補助金ガイド

ものづくり補助金の賃上げとは?要件と加点との関連を解説

2022/6/20

2022/06/21

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

お客様の資金調達支援実績4,500件以上 自社でも、
小規模事業者持続化補助金や事業再構築補助金の採択をされている。

製造業や医療・福祉業など、ものづくり補助金を検討中の人の中には、ものづくり補助金の賃上げについて気になる人もいますよね。その際、賃上げはいつまでに行えばいいのか、従業員を雇っていない場合も賃上げすべきなのか、悩む人もいるでしょう。

当記事では、ものづくり補助金の賃上げについて、基本要件と加点、申請する枠の3つの視点からご説明します。 

賃上げのルールをよく理解すると、ものづくり補助金の事業計画書の作成にも役立つので、ぜひ参考にしてみてください。

なお、この記事は11次ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の公募要領を元に作成しています。 

賃上げに関わる要件は申請者全員が満たさなければいけない基本要件

ものづくり補助金における賃上げとは、ものづくり補助金に申請する事業者の基本要件です。ものづくり補助金に申請する事業者は、必ず賃上げを行わなければなりません。ものづくり補助金の3つの基本要件のうち2つは、賃上げに関する内容となっています。

【ものづくり補助金の3つの要件】
  1. 付加価値額 +3%以上/
  2. 給与支給総額 +1.5%以上/
  3. 事業場内最低賃金地域別最低賃金+30

引用元:令和元年度補正・令和三年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領 (11次締切分)|ものづくり補助金の公式サイト

ものづくり補助金に応募する全ての人が、賃上げ要件を満たす必要があります。ただし、これまでの人件費や地域ごとの最低賃金など、賃上げの金額は事業者の状況によって変わるため、事業者は要件を確認して達成すべき目標金額を計算しましょう。

給与支給総額の賃上げ要件の金額は事業者と従業員の給与から計算する

給与支給総額の賃上げ要件とは、事業者の給与支給総額を年率平均1.5%以上に増加することで、給与支給総額の賃上げ要件の金額は、事業者と従業員の給与から計算します。給与支給総額の対象となるものには役員報酬や住宅手当などがあります。 

【ものづくり補助金の給与支給額の対象】

  • 全従業員の基本給
  • ボーナス
  • 残業手当
  • 休日出勤手当
  • 職務手当
  • 地域手当
  • 住宅手当
  • 役員報酬

たとえば、給与支給総額の賃上げ要件では、全従業員の基本給を上げること以外にも、役員報酬や各種手当などを上げることでも要件を達成することができます。給与支給総額の賃上げ要件の目標は、現在の給与支給総額をもとに計算することができます。 

【給与支給額+1.5%を計算する際の手順】

自分の給与を500万円にしている小規模事業者が従業員数ABCの計3名を各400万円の年収で雇う場合

①基準年度の給与支給総額を計算する

従業員Aの給与支給額+従業員Bの給与支給額+従業員Cの給与支給額+事業主の給与支給額=給与支給総額

400万円+400万円+400万円+500万円=1,700万円

②①で求めた金額に1.5%をかける

1,700万円×1.5=25.5万円

 計算例では、年間に255千円を基準年度の給与総支給額に加えることで、給与総支給金の要件を達成できることになります。給与支給総額を計算する人は、実際に計算して要件の達成金額を確認しておきましょう。 

事業場内最低賃金の賃上げ要件の金額は地域別最低賃金から計算する

事業場内最低賃金の賃上げ要件とは、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にすることで、事業場内最低賃金の賃上げ要件の金額は、地域別最低賃金から計算します。事業場内最低賃金とは、設備投資をする事業所で働く従業員の賃金の中で最も低い金額を指します。 

【地域別最低賃金+30円以上の要件の対象者を確認するときの例】

地域別最低賃金が1,040円で次の3名を雇用している場合

  • 従業員A(パート):時給1,050
  • 従業員B(高校生アルバイト):時給1,040
  • 従業員C(正社員):時給1,500

①地域別最低賃金+30円の基準となる金額を確認する

1,040+30=1,070

②従業員の賃金と、①の金額を比較する

  • 従業員A(パート):時給1,050<1,070
  • 従業員B(高校生アルバイト):時給1,040<1,070
  • 従業員C(正社員):時給1,500>1,070

 この事例では、基準に達していない従業員A(パート)と従業員B(高校生アルバイト)の賃金を1,070円にすると、事業場内最低賃金の要件を達成することができます。このとき、時間給でない従業員の場合は、時間給に換算して計算します。 

なお、事業場内の最低賃金がすでに地域別最低賃金+30円を超えている場合、事業者は要件を満たしているため、新たに最低賃金の賃上げをする必要はありません。しかし、事業場内最低賃金が地域別最低賃金の+30円より低い場合は、事業場内最低賃金の底上げ(+30円以上)を実施する必要があります。

ものづくり補助金の申請を検討している人は、これから設備投資をする事業場での最低賃金が、地域別最低賃金を30円以上超えているかを確認してみましょう。

個人事業主や役員のみのひとり社長も賃上げは可能

従業員を雇わない、個人事業主や役員のみのひとり社長も賃上げ要件を満たすことは可能です。給与には役員報酬や各種手当が含まれるため、それらの項目の賃上げを実行することで、賃上げの要件を満たせるからです。

また、事業場内最低賃金については役員報酬を時給換算し、地域別最低賃金と比べると、+30円以上であるかを判断できます。

なお、ものづくり補助金の賃上げ要件で提出する「賃上げ誓約書」では、従業員を雇っている事業者向けのフォーマットと、従業員を雇っていない事業者向けのフォーマットの2タイプが用意されています。状況に合わせてフォーマットを選択しましょう。

賃上げに関わる要件の期限は事業計画によって異なる

賃上げ要件は、事業者が作成する事業計画の期間によって達成すべき期間が異なります。

そのため、賃金の要件は、事業者が作成する事業計画の期間内に達成できればよいとされています。

たとえば、3年の事業計画を作成する事業者であれば3年以内に、5年の事業計画を作成する事業者であれば5年以内に賃上げを達成する事業計画を立てて実行します。

ただし、回復型賃上げ・雇用拡大枠については、補助事業を行った翌年の3月末時点で、2つの賃上げの要件を満たす必要があります。他の通常枠やデジタル枠などと賃上げの達成締め切りが異なるため、注意が必要です。

【賃上げの要件の達成締め切り】
締め切り
回復型賃上げ・雇用拡大枠以外の枠 補助事業(約1年間)のあとの、35年間の事業計画期間
回復型賃上げ・雇用拡大枠 補助事業(約1年間)の翌年の3月末

※ものづくり補助金の公式サイトにある「第11次公募要領1.0版」をもとに株式会社ソラボ作成

ものづくり補助金に申請する予定の人は、従業員や役員報酬などの賃上げを、補助事業後の35年の事業計画期間中に実施しなければいけないことを覚えておきましょう。

賃上げに関わる要件を証明するためには誓約書の提出が必要

事業者が賃上げ要件を満たしていると証明するためには、賃上げ要件の誓約書という書類の提出が必要です。なぜなら、賃金要件の誓約書の提出はものづくり補助金の公募要領で必要書類として記載されているからです。

賃上げ要件の誓約書は、エクセル上で「選択してください」と書かれた項目を選択し、決算日と事業場内最低賃金を入力して保存すると自動的に賃上げの要件を満たしているか判別されます。要件を満たしていない場合はメッセージが表示されます。

なお、「賃上げ要件の誓約書」は以前、「賃金引上げ計画の表明書」という名称でした。現在の書式はものづくり補助金の公式サイトの「公募要領」からダウンロードできます。

賃上げの伸び率は付加価値額と設備投資額と給与支給総額を基準に計算する

賃上げの誓約書では伸び率を記入する欄があり、これは付加価値額と設備投資額と給与支給額の3点を基準に計算します。賃金引上げ計画の誓約書にある伸び率の記入欄を埋めれば、ものづくり補助金の要件である給与支給総額+1.5%を満たしているかの判断も可能です。

【賃金引き上げ計画の誓約書に記載されている会社全体の事業計画の表】

ものづくり補助金 伸び率 賃上げ引上げ計画の誓約書

※ものづくり補助金の公式サイトにある「賃金引上げ計画の誓約書作成ファイル」をもとに株式会社ソラボ作成

たとえば、基準年度の付加価値額が5,000万円、1年後の付加価値額が5,150万円だった場合、伸び率は3%になります。伸び率は初年度分を記入せず、1年後~5年後までの間で1年ごとに計算して記入します。

賃上げの目標が未達だと補助金返還の対象になることがある

採択された事業者が賃上げの目標を達成できないと、受け取った補助金を返還しなくてはいけないことがあります。賃上げの要件は単に賃上げ計画を立てればいいものではなく、実行しなくてはなりません。

たとえば、補助金の交付後に賃上げ計画を策定していないと発覚した場合、事業者は補助金の一部を返還することになります。補助金の返還方法は一部返還と全額返還の2種類があります。

【ものづくり補助金で一部返還をする場合】

  1. 補助金の交付後に賃上げ計画を策定していないと発覚した場合
  2. 給与支給総額の増加目標が未達の場合
  3. 事業場内最低賃金の増加目標が未達の場合

【ものづくり補助金で全額返還の場合】

  1. 回復型賃上げ・雇用拡大枠に申請する事業者が、上記2.3.を未達の場合
  2. 補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点において、給与支給総額又は事業場内最低賃金の増加目標のいずれか一 方でも達成できていない場合

引用元:令和元年度補正・令和三年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領 (11次締切分)|ものづくり補助金の公式サイト

ただし、ものづくり補助金の公募要領に記載されている、中小企業活性化協議会へ再生計画等を策定中もしくは策定済みで応募締切日から3年以内に再生計画等が成立した再生事業者であれば、賃上げの要件が未達成でも補助金の返還は免除されます

賃上げ加点とは基本要件を上回る賃上げに課される加点のこと

賃上げ加点とは、基本要件を上回る賃上げに課される加点のことです。そのため、事業者がどの程度の賃上げ行うか計画を立てる際は、あわせて賃上げ加点を目指すかも検討するとよいでしょう。

加点とは、ものづくり補助金の審査基準のひとつです。加点は要件のように申請者全員が満たさなければいけない条件ではなく、任意で申請できます。ただし、加点に申請して承認されると、採択率を高められるという利点があります。

なお、ものづくり補助金の加点についてさらに詳しく知りたい人は、関連記事「ものづくり補助金の加点とは?採択率との関係性も解説」で確認できます。

賃上げ加点の要件

賃上げ加点の要件は、2点あります。1点目は、給与支給総額と事業場内最低賃金を所定の基準値以上にする事業計画を立て誓約書を提出することです。2点目は、被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が任意適用に取り組むことです。

【賃上げ加点の要件】

項目

内容

①事業場内最低賃金

以下を満たす事業計画を立て、誓約書を提出する

  • 給与総支給額が+2%または3%以上
  • 事業場内最低賃金が+60円以上または90円以上

②被用者保険の任意適用

  • 被用者保険の適用拡大の対象の中小企業が、任意適用に取り組む

※ものづくり補助金の公式サイトにある「第11次公募要領1.0版」をもとに株式会社ソラボ作成

1つ目の賃上げ加点は要件を満たせば個人事業主も対象ですが、2点目については中小企業のみが対象です。被用者保険の適用拡大については、厚生労働省保険局が公開している資料「被用者保険の適用拡大について」で確認できます。

賃上げ加点の申請方法

賃上げ加点の申請は、ものづくり補助金の電子申請の際に同時にできます。ものづくり補助金をオンラインで申請する際に、「A.応募者のプロフィール」の入力欄で加点にチェックを入れる欄があるので、必要事項を入力し、証明書類を添付すると申請できます。

ものづくり補助金で電子申請をするためには、GビズプライムIDアカウントを取得や、必要書類を揃えるといった準備が必要です。ものづくり補助金のGビズIDアカウントの取得は「GビズID」公式サイトから可能です。

ものづくり補助金の公募回によっては受付が混み合うことも予想されますので、まだGビズプライムIDアカウントを持っていない人は、早めに準備をしておきましょう。

なお、必要書類については、関連記事「ものづくり補助金で申請時に必要な書類の揃え方と記載例」で確認できます。

回復型賃上げ・雇用拡大枠は厳しい状況でも賃上げする事業者向けの枠

10次公募から新しくできた回復型賃上げ・雇用拡大枠とは、厳しい状況の中で賃上げを行う事業者を支援する枠です。回復型賃上げ・雇用拡大枠は、前年度の事業成績が悪い事業者が従業員への賃上げをきっかけに挽回する取り組みを支援します。

【回復型賃上げ・雇用拡大枠の補助金額と補助率】
補助金額 補助率

従業員数

  • 5人以下 :100万円~750万円
  • 6人~20人:100万円~1,000万円
  • 21人以上 :100万円~1,250万円
2/3

※ものづくり補助金の公式サイトにある「第11次公募要領1.0版」をもとに株式会社ソラボ作成

回復型賃上げ・雇用拡大枠の補助金額は通常枠と同じですが、補助率は中小企業者でも2/3です。補助率が高い枠で応募したい中小企業者は回復型賃上げ・雇用拡大枠での応募を検討してみましょう。

回復型賃上げ・雇用拡大枠の要件

回復型賃上げ・雇用拡大枠の要件は、3つあります。回復型賃上げ・雇用拡大枠に申請する人は、付加価値額などの3つの基本要件にくわえ、回復型賃上げ・雇用拡大枠の3つの要件、つまり合計6つの要件を満たさなければいけません。

【回復型賃上げ・雇用拡大枠の3つの要件】

  1. 応募締切り時点で前年度の事業年度の課税所得がゼロである
  2. 常時使用する従業員がいる事業者のみである
  3. 賃上げの要件は補助事業の終了後の翌年3月末までに達成する

※ものづくり補助金の公式サイトにある「第11次公募要領1.0版」をもとに株式会社ソラボ作成

1つ目の要件の課税所得は、事業で得た収入から控除分を差し引いたものです。たとえば、青色申告には特別控除として55万円の控除がありますが、その他の控除が一切ない場合、事業所得から55万円を差し引いた金額がゼロ円であれば、課税所得がゼロになります。

2つ目の要件は、ひとり社長の事業者または代表ひとりのみの個人事業主は対象外という内容です。

3つ目の要件は、他の枠では35年の事業計画中に賃上げ要件を達成すればいのに対し、回復型賃上げ・雇用拡大枠の場合は早い時期に賃上げの要件を達成しなければいけないという内容になります。

回復型賃上げ・雇用拡大枠に申請しようか検討している人は、これら全ての要件を確実に達成できるか見極めてから、申請するか決断しましょう。

回復型賃上げ・雇用拡大枠の申請方法

回復型賃上げ・雇用拡大枠に申請する場合は、GビズIDプライムアカウントを使用した電子申請をする際に、回復型賃上げ・雇用拡大枠を選択します。その際、要件を満たすことを証明するため、以下の書類を添付します。

【回復型賃上げ・雇用拡大枠の申請時に必要な書類】

  • 課税所得の状況を示す確定申告書類
  • 特定適用事業所該当通知書(被用者保険の適用拡大の場合)

※ものづくり補助金の公式サイトにある「第11次公募要領1.0版」をもとに株式会社ソラボ作成

たとえば、確定申告書類は法人の場合、確定申告書別表一(一)の控え、確定申告書別表四の控えを用意します。e-TAX で申告している場合は受信通知も必要です。

 また、個人事業主の場合は、確定申告書第一表の控え、確定申告書第四表()および()の控えを用意します。e-TAX で申告している場合は、受信通知も必要です。個人事業主の場合、確定申告書第一表の控えの受日付印に押印がされている必要があります。 

回復型賃上げ・雇用拡大枠の申請を予定している人は、確定申告書類の用意は時間がかかるので、なるべく早めに取り掛かりましょう。

この記事のまとめ

ものづくり補助金の賃上げには、賃上げの要件と賃上げ加点、そして回復型賃上げ・雇用拡大枠という3つの要素があります。賃上げの基本要件は、すべての事業者が給与総支給額および事業場内最低賃金を所定の数値以上にあげる計画を立て、3~5年の事業計画期間内に達成することが求められます。 これに対し、賃上げ加点への申請は任意です。賃上げの基本要件より高い数値目標が掲げられていますが、達成できれば加点されるので採択の可能性が高まります。 回復型賃上げ・雇用拡大枠は10次公募より新たに加わった枠です。前年度の課税所得がゼロの事業者や、従業員を雇う事業者が対象となっており、基本要件に加えて枠の要件を満たす必要があります。

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