補助金ガイド

歯科医師がものづくり補助金の申請前に把握しておくべきことを解説

2024/05/02

2023/2/3

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

設備導入に関心がある歯科医師の中には、ものづくり補助金を検討している人もいますよね。その際、「自社はものづくり補助金の対象なのか」「申請したい設備は対象なのか」といった疑問が出てくるでしょう。

当記事では、ものづくり補助金を検討している歯科医師に向けて、申請前に把握しておくべきことを解説します。実際に採択された歯科医師の事例も紹介するので、ものづくり補助金が気になる人は当記事を参考にしてみてください。

ものづくり補助金で申請前に歯科医師が注意すべきこと

歯科医師がものづくり補助金を利用する場合、事業形態や経費などの注意すべきことがあります。ものづくり補助金では、医療法人運営や保険適用診療を行う歯科医師が補助金の対象外になるためです。

【ものづくり補助金で歯科医師が注意すべき点】

事業形態 医療法人や財団法人は対象外
経費 歯科医院の課題解決、生産性向上のために必要な機械設備以外は対象外
事業  保険適用の事業は対象外

歯科医師は医療業に属するサービス業として対象事業者に含まれますが、事業形態、経費、事業の3点で注意が必要です。注意点を考慮せずに申請すると、不採択となる可能性があります。ものづくり補助金に関心のある人は、対象外の条件内容を確認してみましょう。

医療法人や財団法人はものづくり補助金の対象外

医療法人や財団法人、社団法人、実態のないMS法人などは、ものづくり補助金の対象外です。また、個人事業主の歯科医師はものづくり補助金の対象ですが、申請後に法人化する場合は補助金返還の対象となります。

【ものづくり補助金で対象となる歯科と対象外の歯科】

対象となる歯科 対象外の歯科
  • 歯科医療を提供する個人開業医
  • 歯科医への経営相談、歯科技工などを

提供する個人事業主または株式会社

  • 歯科技工所の組合員
  • 歯科医のプライベートカンパニーまたはMS法人
  • 医療法人
  • 財団法人(公益・一般)
  • 社団法人(公益・一般)
  • 社会福祉法人
  • 歯科医開業医を中心とする法人格のない

任意団体

  • 実態のないMS法人

たとえば、東京・埼玉・千葉で計10箇所の歯科診療所を経営している医療法人の場合、ものづくり補助金の対象にはなりません。ものづくり補助金の公募要領に「医療法人は補助対象となりません」と記載があるためです。

また、歯科医の採用や経営相談に乗るMS法人の場合でも、節税目的で設立され、実質上運営されていない場合は補助の対象外です。ものづくり補助金の公募要領に「補助事業の実施場所(工場や店舗等)を有していることが必須」と記載があるためです。

ものづくり補助金の対象事業者は、主に個人事業主を含む中小企業者で補助事業実施場所をもつ事業者です。医療法人や財団法人などの規模の大きな組織や、名義だけの法人は対象外となるため、覚えておきましょう。

保険適用の治療に使う機械設備は補助されない

ものづくり補助金では、保険適用治療に限定して使用する機械設備は補助対象外です。なぜなら、ものづくり補助金に申請する際、「補助対象経費に関わる誓約書」で保険診療に使用する機械設備を申請しないと誓約しなければならないからです。

保険治療と自由治療を両方やっている歯科は、申請する経費が保険治療には使われないと申請時に事業計画で伝える必要があります。

【ものづくり補助金で補助対象の経費と対象外の経費の例】

補助対象の経費  対象外の経費
  • 口腔内スキャナー
  • チタン鋳造機
  • CAD/CAM冠用の3Dプリンター
  • 訪問診療用ポータブルユニット
  • 審美治療のためのリクライニングシート
保険診療で使われる機械設備全般
例)
  • 歯科ユニット
  • バキューム
  • コンプレッサー
  • 歯科用レントゲン/CT
  • 歯科用レーザー
  • マイクロスコープ
  • オートクレープ 
  • 小型ミリング(歯科用CAD/CAM加工機) など

たとえば、CAD/CAM冠用の3Dプリンターを申請する場合、診療内容がオーダーメイドのマウスピースの制作なら自由診療なので、ものづくり補助金の補助の対象です。

一方、小型ミリング歯科用(CAD/CAM加工機)の場合、2022年4月よりCAD/CAMインレーが保険適用となりました。そのため、小型ミリング歯科用(CAD/CAM加工機)はものづくり補助金の補助対象外の可能性があります。

保険適用の事業と自由診療を両方行っている場合は、自由診療部分のみ対象です。選択する機械設備や技術導入が保険適用治療に使われる場合、ものづくり補助金の対象外となるので、留意しておきましょう。

ものづくり補助金で歯科が採択された事例

歯科医師が採択された事例を紹介します。これからものづくり補助金に申請する人は、採択事例をみておくと、どのような事業計画が採択されるかの目安がわかります。

【ものづくり補助金の歯科医師の採択事例】

事例 内容
1  口腔内撮影ミラー写真によるオンライン歯科健診AIの開発
先進医療の歯冠補綴物製作装置(CAD/CAM)導入による地域歯科医療への貢献
3  先端医療技術に貢献するMIM成形用金型の精密加工技術開発事業株
表面欠陥検査用同期式光学ヘッドの開発
CAD/CAMセンター設置による国内外からの受注拡大と雇用創出
超極薄型セラミック補綴物の試作開発による革新的審美補綴治療サービスの提供

たとえば、2023年に採択された「口腔内撮影ミラー写真」事業の場合、歯科医師が口腔内写真を撮影する際の手間を削減できます。口腔内撮影ミラー写真は通常必要なカメラやストロボが不要で、スマホを使って撮影できるためです。

一方、2013年に採択された「CAD/CAM」の場合、当時は先端技術として採択されましたが、現在は保険適用の技術となっています。そのため、これからCAD/CAMを申請しても、不採択になる可能性があります。

これまでにものづくり補助金で採択された歯科医師の事業計画は、革新的で生産性向上につながる機械設備や技術です。そのため、過去に先端技術だった機械設備でも、いま保険適用となっているなら補助の対象外となる場合があるので、留意しておきましょう。

ものづくり補助金の直近の採択率は48.8%

歯科のみでの採択率は公表されていませんが、ものづくり補助金の16次の全体の採択率は、48.8%です。ものづくり補助金の16次の申請者数は5,608件で、そのうち2,738件が採択されたためです。

ものづくり補助金の採択率は8次公募から13次公募までは60%前後でしたが、13次公募で公募要領の大きな変更があり、14次公募から50%前後となりました。

ものづくり補助金には12次まで、一般型とグローバル型がありました。13次で公募要領の大きな変更があり、通常枠、回復型賃上げ・雇用拡大枠といった5つの申請枠にリニューアルされました。ものづくり補助金の採択率は14次から8%ほど下がり、50%前後です。

【ものづくり補助金の採択率】※12次までは一般型、13次以降は全体
公募回 採択率
4次 31.1%
5次 44.5%
6次  47.7%
7次 50.4%
8次 60.0%
9次 62.5%
10次 61.1%
11次 59.6%
 12次 58.9%
13次 58.3%
14次 50.7%
15次 50.2%
16次 48.8%

参考:採択結果|ものづくり補助金

ものづくり補助金の採択率をみると、およそ2件に1件が採択されていたことが分かります。申請の際は、申請要件を満たすことや、審査項目を満たす事業計画を作成するように心がけてみましょう。

なお、ものづくり補助金に申請する際は、基本要件となる賃上げを行う必要があります。賃上げに関しては数値目標があるので、詳細は「ものづくり補助金の賃上げ要件とは?賃上げ特例も含め解説」を参考にしてみてください。

2024年以降のスケジュール

ものづくり補助金の2024年の19次公募以降のスケジュールは、まだ正式に発表されていません。ただし、2023年12月には令和5年度補正予算として、2024年(令和6年)のものづくり補助金の概要が発表されたので、令和6年度以降も引き続きものづくり補助金の公募は続く見込みがあります。

【2024年以降のものづくり補助金の概要】※令和6年5月時点

対象要件

① 付加価値額 年平均成長率3%増加

② 給与支給総額 年平均成長率1.5%増加

③ 事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上

の基本要件等を目指す3年~5年の事業計画に取り組むこと。

申請手続き

①公募要領で補助対象者、申請要件、対象経費、

スケジュール等を確認

②GビズIDを取得のうえ、電子申請システムにより申請

事業実施、フォローアップ

①交付候補者決定、交付申請・決定を経て事業を実施

②補助事業実施期間内に設備投資等を行い、実績報告書を提出

③ 3年~5年の事業計画に基づき事業を実施し、事業化状況報告を提出

参考:生産性向上を目指す皆様へ|中小企業庁

ものづくり補助金は2024年に公募された17次で公募要領の大きな変更があり、省力化(オーダーメイド)枠、製品・サービス高付加価値化枠、グローバル枠の3つの申請枠にリニューアルされました。さらに、17次公募と18次公募では書類審査の他に口頭審査も加わりました。

2024年以降のものづくり補助金の内容は、概要を見る限り、現状と大きな変化は見受けられません。対象要件の付加価値額、給与支給総額は「年率」が「年平均成長率」となっているため、引き続き事業者が成長できる事業が採択の基準と言えます。

過去の公募要領を参考にすると、例年、ものづくり補助金は年に4回ずつ公募されていました。今後、歯科医院の設備投資でものづくり補助金を検討している人は、定期的に公式サイトでスケジュールを確認してみましょう。

この記事のまとめ

医療法人や財団法人、社団法人、実態のないMS法人などは、ものづくり補助金の対象外です。また、保険適用治療に限定して使用する機械設備は補助対象外です。保険適用の事業と自由診療を両方行っている場合は、自由診療部分のみ対象になります。

これまでにものづくり補助金で採択された歯科医師の事業計画は、革新的で生産性向上につながる機械設備や技術です。そのため、過去に先端技術だった機械設備でも、いま保険適用となっているなら補助の対象外となる場合があるので、留意しておきましょう。

ものづくり補助金の2024年の19次公募以降のスケジュールは、まだ正式に発表されていません。しかし、2023年12月には令和5年度補正予算として、2024年(令和6年)のものづくり補助金の概要が発表されたので、引き続きものづくり補助金の公募は続く見込みがあります。

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