ECサイトの構築に利用できる補助金は?対象者や実質負担額を解説

2024/04/26

2023/5/22

この記事の監修

株式会社SoLabo田原広一

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原 広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

ECサイトを構築したい事業者の中には、費用削減のためにECサイト向けの補助金を探している人もいますよね。その際、「自社はEC向けの補助金の対象者なのか」「補助金を使うとどれぐらい得なのか」などを知りたい人もいるでしょう。

当記事では、ECサイト構築に利用できる補助金を解説します。対象者と実質負担額も解説するので、補助金を使ってECサイト構築をしたい人は、当記事を参考にしてみてください。

なお、当記事は「小規模事業者持続化補助金」「ものづくり補助金」の他、自治体の公式ページ等をもとに作成しています。

ECサイトの構築に利用できる補助金には国や自治体の補助金がある

ECサイトの構築に利用できる補助金には、国や自治体の補助金があります。補助金を利用することで、事業者はECサイト構築にかかる費用の一部を補助してもらえます。

【ECサイト構築に使える補助金の種類】

補助金の管轄 補助金の名称 対象のECサイト
(独)中小企業基盤整備機構 IT導入補助金 自社が新規で構築するECサイト
事業再構築補助金 事業再構築に必要不可欠であると事業計画で示すことができるECサイト
商工会 / 商工会議所 小規模事業者持続化補助金 販路開拓と合わせて取り組む業務効率化に必要なECサイト
自治体 中小企業ホームページ等作成事業補助金 鉱業、採石業、砂利採取業、建設業又は製造業を営む事業者が構築するECサイト

ものづくり補助金は生産性向上につながる設備投資などを目的とする補助金なので、ECサイト構築のためのソフトウェア導入費やECサイト構築を他社へ委託する場合の外注費などが補助される可能性があります。

また、小規模事業者持続化補助金は販路開拓とあわせた取り組みによって生産性向上や業務効率化を図る補助金なので、販路開拓の取り組みに必要なECサイトであれば、補助対象となります。

国や自治体が管轄の補助金を使えば、事業者が支払うECサイト構築費の一部が還元されます。ただし、どのようなECサイトが補助されるのかは補助金ごとに異なります。ECサイト構築を補助金で行う場合は、各補助金の申請要件をよく確認しましょう。

ものづくり補助金は賃上げをすると最大1億円補助される

ものづくり補助金では、大幅な賃上げを実施すると最大で1億円が補助されます。新たにECサイトを導入する場合は「機械装置・システム構築費」として経費を申請できます。

【ものづくり補助金の概要】

公式サイトURL ものづくり補助金
補助対象経費

①機械装置・システム構築費

②技術導入費

③専門家経費

④運搬費

⑤クラウドサービス利用費

⑥原材料費

⑦外注費

⑧知的財産権等関連経費

⑨海外旅費

⑩通訳・翻訳費

⑪広告宣伝・販売促進費

※⑨~⑪はグローバル枠のみ

申請枠
  • 省力化(オーダーメイド)枠
  • 製品・サービス高付加価値化枠
  • グローバル枠
補助金額

最大1億円

※選択する枠と補助対象経費による

※大幅賃上げを行う場合

補助率

中小企業:1/2

小規模・再生事業者:2/3

※枠によって異なる

※省力化(オーダーメイド)枠の場合、1,500万円まで1/2または2/3、1,500万円を超える部分は1/3

参考:「公募要領(18次)締切分」|ものづくり補助金公式サイト

ものづくり補助金における補助金額は、申請する枠や従業員数により上限が異なります。従業員が100人以上の企業が省力化(オーダーメイド)枠に申請する場合の補助上限額は8,000万円ですが、大幅な賃上げをする場合は補助上限額が1億円となります。

補助率は対象経費のうち1,500万円まで1/2です。1,500万円を超えた部分は1/3で計算することになります。

ものづくり補助金の対象者は、中小企業や小規模事業者です。要件を満たす事業者はECサイトの構築にものづくり補助金を利用できる可能性があるため、申請を検討している人は「ものづくり補助金とは?概要と最新情報をわかりやすく解説」の記事も参考にしてみてください。

小規模事業者持続化補助金は販促費として最大62.5万円補助される

小規模事業者持続化補助金では、販促費として最大62.5万円が補助されます。ECサイトの導入費は「ウェブサイト関連費」の扱いとなり、ウェブサイト関連費は補助対象経費全体の1/4まで補助されます。

【小規模事業者持続化補助金の概要】

公式サイトURL 小規模事業者持続化補助金
補助対象経費

①機械装置等費

②広報費

③ウェブサイト関連費

④展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)

⑤旅費

⑥開発費

⑦資料購入費

⑧雑役務費

⑨借料⑩設備処分費

⑪委託・外注費

申請枠
  • 通常枠
  • 賃金引上げ枠
  • 卒業枠
  • 後継者支援枠
  • 創業枠
補助金額

最大250万円

※選択する補助枠と補助対象経費による

※インボイス特例が適用された場合

補助率

2/3 (賃金引上げ枠のうち赤字事業者は3/4)

※ウェブサイト費は全体の補助対象経費の1/4まで申請可能

参考:「第15回公募要領」|小規模事業者持続化補助金公式サイト

小規模事業者持続化補助金における補助金額は、申請する枠により上限が異なります。補助上限額は「通常枠」は50万円、「通常枠以外の申請枠」は200万円で、インボイス特例が適用されるとそれぞれ50万円が上乗せされます。

また、小規模事業者持続化補助金のスケジュールの場合、2023年度には年間5回の公募がありました。2024年度では、現在決まっている公募回には締め切りが2024年4月26日(金)までの「災害支援枠(令和6年能登半島地震)2次公募」があり、3次公募は追って公表される予定です。

小規模事業者持続化補助金の対象者は、小規模事業者です。小規模事業者とは常に雇用する従業員数が5名~20名以下の事業者で、従業員数は業種で決まっています。小規模事業者持続化補助金に申請したい人は、自社が小規模事業者に該当するかを確認してみましょう。

なお、小規模事業者持続化補助金は申請前に管轄の商工会・商工会議所に相談する必要があります。小規模事業者持続化補助金について詳しく知りたい人は「 小規模事業者持続化補助金とは?対象者や活用例をわかりやすく解説」を参考にしてください。

大阪府や埼玉県などの自治体でもECサイト向け補助金がある

ECサイト構築に利用できる補助金には、国だけでなく、自治体や独立行政法人が行っている補助金もあります。国が行う補助金と違い、自治体が行う補助金の場合は、該当の地域で事業を営む事業者のみが申請できます。

【自治体が管轄するECサイト構築に利用できる補助金の種類】

自治体の名称  補助金・補助事業の名称  補助上限額/補助率
東京都 Buy TOKYO 推進活動支援事業補助金

1,000万円 / 2/3

※初年度の場合

東京都中央区  ECサイト活用補助金 6万円 / 10/10
大阪府吹田市 中小企業ホームページ等作成事業補助金 20万円 / 1/2
大阪府守口市 ホームページ開設又は改修事業   15万円 / 1/2
鳥取県 鳥取県地域課題解決型起業支援補助金 200万円 / 1/2

たとえば、東京都の「Buy TOKYO 推進活動支援事業補助金」の場合、都内産の食品や工業品を生産する事業者がアンテナショップや物産展で販売するなら、「広報活動費」としてWebサイト制作費が補助されます。

また、大阪府吹田市の「ホームぺージ解説又は改修事業」の場合、吹田市で主な事業を営む事業者が販路開拓を目的としたホームページや動画制作をするなら、ホームページを委託する「登録作成事業者」に支払う委託費が補助されます。

国が実施する補助金以外でも、自治体の補助金を調べるとECサイト構築に使える補助金は見つけられます。自治体の補助金を探す際は、事業を行う地域名でネット検索してECサイト向けの補助金があるか調べてみましょう。

自治体の創業や起業の補助金でECサイトが補助される場合がある

自治体の創業や起業の補助金で、ECサイトが補助される場合があります。これから創業・起業をする人で、ECサイトを構築したい人は、自治体の創業や企業の補助金や助成金を調べてみましょう。

【ECサイトが補助される創業・起業に関わる補助金と助成金】

管轄 名称 概要
東京都中小企業振興公社 創業助成金

<対象>
都内で創業を予定している人または創業後5年以内の人
<補助対象経費>
①賃借料

②広告費

③器具備品購入費

④産業財産権出願・導入費

⑤専門家指導費

⑥従業員人件費

大阪府 大阪起業家グローイングアップ補助金 <対象>
以下のいずれも満たす者

  •  大阪府内の事業者または大阪府内で起業しようとする者
  •  ビジネスプランコンテストの優秀提案者(優勝及び準優勝者)

<補助対象経費>
①創立費

②開業費

③事務所賃借料・共益費・仲介手数料・事務所改装費

④機械装置・工具備品調達費

⑤実験費・研究開発費 など

たとえば、東京都の場合、事業者が「創業補助金」に申請して採択されると、創業に必要な店舗の家賃やECサイト構築費が補助率2/3以内、100万円以上300万円以下で補助されます。

また、大阪府の場合、「大阪起業家グローイングアップ補助金」に申請して採択されると、起業に必要な「法人設立のための定款作成」や「備品購入費」などが補助率1/2、上限額100万円で補助されます。


国のECサイト向けの補助金が利用できない場合は、自治体の創業・起業向けの補助金や助成金を探してみましょう。対象は創業者に限定されるものの、創業・起業時には複数の経費がかかるため、創業費の一環でECサイト導入費用が補助されることがあります。

越境ECで販売したいならJETROのジャパンモール事業も利用できる

ECサイト構築に使える補助金ではありませんが、海外で自社製品を販売したい人は、JETRO(日本貿易振興機構)のジャパンモール事業も利用できます。ジャパンモール事業とは、JETROが世界各国で連携するECバイヤーに事業者の商品を紹介する事業です。

【JETROの海外におけるEC販売プロジェクト(JAPAN MALL事業)】

公式サイトURL JAPAN MALL事業
募集スケジュール  2024年度は実施中
募集の締め切り 締め切りは特になし
対象商品の要件(抜粋)
  • 海外へ輸出できる商品であること
  • JANコードが記載されている商品であることが望ましい
  • 最低発注数量(MOQ)が少量(数箱程度)から対応可能な商品であることが望ましい
募集要項 公式サイト(募集要項は準備中)

たとえば、食品メーカーの場合、ジャパンモール事業で食品サンプルを出品したところ、フランス企業と商談をすることができ、JETROが商談のアドバイスも得られました。

また、製造業者の場合、ジャパンモール事業で除菌剤を出品したところ、ジャパンモール内のアバターを通して24時間発信ができ、タイとの初の取引が実現しました。

越境ECの構築経験や資金がない事業者は、JETOROの制度を活用することもできます。越境ECサイトに自社製品を掲載できるだけでなく、海外との取引の際のアドバイスもしてもらえるので、海外展開したい人はジャパンモール事業も視野に入れてみましょう。

補助金を利用したECサイト構築は手続きが増えるが事業者の自己負担額は減る

補助金を利用してECサイトを構築すると、補助金を利用しない時よりも手続きの量は増えますが、事業者が支払わなければいけない経費は減ります。補助金でECサイトを構築したい人は、経費を節約できる代わりに手続きが必要になることを押さえておきましょう。

【小規模事業者持続化補助金の利用ありとなしの場合の自己負担額の例】

補助金利用あり 補助金利用なし
支払うECサイト構築費用  300万円 300万円
補助される金額 50万円 0円
実質負担額 250万円 300万円
申請手続き 必要 不要
実績報告 必要 不要

たとえば、小規模事業者持続化補助金の創業枠を利用した場合、補助金額の上限が200万円です。ウェブサイト関連費は補助金交付申請額の1/4で最大50万円補助されるため、実質250万円のコストでECサイトを導入できますが、申請手続きや実績報告の手間は増えます。

一方、補助金を利用しなかった場合、補助金の申請と実績報告の手間はかかりません。しかし、ECサイトの費用に対する補助がないため、事業者は300万円全額を負担することになります。

補助金を受給するための手続きが複雑だと感じる人は、商工会や民間のコンサル会社などのサポートを受けることもできます。補助金の申請に不安がある人は「補助金の相談は誰にする?相談できる内容に合った相談先を解説」も参考にしてみてください。

この記事のまとめ

ECサイトの構築に利用できる補助金には、国や自治体の補助金があります。補助金を使えば、事業者がECサイト構築をする際の自己負担額を抑えられます。具体的には「小規模事業者持続化補助金」「ものづくり補助金」でECサイト構築は可能です。

ECサイト構築に利用できる補助金には、決められたルールがあります。たとえば、小規模事業者持続化補助金でECサイトの構築費用を補助してもらうには、ウェブサイト関連費で申請し、商工会や商工会議所の支援を受ける必要があります。また、自治体の補助金では、該当地域の事業者のみが対象です。

補助金を利用してECサイトを構築すると、補助金を利用しない時よりも手続きの量は増えますが、事業者が支払わなければいけない経費は減ります。補助金を使ってECサイトを構築したい人は、経費を節約できる代わりに各種手続きが必要になることを理解しましょう。

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