『行政と医療・福祉をつなぐ』行政書士の鈴木先生をインタビューしました
弊社株式会社SoLabo(ソラボ)のサービスを利用してくださった鈴木一慶行政書士事務所の鈴木一慶先生にインタビューをさせていただきました。
鈴木一慶行政書士事務所
鈴木一慶行政書士事務所は千葉県千葉市の行政書士事務所です。医療・福祉事業分野を中心に活動し、地域包括ケアシステムの先にある「街作り」に行政書士として貢献できるよう、対応しています。
鈴木一慶行政書士事務所 ホームページURL:https://kazuyoshisuzuki-office.com
独立開業の経緯
―行政書士事務所の独立開業の経緯をお聞かせください。
もともと自分は2017年から、医療法人が経営する「宿泊型自立訓練事業所」という障害福祉事業所で生活支援員として働いていました。
精神障がいの方の中には長期入院をしていたため、いきなり退院したところで社会生活を営んでないので、生活の仕組みが分からない方が多いんです。例えば、電車の乗り方、買い物の仕方、人との関わり方とか。
だから、退院していきなり単身で社会生活を営む前に、生活の訓練を行う必要があります。その為の施設が「宿泊型自立訓練事業所」であり、自分はそこで生活支援員として、利用者さんの訓練のお手伝いをしていました。
職員や利用者さんとの会話の中で、「どうすれば利用者さんが良い人生を送れるようになるのか」模索をする毎日でした。
自分の現状が把握できないだけで、退院したらすぐに大手企業に就職する、という方も中にはいまして。
いわゆる「普通」というものを今まで享受できなかった人が、社会で生きて行く手助けする仕事だったんですけど、理想と現実の折り合いをつけていくのは大変な作業です。
そこで気が付いたことは「障害福祉制度という枠組みも法律の中にある」ということです。
そのことを認識した時に、その枠組みの中で、障害福祉の世界で、別の角度から関わってみたいと思ったのが、行政書士事務所をはじめる最初のきっかけだと思います。
―最初から行政書士を目指されていた訳ではないんですね。鈴木先生自身が「法律」に注目した経緯を、もっとお聞かせください。
そうですね。医療や福祉行政が勧める「地域包括ケアシステム」という概念があります。
「地域包括ケアシステム」っていう、高齢・寝たきりになっても、最期まで住み慣れた地域で自分らしく生活をするのを医療や福祉、地域社会で助け合う仕組みがありまして、「病院は病院」で「福祉は福祉」という感覚でサービスを提供していると、うまく連携が取れずに、社会参加の機会を得られず、生きがいも感じる事が出来ずに、病院で寝たきりのままの状態の人が減らないのです。
結局、病院にずっと過ごす、という話になるんです。
でも、「地域包括ケアシステム」という制度の中には、法律や行政について把握していなければ理解できない事が多く、自分はきちんとした落とし込みが出来ませんでした。知れば知るほど、言葉の根幹にある法律についての理解が必要だな。と思い、資格の勉強を始めました。
あとは、法律を知るほどに、法律と現場の解釈の違いが気になったのも、動機につながったかと思います。
例えば、障害者虐待防止法という法律があるのですが、ちょっとしたトラブルがあったときに「それが虐待に当たるかどうか」の線引きがすごく難しいんです。
簡単に言うと、殴る・蹴るは当然いけないのは自明なんですが、一見、虐待に思えなそうなことのも、施設内のトラブルの種類や大小によっては虐待にあたるのではないかと疑われるケースがあり、現場の判断と法律や制度の運用は必ずしも一致しないと思う事がありました。
―正義感あふれる動機ですね。普通なら、深入りしなくないなと思って、見過ごしてしまいそうですが。
うーん、どうでしょう、難しい判断をしないといけない場面も多いです。
例えば、利用者から「億万長者になりたい」と相談されたとして、「なれる」「なれない」の返答をするのは難しいです。自分は、やりたいと思うならやってみようという支援をしていましたが、そこには個々の支援計画の方針や、障害の重さや本人の背景など、様々な要因が関わってくるのです。
それでも、本人の意向と沿わない判断をしなければならない時は、自分の中でジレンマを感じる時がありました。基本的には、その人がやりたいという事を、やらせてあげたいと思って日々仕事をしていました。
―現場との考え方のギャップについてもう少しお聞かせください。
そうですね。例えば、Suica(JR東日本が発行するICカード乗車券)が発売されたので、2001年なんですよ。Suicaが登場する前からずっと病院にいたら、知らないんです。
あと、長期の入院していると外部からのストレスに過敏になります。例えば、財布から小銭を取り出すのに時間がかかってしまうのですが、社会生活を営む上ではそれも何かしらの解決策が必要になります。
「小銭を出す訓練を行う」「別の方法を考える」となった時に「このSuicaをチャージして現金の代わりにすれば良いのではないか」という発想が浮かんだのです。Suicaで買い物をする方法さえ覚えれば、Suicaに対応している店舗がある地域で、財布を出来る限り使わずに生活できるという割り切りもすることが可能です。
そういう発想から、「では、そのような方が上手く日常生活を送るために、必要な事はなにか。柔軟に考えよう」といった発想にたどり着きました。
―法律という切り口では弁護士や司法書士などもありますが、なぜ行政書士だったのでしょうか?福祉系の専門職などの方には注目されなかったのでしょうか?
行政書士は行政との関りが強い職業なので、病院や福祉サービスなど、公共性の強い事業とは相性がいいと思ったからです。知人の中に行政書士の先生がいた事もあり、行政書士の試験を受ける方向に進んでいきました。
あと、福祉業界には、当然福祉系の資格を持っている方が多いのですが、自分は別の業界で働いていたこともあり、福祉系の資格はありませんでした。自分は元々違う仕事をしていて、福祉系の資格は何もなしに入ったんです。現在は、行政書士の視点で事業を見ているのですが、事業者の方と話すときは、現場での視点が抜けない様に心掛けています。
ちなみに、障がい者施設に勤める前は、いくつか事務系の仕事をしていました。個人的に書類作業は得意ではなかったのですが、施設で行っていた対人援助という仕事は自分に向いていたように思います。障害者施設の現場スタッフの仕事は、人の悩みという答えのない問いに決断を下すという仕事です。何事も能動的に考えて動く必要があります。そのスタンスも今の仕事の核にあると思います。
行政書士の独立開業資金
―鈴木先生は独立開業資金ってどう貯めましたか?当時、融資とか資金調達することを考えましたか?
実は行政書士の開業資金って、他の事業形態と比べるとお金かからないので、融資は考えませんでした。それでも70万円くらいを目標に、半年間くらい、本業の仕事の他にアルバイトなどして貯めましたね。
もちろん借りた方がよいのかもしれないし、借りるのが必要なときもあると思うんですけど、そこで本業と副業併せて○○円/月貯めるという計画を立てて、何とかチャンスを掴もうと当時思ったんですね。身体を壊すまで続けてはいけないのですが、起業する以上は期間を決めて頑張る必要もあったのかと思います。
具体的には本業の休みの日に工場で日雇いのアルバイトをし、ちょうどコロナで在宅ワークの需要が増えてきた時期にぶつかったので、クラウドワークスに登録して、趣味で詳しい車ジャンルの文章を書くwebライターもやりましたね。
―ちなみに、今後、運転資金などのために、補助金とか融資とかで資金調達することを考えていますか?
補助金は一度考えていたのですが、状況が変わり使わずに今に至ります。融資は、今後の事務所の方向性によって使う事もあるかと思います。
―もし、行政書士を目指している人が相談にきた場合、独立開業時に資金調達するのをすすめますか?
資金調達については、リスクもあるので簡単にはお勧めできませんが
ただ、融資と違い、補助金は返済が必要な調達方法ではないので、例えば小規模事業者持続化補助金などを活用し、コストをかけられない開業時にホームページ制作をセットでソラボさんに依頼してみる事はありだと思います。
行政書士としての苦労や失敗談
―行政書士事務所で独立開業される上で、苦労や失敗があれば教えてください。
そうですね、苦労というか、行政書士試験の勉強をしているときに、悩んだことが多かったです。「受からないのではないか」「やっていけるか」という不安もありました。
失敗はすごくたくさんあるんですけど、終ったことは全て今の糧になっているので、前向きに捉えています。あとは忙しい時期の経理作業、事務所内の書類仕事は苦労しています。
―「行政書士は食えない」と一般的に言われるそうですね。資格取得は仕事も続けている状態で大変だったと思いますが、逆境でも頑張れたのはなぜだと思われますか?
福祉事業所のシフトは時間帯がバラバラなところが多いのですが、その中で受験勉強を続けるのは大変でした。受かるまで「失敗した時でも立ち止まらない」っていうスタンスが決め手ですかね。「続けることで可能性をあげる」と信じて続けることで、結果的に試験に合格できたのだと思います。
例えば、お酒を飲んだ後は勉強時間を確保できないので、お酒は止めて試験勉強に集中しました。モチベーションを持ち続けられた最大の理由は、自分のやりたいことに必要な資格が行政書士だったからだと思います。
あと、TwitterなどSNSで実際に活躍している先輩の情報発信や、受験時代からの仲間や開業同期との交流がモチベーションの維持を助けてくれました。
[開業前] 宮地佳美 先生のアカウント情報: https://twitter.com/443miyaji_works 望月亜弓 先生のアカウント情報:https://twitter.com/mochi_admi 三島友紀 先生のアカウント情報https://twitter.com/mishima_fp [合格後] 西岡敦 先生のアカウント情報:https://twitter.com/hojyokin_chiba 石下貴大 先生のアカウント情報: https://twitter.com/kankyoishige |
―独立開業する時に「この人たちに追いつくぞ」みたいな気持ちってありましたか?
憧れは有りますが、自分は自分なので考えていませんでした。今もそうしています。
それをやると、自分のやりたいことよりも、人の動向が気になってしまうので。僕の個人的な考えでは、どんな仕事でも、あまり周りは気にせず、自分にフォーカスを当てる方が力を発揮できるかと思います。
確かに上を目指すのはいいんですけど、じゃあ上だけ見てれられるのか、横並びの人が気になり始めてしまうと、それはもう違う感じなので、あえて「追いつく対象」としては見ないほうがよいかなと。
あと他に、自分の親はアパレル関係で開業してましたが、もしも親から起業するように強く言われてたら、もしかしたら続けられていなかったかもしれません。人から言われた事でなく、自分で決心したことだから続けられているのだと思います。
―「マイペースにいく」のが鈴木先生の成功ポイントでしょうか?
そうですね。僕に限らず、行政書士はマイペースにいける仕事だと思いますね。
エピソードをひとつ紹介すると、あまり開業についてのアドバイスを求められることはないのですが、昔、一人だけ聞きにきた人がいまして、それも69歳の人だったんです。年齢的に取り組むのに遅すぎでは、と一般的には思われるかもしれませんが、話を聞いてみると、家族が介護の仕事をしていて、そこを集客の起点にするという構想が出来ていたのです。
そこからお客さんを紹介してもらって、という集客の導線の構想がしっかりできていたんです。
そういう意味で、行政書士は、自分のこれまでのキャリアや置かれた環境に合わせた働き方が可能です。そうすることできちんと「食える仕事」にすることができます。
―鈴木先生、素敵なお話をありがとうございました!
事務所情報
事務所名:鈴木一慶行政書士事務所
所在地:千葉県千葉市中央区中央1-6-8 Pear Residence Central Park 801