美容室が設備投資や開業に活用できる補助金を解説

2024/08/16

2024/8/16

この記事の監修

株式会社SoLabo田原広一

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原 広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

美容室を運営している人や開業を考えている人の中で、経営に関わる費用を抑えたいと悩んでいる人はいるのではないでしょうか。美容室を営む事業者が活用できる補助金や助成金があります。

この記事では、美容室で活用できる補助金を解説します。助成金も紹介するので、美容室の経費削減を検討している人は、参考にしてみてください。

美容室が設備投資や開業に活用できる補助金の種類

美容室が設備投資や開業に活用できる補助金には、経済産業省が運用している制度や自治体が行っているものなどがあります。補助金の用途や要件によっては活用できない制度もあるため、各補助金の詳細を確認した上で自身の取り組みが対象となる制度を選びましょう。

【美容室が活用できる補助金の種類】

  • 小規模事業者持続化補助金

  • ものづくり補助金

  • IT導入補助金

  • 事業再構築補助金

たとえば、事業再構築補助金の場合、美容室内の一部スペースを改修して新たにフォトスタジオを始めるなどの思い切った事業再構築を実施する事業者が対象です。ただし、建物の単なる購入や賃貸は対象外であり、計上した経費の半分以上が補助対象外に該当した場合、不採択・採択取消となります。

また、ものづくり補助金の場合、革新的サービス開発や試作品開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資等を実施する事業者が対象です。ものづくり補助金では必ず単価50万円以上の設備投資が必要であるほか、賃上げや付加価値額の増加に関する要件を満たす必要があります。

補助金を活用して美容室の業務改善をすることにより、効率が上がるだけでなく、サービス提供の質が向上し新規顧客を獲得することも可能です。美容室において業務改善を行いたいと考えている人は、自社に合った補助金や助成金を探してみましょう。

小規模の美容室が活用できる小規模事業者持続化補助金

小規模の美容室が活用できる小規模事業者持続化補助金は、販路開拓などに関する対象経費の一部を補助します。個人経営や常時使用する従業員数が5人以下に該当する小規模の美容室が補助対象です。

【小規模事業者持続化補助金の概要】

項目

特徴

対象者

  • 常時使用する従業員数 5人以下の小規模事業者
  • 個人事業主

要件

  • 商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であること
  • 商工会議所の管轄地域内で事業を営んでいること
  • 資本金又は出資金が5億円以上の法人に直接、間接に100%株式保有されていないこと(法人のみ)
  • 直近過去3年分の各年、各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超えていないこと
  • 販路開拓等のための取組または販路開拓等の取組とともに行う生産性向上のための取組であること

補助上限

通常枠:50万円(100万円)

特別枠:200万円(250万円)

※()はインボイス特例適用時

補助率

2/3

※要件を満たす事業者は3/4

補助対象経費

  • 機械装置等費
  • 広報費
  • ウェブサイト関連費
  • 展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談会等を含む)
  • 旅費
  • 新商品開発費
  • 資料購入費
  • 借料
  • 設備処分費
  • 委託・外注費

参考:公式サイト|小規模事業者持続化補助金

たとえば、補助金の利用によりヘッドスパ装置を導入して、新サービスの宣伝のためにチラシを作成した費用は補助対象になります。新しい顧客層を増やす販路開拓を行い、売上を向上させる取り組みが補助事業に該当します。

古くなった装置を買い替えるだけやパソコンなどの汎用性が高く補助事業以外に使用できる場合は対象外です。ただし、販路開拓に向けて新サービスを提供するために機械を購入することは補助対象経費となります。

また、WEBサイト構築に利用できるウェブサイト関連費のみの申請はできないため、利用したい場合は、他の補助対象経費とともに活用しましょう。持続化補助金の申請時のポイントが知りたい人は、「小規模事業者持続化補助金 美容室の採択事例や申請時のポイントなどをご紹介」を参考にしてみてください。

美容室の設備投資に活用できるものづくり補助金

美容室の設備投資に活用できるものづくり補助金は中小企業や小規模事業者が対象です。ものづくり補助金では、革新的な生産プロセスやサービス提供方法の効率化につながる取り組みが支援されます。

【ものづくり補助金の概要】

項目

特徴

対象者

  • 中小企業者
  • 小規模事業者
  • 個人事業主

共通要件

  • 付加価値額を年平均成長率3%以上増加
  • 給与支給総額を年平均成長率1.5%以上増加
  • 事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上

補助上限

最大1億円

※申請枠と事業規模により異なる

補助率

1/3~2/3

※申請枠と事業規模により異なる

補助対象経費

  • 機械装置等費・システム構築費(必須)
  • 運搬費
  • 技術導入費
  • 知的財産権等関連経費
  • 外注費
  • 専門家経費
  • クラウドサービス利用費
  • 原材料費

たとえば、顧客管理や予約処理の効率化を図るために、店舗にAIが搭載されたオンライン予約システムを導入する費用の一部が補助されます。省力化(オーダーメイド)枠では、人手不足の解消に向けてシステム開発などを請け負うシステムインテグレーター(SIer)との連携により設計した専用設備の導入が必須です。

導入するデジタル技術等を活用した専用設備とは、ICTやAI、センサーなどを利用してサービス提供方法の効率化をはかる機械装置やシステムのことです。デジタル技術等を活用していない機械装置等を導入することは対象外となります。

なお、ものづくり補助金には3つの申請枠があり、それぞれ補助額や補助率、対象経費などがことなります。ものづくり補助金について詳しく知りたい人は「ものづくり補助金とは?」の記事を参考にしてみてください。

美容室のITツール導入に活用できるIT導入補助金

美容室のITツール導入費に活用できるIT導入補助金では、通常枠やインボイス枠など補助金の使用目的によって申請枠が異なります。IT導⼊補助⾦は、労働⽣産性の向上を⽬的としたソフトウェアやインボイス制度に対応した会計ソフトが導入可能です。

【IT導入補助金(通常枠)の特徴】

項目

概要

対象者

  • 中小企業
  • 小規模事業者
  • 個人事業主

補助率

1/2

補助額

1プロセス以上:5万円以上150万円未満

4プロセス以上:150万円以上450万円以下

※プロセス=導入するITツールが有する機能数

対象経費

  • ソフトウェア購入費
  • クラウド利用料(最大2年分)
  • 導入関連費

たとえば、補助金を利用してオンラインで予約が行える予約管理システムを美容室に導入することで、予約処理をスムーズにする取り組みが補助対象です。

IT導入補助金では、支援枠が改編されデジタル化基盤導入枠の撤廃のほか、新たにインボイス枠が新設されました。インボイス枠では、インボイス制度に対応した会計や決済ソフトなどの導入費用が補助対象経費です。

なお、インボイス制度に対応していないECサイト構築費は対象外となります。業務の効率化につながるITツールやインボイス制度に対応したITツールを導入したい場合はIT導入補助金の利用を検討してみましょう。

美容室の事業転換に活用できる事業再構築補助金

美容室の事業転換に活用できる事業再構築補助金の場合、思い切った事業再構築の取り組みに必要な経費が補助対象です。美容室の補助事業遂行のために補助金を利用したい場合、事業再構築補助金の産業構造転換枠にて申請可能です。

【事業再構築補助金の概要】

項目

特徴

対象者

  • 中小企業者
  • 中堅企業等
  • 個人事業主

補助上限

最大1.5億円

※従業員規模数等で上限額が異なる

補助率

【中小企業】2/3

【中堅企業】1/2

補助対象経費

  • 建物費
  • 機械装置・システム構築費(リース料を含む)
  • 技術導入費
  • 専門家経費
  • 運搬費
  • クラウドサービス利用費
  • 外注費
  • 知的財産権等関連経費
  • 広告宣伝・販売促進費
  • 研修費
  • 廃業費

たとえば、美容室の売り上げが大幅に減少したため、新しく高齢者向けに訪問美容サービスを開始、その際の費用の一部が補助されます。新たに始めるサービス提供にかかる広告宣伝費や補助事業に必要になった機械装置などが補助対象経費です。

事業再構築補助金は、美容室の事業再構築を考えている経営者にとって資金調達のサポートとなる補助金です。事業再構築補助金の美容室に関する採択事例や詳細を知りたい人は、「事業再構築補助金は美容室でも利用できる?要件や注意点も解説」を見てみましょう。

地域の自治体にも美容室が活用できる補助金がある

地域の自治体にも美容室の経営者が活用できる補助金があります。美容室に使える補助金の確認をしたい場合は、補助金の検索サイトまたは美容室がある所在地を管轄している自治体のホームページなどを確認してみましょう。

【美容室が利用できる自治体の補助金の探し方】

  • J-NET21の補助金検索を活用する
  • 自治体のホームページから支援情報を確認する
  • 自治体の相談窓口を利用する
  • 商工会や商工会議所などの経営支援機関へ相談する

美容室が利用できる自治体の補助金の探し方として、J-Net21の「支援情報ヘッドライン」を利用する方法があります。中小機構が運営するポータルサイトであり、企業経営に関わる補助金、助成金、セミナー、イベントなどの支援情報をまとめて検索できます。

また、地域の役所や商工会(商工会議所)などへ相談し、利用できる補助金の情報を確認する方法もあります。企業の経営相談などを受け付けている支援機関は数多く存在し、国が全国に設置する無料の経営相談所「よろず支援拠点」を利用することも可能です。

ただし、美容室が所在している地域によっては、補助金を実施していない自治体もあるため注意が必要です。目的や用途ごとに利用できる制度が異なるため、設備投資や店舗改修など、自社が補助金を活用する目的を明確にして自社に合った補助金を探しましょう。

美容室の経営に活用できる助成金もある

補助金のほかに、美容室の経営に活用できる助成金もあります。助成金は補助金と同様に返済不要の支援金であり、業務改善を行いたい場合や雇用が少ない地域で美容室を開業したい場合など、労働環境の改善や雇用機会の創出につながる取組を行う事業が対象となる傾向にあります。。

【美容室の経営に活用できる助成金一覧】

助成金名

特徴

業務改善助成金

【概要】

生産性向上に資する設備投資等とともに賃上げを実施した場合に、設備投資費用の一部を補助する

【助成額】

最大60万円

※引き上げる最低賃金額と労働者人数、および事業場規模によって異なる

【対象経費】

生産性向上に資する設備投資等

地域雇用開発助成金

(地域雇用開発コース)

【対象】

雇用機会が特に不足している地域等の事業主が、事業所の設置・整備を行うとともにその地域に居住する求職者等を雇い入れる取組を支援する

【助成額】

最大800万円

※設置・整備に要した費用や対象労働者の増加人数などにより異なる

※特例による加算あり

【対象となる費用】 

条件を満たす場合に一律で支給

人材開発支援助成金

(人材育成支援コース)

【対象】

事業主が従業員に対して実施させる、職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための職業訓練等を支援する

【助成額】

実施訓練や企業規模等により異なる

<例>

①OFF-JTの人材育成訓練を実施する中小企業の場合

賃金助成額:最大960円/h

経費助成額:最大100%

②OJTの有期実習型訓練を実施する大企業の場合

OJT実施助成額:最大12万円/人

【対象費用】

部外の講師への謝金・手当

部外の講師の旅費

施設・設備の借上費

必要な教科書・教材の購入費

訓練コースの開発費

訓練期間中の所定労働時間内の賃金

たとえば、業務改善助成金の場合、助成金を利用することで最新機械を購入することができ、施術時間が短縮され顧客の回転率を向上させることが可能です。業務改善助成金は、生産性向上のための設備投資等とともに事業場内最低賃金の引き上げることで助成金が支給されます。

地域雇用開発助成金では、雇用不足の地域で開業して対象の求職者を雇うことで美容室の内装工事費用などが助成されます。人材開発支援助成金では、専門知識や技術獲得の訓練を10時間以上実施することで助成されるため、従業員のスキルアップを促進したい際は検討してみましょう。

助成金を活用することで、コストを抑えながら雇用環境の整備が可能です。美容室の開業前に利用できる助成金について詳しく知りたい人は、資金調達ノート「美容室の開業前に利用できる助成金を解説」を見てみましょう。

まとめ

美容室が利用できる補助金や助成金には、国が実施しているものや地域の自治体が運営している制度などがあります。それぞれの制度によっては活用できる美容室の規模や要件などが異なります。

美容室内の設備投資や店舗改修を行うことで、施術時間が短縮するなどの顧客に提供するサービスの質が向上され、顧客満足度が高まり新たな顧客を獲得する可能性があります。また、設備を新しくすることで環境が改善され担当スタッフの負担を軽減することが可能です。

補助金や助成金の利用によって、補助事業の遂行に必要になるコストの一部が抑えられます。美容室にかかる資金を調達するために補助金や助成金の利用は有効な手段のため、資金調達方法に悩みがある経営者は補助金や助成金など支援制度の利用を検討してみましょう。

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