ものづくり補助金における実績報告の手順を解説
2024/07/18
2024/7/18
ものづくり補助金の補助事業が完了した後は実績報告が必要です。実績報告は補助金額を確定するための手続きとなるため、ものづくり補助金を受給するときは期限までに実績報告を行わなければなりません。
当記事では、ものづくり補助金における実績報告の手順を解説します。実績報告に必要となる書類や記入例も紹介するため、ものづくり補助金における実績報告の情報を知りたい人は参考にしてみてください。
なお、当記事はものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業公募要領(18次締切分)を参考に作成しています。
Contents
実績報告をするときは全体の流れを押さえる
ものづくり補助金の実績報告をするときは、まずは全体の流れを押さえてみてください。実績報告はいくつかの工程に分けられるため、手順を把握することにより、段階的に実績報告の準備を進められる可能性があります。
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実績報告の手順には、「提出書類を把握する」「経理書類を揃える」「費目別支出明細書を作成する」などの工程が挙げられます。工程の内容によっては並行して進めることも考えられるため、実績報告を行う人はその前提を踏まえながら各工程の内容を確認してみましょう。
①提出書類を把握する
実績報告を行うときの最初の工程は、提出書類を把握することです。実績報告の提出書類は事業全体に関する「費目共通」の書類と、経費区分ごとに作成する「費目別」の書類に大別されるため、実績報告を行う人は分類ごとに提出書類を確認してみましょう。
各分類のフォルダー名 |
フォルダー名 |
書類名 |
A_費目共通 |
A-1_実績報告書 |
実績報告書 経費明細表 取得財産等管理台帳 試作品等(成果)受領書 |
A_費目共通 |
A-2_出納帳 |
預金出納帳 現金出納帳 通帳コピー |
A_費目共通 |
A-3_預り金 (専門家経費を個人払いで支払った場合に限る) |
預り金元帳 納付書コピー |
B_費目別 |
B-1_機械装置・システム 構築費 |
経理書類一式 費目別支出明細書 画像データ添付用台紙 受払簿 |
B_費目別 |
B-2_技術導入費 |
経理書類一式 費目別支出明細書 画像データ添付用台紙 |
参考:実績報告資料等作成マニュアル(p.12)|ものづくり補助金
たとえば、費目共通の書類には、「実績報告書」「経費明細表」「預金出納帳」などがあります。費目共通の書類は「実績報告書」「出納帳」「預り金」の3つのフォルダーに分けて提出することになります。
また、費目別の書類には、「経理書類一式」「費目別支出明細書」「画像データ添付用台紙」などがあります。費目別の書類は「機械装置・システム構築費」「技術導入費」「専門家経費」などの経費区分ごとのフォルダーに分けて提出することになります。
なお、書類によっては様式が定められているものがあります。様式はものづくり補助金の公式サイトからダウンロードできるため、実績報告の書類を作成するときは公式サイトを確認してみましょう。
②経理書類を揃える
実績報告を行うときの次の工程は、経理書類を揃えることです。経理書類は多岐にわたり、経費区分ごとに分類して提出しなければならないため、実績報告を行う人は経理書類の概要を確認してみましょう。
項目 |
概要 |
書類の種類 |
見積依頼書、見積書、相見積書、注文書、契約書、受注書、納品書、請求書、振込依頼書など |
確認するポイント |
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参考:実績報告資料等作成マニュアル(p.15)|ものづくり補助金
経理書類を揃えるときは、補助事業における経費の流れが分かる書類を集めることになります。「見積依頼書」「見積書」「注文書」「受注書」「請求書」など、見積の依頼から支払いまでの根拠となる書類を揃えることにより、補助対象となる経費の判断材料になります。
経理書類を揃えるときは、日付の整合性を確認することになります。「見積依頼日より後に見積書が発行されている」「注文日より後に受注されている」など、各経理書類の日付の整合性を確認することにより、経理書類に不正がないことの判断材料になります。
なお、すべての経理書類に管理ナンバーを記載しなければなりません。機械装置費の場合は「機-1」「機-2」、原材料費の場合は「原-1」「原-2」など、経費区分ごとに管理ナンバーを分けることになるため、実績報告を行う人は管理ナンバーの記載も忘れずに行いましょう。
③費目別支出明細書を作成する
実績報告を行うときの次の工程は、費目別支出明細書を作成することです。費目別支出明細書は経費区分ごとの支出を記載する書類となるため、実績報告を行う人は費目別支出明細書の記入例を確認してみましょう。
管理№ |
支払日 |
支払先 |
内容 |
数量 |
単位 |
単価(税抜き) |
補助事業に要した経費(税込み) |
補助対象経費 (税抜き) |
1 |
2024/4/6 |
S社 |
機械装置A |
1 |
台 |
3,000,000円 |
3,300,000円 |
3,000,000円 |
2 |
2024/5/10 |
S社 |
機械装置B |
1 |
台 |
1,200,000円 |
1,320,000円 |
1,200,000円 |
合計 |
– |
– |
– |
– |
– |
– |
4,620,000円 |
4,200,000円 |
費目別支出明細書を作成するときのポイントのひとつは「支払日」です。支払日は銀行が振込を実施した日を記載しなければならないため、支払日を記載するときは事業者が銀行に振り込みを依頼した日ではなく、振込実施日を確認することになります。
費目別支出明細書を作成するときのもうひとつのポイントは「補助対象経費」です。補助対象経費は実際に支出した額を記載しなければならないため、補助対象経費を記載するときは補助される金額ではなく、補助率を掛ける前の支出額を確認することになります。
なお、機械装置・システム構築費の費目別支出明細書は「単価50万円以上」と「単価50万円未満」に分けて作成します。費目別支出明細書は経費区分ごとに作成しますが、機械装置・システム構築費のみ2種類の作成が必要となるため、費目別支出明細書を作成するときは留意しましょう。
④経費明細表を作成する
実績報告を行うときの次の工程は、経費明細表を作成することです。経費明細表は補助事業に使用した経費を一覧としてまとめる表となるため、実績報告を行う人は経費明細表の記入例を確認してみましょう。
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予算額 |
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実績額 |
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経費区分 |
(A)事業に要する経費 (税込み) |
(B)補助対象経費 (税抜き) |
(C)補助金交付申請額 (税抜き) |
(A)事業に要した経費 (税込み) |
(B)補助対象経費 (税抜き) |
(C)補助金の額 (税抜き)
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補助率1/2 |
補助率 1/2 |
|||||
機械装置・システム構築費 (単価 50 万円以上) |
4,620,000円 |
4,200,000円 |
2,100,000円 |
4,620,000円 |
4,200,000円 |
2,100,000円 |
機械装置・システム構築費 (単価 50 万円未満) |
418,000円 |
380,000円 |
190,000円 |
374,000円 |
340,000円 |
170,000円 |
合計 |
5,038,000円 |
4,580,000円 |
2,290,000円 |
4,994,000円 |
4,540,000円 |
2,270,000円 |
経費明細表を作成するときのポイントのひとつは「予算額」です。予算額はすでに事務局に申請した額を転記することになるため、予算額を記載するときは交付申請書または補助事業計画変更承認申請書(計画変更した場合)の申請額を確認することになります。
経費明細表を作成するときのもうひとつのポイントは「実績額」です。実績額は作成済みの費目別支出明細書からそれぞれの額を転記することになるため、実績額を記載するときは費目別支出明細書の記載額を確認することになります。
なお、補助金の額に小数点以下の端数が生じた場合は切り捨てます。補助対象経費に補助率を掛けることにより、補助金の額に小数点が生じることも考えられますが、小数点以下の端数は切り捨てとなるため、経費明細表を作成するときは予備知識として覚えておきましょう。
⑤実績報告書を作成する
実績報告を行うときの次の工程は、実績報告書を作成することです。実績報告書は事業の実施内容や成果を報告することにより、補助金額を決定する根拠となるため、実績報告を行う人は実績報告書の概要を確認してみましょう。
項目 |
概要 |
記入内容 |
|
作成のポイント |
|
参考:実績報告資料等作成マニュアル(p.22)|ものづくり補助金
実績報告書は、実施した補助事業の成果を報告する書類です。「事業の目的」「導入した機械装置」「取り組みの経過」など、補助事業の立案から成果までの流れを順序だてて説明することにより、補助金を受給する根拠を示すことになります。
実績報告書は、具体的な記載が求められます。「試作品の写真」「生産効率化を示すグラフ」「加工精度向上を示す図」など、資料やデータを活用しながら具体的に記載することにより、補助事業の取り組み内容や成果を明確に伝えなければなりません。
なお、実績報告書は交付申請時の事業計画との整合性が必要です。申請済みの事業計画に沿って補助事業に取り組んだかどうかも審査されるため、実績報告書を作成するときは交付申請時の事業計画と照らし合わせながら記載内容を検討してみましょう。
⑥その他の書類を作成する
実績報告を行うときの次の工程は、その他の書類を作成することです。その他の書類を確認しておくことにより、すべての書類を計画的に作成できる可能性があるため、実績報告を行う人はその他の書類を作成するときのポイントを確認してみましょう。
書類名 |
作成のポイント |
取得財産等管理台帳 |
|
画像データ添付用台紙 |
|
出納帳と通帳のコピー |
|
専門家業務報告書 |
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参考:実績報告資料等作成マニュアル(p.26)|ものづくり補助金
たとえば、その他の書類のひとつは「画像データ添付用台紙」です。経費区分ごとに画像データの提出が必要となるため、「納品前のスペース」「納品後の状況」「原材料の数量」「加工後の状況」「送付伝票」などの写真を補助事業実施中に撮影しておかなければなりません。
また、その他の書類のひとつは「出納帳と通帳のコピー」です。出納帳と通帳のコピーから補助事業実施中に支出した額を確認することになるため、それぞれに記載された支払日と支払額が一致していなければなりません。
なお、今回紹介した書類は一例です。実績報告では、これらの他にも複数の書類を用意することになるため、実績報告を行う人はものづくり補助金の「実績報告資料等作成マニュアル」を確認してみましょう。
⑦地域事務局に事前確認する
実績報告を行うときの次の工程は、地域事務局に事前確認することです。提出書類の準備が整った後は、全国事務局へ提出する前に各都道府県にある地域事務局に確認をとることになるため、実績報告を行う人は事前確認の流れを確認してみましょう。
|
事前確認をするときの最初の工程は、事業者を管轄する地方事務局に書類の確認を依頼することです。作成した書類を電子メールに添付し、地方事務局あてに送信することになります。
事前確認をするときの次の工程は、地域事務局からの連絡を受けることです。書類の修正が必要な場合は修正対応を行った上で再提出し、最終的には、地域事務局から確認完了の連絡を受けることになります。
なお、地域事務局の連絡先はものづくり補助金の公式サイトから確認できます。公式サイトの「都道府県ものづくり・商業・サービス補助金事務局一覧」に各地域事務局の電話番号とメールアドレスが記載されているため、事前確認を行うときは管轄の地域事務局の連絡先を確認してみましょう。
⑧jグランツから提出する
実績報告を行うときの最後の工程は、jグランツから提出することです。地域事務局の事前確認が終わった後はデジタル庁の電子申請システム「jグランツ」から全国事務局へ書類を提出することになるため、実績報告を行う人はjグランツでの提出方法を確認してみましょう。
項目 |
概要 |
入力内容 |
|
書類添付の留意点 |
|
提出期限 |
以下のうち早い方の日付
|
参考:jグランツ入力ガイド(p.25)|ものづくり補助金
jグランツに入力する内容は「補助事業に要する経費」「補助対象経費」「補助金確定額」が挙げられます。これらの金額は作成済みの経費明細表から転記することになるため、入力するときは経費明細表を確認することになります。
また、書類添付の留意点は「zipファイル形式にして登録する」ことが挙げられます。書類を添付するときは、PC上に作成したすべてのフォルダーをひとつのzipファイルにまとめた後に、jグランツシステム上の「添付資料」の欄に登録することになります。
なお、提出期限は「補助事業の完了日から起算して30日を経過した日」と「補助事業完了期限日」のうち、早い方の日付です。補助事業完了期限日は公募回によって異なるため、実績報告を行う人は提出期限を確認した上で、書類準備を進めることを検討してみましょう。
実績報告後から入金までの流れも押さえておく
実績報告を行う人は、実績報告後から入金までの流れも押さえておきましょう。実績報告後から入金までの流れを確認することにより、実績報告後のスケジュールを立てやすくなる可能性があります。
工程 |
概要 |
確定検査 |
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補助金確定通知書の交付 |
|
補助金精算払請求書の提出 |
|
入金 |
|
実績報告後に行う最初の工程は、確定検査を受けることです。確定検査は事務局の担当者が補助実施場所を訪問し、「機械設備の入手状況」「支払い状況」「事業の成果」などを確認する手続きとなるため、確定検査を行った後に最終的な補助金額が確定します。
確定検査の次の工程は、補助金確定通知書の交付を受けることです。補助金確定通知書は確定した補助金額が記載されている書類となるため、補助金確定通知書の交付を受けることにより、入金される金額を確認できます。
補助金額を確認した後は、補助金精算払請求書をjグランツから提出します。補助金精算払請求書は入金される口座を指定する書類となり、補助金精算払請求書の提出後に補助金が入金される流れとなるため、実績報告を行った人は補助金精算払請求書を提出することも覚えておきましょう。
この記事のまとめ
ものづくり補助金の実績報告をするときは、まずは全体の流れを押さえてみてください。実績報告はいくつかの工程に分けられるため、手順を把握することにより、段階的に実績報告の準備を進められる可能性があります。
実績報告の手順には、「提出書類を把握する」「経理書類を揃える」「費目別支出明細書を作成する」などの工程が挙げられます。工程の内容によっては並行して進めることも考えられるため、実績報告を行う人はその前提を踏まえながら各工程を確認してみましょう。
実績報告の提出期限は「補助事業の完了日から起算して30日を経過した日」と「補助事業完了期限日」のうち、早い方の日付です。提出期限の前に地域事務局への事前確認が必要となるため、実績報告を行うときは事前確認にかかる時間を考慮しつつ、書類の準備を進めることを検討してみてください。