飲食店が2024年も申請できる補助金や助成金を利用目的にあわせて解説

2024/07/01

2024/6/28

この記事の監修

株式会社SoLabo田原広一

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原 広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

飲食店を経営する事業者の中には、設備投資やデジタル化による業務効率化など新たな計画を考える人もいますよね。その際、新たな事業計画にかかる経費の補填に「補助金の利用」を検討している人もいるのではないでしょうか。

当記事では、飲食店が事業や雇用などの課題に取り組む際に利用できる補助金や助成金を目的別に解説していきます。また、飲食店の開業にかかる経費に利用できる補助金や助成金も紹介するので、飲食店が申請できる補助金情報を知りたい人は参考にしてみてください。

補助金や助成金は、どちらも国や地方公共団体から目的に応じた支援金を受けられる制度です。しかし、補助金と助成金には意外と知られていない「制度の違い」があります。飲食店が補助金や助成金を検討する際は、先に2つの制度の違いを理解しておきましょう。

【補助金と助成金の違い】
補助金 ・経済産業省や中小企業庁、地方自治体の管轄
・事業の支援や地域振興、公益に関する支給
・要件を満たし、採択審査に通過しなければ補助金が受けられない
助成金 ・厚生労働省、地方自治体の管轄
・雇用や労働環境の改善に関する支給
・要件を満たせばほぼ助成金が受けられる

※中小企業基盤整備機構J-net21のビジネスQ&Aを参考に株式会社SoLaboが作成

補助金は、主に「新規事業の支援や地域振興」などを目的に支給されます。一方で、助成金は、主に「雇用や労働環境の改善」などを目的に支給されます。

また、補助金には採択件数や予算が決まっているため、申請すれば必ず受給できるものではありません。申請者の作成した「事業計画書」を元に採択審査が行われ、審査に通過した人のみが補助金を受けられます。一方で、助成金は要件を満たせば原則給付されます。

ただし、補助金や助成金という言葉は明確に区別されていないため、助成金と称していても補助金の色合いが強い場合もあります。補助金や助成金を申請する際は、各々の制度の詳細を確認することが必要です。

飲食店の目的別に利用できる補助金や助成金

飲食店が申請できる補助金や助成金には、国が公募しているものや地方公共団体が公募しているものが複数あります。飲食店が補助金を探す際は、補助金の「利用目的」や「事業を営んでいる地域で受けられるもの」など、方々からの情報を得ながら探してみましょう。

【飲食店が申請できる補助金や助成金の一例】

補助金

小規模事業者持続化補助金(経済産業省)

<補助事業の目的>

事業の販路開拓・生産性向上

<補助上限額>

【通常枠】

50万円

【特別枠】

200万円 

※インボイス特例が適用される場合は補助上限額に一律50万円上乗せ

<補助率>

2/3~3/4(申請枠によって異なる)

<対象経費>

機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、新商品開発費、資料購入費、委託・外注費など

<対象者>

個人事業主、または従業員数5~20人程度の小規模事業者

<要件など>

  • 商工会または商工会議所を通して販路開拓に資する事業計画と経費計画を作成する

関連記事:飲食店での小規模事業者持続化補助金の活用方法や事例を紹介

IT導入補助金(中小企業庁)

<補助事業の目的>

ITツールの導入によるインボイス対応や業務効率化

<補助上限額>

【通常枠】

450万円 

【インボイス枠】(電子取引類型/インボイス対応類型)

ソフトウェア:350万円

PC・タブレット等:~10万円

レジ・券売機等:~20万円 

【セキュリティ対策推進枠】

100万円

【複数社連携IT導入枠】

3,200万円(参画事業者数によって異なる)

<補助率>

ソフトウェア:1/2~4/5

ハードウェア:1/2

<対象経費>

ソフトウェア購入費、クラウド利用費(最大2年分)、サービス利用料(最大2年分)、ソフトウェア導入に必要なハードウェア購入費など

<対象者>

中小企業、小規模事業者、個人事業主

<要件など>

  • IT導入支援事業者を通してITツールの購入と申請を行う
  • デジタル化による業務効率化やセキュリティ対策に取組む

関連記事:IT導入補助金を飲食店が使うための申請方法を解説

ものづくり補助金(中小企業庁)

<補助事業の目的>

生産性向上・持続的な賃上げに向けて開発や生産プロセスの省力化を狙った設備投資

<補助上限額>

【省力化(オーダーメイド)枠】

750万円~8,000万円

【製品・サービス高付加価値化枠】

750万円~2,500万円(従業員規模によって異なる)

【グローバル枠】

3,000万円

<補助率>

中小企業:1/2

小規模・再生事業者:2/3(1,500万円を超える部分は補助率が下がる)

<対象経費>

機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、原材料費、クラウドサービス利用料、海外旅費、通訳・翻訳費など

<対象者>

中小企業、小規模・再生事業者、個人事業主

<要件>

  • 以下①~③の基本要件を目指す3~5年の事業計画に取組むこと

①事業者全体の付加価値額を年平均成長率 3%以上増加させる 

②給与支給総額を年平均成長率1.5%以上増加させる

③事業計画期間において事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上であること

関連記事:ものづくり補助金に飲食店で申請する際の要件と採択事例を解説

事業再構築補助金(経済産業省)

<補助事業の目的>

ポストコロナや物価上昇の社会変化に対応するための思い切った事業再構築

<補助上限額>

中小企業:最大1億円

中堅企業:最大1.5億円

<補助率>

1/3~3/4(申請枠、条件によって異なる)

<対象経費>

建物費、機械装置・システム構築費、外注費、広告宣伝・販売促進費など

<対象者>

中堅企業、中小企業、個人事業主

<要件>

  • 事業計画について認定経営革新支援機関の確認を得る
  • 付加価値額を年率平均3%~5%向上させる
  • 事業再構築の類型沿った事業転換や新市場進出などの事業再構築を行う

関連記事:事業再構築補助金は飲食店でどのように活用できるのかを解説

インバウンド対応力強化支援補助金(東京都)

<補助事業の目的>

外国人旅行者への利便性や快適性を向上させるための取組み

<補助上限額>

飲食店1店舗にあたり最大300万円(対象事業によって異なる)

<補助率>

1/2

<対象経費>

工事費、制作費・開発費、機械装置等費、専門家謝金、借料、委託費など

<対象者>

宿泊施設、飲食店、中小企業者、個人事業主、組合団体など

公式サイト:インバウンド対応力強化支援補助金

ECサイト活用補助金(東京都中央区)

<補助事業の目的>

新たにオンライン販売から電子決済までを行うサイト構築や利用開始

<補助上限額>

5万円

<補助率>

1/2

<対象経費>

独自ECサイト駆逐費用、モール型ECサイトへの初期登録費用

<対象者>

中小企業者で本社、本店または主たる事業所を区内に有する者

公式サイト:ECサイト活用補助金

脱プラスチック製容器等購入費補助金(東京都文京区)

<補助事業の目的>

プラスチックごみの削減を目的とした脱プラスチック製容器の購入

<補助上限額>

12万円

<補助率>

10/10(対象経費の実支出額)

<対象経費>

飲食店のイートイン、テイクアウトにおける脱プラスチック製容器購入費用

<対象者・要件など>

ぶんきょう食べきり協力店の登録店舗または文教ソコヂカラ公式サイトの登録店舗

公式サイト:脱プラスチック製容器等購入費補助金

助成金

業務改善助成金(厚生労働省)

<助成の目的>

生産性向上とともに賃金引上げに取り組む

<助成金額>

事業規模30人未満の場合:60万円~600万円、

事業規模30人以上の場合:30万円~600万円(賃金を引き上げる労働者の数と引き上げ額により異なる)

<助成率>

最大9/10

<対象経費>

設備投資、経営コンサルティング、店舗改装費など

<対象者>

中小企業、小規模事業者、個人事業主

<要件>

  • 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること・解雇、賃金引き下げなどがないこと

公式サイト:業務改善助成金

キャリアアップ助成金(厚生労働省)

<助成の目的>

有期雇用労働者や派遣労働者のキャリアアップ促進や正社員化などで人材の成長や定着を目指す

<助成金額>

80万円(正社員化コース)

<対象経費>

有期雇用労働者の正社員化、処遇改善の取組みを行った事業主に助成金支給

<対象者>

労働者50人以下の中小企業等(飲食店の場合)

<要件>

  • 雇用保険適用事業所の事業主であること・キャリアアップ計画を作成し、労働局長の認定を受けること

公式サイト:キャリアアップ補助金

たとえば、小規模事業者持続化補助金は「販路開拓」を目的とした経費に利用できます。経費例には、新メニューを調理するための業務用オーブンなどの機材購入や、チラシ、看板制作などの経費を申請できます。

また、インバウンド対応や脱プラスチック製容器の購入を支援する目的の補助金、従業員の成長や定着を目的とした取組みを支援する助成金などもあります。

飲食店が補助金や助成金を探す際は、支援を受けたい取組みや目的に合致する補助金の情報を探しましょう。まずは利用したい補助金の補助金額や対象経費、申請要件などの概要を確認します。概要を確認し、申請できそうであれば次に申請の流れや必要書類なども確認しましょう。

なお、最新の補助金や助成金の情報は「J-Net21支援情報ヘッドライン」にて紹介されています。

下記無料診断では、小規模事業者持続化補助金の対象となるかを診断できます。どのような経費に使えるか、いくらもらえるかもわかりますので、補助金の申請を検討している人はお試しください。

持続化補助金は利用できる?無料診断

飲食店の開業に利用できる補助金や助成金

飲食店の開業に利用できる補助金や助成金は、市区町村の公共団体で公募している場合があります。創業や開業に係る経費を支援する補助金や助成金の公募は、飲食店を営む所在地の情報を探してみましょう。

補助金

「がんばる岸和田」企業経営支援補助金(大阪・岸和田市)

<補助事業の目的>

創業者の販路開拓を支援

<補助上限額>

10万円

<補助率>

1/2

<対象経費>

出展料、製品(商品)紹介動画制作費、開業時広告宣伝費、法人設立に要する経費、開発費、知的財産権取得費など

<対象者>

市内で創業予定または創業後5年未満の創業者

<要件>

  • 特定創業支援等事業による経営相談受けていること
  • 必要な許認可等を受けていること

公式サイト:「岸和田市 創業者の販路開拓を支援します

羽曳野市地域活性創業支援補助金(大阪・羽曳野市)

<補助事業の目的>

新規創業促進のための設備費用や店舗改装に係る費用を支援

<補助上限額>

20万円

<補助率>

1/2

<対象経費>

事務所設備費用、備品購入費用、店舗棟の改装費用

<対象者>

・羽曳野市内に主たる事業所を置いて創業する者

<要件>

  • 市が実施する特定創業支援等事業を受けていること
  • 必要な許認可を受けること

公式サイト:「羽曳野市地域活性創業支援補助金

福岡よかこと起業支援金(福岡県)

<補助事業の目的>

福岡県内での新たな起業、事業承継、第二創業する人の事業の立ち上げを支援

<補助上限額>

最大200万円

<補助率>

1/2

<対象経費>

人件費、店舗等借料、設備費、原材料費、知的財産権等関連経費、謝金、旅費、委託・外注費、マーケティング調査費など

<対象者>

・福岡よかことビジネスプランコンテストの通過者

<要件>

  • 地域課題の解決を目的とした社会的事業であること など

公式サイト:「福岡よかこと起業支援金

糸島市商工会新規起業者応援補助金(福岡県糸島市)

<補助事業の目的>

糸島市内における空き物件を活用した事業者の増加、商工業の振興を図る

<補助上限額>

30万円

<補助率>

1/4

<対象経費>

店舗改装費用、広報費、地代家賃など

<対象者>

  • 糸島市内に賃貸物件を借りる者
  • 糸島市内で事業を開始する者
  • 糸島市税に滞納がないもの  など

公式サイト:「糸島市商工会 創業支援

助成金

若手、女性リーダー応援プログラム助成事業(東京都中小企業振興公社)

<助成の目的>

都内の商店街で新たに開業する店舗を支援し商店街の活性化を図る

<補助上限額>

730万円

<補助率>

2/3~3/4(申請する経費によって異なる)

<対象経費>

店舗新装・改装工事費、設備・備品購入費、宣伝・広告費、実務研修受講費、店舗賃借料など

<対象者>

女性または39歳以下の男性の創業予定の個人または個人事業主

<要件>

  • 開業日が申請する会の交付決定日以降であること・申請予定店舗が都内商店街であること
  • 申請時点で実店舗を持っていないこと

公式サイト:若手、女性リーダー応援プログラム助成事業

創業助成事業(東京都中小企業振興公社)

<補助事業の目的>

2030年度に都内開業率を12%まで向上させる政策目標達成に向け、都内創業予定者に対し創業初期に必要な経費の一部を助成する

<補助上限額>

300万円

<補助率>

2/3

<対象経費>

賃借料(不動産やサーバー)、広告費、器具備品購入費(椅子、机、エアコンなど)、産業財産権出願・導入費、専門家指導費、従業員人件費など

<対象者・要件など>

都内創業予定者または創業して5年未満の中小企業者等

※書類と面接による審査有、例年2回公募(4月・10月)

公式サイト:創業補助金(創業助成事業)

たとえば、開業を支援する補助金には、都道府県・市区町村内の商店街や空き物件などを積極的に活用する目的のものが見られます。「古民家を改装してカフェを開業」する計画や「商店街利用者の集客を狙った「イートイン・テイクアウトも可能なたこ焼き店の開業」に利用できます。

また、地域の開業率を向上させる政策目標に向けて創業予定者を支援する助成金もあります。開業予定の飲食店に購入したい機材や導入予定のサービスは、申請予定の補助金の対象であるかどうかも確認しておきましょう。

市区町村の管轄の補助金や助成金は、給付される補助金額が少額のものや対象経費・対象者が限られている場合もあります。そのため、創業や開業でまとまった金額の資金が必要な場合は、補助金や助成金の情報だけではなく「融資」を調べてみることも検討しましょう。

補助金や助成金に関する注意点

飲食店が補助金や助成金に申請する場合、はじめに知っておいた方が良い注意点がいくつかあります。注意点を知らずに申請を進めていたために「補助対象外」となり、補助金の交付を受けられなくなる場合もあるからです。

【補助金や助成金に関する注意点の一例】

注意点の項目

注意事項

スケジュール

  • 補助金や助成金の公募期間には約1週間で締め切る短いものもある
  • 定員に達した場合には公募期間中に終了していることもある

書類

  • 申請書類や添付書類などに不備不足がある場合は補助対象外になる
  • 補助事業を実施した際の見積もり・発注・領収書などは「証拠書類」として提出するため整理して保管しておく必要がある

補助事業の開始時期

  • 補助事業を開始できるのは原則として交付決定通知(審査に通過した通知)を受けたあと
  • 交付決定を受ける前に購入したものや導入したサービスの経費は補助対象外になる

補助金の交付時期

  • 補助金や助成金は原則後払いである
  • 飲食店の補助事業や開業時経費を補助金や助成金で支払うことはできない

補助金の併用

  • 同一事業者が同一の事業内容で国が実施する助成金や補助金を併用することはできない可能性が高い

利用してみたい補助金や助成金に申請する場合、まずは公募スケジュールを確認しておく必要があります。補助金の公募期間は1~2ヶ月のものから1週間ほどで終了するものもあります。また、助成金は定員になり次第公募を締め切る場合もあるので、最新の情報を確認しましょう。

補助金や助成金は、金融機関に申請する融資とは違い、基本的には返済が不要です。しかし、審査に通るとすぐに入金される融資とは異なり、補助金や助成金は基本的に後払いです。そのため、補助事業や開業の資金は先に用意しておく必要があることを留意しておきましょう。

補助金に関する不明点は地域の商工会やよろず支援拠点に相談できる

補助金や助成金に関する不明点は、地域の商工会や商工会議所、よろず支援拠点に相談できます。商工会や商工会議所は、個人事業主や中小企業に対する経営相談や補助金・助成金などの案内、IT 支援などを行っています。

また、よろず支援拠点とは、国が全国に設置した「事業者のあらゆる相談に無料で対応してくれる相談所」です。事業資金の補助を受けたい事業者が、お金を払って補助金申請のサポートを受けるのがためらわれる場合、最初の相談窓口として頼ることが可能です。

【商工会やよろず支援拠点で相談できる内容の一例】

  • 中小企業が活用できる補助金や助成金の案内
  • 申請に必要な事業計画書作成の支援
  • その他専門家による 起業支援、経営相談、法務・労務相談、税務相談、IT相談など

商工会やよろず支援拠点は、どちらも中小企業の経営相談を無料で行っている機関です。飲食店の悩みや目的に合った補助金・助成金の提案も含め、店舗の経営や開業に関するアドバイスを受けられます。

現在、よろず支援拠点は各都道府県に1か所以上所在しており、商工会や商工会議所は各市区町村に所在しています。また、都道府県によっては、よろず支援拠点が商工会議所内に設置されている場合もあります。補助金の相談を受けたい場合は、足を運びやすい商工会やよろず支援拠点に問い合わせてみましょう。

まとめ

飲食店が申請できる補助金や助成金を探す場合、支援を受けたい目的別に公募されている補助金、助成金を探してみましょう。支援を受ける目的としては、飲食店の「販路開拓」や「生産性向上」「IT化による業務効率化」などがあります。

飲食店の開業に利用できる補助金や助成金は、市区町村の公共団体によって公募されている情報を確認してみましょう。しかし、補助金や助成金は「開業して事業を開始していること」が要件となっているものが多いため、開業に利用できる補助金が見つからない場合は「融資」も検討しましょう。

補助金や助成金には注意点があり、知らずに申請を進めると「補助対象外」「不採択」となる可能性があります。申請する場合は各補助金や助成金の公式サイトや公募要領を熟読し、注意点も把握しておきましょう。なお、補助金に関する相談は地域の商工会やよろず支援拠点で受けることが可能です。

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