ものづくり補助金に飲食店で申請する際の要件と採択事例を解説
2022/6/21
2022/06/21
自営業や個人事業主など、ものづくり補助金に関心がある事業者の中には、飲食店も対象なのか気にある人もいますよね。また、どのような事業計画書を出せば採択されるのか気になる人もいるでしょう。ものづくり補助金は要件を満たせば飲食業者も申請は可能です。
今回の記事では、ものづくり補助金に応募を考えている飲食事業者の方に向け、満たすべき要件と実際に採択された事例をお伝えします。
なお、この記事は11次ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の公募要領を元に作成しています。
Contents
ものづくり補助金に応募する飲食店が満たすべき要件
ものづくり補助金に応募する飲食店が満たすべき基本要件は、3つあります。ものづくり補助金では3つの基本要件を満たす人が補助金の対象者となるため、飲食店を営む人は基本要件を確認して、要件を満たすことができると申請する必要があります。
※付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費 |
引用元:令和元年度補正・令和三年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領 (11次締切分)|ものづくり補助金の公式サイト
給与支給額と事業場内最低賃金は、事業者が従業員に支払うお金に関する指標です。給与支給額の要件では一律で従業員給与を上げる必要はありません。一方で、事業場内最低賃金の要件では「地域別最低賃金+30円」未満の従業員給与を一律で上げることが求められます。
たとえば、東京都の場合は最低賃金が1,041円(令和3年10月1日時点)のため、最低賃金の1,041円に30円をプラスした1,071円以上が基本要件を満たす基準となります。同様に千葉県の場合は、最低賃金が953円(令和3年10月1日時点)のため、983円が基本要件を満たす基準となります。
補助金の要件は、補助金に申請する人が必ず満たさなければならないものです。ものづくり補助金に応募する飲食店の人は、要件の詳細を公募要領から確認して準備を進めましょう。
対象の飲食店は小規模事業と中小企業者等
ものづくり補助金の対象となる飲食店は、小規模事業者と中小企業者等です。小規模事業者と中小企業者の定義は、業種と資本金、従業員数によって変わるため、飲食業を営む人は事業形態にあわせて資本金と従業員数を確認する必要があります。
業種 |
資本金 |
常時雇用する従業員数 |
サービス業※ |
5,000万円以下 |
100人以下 |
小売業 |
5,000万円以下 |
50人以下 |
※ものづくり補助金の公式サイトにある「第11次公募要領1.0版」をもとに株式会社ソラボ作成
たとえば、店内で飲食を提供するレストランやカフェの場合は、サービス業の資本金と常時雇用する従業員数をチェックします。また、テイクアウト専門の飲食店や配送中心の飲食店であれば、小売業として資本金と常時雇用する従業員数をチェックします。
なお、小規模事業者や中小企業者以外にも、企業組合や商工組合などの組合関連に加え、常勤従業員数が500以下の製造業や300人以下の小売業などの一部の特定事業者(資本金と常時雇用の従業員数が規定の人数以下の事業者)も対象です。ものづくり補助金に申請する人は、対象者に該当することを確認しておきましょう。
事業計画書で基本要件を満たすことを伝える
ものづくり補助金に申請する事業者は、事業計画書で3つの基本要件を満たしていることを伝えます。事業計画書が基本要件を満たせているかどうかは、ものづくり補助金の公募要領に記載されている4つの「審査項目」に沿って確認することができます。
審査項目 |
内容 |
(1)補助対象事業としての適格性 |
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(2)技術面 |
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(3)事業化面 |
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(4)政策面 |
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※ものづくり補助金の公式サイトにある「第11次公募要領1.0版」をもとに株式会社ソラボ作成
たとえば、審査項目の「補助対象事業としての適格性」では、補助対象事業の要件を満たせているのかを審査されます。そのため、この審査項目では、根拠とともに基本要件を満たしていると記載できているかを確認できます。
なお、事業計画書には決められたフォーマット(書式)はありません。決められたフォーマットはないものの、第三者が見ることを想定し文章だけでなくデータから作成したグラフを添付するなどでの工夫も大切です。
具体的なものづくり補助金の具体的な事業計画書の書き方については「ものづくり補助金で採択される事業計画書の書き方」より確認できます。
ものづくり補助金に飲食店が申請する際の補助金額と補助率
ものづくり補助金に飲食店が申請する際、補助金額と補助率について理解しておく必要があります。補助金額とは、採択された場合に支払う経費から、キャッシュバックされる金額の範囲のことです。補助率とは、補助額を計算する際にかけられる割合のことです。
ものづくり補助金の補助金額や補助率は、申請する枠と飲食店が常時雇用する従業員数により異なります。飲食業を営む人は、どの枠に申請するのかを決めることで、従業員数に応じた補助金額と補助率を確認できます。
枠の類型 |
補助金額 |
補助率 |
通常枠(一般型) |
|
1/2 ※小規模企業者・小規模事業者、再生事業者 2/3 |
回復型賃上げ・雇用拡大枠(一般型) |
|
2/3 |
デジタル枠 |
|
2/3 |
グリーン枠(一般型) |
|
2/3 |
グローバル展開型 |
|
1/2 ※小規模企業者・小規模事業者、再生事業者 2/3 |
※ものづくり補助金の公式サイトにある「第11次公募要領1.0版」をもとに株式会社ソラボ作成
たとえば、従業員6名の喫茶店を営む人が通常枠に申請する場合、補助金額は100万円~1,000万円で、補助率は1/2です。また、従員4名の喫茶店を営む人が通常枠に申請する場合、補助金額は100万円~750万円で、補助率は2/3です。
飲食業でサービス業・小売業として申請する場合、常時雇用する従業員数が5人以下は小規模事業者となります。小規模事業者は補助率が中小企業者と違うため、ものづくり補助金に応募する飲食店の事業者は、従業員数を確認しましょう。
補助率と補助金額から受け取れる金額を計算する
ものづくり補助金の補助率と補助金額を使って計算すると、受け取れる金額が分かります。そのため、受け取れる金額を知りたい飲食店の事業者は、申請する枠の補助率と補助金額を確認して計算していきます。
たとえば、従業員数5名の飲食店が通常枠(補助率2/3、補助金額100万円~750万円)で申請し、補助対象経費を300万円使う場合、以下の手順で受け取れる金額を計算できます。
①補助対象経費×補助率=補助される予定の金額 300万円×2/3=200万円 ②補助される予定の金額と補助金額を比較する 200万円<100万円~750万円 |
この例の場合、補助対象経費300万円は補助金額100万円~750万円の範囲内なので、200万円全額が交付対象の金額だと分かります。ものづくり補助金でもらえる金額が分かると、飲食店は補助事業をするうえで、資金スケジュールが立てやすくなります。
ものづくり補助金の申請の流れ
ものづくり補助金の申請には応募書類の準備や審査などの複数の手続きがあり、申請には一連の流れがあります。このため、これからものづくり補助金に申請しようかと検討している飲食店は、手続きに漏れのないように申請における全体の流れを掴むことが大切です。
【ものづくり補助金の申請の流れ】
- 公募要領を確認する
- 事業計画書などの応募書類準備とGビズIDプライムアカウントへの申請
- 審査
- 採択/不採択が電子申請で通知 ※採択の場合は交付申請書が郵送される
- (採択の場合)交付申請書の記入・返送
- 補助事業をスタート
なお、ものづくり補助金の電子申請にはGビズIDプライムアカウントが必要です。申請に必要な「GビズIDプライムアカウント」の発行には、印鑑証明書や登録印が必要で、発行には最低2~3週間がかかるため、早めに準備しましょう。
【GビズIDプライムアカウントの発行に必要な準備物】
- スマートフォンまたは携帯電話
- 印鑑証明書
- 登録印
- パソコン
なお、ものづくり補助金は採択後に交付申請書を提出することで、経費の支払いができるようになります。ただし、「事前着手申請」という公募要領に書かれた申請が承認されると、採択前に購入した補助対象経費が認められることもあります。
ものづくり補助金の申請に必要な書類は「ものづくり補助金で申請時に必要な書類の揃え方と記載例」で確認できます。
飲食業と飲食店による採択された事例
ものづくり補助金で飲食業または飲食店として採択された事例を紹介します。レストランや喫茶店を経営するサービス業の採択率の平均は5.2%※で、製造業(48.1%※)と比べて高くはありません。そのため、飲食店で申請する人は、採択された事例を確認して準備しましょう。
※ものづくり補助金第6次~第9次の4回分の平均値
冷凍食品自動販売機の設置
第9次公募では、冷凍食品の自動販売機の設置に関わる採択事例が6件ありました。自動販売機には常温で非接触型を狙った事業計画と、ステーキや牛タンといった冷凍保存が必要な食材を扱う自動販売機の新しい事業計画がありました。
冷凍保存ができる食品自動販売機の場合、自販機で販売できる食品の種類が増えることや、店を開けておく必要がないので効率がよいことなどのメリットが考えられます。採択された事業者は、缶詰にした食品を霊堂自動販売機だけでなくふるさと納税でも連携していて、ものづくり補助金を通じて売上高がアップしています。
AI搭載モバイルオーダーアプリ開発
第8次公募ではモバイルオーダーに関わる事業計画が2件採択され、うち1件が飲食店に関わるものでした。Ai搭載モバイルアプリとは、ランチ時間帯の待ち時間を少なくするためのアプリであり、座席の予約と同時にメニューの注文も済ませられるというものです。
また、AI搭載により飲食店の空き時間帯、混雑時間帯、並ぶ時間が予測できます。飲食店を利用する顧客には短い昼休みを有効に使えるメリットがあり、飲食店の方も受注ロスを防ぐというメリットがある事業計画でした。
配膳・清掃ロボットの活用
第9次公募ではロボットとロボットシステムに関わる採択が39件あり、配膳または床清掃ロボットについては計4件の採択がありました。配膳ロボットとは、縦型の胴体に皿やカップなどの設置場所があり、AIで店内の走行ルートを記憶し、指定された客席まで注文された料理を運ぶことができるロボットです。清掃ロボットは床の清掃を主に行いますが、人間が一度操作した内容を記憶し、その記憶をもとに自立走行する仕組みです。
飲食店における配膳・清掃ロボットでは人件費の削減のイメージがあるかもしれませんが、単純作業をロボットに任せることにより、従業員が他の作業に集中できるという利点があります。このほか、採択された飲食店では配膳ロボットの導入自体が地上波のニュースなどで大きく取り上げられていました。ものづくり補助金に採択されたことで、補助金という支援を受けるほかに、事業の広告宣伝も同時にかなえられたという事例です。
産後ママ向け健康弁当プロジェクト
産後のママを応援するという切り口で、健康弁当の配食で採択された飲食業店があります。
同店はこだわりのお弁当は管理栄養士がメニューを考え、すべて無添加です。小さな店で製造・梱包し、近隣の地域限定で配達も行っていました。
ものづくり補助金では、産後のママが笑顔になれる栄養たっぷりの健康弁当を開発しました。社会的な課題である、子育て世代の負荷軽減に関わるプロジェクトです。また、このプロジェクトでは自治体のくらし応援チケットが利用できるなど、自治体との協力体制があることもポイントです。
この記事のまとめ
ものづくり補助金には飲食店も応募できます。ものづくり補助金の対象事業者は、公募要領にあるサービス業または小売業の資本金と従業員数にから確認できます。 ものづくり補助金に申請する飲食店の事業者は、付加価値額と従業員の給料や賃金に関する要件を満たさなければいけません。ものづくり補助金に申請する場合は、従業員の給与と賃上げは必須だと覚えておきましょう。 実際に飲食店・飲食事業で採択された事例には、冷凍食品自動販売機の設置や、自治体と連携した産後ママ向けの健康弁当プロジェクトなどがありました。飲食店でものづくり補助金に応募する人は、参考にしてみてください。