リスキリングに使える補助金を解説

2024/06/27

2023/9/21

この記事の監修

株式会社SoLabo田原広一

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原 広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

会社で社員に別の役割をさせたり、資格を取らせたりしたい人の中には、リスキリングに使える補助金を探している人もいますよね。その際、「自社は補助金の対象になるのか」「いくらもらえるのか」など、疑問点がいくつも出てくることでしょう。

当記事では、事業者がリスキリングに使える補助金の一覧を紹介します。会社員や個人事業主として個人で使える補助金も一覧で紹介するため、リスキリングに使える補助金を利用したい人は、当記事を参考にしてみてください。      

リスキリングに使える事業者向けの補助金一覧

事業者向けのリスキリングに使える補助金を一覧にしました。事業者が従業員に使える制度には、厚生労働省の「人材開発支援助成金」や東京都の「DXリスキリング助成金」があります。

【リスキリングに使える事業者向けの補助金・助成金等の一覧】
厚生労働省が管轄する制度
業種
制度の名称 概要
業種問わず
人材開発支援助成金
「人材育成支援コース」
  • 職務に関連した知識・技能を習得させるための訓練を計画に沿って実施した場合に、 訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成
  • e-ラーニングや通信教育も含む
  • 支給限度額は1,000万円/年度(1人最大50万円)

    人材開発支援助成金
    「教育訓練休暇等付与コース」

    • 教育訓練休暇制度を導入し、労働者が当該制度を利用して自発的に訓練を受けた場合に、事業主に助成
    • 制度導入に対して30万円を補助

    人材開発支援助成金
    「事業展開等リスキリング支援コース」

    • 新規事業の立上げ等に伴い、新たな分野で必要となる知識や技能を習得させるための訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成
    • 支給限度額は1億円/年度(1人最大50万円)

    人材開発支援助成金
    「人への投資促進コース」

    • デジタル人材・高度人材を育成する訓練、等を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成
    • 支給限度額は2500万円/年度

    業務改善助成金

    • 最低賃金の引き上げとともに、生産性向上に資する設備投資や教育訓練等を行う際の費用の一部を助成
    • 支給限度額は最大600万円
    建設業

    人材開発支援助成金
    「建設労働者認定訓練コース」

    • 事業者が労働者に行う認定職業訓練または指導員訓練のうち、建設関連の訓練を実施した場合に経費の一部を助成
    • 支給上限額は1,000万円/年度
    建設業

    人材開発支援助成金
    「建設労働者技能実習コース」

    • 事業者が若年者等の育成と熟練技能の維持・向上を図るため、キャリアに応じた技能実習を実施した場合に経費の一部を助成
    • 支給限度額は最大10万円/人

    自治体 が管轄する制度

    地域
    制度の名称

    概要

    東京都

    DX リスキリング助成金

    • 都内中小企業者等が労働者に対し、民間の業者が提供するDXに関する職業訓練を実施した場合に、経費の一部を助成
    • 支給限度額は最大64万円/年度

    事業内スキルアップ助成金

    • 都内の中小企業等が従業員に対して、短時間の研修を実施した際の経費の一部を助成
    • 支給限度額は150万円
    愛知県

    あいち中小企業応援ファンド新事業展開応援助成金

    • 愛知県内の事業者が新製品・新商品の開発や販路拡大、これらにつながる人材育成をする際にかかる経費を一部助成
    • 支給限度額は最大300万円

    厚生労働省の「人材開発支援助成金」には、「人材育成支援コース」や「教育訓練休暇等付与コース」など複数のコースがあります。この中で、人材開発支援助成金「事業展開等リスキリング支援コース」は令和4年から8年度の期間限定の支援制度です。

    助成金の種類やコースにより、OJTなどの訓練の経費のみが支給される「経費助成」と、労働者の時給も支給される「賃金助成」があります。たとえば、人材開発支援助成金の「人材育成支援コース」の場合、経費助成・賃金助成・OJT実施助成と3種の助成を受け取れます。

    東京都や愛知県などの自治体も、リスキリング(人材育成)に使える補助金を実施しています。年度や自治体により実施状況は変わるので、最新情報については各自治体の公式ホームページで確認してみてください。

    人材開発支援助成金の対象は雇用保険適用事業所の事業主

    リスキリングの補助金として厚生労働省の「人材開発支援助成金」に申請する場合、雇用保険適用事業所の事業主である必要があります。この他、各補助金や助成金には要件(満たさなければならない条件)が設定されているため、あらかじめ要件も調べておくと申請の際にスムーズです。

    【人材開発支援助成金の概要】
    対象事業者
    • 雇用保険適用事業所の事業主である
    • 労働組合等の意見を聴いて「事業内職業能力開発計画」と「職業訓練実施計画届」を作成し、計画の内容を労働者に周知している
    • 職業能力開発推進者を選任していること
    • 従業員に職業訓練等を受けさせる期間中も、当該従業員に対して賃金を適正に支払っている
    • 事業展開等実施計画(様式第2号)を作成する
    対象事業者の規模
    • 資本金は5,000万円~3億円以下
    • 従業員数は50人~300人以下
    対象の労働者
    • 訓練実施期間中において、雇用保険の被保険者である
    • 訓練を受講した時間数が、実訓練時間数の8割以上である
    • 訓練等の受講を修了している
    助成対象の経費
    • 部外の講師への謝金・手当
    • 部外の講師の旅費
    • 施設・設備の借上費
    • 学科や実技の訓練等を行う場合に必要な教科書・教材の購入費 など
    経費助成 助成率:75%(60%)
    上限:50万円(30万円)
    ※(カッコ)は中小企業以外
    賃金助成 960円(480円)
    上限:1人1訓練1200時間
    ※(カッコ)は中小企業以外

    たとえば、対象事業者の職業能力開発推進者とは、従業員の職業能力開発や向上を担当する人のことです。通常は、人事・教育訓練等を担当する部署の部長などが選ばれています。

    また、事業内職業能力開発計画とは、経営方針や人材育成の基本方針などが記載された書類です。厚生労働省の公式ホームページに作成方法の「手引き」が掲載されています。

    事業者向けのリスキリングに使える補助金には厚生労働省の「人材開発支援助成金」が多いですが、その際、事業者は雇用保険適用事業所であることが大前提です。事業者が人材開発支援助成金を検討する際は、雇用保険適用事業所であるかを確認してみてください。

    リスキリングの目的により多種多様なコースを選べる

    リスキリングに使える「人材開発支援助成金」では、リスキリングの目的により多種多様なコースを労働者のために選べます。コースによっては座学で知識を得る訓練だけでなく、外部のセミナーやe-ラーニングなども含まれます。

    【人材開発支援助成金を使った社員のリスキリング教育の利用例】
    コース名 利用例
    人材育成支援コース

    ①人材育成訓練

    • スーパーでの接客を教えるために、従業員へ外部のマナー講師に依頼してOFF-JTを10時間以上受講してもらう

    ②認定実習併用職業訓練

    • 2年以上勤務している社員に向け、プロジェクトリーダーになってもらうため、社内でOJT、OFF-JTで資料作成セミナーを受講してもらう

    ③有期実習型訓練

    • 営業として雇った1年契約の派遣社員を正社員に切り替えるため、社内でOJT、OFF-JTで管理職研修を受講してもらう

    教育訓練休暇等付与コース

    社内でインボイスに精通した人材を育てるため、経理の社員にセミナー受講のための有給休暇を5日付与し、インボイス実務セミナーを受講してもらう

    事業展開等リスキリング支援コース

    農業の人材不足解消でドローンを導入するため、OFF-JTで専門家

    からドローンの操縦や実務への取り入れ方を10時間以上受講する

    人への投資促進コース
    1. 高度デジタル人材訓練
    2. 情報技術分野認定実習併用職業訓練
    3. 定額制訓練
    4. 自発的職業能力開発訓練
    5. 長期教育訓練休暇等制度

    たとえば、小売業のスーパーの場合、労働者に10時間以上クレーム対応や組織について外部研修を受講させると、「人材育成支援コース」の対象になります。仮に外部研修の費用が3万円だとすると、経費助成として13,500円(助成率45%の場合)、賃金助成として合計7,600円が支給されます。

    リスキリングの補助金を使うと、事業者は国に費用の半数以上を負担してもらい、従業員のスキルアップを実現できます。いまの従業員を別の部署へ移動させる際や、リーダーなどに昇格を計画している際は、国や自治体のリスキリング向け補助金を活用してみましょう。

    なお、各制度の要件は随時改訂される場合があります。最新の情報については、公式サイトも確認してみてください。

    申請は電子申請となりGビズIDが必要

    国の補助金に申請する際は「GビズIDプライム」が必要です。GビズIDとは、国の補助金に申請する際に必要となる無料で作れるアカウントです。一度GビズIDを取得すれば、他の補助金や助成金にも使用できます。

    【GビズID作成方法】

    1. 申し込みに必要なものを準備する
    〈オンライン申請の場合〉

    • マイナンバーカード
    • パソコン
    • メールアドレス
    • カード読み取り・SMS受信用のスマートフォン

    2. GビズIDホームへアクセスする

    3. GビズIDホームを中ほどまでスクロールし、青いボタン「GビズIDプライムをオンライン申請する」をクリックする

    4. 必要事項を入力し、送信する

    GビズIDを郵送で申請したい場合は、個人事業主は「印鑑登録証明書」と印鑑、法人は「印鑑証明書」と印鑑が必要です。郵送で申請する場合は、GビズIDの取得まで数週間かかることもあるため、時間に余裕をもって申請するようにしてください。

    なお、GビズIDでは「GビズIDプライム」の他に「GビズIDエントリー」も申請できます。補助金と助成金に申請する際は、GビズIDエントリーでは申請できないので、かならず「GビズIDプライム」の方を選択するようにしましょう。

    リスキリングに使える個人向けの補助金の一覧

    個人向けのリスキリングに使える補助金を一覧にしました。個人向けには経済産業省の「第四次産業革命スキル習得講座」や厚生労働省の「専門実践教育訓練」があります。

    【リスキリングに使える個人向けの補助金・助成金等の一覧】
    厚生労働省が管轄する制度

    教育訓練給付金制度

    一般教育訓練給付金

    • ハローワークを通してパソコンや英会話などの技能を身に着ける求職者へ、講座の費用の一部を支給する
    • 助成率:20%
    • 上限額:10万円

    教育訓練給付金制度

    専門実践教育訓練

     

    • ハローワークを通して美容や介護など実践的かつ専門的な技能を身に着ける求職者へ、講座の費用の一部を支給する
    • 助成率:50%
    • 上限額40万/年

    ※資格取得後1年以内に被保険者として雇用された場合の上乗せ措置あり

    教育訓練給付金制度

    特定一般教育訓練給付金


    ハローワークを通して速やかな再就職をするための大型自動車第一種や宅地建物取引士などの資格を
    身に着ける求職者へ、講座の費用の一部を支給する

    • 助成率:40%
    • 上限額:20万円/年
    自治体が管轄する制度
    大阪府スキルアップ支援金
    • 就職やリスキリングのための資格取得講座の受講費⽤を50%〜75%補助

    【建設業、トラック・バス・タクシードライバーに関する講座】

    補助率:3/4(75 %)

    補助上限額:なし

    【その他の講座(office、CAD、キャリアコンサルタント、簿記、宅地建物取引⼠、医療事務等)】

    補助率:1/2(50%)

    補助上限額:20万円

    個人がリスキリングのために使える補助金には「教育訓練給付金制度」があります。教育訓練給付金制度は、経済産業省が認定する第四次産業革命スキル習得講座(Reスキル講座)のうち、一定の条件を満たして厚生労働省が認定した講座を受講する場合に、受講費用の一部が補助されます。

    また、大阪府が実施する「大阪府スキルアップ支援金」のように、地方自治体が独自に行っている補助金などの支援制度もあります。地域の支援情報は、中小機構のポータルサイトJ-Net21の「支援情報ヘッドライン」でも検索できるため、お住まいの地域の補助金や助成金を知りたい人は利用してみてください。

    まとめ

    事業者向けのリスキリングに使える補助金を一覧にしました。事業者が従業員に使える制度には、厚生労働省の「人材開発支援助成金」や東京都の「DXリスキリング助成金」などがあります。

    リスキリングの補助金として厚生労働省の「人材開発支援助成金」に申請する場合、雇用保険適用事業所の事業主である必要があります。この他、各補助金や助成金には要件(満たさなければならない条件)が設定されているため、あらかじめ要件も調べておくと申請の際にスムーズです。

    また、個人向けのリスキリングに使える補助金を一覧にしました。個人向けの補助金や助成金には厚生労働省の「教育訓練給付金制度」のほか地方自治体が独自に実施する支援制度もあるため、中小機構のポータルサイトなどを活用して自身が申請できる補助金を検索してみてください。

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