小規模事業者持続化補助金を副業にも利用できるのか?
2024/04/10
2023/5/31
普段は会社員として働きながらも就業後や休日には副業を行い、給与以外の収入源を確立している人はいますよね。その中には、新しい取り組みのための資金調達に、小規模事業者持続化補助金の利用を検討する人もいるでしょう。
当記事では、小規模事業者持続化補助金を副業にも利用できるかを解説します。補助金を申請できる副業と申請できない副業の違いや、補助金の活用例についても解説するので、自分の副業に小規模事業者持続化補助金の利用を検討している人は参考にしてみてください。
なお、当記事は、小規模事業者持続化補助金の第15回公募要領を元に作成しています。
開業届を出している副業であれば小規模事業者持続化補助金に申請できる
開業届を出して副業を行っている人は、小規模事業者持続化補助金に申請できます。税務署に開業届を提出した人は、事業を行う「個人事業主」となり、小規模事業者持続化補助金の補助対象者になるためです。
たとえば、会社員の傍らでフリーランスとして副業している場合でも、個人事業主であれば小規模事業者持続化補助金の対象になります。
小規模事業者持続化補助金を副業に利用するためには、開業届を出した個人事業主である必要があります。会社員でも開業届は出せるので、小規模事業者持続化補助金の申請を検討する際にはまず、開業届を出して申請要件を満たしておきましょう。
副業の収入が確定申告で雑所得とみなされる場合は申請できない
小規模事業者持続化補助金では、副業の収入が確定申告で雑所得とみなされる場合は申請できません。副業自体は、開業届を出さずに行うことができますが、開業届を出していない副業の所得は、確定申告の際に「事業所得」ではなく「雑所得」の所得区分となります。
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事業所得 |
雑所得 |
確定申告時における比較 |
・青色申告の対象 ⇒複式帳簿と帳簿に伴う書類の提出が必要 ・損益通算や最大65万円の青色申告特別控除を受けられる |
・白色申告の対象 ⇒シンプルな帳簿と書類の提出で、青色申告よりも書類作成の負担が少ない ・損益通算や特別税控除は受けられない |
小規模事業者持続化補助金申請時における比較 |
・開業届を出した個人事業主が行う副業の収入は事業所得の区分となり、補助金の対象 |
・開業届が出ていない事業者が行う副業の収入は雑所得の区分となり、補助金の対象外 |
参考:青色申告特別控除|国税庁
たとえば、確定申告の種類で見た場合、副業の収入が雑所得の人は、確定申告では白色申告の対象であり、小規模事業者持続化補助金の対象外です。また、副業の収入が事業所得にあたる個人事業主の人は青色申告の対象であり、小規模事業者持続化補助金の対象になります。
開業届を出さずに副業を行う人の収入は「雑所得」の区分になり「事業」とみなされないため、補助金に申請できません。補助金を申請するためには、開業届を出して「事業を行う個人事業主」となり、副業を「事業」として行いましょう。
これから副業を始める場合は申請できない
これから副業を始めるための資金として小規模事業者持続化補助金を申請することはできません。第15回公募要領において、申請時点で開業していない創業予定者や、開業届を出していても事業を開始していない場合は補助対象外と明記されているためです。
たとえば、ネットショップを運営する予定で開業届を提出していても、商品やECサイトの準備中で、販売を開始していない実状では補助金の対象外です。補助金に申請するためには開業届を提出し、開業届の内容の事業を開始している状態である必要があります。
小規模事業者持続化補助金は、申請の時点で開業届が出されていない事業や、開業届を出していても事業を開始していない場合は申請できません。補助金に申請する人は、開業届を提出して事業を始めている状態で申請に臨みましょう。
なお、開業したばかりの事業者でも小規模事業者持続化補助金の申請は可能です。開業して日が浅い個人事業主の人は、「小規模事業者持続化補助金は開業したばかりでも採択される?」も参考にしてみてください。
無料診断では小規模事業者持続化補助金に申請できるかがわかります。補助金の対象となるか、どのような経費に使えるか、いくらもらえるかなどを知りたい人は診断してみてください。
無料診断10種類の補助対象経費を活用して事業計画をたてる
小規模事業者持続化補助金には、補助事業に活用できる10種類の対象経費が用意されています。補助金を申請する際は、必要な対象経費を組み合わせ、事業の「販路開拓」や「生産性向上」に繋がる補助事業計画をたてる必要があります。
補助対象経費科目 |
活用事例 |
①機械装置等費 |
補助事業の遂行に必要な製造装置の購入などの経費 ※かき氷専門店の生産性向上に繋がる「機能性に優れたかき氷機」の導入にも利用可 |
②広報費 |
新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置などの経費 ※ポスティング用広告チラシの作成や、視認性・デザイン性に優れた看板作製にも利用可 |
③ウェブサイト関連費 |
ウェブサイトやECサイトなどの構築、更新、改修、開発、運用に係る経費 ※集客から受注に繋がる自社サイト制作や、ターゲットを絞ったリスティング広告にも利用可 |
④展示会等出展費 |
展示会・商談会の出展料に係る経費 ※ネットショップ販売のレジンアクセサリーをイベントで出展する際の出店費にも利用可 |
⑤旅費 |
販路開拓(展示会などの会場との往復を含む)を行うための旅費 ※セミナーや買い付けなどに出向いた際の交通費にも利用可 |
⑥開発費 |
新商品の試作品開発に伴う経費 |
⑦資料購入費 |
補助事業に関連する資料・図書にかかる経費 |
⑧借料 |
機器・設備のリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの) ※飲食店間借り店舗の家賃にも利用可 |
⑨設備処分費 |
新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備処分に係る経費 |
⑩委託・外注費 |
店舗改装など自社では実施困難な業務を第3者に依頼する経費(契約必須) |
参考:小規模事業者持続化補助金<一般型>第15回公募要領|小規模事業者持続化補助金
たとえば、収納・片付けを話題にしたブログで、広告やアフェリエイト収入を得ている人が新たに「出張整理収納サービス」を開始し、販路拡大を計画する場合、出張整理収納サービスを立ち上げるための経費が補助されます。
その際、補助事業の内容として、セミナー受講のための交通費を旅費として申請できます。また、資格取得の勉強のために購入する書籍は資料購入費、「出張整理収納サービス」を紹介するホームページ作成にはウェブサイト関連費が活用できます。
小規模事業者持続化補助金の対象経費は全部で10種類あり、活用方法はさまざまです。補助金に申請する際は、取り組む補助事業の内容にあてはまる経費を組み合わせ、販路開拓や生産性向上に繋がる補助事業計画を立てましょう。
補助上限額は通常枠の100万円または特別枠の250万円
小規模事業者持続化補助金の補助上限額は、通常枠で申請した場合は100万円、特別枠で申請した場合は250万円です。小規模事業者持続化補助金の申請枠には通常枠と特別枠があり、枠ごとに補助金額を計算する際の補助率や補助上限額が定められています。
一般型 |
通常枠 |
特別枠 |
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申請枠 |
通常枠 |
賃金引上げ枠 |
卒業枠 後継者支援枠 創業枠 |
補助率 |
2/3 |
2/3 赤字事業者は3/4 |
2/3 |
補助上限額 |
50万円 |
200万円
|
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インボイス特例が適用された場合 |
100万円 |
250万円 |
参考:小規模事業者持続化補助金<一般型>第15回公募要領|小規模事業者持続化補助金
たとえば、創業枠で機材装置費と広報費を合わせて300万円を申請した場合、補助率が2/3、補助上限額が200万円なので、受けられる補助金額は200万円です。
小規模事業者持続化補助金の補助上限額は、通常枠は50万円、特別枠は200万円です。また、「免税事業者」であった人が「適格請求書発行事業者」になることで「インボイス特例」が適用された場合は、さらに50万円が上乗せされます。
なお、小規模事業者持続化補助金は、補助事業実施後に補助金を受給することになります。そのため、申請者は補助事業で使用する経費を先に支払う必要があることを留意しておきましょう。
間借りカレー店の補助金活用例
間借り店舗を利用して副業でカレー店を開いている人が、新たに「こだわりのかき氷」を店のメニューに加えて販路拡大を計画する場合、業務用かき氷機は機材装置費として申請できます。また、氷の買い付けのための交通費は旅費として申請できます。
申請者が支払う補助対象経費:75万円 |
(内訳) 【機材装置費】 業務用かき氷機2台:21万円 冷凍ストッカー:5万円 【広報費】 置き看板、チラシ広告制作費:25万円 【旅費】 氷買い付けの交通費:4万円 【開発費】 メニュー開発費:15万円 【委託・外注費】 ロゴデザイン作成:5万円 |
受け取れる補助金額:50万円 |
(計算式) 補助対象経費の合計75万円×補助率2/3=50万円 |
作成した経費活用例は、申請者が通常枠で申請し、75万円の経費を支払った場合の内容を想定しています。通常枠の補助率は2/3、補助上限額は50万円なので、申請者が受け取れる補助金は50万円となります。
事業計画を立てたあとは、自分が取り組む補助事業の経費には「いくら申請することになるのか」を計算しましょう。また、申請枠ごとの補助率や補助上限額から計算し、申請額に対して「いくら補助金を受け取れるのか」を把握しておきましょう。
なお、小規模事業者持続化補助金は、一度採択された人でも採択された日から11ヶ月以上経っていれば、複数回の申請が可能です。カレー店の事業で補助金を活用し、1年後にかき氷メニューの追加で販路開拓を目指す際にも申請できます。
小規模事業者持続化補助金を複数回申請する際のポイントや注意点は、「小規模事業者持続化補助金は複数回の申請ができるのか?」も参考にしてみてください。
補助金の申請は商工会や商工会議所の支援を受けながら進める
小規模事業者持続化補助金を申請する際は、地域の商工会または商工会議所の支援を受けながら手続きを進めることになります。小規模事業者持続化補助金の申請には、商工会や商工会議所を通して必要書類を準備する必要があるためです。
① 電子申請の際に必要なGビズIDプライムアカウントの申請・取得 ② 「経営計画書兼補助事業計画書」と「補助事業計画書」を作成 ③ 作成した書類の写しを商工会または商工会議所に提出し、「事業支援計画書」の作成を依頼する ④ その他の書類(小規模持続化補助金事業にかかる申請書、補助金交付申請書、宣誓・同意書、その他申請枠や申請条件によって必要な書類)を記入 ⑤ 後日作成の終わった事業支援計画書を受け取り、②④の必要書類と共に提出する |
たとえば、提出書類の1つに「事業支援計画書」があります。事業支援計画書は、申請者が作成した「経営計画書」や「補助事業計画書」を商工会または商工会議所に提出してから作成を依頼する書類です。
また、「経営計画書」や「補助事業計画書」は、補助金の採択審査において観点となる書類であり、明確で説得力のある内容を作成する必要があります。申請者が書類の作成に慣れていない場合は管轄の商工会に相談もできるため、支援を受けると良いでしょう。
なお、「事業支援計画書」は依頼してから発行までに約1週間かかります。電子申請に必要なGビズIDプライムアカウントは、申請から取得までに約3~4週間かかります。申請してから受け取るまでに時間を要するものは、早めに準備しておきましょう。
GビズIDの詳しい情報は、デジタル庁の「gBizID」で確認できます。
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無料診断この記事のまとめ
小規模事業者持続化補助金を副業で利用する場合、申請者は税務署に開業届を提出し、事業を開始している「個人事業主」である必要があります。個人事業主の行う「事業」にかかる経費の一部が補助金によって支援されます。
個人事業主の行う副業の収入は、確定申告において「事業所得」に区分されます。また、開業届を出さずに副業を行う人の収入は「雑所得」の区分になります。収入が雑所得に区分される場合の副業は、「事業」とみなされないため、補助金に申請できません。
小規模事業者持続化補助金は小規模事業者の「販路開拓」や「生産性向上」を目的とした事業にかかる経費の一部を補助する制度です。対象経費の活用例を参考に事業計画を立て、商工会や商工会議所の支援を受けながら必要書類の準備を進めましょう。