化補助金は、商工会議所の管轄にある小規模事業者が対象の補助金です。小規模事業者が「販路開拓」するためにホームページを制作する、チラシやパンフレットを作成する際の経費の一部が補助されます。この補助金の特徴は、事業者が単独で申請できるのではなく、必ず「管轄の商工会議所を経由」しなければいけない点にあります。事業者が作成した販路開拓のための事業計画は、事業所の最寄り(管轄)の商工会議所がチェックとアドバイスをします。
そのため、小規模事業者補助金は補助金の中でも「地域密着型」の補助金であり、相互扶助の精神が宿るタイプの補助金です。平成28年には熊本地震復旧等予備費予算を使った追加募集なども実施されました。
2021年9月現在の小規模事業者補助金は、「一般型」と「低感染リスク型ビジネス枠」の2つとなっています。一般型と低感染リスク型ビジネス枠では、補助対象経費区分が異なるため、注意が必要です。
〈一般型〉
一般型の概要をまず説明します。対象は、自らの事業を発展させるための事業計画を作成し、実行する小規模事業者です。小規模事業者の定義ですが、以下の通り、従業員人数の上限が決められています。
小規模事業者の定義とは
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) |
常時使用する従業員の数 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 |
常時使用する従業員の数 20人以下 |
製造業その他 |
常時使用する従業員の数 20人以下 |
参照URL:令和元年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型>【公募要領】P28
ここで「常時使用する従業員って具体的に誰?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。結論から言うと、中小企業庁の公式ホームページを参照する限りでは「パート・アルバイト」も含み、「役員」(代表取締役)は含まれません。逆に最低何名以上の従業員という規定はないため、要件さえ満たせば、個人事業主・フリーランス・一人社長・特定非営利活動法人(NPO法人)の方でもこの補助金の対象となります。
小規模事業者が作成する事業計画は、管轄の商工会議所にチェックをしてもらい、アドバイスを受ける必要があります。申請の際には商工会議所が発行する書類も必要となるため、小規模事業者の一般枠では申請者が商工会議所と連携する必要があります。
一般型の対象外となる事業者ですが、①小規模事業者以外②10か月以内に一般型の採択を受けた事業者③公序良俗を害するおそれがある事業をする者等が対象外です。
補助金額と補助率
<補助金額の補助率>
補助金額 |
50万円 |
補助率(補助上限額) |
2/3 |
参照URL:令和元年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型>【公募要領】P28
一般枠では最高50万円の補助を受け取ることが可能です。ただし、補助金はキャッシュバックです。50万円を受け取ろうとすると、まず小規模事業者持続化補助金に申請して採択され、申請時に提出した補助事業に必要な補助対象経費(ホームページ制作費など)を支払い承認されたあとに、キャッシュバックとして経費の一部(2/3)が振り込まれる仕組みです。
<小規模事業者補助金の補助金額が振り込まれる大まかな流れ> ①申請 ↓ ②採択 ↓ ③補助事業スタート ↓ ④事業者が補助対象経費を支払い ↓ ⑥補助金事務局へ補助対象経費等の報告 ↓ ⑦補助金事務局が承認 ↓ ⑧補助対象経費の一部が指定口座に振り込まれる |
なお、小規模事業者持続化補助金の一般枠の申請方法は、①郵送か②Jグランツ(電子申請)の2種類です。Jグランツとは行政の補助金等のオンライン手続きができるシステムですが、申請に必要なアカウントを作成するのに2~3週間かかるため要注意です。
一般枠の概要の詳細については、公募要領をご確認ください。公募される時期により、公募要領は随時改訂されていますので、常に最新版をチェックしてください。(2021年9月時点の最新版は第12版です)
令和元年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型>【公募要領】
※当サイトの以下関連記事も是非あわせてご覧ください。
〈低感染リスク型ビジネス枠〉
小規模事業者を対象にしつつ、実施する補助事業はポスト・コロナを意識した内容を求めるのが、小規模事業者持続化補助金の低感染リスク型ビジネス枠です。小規模事業者持続化補助金自体は平成25年に開始されましたが、低感染リスク型ビジネス枠は令和2年に開始されました。
「低感染リスク型ビジネス枠で求められる事業計画って、どんなもの?」と思われる事業者も多いと思いますが、例えば、低感染リスク型ビジネス枠では「これまで店舗でやっていた物品販売をネット通販で行う」などの対人接触機会の減少と事業継続を図るための事業計画を立て、それを実行することが要件となっています。
<低感染リスク型ビジネス枠の事業計画の例>
- 英会話教室、ヨガ教室をオンライン化する
- 結婚式場の一部を改装し、グランピング施設とする
- 団体予約向けの宴会・パーティー会場を改装して、リモートワーク向けの宿泊施設にする
また、この補助枠はその内容が感染症対策に関わるものなので、医療関係者などの一部の事業者は対象外となっています。また、一般型と同じく①小規模事業者以外②10か月以内に一般型の採択を受けた事業者③公序良俗を害するおそれがある事業をする者等も対象外です。
補助対象外 |
|
一般枠との違いは主に、提出する事業計画が低感染リスク型である点ですが、受け取れる補助金額も一般型に比べ2倍となっています。
<補助金額の補助率>
補助金額 |
100万円 |
補助率(補助上限額) |
3/4 |
参照URL:令和2年度第3次補正予算 小規模事業者持続化補助金 <低感染リスク型ビジネス枠>
一般型との大きな違いは、申請がJグランツ(電子申請)のみで受け付けるという点です。一般型と違い、低感染リスク型ビジネス枠は新型コロナ感染症が落ち着いたら公募は終わると思われますので、申請を予定している事業者は早めに準備をした方がよいでしょう。
〈一般型〉の小規模事業者持続化補助金の経費区分
前振りが長くなりましたが、まずは「一般型」の補助対象経費(経費区分)について解説します。一般型で経費として認められるものは、以下の13種類です。いずれの場合も、
①申請した補助事業に必要であると思われるもの②交付決定以降に購入したもの③証拠書類等で購入が確認できるもの、という3つの規約があります。
なお、以下の解説はすべて小規模事業者持続化補助金の公募要領を参照した上で記載しています。
①機械装置等費
店舗でレイアウトを変えるための商品陳列に必要な棚や、飲食店が新たなメニューを開発するために必要な厨房機器などが該当します。PCに使うソフトウェアも対象となりますが、その際は補助事業期間中に発生する利用料だけが補助対象となります。
例)業務効率のために業務管理ソフトを購入する場合 一括35万円で購入 ↓ 使用期間は7年間を想定(1年で5万円分を利用する計算) ↓ 補助対象期間は1年、1年分に該当する5万円分が補助対象となる |
また、補助金を受けて機械装置費等を購入した際は、購入した機械装置等を譲渡・担保・処分する際には制限があります。要は、「国のお金を使って買った品物だから、勝手に処分してはダメ」ということになります。処分する際は、管轄の商工会議所に相談し、承認される必要があります。
・ポイント
- 機械装置等費は補助事業の実施年数分のみ補助される。
- 購入した機械装置費等を処分する際は、商工会議所の承認を得る必要がある。
②広報費
パンフレット・チラシ・ポスターなどを制作するための費用です。ポイントは補助事業に必要な広告・宣伝であるという点です。例えば、ある子ども服を販売する会社が子ども向けマスクを企画・販売する事業計画を立て、小規模事業者持続化補助金で採択されたとします。
補助がおりる経費はあくまで、補助事業にかかわる「子供向けマスク販売」のパンフレット・チラシなどに限定されます。もともとの子ども服販売向けの広告費は、支援されません。
・ポイント
補助事業に関わる広告費のみが補助を受けられる対象です
③展示会等出展費
新商品を展示会などに出展する、または商談の場に出すための費用です。出典するための出展料のみでなく、出典に関わる運送費・ガソリン代、翻訳料なども補助経費の対象です。既に他の助成金などから補助を受けている場合、小規模事業者補助金と重複して補助を受けることはできませんので、ご注意ください。
また、展示会に出展する目的は「販路開拓」でなければいけません。単に商品を売るためのレンタルスペースを借りる場合は対象外となり、展示会会場に新しい顧客となり得る法人や関係者が訪れる可能性がないと経費の区分対象外となります。
・ポイント
- 展示会の出展料だけでなく運送費や翻訳料などの必要経費も補助対象です。
- 単に商品販売のための展示会ではなく、販路開拓を目的とする展示会出展でなくてはならない。
④旅費
事業のために必要な旅費も補助されます。ただし、あくまで販路開拓を目的としている必要があります。例えば、これまで関西で主に卸していた肉加工品を、新たに関東の小売店にも卸すべく、関係者とともに小売店を回るための旅費はOKです。また、旅費は前項目の「展示会等出典費」とセットで使うことができ、展示会の往復にかかる交通費を旅費として申請することが可能です。
旅費には往復の交通費の他、宿泊費も含まれます。いずれも最も経済的な選択をすべきであり、新幹線で行けるところを飛行機にする、ビジネスホテルで済むところを高級ホテルにするなどの場合は対象外です。宿泊のおおよその上限は、一泊1万円までです。
・ポイント
- セミナー参加などではなく、あくまで販路開拓のために必要な旅費である必要があります。
- 交通費も宿泊費も、最も経済的な選択をしなければいけません。
⑤開発費
新商品や商品パッケージ変更のための試作品をつくるための経費です。例えば、ある和菓子の販売をしている小規模事業者が、新商品を開発するためにこれまでとは違った材料(ピスタチオ)を入れた商品をつくろうと企画するとしましょう。その際、ピスタチオを使った和菓子つくりに必要な材料(ピスタチオ、あんこ等)や調味料(砂糖、塩など)やパッケージ試作代金が補助の対象となります。
開発費はあくまで補助事業に関わるもののみが対象なので、本事業(例、通常の和菓子づくりの材料)は補助対象外です。また、試作品づくりや開発に必要なく余った材料費などは、補助の対象外となり、本当に必要な数量のみが補助対象です。
・ポイント
新商品やパッケージ変更のための食品購入費・調味料代・新パッケージのデザイン料などが対象です。
⑥資料購入費
補助事業を遂行するために必要な書籍等の購入費用です。例えば、ある雑貨店がネットショップを開くためにホームページを制作しようとして、そのために初心者向けのホームページ制作の本を買いました。この場合、購入したホームページの本は経費区分の中に含まれます。1種類の資料につき、購入できるのは1冊(1部)です。また、1冊の価格は10万円未満です。
新品では購入できない資料の場合は中古品を購入することも可能です。中古品を購入する際はすぐに購入店舗を決めるのではなく、複数の店舗(例、古本屋)から相見積もりをとることで、中古品も認められます。
・ポイント
- 販路開拓に必要な資料(本や雑誌)の購入費用で、1種につき1冊(1部)、10万円以下のものが対象です。
- 購入する資料が中古の場合は、相見積もりが必要です。
⑦雑役務費
補助事業を行うために一時的に必要となるアルバイトの給与や交通費です。例えば、これまでヨガ教室をテナントで行っていたフリーランスが、新たにオンラインヨガを開始したとしましょう。ホームページ更新やサーバーのメンテナンスなどについて専門知識のある人を半年間雇用しましたが、その際のアルバイト料と交通費は補助対象となります。
注意点は、通常業務に関わる作業を行うためのアルバイトは対象外です。上記の例の場合、ホームページ更新のために雇ったアルバイトにヨガ教室の清掃や生徒受付の仕事をさせているのであれば、経費区分から外れます。
・ポイント
補助事業のために必要な、臨時のアルバイトを雇うための費用が対象です。
⑧借料
補助事業に必要な機器・設備等をレンタル・リースする費用です。例えば、これまで店で販売していたラーメンを、週末やイベント時にワゴンカーを使って販売する事業計画を立てました。ラーメン調理のできるワゴンカーは費用が高額だったため、レンタルにすることにしました。この場合、ラーメン設備の入ったワゴンカーのレンタル料は小規模事業者持続化補助金の経費区分に含まれます。
なお、借料は口頭契約で借りているものは対象外となり、見積書や契約書などの書面で確認できるもののみが対象です。また、商品・サービスPRのためのレンタルスペース賃料もこの借料に含まれます。
・ポイント
補助事業に必要な機器・設備等をレンタル・リースするための費用で、補助事業以外に使う場面がある場合はそれをカットして(按分という)計算されます。
⑨専門家謝金
補助事業に必要な大学教授などの専門家への相談等に支払われる経費(コンサル料)も補助対象です。例えば、販路開拓のための新商品開発についてブランディングの専門家に指導・アドバイスを受けるケースなどが挙げられます。内容については口頭での取り決めは補助対象外となり、専門家が行う内容・期間・謝礼の額などの詳細は契約書を作成し書面を取り交わす必要があります。
専門家の謝礼は社会的な常識の範囲で決められなければいけません。具体的に、目安として小規模事業者持続化補助金の公募要領には、1時間あたりの専門家への謝礼が記載されています。
<1時間あたりの専門家への謝礼目安>※抜粋 ※消費税・地方消費税抜きの額
大学学長級(平均勤続年数17年) |
11,300円 |
大学副学長級(平均勤続年数17年) |
9,700円 |
大学学部長級(平均勤続年数17年) |
8,700円 |
大学教授1(平均勤続年数17年) |
7,900円 |
大学教授1(平均勤続年数12年) |
7,000円 |
参照URL:令和元年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型>【公募要領】
・ポイント
- コンサルティング会社や大学教授などに販路開拓のための指導・アドバイスへの謝礼は専門家謝礼金として補助対象となります。
- 専門家が指導・アドバイスのために使う交通費などは次の項の「専門家旅費」として区分します。
- 商工会議所からのアドバイスや指示への謝礼は、補助対象外です。
⑩専門家旅費
補助事業のために必要と思われる往復の交通費や宿泊費は、旅費と区別して「専門家旅費」として申請します。専門家が使う交通・宿泊であっても、基本的に前述した「④旅費」と同じ水準で、必要最低限の経費になるように選択することが大切です。例えば、大学教授が止まるホテルだからといって相場を超える1泊5万円もするような高級ホテルに使った経費は、補助の対象外となります。
・ポイント
補助事業に必要な専門家が使う交通費と宿泊費は「旅費」ではなく、「専門家旅費」として申請します。
⑪設備処分費
設備処分費とは、販路開拓のためにこれまで使っていたスペースを処分する必要がある際の粗大ごみ処分費用や事業用大型ごみ集荷業者への料金支払いなどが対象です。例えば、これまで雑貨屋を営んでいたAさんが雑貨の売り上げが伸びないので、店内の一部をカフェに改装することにするとしましょう。その際に不要となる棚などの什器を撤去するための経費は、補助対象となります。
なお、設備処分費は小規模事業者補助金に申請する際に「〇円を使います」という計画を提出しないと補助対象とはならないので、事前にきちんと計画を立てることが必要です。補助事業を開始したあとで、設備処分費を追加することは規約上NGだからです。
・ポイント
- 販路開拓のために必要な設備処分にかかる経費が補助対象となります。
- 全体の補助対象経費の中で、設備処分費が1/2を超えてはいけません。
⑫委託費
これまで説明した①~⑫に該当しない経費で、外部に委託した経費は「委託費」として申請が可能です。委託する内容は、基本的に設備処分費補助事業を行う小規模事業者では困難な内容となります。例えば、販路開拓のために海外(シンガポール)の有名飲食店経営者を専門家として招いたとしましょう。シンガポールの有名飲食店経営者を日本に呼びよせるためのマネジメント(航空券の手配や通訳など)は外部の専門会社に頼んだ方が効率的なので依頼するとなると、委託費に該当します。
・ポイント
①~⑫の補助対象経費に該当しない経費であり、補助事業者(補助事業を行う小規模事業者)が行うことが困難な場合に外部業者に委託する際の経費です。
⑬外注費
これまで説明した①~⑫に該当しない経費で、外部に外注した際の経費は外注費として扱われます。委託費と似ている印象を受けますが、委託費は目に見えない手配などの事務手続きが中心となるのに対し、外注費は水道工事費や改装工事費などの工事費です。
・ポイント
①~⑫に該当しない経費で、外部に依頼した工事費は外注費として補助対象です。
〈低感染リスク型ビジネス枠〉の小規模事業者持続化補助金の経費区分
続きまして、小規模事業者持続化補助金の低感染リスク型ビジネス枠の補助対象となる経費区分について説明します。一般型では全部で13の項目が補助対象でしたが、低感染リスク型ビジネス枠では12の項目が補助対象となっています。
大まかな補助対象経費はほぼ同じですが、一般型では「販路開拓」のための経費がラインナップされていましたが、低感染リスク型ビジネス枠では根本的に「低感染リスク型ビジネスのため」に使われる経費でなくてはいけないという違いがあります。
①機械装置等費
いまの事業を低感染リスク型ビジネスに変換するための車両や機械装置などにかかる経費が補助対象です。具体的には、居酒屋が移動販売でお弁当事業を始めるためのワゴンカーや対面で教える塾がオンラインスクールを開講するためのシステムなどがあります。
なお、補助事業以外にも使える一般車両やオンライン会議向けのシステムの導入費用は機械装置費の対象外です。あくまで補助事業にのみ使える機械装置の購入費用でなくてはいけません。1式100万円以上の機械装置等や中古品(新品が廃盤の場合など)については2社以上の見積もりを取る必要があります。
・ポイント
いまの事業から低感染リスク型ビジネスに切り替えるために必要な機械装置費等が対象です。
②広報費
新たに取り組む低感染リスク型ビジネスの広告・宣伝に必要なホームページ作成やチラシ・パンフレット作製費などが広報費です。小規模事業者持続化補助金に採択された場合は、実際に作成したホームページやチラシなどの成果物を提出する必要があります。加えて、広報費としてかかる経費は通常の事業にも使えるものであってはいけません。例えば、不動産会社がオンライン相談を始めるためのオンライン相談ページの制作費用は広報費ですが、もともとの不動産会社の宣伝のためのwebページの制作費は対象外です。
・ポイント
補助事業に必要なホームページ制作費・チラシ・パンフレット・DM製作費などが広報費です。
③展示会等出展費
低感染リスク型ビジネス枠の展示会はオンラインでの展示会に限定されます。オンラインで開かれる展示会のためにかかる出展料が補助されます。オンラインのため、往復の交通費は展示会出展費には含まれません。海外の主催者が開くオンライン展示会も対象ですが、その際は申請時に日本語訳をつけた資料を提出する必要があります。
・ポイント
オンラインで開かれる展示会に出展するための出展料です。
④開発費
感染症拡大を防止するための商品・サービスを開発するための試作品製作費やパッケージ変更費用、インターネット受注システムの構築費などが開発費です。例えば、これまでテイクアウトをしてこなかった飲食店が新たにテイクアウトを始めるための容器の発注費用やメニューの変更にかかる経費は開発費としてカウントされます。
なお、通常のメニューやサービスの開発をするための費用(例、居酒屋での新メニュー開発のための原材料費)は補助対象外です。
・ポイント
感染拡大を防止するための商品・サービスの開発に必要な試作品製作費用、インターネット受注システムの構築費などが開発費です。
⑤資料購入費
補助事業の遂行のために必要な書籍といった資料購入費が補助対象です。一般型では「販路開拓」のための知識等を得るための資料が対象でしたが、低感染リスク型ビジネス枠では店舗からオンライン化するためのマニュアルやホームページ制作など、感染症対策となるビジネスに関わる資料が対象です。
・ポイント
- 低感染リスク型ビジネスの遂行に必要な書籍・雑誌・資料などの購入費用です。
- 取得単価は1部10万円未満のものに限り、中古品の場合は2社以上の相見積もりを実績報告時に提出しなければなりません。
⑥雑役務費
補助事業を行うために雇い入れた臨時のアルバイト代は、雑役労務費として経費区分します。例えば、クリニックや薬局がオンライン診断を始めたというチラシを作成し、それを近隣の住宅街にポスティングするとします。その際にチラシを配布するアルバイト代は雑役務費として区分できます。雑役務費を申請する際は、作業日報や労働契約書といった書面を提出する必要があります。
・ポイント
- 補助事業のみに必要なアルバイト代です。
- 雇用契約書や作業日報の提出が必要です。
⑦借料
補助事業に必要な機械・設備等のリース・レンタル料です。補助事業以外にも利用できる汎用性のあるもの(自動車やパソコンなど)は対象外です。借料を補助対象経費として申請する際には、添付資料としてレンタル契約書やリース契約書を提出します。また、補助事業の実施期間外に発生するリース・レンタル料と事務所等の家賃は借料としてみなされません。
借料としてみなされるケース |
|
借料としてみなされないケース |
|
・ポイント
補助事業に必要な設備のリース・レンタル料は補助対象ですが、事務所の家賃・所有権が移転するものは補助対象外です。
⑧専門家謝金
補助事業として新しい商品・サービス・生産プロセスに取り組む際に、大学教授や民間コンサル会社などの専門家指導を受ける際の謝礼が対象です。謝礼の額ですが、社会通念上の常識の範囲内で妥当な額である必要があります。謝礼額を特に定めていない場合は、補助金事務局の公式ホームページに記載されている参考資料の謝礼金額を目安として参考にしましょう。ちなみに、参考資料にある謝礼金の目安は一般型と同じ数値です。
<1時間あたりの専門家への謝礼目安>※抜粋 ※消費税・地方消費税抜きの額
大学学長級(平均勤続年数17年) |
11,300円 |
大学副学長級(平均勤続年数17年) |
9,700円 |
大学学部長級(平均勤続年数17年) |
8,700円 |
大学教授1(平均勤続年数17年) |
7,900円 |
大学教授1(平均勤続年数12年) |
7,000円 |
参考:小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型ビジネス枠> 参考資料
・ポイント
低感染リスク型ビジネスに特化した専門家アドバイス等が必要な場合は、その謝礼金も補助対象です。
⑨設備処分費
こちらに関しては、一般型と全く同様です。補助事業を行うために必要となる解体・返却などの処分費用を補助対象経費として申請することが可能です。
・ポイント
補助事業に必要な設備機器の解体・原状回復・返却などの処理に関わる費用です。
⑩委託費
上記①~⑨にあてはまらない費用で、外部に委託する際の経費は委託費として経費区分されます。一般型と同じで、自らが実行できないケースでのみ申請は可能です。(例、外国語に関わる内容、工事に関わる内容など)また、委託費を申請する際は委託先との契約書や成果物についての報告書など、既定の資料を提出できることが条件です。
・ポイント
委託費は、小規模事業者が自ら実施できない内容をアウトソーシングする場合のみに対象となります。
⑪外注費
補助事業に必要な工事を外注する際の経費です。飲食店が飲食スペースを改装してリモートワーク向けの個室をつくる場合、居酒屋での無人注文に対応するための工事をする場合などが想定できます。実際に工事を担当する工事業者とは工事内容や金額が明記された契約書を取り交わし、補助金申請時に提出する必要があります。税抜き50万円以上の工事は「処分制限財産」といって事業者が勝手に処分をしてはいけない財産の対象となります。処分前には、管轄の商工会議所に処分についての相談をすることになります。
・ポイント
- 一般型と同じで、補助事業に必要な工事費のことです。
- 50万円以上の工事費を使うのであれば、解体などの処分を事業者判断で行うことは禁止されています。
⑫感染防止対策費
一般型にはなく、低感染リスク型ビジネス枠のみで認められている補助対象経費です。感染防止については内閣が業種別のガイドラインを設けていますが、それに応じた感染症対策をするための経費となります。また、感染防止対策費は事業者が申請する全補助対象経費の中で1/4(最大25万円)までという規定があります。そのため、感染防止対策費ばかりが多い事業計画を退出しても、採択はされません。
例)
劇場 |
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集会場 |
|
飲食店 |
|
・ポイント
事業者が考える感染症対策に必要な経費ではなく、内閣の業者別ガイドラインに沿った対策を行う際に対象となる補助対象経費です。
小規模事業者持続化補助金の経費区分についての注意点
以上、小規模事業者持続化補助金の補助対象経費について項目とポイントを紹介してきました。大まかにいうと、一般型では「販路開拓」に関わる経費が対象となり、低感染リスク型ビジネス枠では「感染症対策」として必要な経費が対象となります。また、小規模事業者補助金で経費を申請する際は、原則、契約書面や明細書などの資料の添付が必須です。謝礼金などを含め、なぜその経費が必要なのかの根拠を示す証拠書類が出せない経費は、補助の対象外となります。
なお、よく事業者が小規模持続化補助金の経費で間違って補助対象と考える経費区分は、以下のものが多いと思います。
<補助の対象外の経費項目>※抜粋
|
詳細は、小規模事業者持続化補助金の公募要領P44~45をご参照ください。
令和元年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型>【公募要領】
小規模事業者持続化補助金の経費区分の記載方法
小規模事業者持続化補助金で使った補助対象経費のキャッシュバックを受けようとする際は、まず大前提として「経営計画書」と「補助事業計画書」の2点を作成し、それを管轄の商工会議所に見てもらい承認を受けます。(管轄の商工会議ごとに別途、公募要領を用意しているので、そちらもご確認ください)
その後、商工会議所は「事業支援計画書」を発行するので、事業者はそれを受け取りJグランツという行政の申請システムで電子申請します。
もし、事業者が補助事業の実施前に「申請した経費を変更したい」のであれば、補助事業の開始前であれば受け付けてもらえます。その際、なぜ変更したいのかという理由の必ず記載してください。
例) 変更の理由: 当社ではオンラインスクールを開設するためのホームページ制作業者を複数検討していたが、より経験が深く金額的にも安く制作してくれる業者と契約できたため、 補助希望金額を変更したい。 |
経費区分 |
変更前 |
変更前 |
---|---|---|
機械装置費等 |
500,000円 |
300,000円 |
なお、経費区分の変更については日本商工会議所から公開されている以下のPDFもあわせてご参照ください。
この記事のまとめ
・小規模事業者持続化補助金の経費区分は、一般型か低感染リスク型ビジネス枠なのかで「販路開拓」と「感染症防止」という目的が異なっています。
・各補助対象経費では細かく要件が決まっていますので、申請する際は公募要領をよく確認して対象外とならないように注意しましょう。