ECサイトの構築に利用できる補助金は?対象者や自己負担額を解説

2024/08/09

2024/8/9

この記事の監修

株式会社SoLabo田原広一

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原 広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

ECサイトを構築したい事業者の中には、費用削減のためにECサイト向けの補助金を探している人もいますよね。その際、「自社はEC向けの補助金の対象者なのか」「補助金を使うとどれぐらい得なのか」などを知りたい人もいるでしょう。

当記事では、ECサイト構築に利用できる補助金を解説します。対象者の条件や自己負担額についても解説するので、補助金を使ってECサイト構築をしたいと考えている人は人は参考にしてみてください。

なお、当記事は各補助金の公式サイトおよび公募要領をもとに作成しています。

ECサイトの構築に利用できる補助金には国や自治体の補助金がある

ECサイトの構築に利用できる補助金には、国や自治体の補助金があります。補助金を利用することで、事業者はECサイト構築にかかる費用の一部を補助してもらえます。

【ECサイト構築に使える補助金の種類】

管轄

ECサイト構築に使える補助金の具体例

  • 事業者持続化補助金
  • ものづくり補助金
  • 小規模事業者持続化補助金

自治体

  • ECサイト活用補助金(東京都中央区)
  • ECサイト販路開拓応援補助金(新潟県燕市)
  • ホームページ作成等支援事業(鹿児島県)
  • ECサイト活用等支援補助金(大阪府茨木市)

中小企業基盤整備機構が管轄するものづくり補助金は、生産性向上につながる設備投資などを目的とする補助金です。ECサイト構築のためのソフトウェア導入費や、ECサイト構築を他社へ委託する場合の外注費などが補助される可能性があります。

また、商工会や商工会議所が管轄する小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者や個人事業主の販路開拓および業務効率化を目的とする補助金です。販路開拓や業務効率化の取り組みに必要な取り組みであれば、ECサイトの構築、更新、改修、運用などにかかる費用が補助対象となります。

国や自治体が管轄の補助金を使えば、事業者が支払うECサイト構築費の一部が還元されます。ただし、どのようなECサイトが補助されるのかは制度ごとに異なるため、ECサイト構築を補助金で行う場合は各補助金の申請要件を確認しましょう。

ものづくり補助金は革新的な製品の開発や省力化のための設備投資に利用できる

ものづくり補助金は、革新的な製品の開発や省力化のための設備投資に利用できる補助金です。ECサイトの構築を目的とする制度ではありませんが、目的に沿った事業を行う上でECサイトの構築が必要な場合は補助対象として認められる可能性があります。

【ものづくり補助金の概要】

項目

概要

公式サイトURL

ものづくり補助金

補助対象経費

①機械装置・システム構築費

②技術導入費

③専門家経費

④運搬費

⑤クラウドサービス利用費

⑥原材料費

⑦外注費

⑧知的財産権等関連経費

⑨海外旅費

⑩通訳・翻訳費

⑪広告宣伝・販売促進費

※⑨~⑪はグローバル枠のみ

申請枠

  • 省力化(オーダーメイド)枠
  • 製品・サービス高付加価値化枠
  • グローバル枠

補助金額

最大1億円

※申請枠と補助対象経費によって異なる

補助率

中小企業:1/2

小規模・再生事業者:2/3

※申請枠や補助額の範囲によって異なる

参考:「公募要領(18次)締切分」|ものづくり補助金

ものづくり補助金における補助金額は、申請する枠や従業員数により上限が異なります。自社の取り組み内容に合わせて申請枠を選択し、該当する申請枠ではいくらの補助金を受給できる可能性があるのかを確認しましょう。

また、大規模な賃上げに取り組む場合、補助上限額の上乗せ措置が設けられています。従業員が100人以上の企業が省力化(オーダーメイド)枠に申請する場合の補助上限額は8,000万円ですが、大幅な賃上げをする場合は補助上限額が1億円となります。

ものづくり補助金においてECサイトが補助対象となるかどうかは、補助事業として取り組む内容によります。どのようなECサイト構築が対象となり得るのか詳しく知りたい人は「ものづくり補助金はECサイトの構築に使えるのか?採択事例を交えて解説」の記事を参考にしてみてください。

小規模事業者持続化補助金は販路開拓や業務効率化の取組に利用できる

小規模事業者持続化補助金は、販路開拓や業務効率化の取り組みに利用できる補助金です。ECサイトの導入費は「ウェブサイト関連費」の扱いとなり、ウェブサイト関連費は補助対象経費全体の1/4までが補助されます。

【小規模事業者持続化補助金の概要】

項目

概要

公式サイトURL

小規模事業者持続化補助金

補助対象経費

①機械装置等費

②広報費

③ウェブサイト関連費

④展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)

⑤旅費

⑥開発費

⑦資料購入費

⑧借料

⑨設備処分費

⑩委託・外注費

申請枠

  • 通常枠
  • 賃金引上げ枠
  • 卒業枠
  • 後継者支援枠
  • 創業枠

補助金額

最大250万円

※選択する補助枠と補助対象経費による

※インボイス特例が適用された場合

補助率

2/3 (賃金引上げ枠のうち赤字事業者は3/4)

※ウェブサイト費は全体の補助対象経費の1/4まで申請可能

参考:「第16回公募要領」|小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金における補助金額は、申請する枠により上限が異なります。補助上限額は通常枠の場合は50万円、通常枠以外の申請枠(特別枠)の場合は200万円ですが、インボイス特例が適用されるとそれぞれ上限額が50万円上乗せされます。

小規模事業者持続化補助金の対象者である「小規模事業者」の定義は業種ごとに異なり、常時雇用する従業員数によって判断されます。小規模事業者持続化補助金に申請したい人は、自社が小規模事業者に該当するかを確認してみましょう。

小規模事業者持続化補助金におけるECサイト関連費の詳細は「ECサイト制作は小規模事業者持続化補助金の対象?補助金額の計算例も解説」の記事で詳しく解説しています。過去の採択事例や受給できる金額の計算方法などを知りたい人は参考にしてみてください。

自治体が実施するECサイト向けの補助金もある

ECサイト構築に利用できる補助金には、国だけでなく、自治体や独立行政法人が行っている補助金もあります。国が行う補助金と違い、自治体が行う補助金の場合は、該当の地域で事業を営む事業者のみが申請できます。

【自治体が管轄するECサイト構築に利用できる補助金の種類】

自治体

制度の名称

補助額/補助率

東京都中央区

ECサイト活用補助金

補助額:最大5万円 

補助率: 1/2

新潟県燕市

農産物のECサイト販路開拓応援補助金

補助額:最大50万円

補助率:1/2または1/3

※取組内容によって異なる

鹿児島県

ホームページ作成等支援事業

補助額:最10万円

補助率:1/2

大阪府茨木市

ECサイト活用等支援補助金

補助額:最大20万円

補助率:2/3

東京都中央区が実施する「ECサイト活用補助金」は、区内で事業を営む中小企業者を対象とするECサイト向けの制度です。新たに独自のECサイトを構築するための費用や、モール型ECサイトを利用するための初期登録費用などが最大5万円まで補助されます。

また、新潟県燕市が実施する「ECサイト販路開拓応援補助金」は、市内で農業を営む事業者等を対象にECサイト構築やECモールへの出店費用を補助する制度です。新たにECサイト構築やECモールへの出展を行う場合は最大50万円が補助されるほか、既存のECサイトを改修する場合も最大20万円が補助されます。

国が実施する補助金だけでなく、都道府県や市区町村の自治体が独自に実施する補助金の中にもECサイト構築に使える補助金があります。自治体の補助金を探す際は、事業を行う地域名で検索してECサイト向けの補助金があるか調べてみましょう。

越境ECで販売したいならJETROのジャパンモール事業も利用できる

ECサイト構築に使える補助金ではありませんが、海外で自社製品を販売したい人は、JETRO(日本貿易振興機構)のジャパンモール事業も利用できます。ジャパンモール事業とは、JETROが世界各国で連携するECバイヤーに事業者の商品を紹介する事業です。

【JETROの海外におけるEC販売プロジェクト(JAPAN MALL事業)】

項目

概要

公式サイトURL

JAPAN MALL事業

対象商品の要件(抜粋)

  • 海外へ輸出できる商品であること
  • JANコードが記載されている商品であることが望ましい
  • 最低発注数量(MOQ)が少量(数箱程度)から対応可能な商品であることが望ましい

たとえば、JAPAN MALL事業において採択された食品メーカーの事例があります。ジャパンモール事業で食品サンプルを出品したところ、フランス企業と商談をすることができ、JETROから商談のアドバイスも得られました。

また、JAPAN MALL事業において採択された製造業者の事例もあります。ジャパンモール事業で除菌剤を出品したところ、ジャパンモール内のアバターを通して24時間発信ができ、タイとの初の取引が実現しました。

越境ECの構築経験や資金がない事業者は、JETOROの制度を活用することもできます。越境ECサイトに自社製品を掲載できるだけでなく、海外との取引の際のアドバイスもしてもらえるので、海外展開したい人はジャパンモール事業の利用も視野に入れてみましょう。

補助金を利用したECサイト構築は手続きが増えるが事業者の自己負担額は減る

補助金を利用してECサイトを構築すると、補助金を利用しない時よりも手続きの量は増えますが、事業者が支払わなければいけない経費は減ります。補助金でECサイトを構築したい人は、経費を節約できる代わりに手続きが必要になることに留意しておきましょう。

【小規模事業者持続化補助金の利用ありと利用なしの場合の比較】

項目

補助金利用あり

補助金利用なし

支払うECサイト構築費用

300万円

300万円

補助される金額

50万円

0円

実質負担額

250万円

300万円

申請手続き

必要

不要

実績報告

必要

不要

たとえば、小規模事業者持続化補助金の創業枠を利用した場合、補助金額の上限が200万円です。ウェブサイト関連費は補助金交付申請額の1/4で最大50万円補助されるため、実質250万円のコストでECサイトを導入できますが、申請手続きや実績報告の手間は増えます。

一方、補助金を利用しなかった場合、補助金の申請と実績報告の手間はかかりません。しかし、ECサイトの費用に対する補助がないため、事業者は300万円全額を負担することになります。

補助金を受給するための手続きが複雑だと感じる人は、商工会や民間のコンサル会社などのサポートを受けることもできます。補助金の申請に不安がある人は「補助金の相談は誰にする?相談できる内容に合った相談先を解説」も参考にしてみてください。

この記事のまとめ

ECサイトの構築に利用できる補助金には「小規模事業者持続化補助金」「ものづくり補助金」「ECサイト活用補助金」など、国や自治体が実施するさまざまな補助金があります。補助金を使えば、事業者がECサイト構築をする際の自己負担額を抑えることが可能です。

ECサイト構築に利用できる補助金には、決められたルールがあります。たとえば、小規模事業者持続化補助金でECサイトの構築費用を補助してもらうには、ウェブサイト関連費で申請し、商工会や商工会議所の支援を受ける必要があります。また、自治体の補助金では、該当地域の事業者のみが対象です。

補助金を利用してECサイトを構築すると、補助金を利用しない時よりも手続きの量は増えますが、事業者が支払わなければいけない経費は減ります。補助金を使ってECサイトを構築したい人は、経費を節約できる代わりに各種手続きが必要になることにも留意しましょう。

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