自己負担額はいくら?ものづくり補助金の補助率と補助金額を解説
2023/06/27
2022/6/13
ものづくり補助金に採択された人は、国から補助金を受け取れます。しかし、事業者が使った経費の全額を補助するわけではなく、事業で使った経費の一部は事業者が自己負担します。補助金を申請する際、自己負担額を前もって知りたい事業者もいるでしょう。
今回の記事では、ものづくり補助金の自己負担額に関心がある人に向けて、ものづくり補助金の補助率と補助上限額、そして自己負担額の計算方法について解説します。
なお、この記事は11次ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の公募要領を元に作成しています。
Contents
自己負担額は補助率と補助金額から計算する
ものづくり補助金の自己負担額は「補助率」と「補助金額」から計算できます。補助率とは、事業者の使う補助対象経費のうち補助金としてもらえる金額の割合で、補助金額とは、補助金として補助される金額の範囲です。
ものづくり補助金の補助率や補助金額は、「事業規模」と「申請する枠」によって変わります。ものづくり補助金には一般型・グローバル展開型という2つの型があり、一般型にはさらに通常枠やデジタル枠など、申請できる4つの枠があります。
申請類型 |
枠 | 補助率 | 補助金額 |
一般型 |
通常枠 |
中小企業者等:1/2 小規模事業者:2/3 |
750万円~1,250万円 |
回復型賃上げ・雇用拡大枠 |
2/3 |
750万円~1,250万円 |
|
デジタル枠 |
2/3 |
750万円~1,250万円 |
|
グリーン枠 |
2/3 |
1,000万円~2,000万円 |
|
グローバル展開型 |
– |
中小企業者等:1/2 小規模事業者:2/3 |
3,000万円 |
※ものづくり補助金の公式サイトにある「第11次公募要領1.0版」をもとに株式会社ソラボ作成
ものづくり補助金の補助率は、小規模事業者のほうが中小企業者等よりも高く、小規模事業者の補助率は一律2/3です。自己負担額を計算する人は、事業規模と申請する枠をもとに補助率と補助金額を確認する必要があります。
なお、ものづくり補助金の事業規模は、常時雇用する従業員数で決まります。従業員数が卸売業・小売業・サービス業で5人以下、製造業その他・宿泊業・娯楽業で20人以下の場合は、小規模事業者の補助率になります。補助率を間違えると不採択になる可能性もあるため、事業者は該当する補助率を正確に確認しましょう。
ステップ1:補助対象経費がいくらか確認する
自己負担額を計算したい人は、まず何にお金を使うのかを決めて補助対象経費の合計金額を確認する必要があります。補助対象経費とは、ものづくり補助金でキャッシュバックの対象となる経費項目のことです。
補助対象経費の項目 | 内容 |
機械装置・システム構築費 | 補助事業のためだけに使われる機械や装置、工具などを購入・製作・レンタルする際の費用 |
技術導入費 | 補助事業に必要な知的財産権等の導入にかかる費用 |
専門家経費 | 補助事業のためにコンサルティングや相談を依頼した大学教授などの専門家に支払われる費用 |
運搬費 | 補助事業をするために必要となる、運搬、宅配・郵送の費用 |
クラウドサービス利用費 | 補助事業のためだけに必要となるクラウドサービス費用 ※自社が保有するサーバーの利用料は対象外 |
原材料費 | 補助事業の試作品づくりのために必要な原材料および副材料の購入費用 |
外注費 | 補助事業で必要なWebデザインなどの作業の一部を外部に委託する際の費用 ※事業計画自体の企画を外注するのはNG |
知的財産権等関連経費 | 補助事業で必要となる特許権の申請にかかわる弁理士の代行費用や、外国特許申請のための翻訳料などの費用 |
海外旅費 ※グローバル展開型のみ |
海外事業の拡大・強化等を目的とした渡航費・宿泊費用 |
※ものづくり補助金の公式サイトにある「第11次公募要領1.0版」をもとに株式会社ソラボ作成
たとえば、測量業としてレーザードローンを100万円、3次元点群データ生成の外注費として30万円を補助事業で支払うとします。その場合、「機械設備費100万円」と「外注費30万円」の合計130万円が、補助対象経費です。
なお、ものづくり補助金の補助対象経費は、単価50万円(税込み)以上の設備投資に関わる経費が対象です。設備機器やシステムなどの購入予定価格を申請する際は、原則見積が必要になるため、ものづくり補助金の申請準備の段階から購入予定の業者に見積を依頼しておきましょう。
一部の補助対象経費では個別に上限額が設定されている
ものづくり補助金では、一部の補助対象経費で個別に上限額が設定されています。補助対象経費を計算する人は、それぞれの項目で補助の上限額を超えていないか確認する必要があります。
補助対象経費の項目 |
上限額 |
技術導入費 |
補助対象経費総額(税抜き)の1/3まで |
専門家経費 |
補助対象経費総額(税抜き)の1/2まで |
外注費 |
補助対象経費総額(税抜き)の1/2まで |
知的財産権等関連経費 |
補助対象経費総額(税抜き)の1/3まで |
海外旅費 ※グローバル展開型のみ |
補助対象経費総額(税抜き)の1/5まで |
※ものづくり補助金の公式サイトにある「第11次公募要領1.0版」をもとに株式会社ソラボ作成
たとえば、補助対象経費の総額を900万円で申請する場合、技術導入費として申請できる補助上限額は1/3です。900万円の1/3は300万円のため、技術導入費の上限である300万円まで申請できることになります。
なお、機械装置・システム構築費以外の経費は、総額で税抜き500万円まで(グローバル展開型の場合は、税抜1,000万円まで)が補助上限額です。事業者が補助対象経費を検討する際は、補助対象経費で項目ごとに設定されている補助の上限額を守りましょう。
ステップ2:補助対象経費に補助率をかけて補助金額の範囲内か確認する
自己負担額を計算したい人は、次にステップ1で決めた補助対象経費の合計に補助率をかけて申請額を算出し、補助金額の範囲内に収まるのか確認します。
【申請額の計算例】
従業員数が2名の小規模事業者が、回復型賃上げ・雇用拡大枠(補助率2/3、補助金額100万円~750万円)で申請し、補助対象経費3,000万円を使う場合
①補助対象経費×補助率=申請額 3,000万円×2/3=2,000万円 ②申請額が補助金額の範囲内に収まるのか確認する 2,000万円>750万円(補助金額の上限) |
計算をした結果、申請額は補助金額の上限の750万円になりました。そのため、この例では、3,000万円の補助対象経費のうち、補助金額の上限額である750万円を申請額として提出します。
ステップ3:自己負担額を計算する
最後に、補助金額と自分が支払った経費をくらべて自己負担額を計算します。
事業者が支払った補助対象経費から申請額を差し引くと、自己負担額が算出できます。
【申請額の計算例】
従業員数が2名の小規模事業者が、回復型賃上げ・雇用拡大枠(補助率2/3、補助金額100万円~750万円)で申請し、補助対象経費3,000万円、申請額750万円の場合
補助対象経費–申請額=自己負担額 3,000万円-750万円=2,250万円 |
計算した結果、従業員数2名の小規模事業者が回復型賃上げ・雇用拡大枠で3,000万円の補助対象経費を使う場合、自己負担額は2,250万円となりました。
なお、申請額は事業規模や申請する枠、補助対象経費など、複数の要素で異なります。計算する際は、事業規模や申請する枠、補助対象経費を確認してから自己負担額を計算しましょう。
採択後の交付決定額が申請額と変わることもある
ものづくり補助金で事業者に支払われる交付決定額は、申請時と採択後で変わることがあります。なぜなら、ものづくり補助金でいくら補助金が支給されるかは、事業者が申請書に記入した申請額ではなく、採択後の交付申請という手続きで決まる金額だからです。
申請では、事業者は補助対象経費に関わる見積書や確定申告書などの書類を提出します。提出された書類を審査して不備があれば、交付決定額は申請時の金額より減少する可能性があります。
また、申請時の従業員数と採択後の従業員数が変わる場合も、補助金の交付決定額は変わります。従業員が増えて、小規模事業者から中小企業者になった場合は、補助率の適用が2/3から1/2に変わります。低い補助率に変われば交付決定額も少なくなります。
従業員数の変動について申請時と採択後で変更がないか、ものづくり補助金に申請する事業者は、交付手続き前に確認しましょう。
この記事のまとめ
ものづくり補助金の自己負担額は、補助率と補助金額と補助対象経費で決定します。ものづくり補助金の補助率は「事業規模」と「申請する枠」で決まります。また、補助金額は事業規模によって変化します。
ものづくり補助金で自己負担額を計算するには、小規模事業者もしくは中規模事業者を区別する「事業規模」「申請する枠」「申請する枠で適用となる補助金額」「補助対象経費の合計」という4点を確認する必要があります。
ものづくり補助金の自己負担額を把握できると、事業者は資金計画が立てやすくなります。ものづくり補助金に申請する事業者は、補助率や補助金額を確認して自己負担額を計算してみましょう。