ものづくり補助金で建設業が採択された事例を業種ごとに解説
2024/04/19
2022/5/19
建設業で使える補助金を探す人の中には、ものづくり補助金を検討している人もいますよね。その際、建設業で採択された事例はどのような内容なのか、確認したい人もいるでしょう。
当記事では、ものづくり補助金で建設業が採択された事例を業種ごとに解説します。建設業の業種は幅広いので、同じ建設業でもさまざまな採択事例があります。建設業でものづくり補助金に関心のある人は、当記事で採択事例の内容を確認してみてください。
Contents
ものづくり補助金で建設業は過去6年間総合工事業の採択事例が多い
ものづくり補助金で建設業は過去6年間、「総合工事業」での採択事例が多く見受けられます。公式サイトで平成25年から令和元年度の採択事例のデータをみると、建設業の採択事例149件のうち36件が総合工事業での採択でした。
建設業はものづくり補助金の対象業種の1つです。総合工事業以外にも「パルプ・紙加工品」「家具・装備品製造業」「技術サービス業」「鉱業・採石業」などの業種で、採択事例があります。
【建設業のものづくり補助金での採択事例】
業種 | 採択事例 |
総合工事業 |
剪定残材の再資源化による顧客満足度の向上と新規顧客層への展開 |
パルプ・紙加工品 |
ハニカム構造の積層段ボールを活用した防音壁の開発・試作・量産準備 |
家具・装備品製造業 |
業界最高水準の寸法精度の向上と短納期化を図る長く続くバランスの取れた企業へ |
技術サービス業 |
3Dレーザースキャナーを導入した三次元新技術提案による独自サービスの構築 |
鉱業・採石業 |
破砕設備の導入による新商品開発及びコンクリートリサイクル事業 |
参考:成果事例のご紹介|ものづくり補助金
総合工事業と職別工事業に分かれる建設業の工事の中で、ものづくり補助金の採択数が多いのは総合工事業です。建設業で活用する設備を導入したい人は、公式サイトや当記事を参考にしてものづくり補助金の利用を検討してみてください。
なお、ものづくり補助金の主なテーマは「革新的な製品・サービスの開発」です。自社にとって革新的であれば対象になるので、他社が導入済みの技術でも自社が未導入なら補助の対象になります。
総合工事業の採択事例
ものづくり補助金において、総合工事業は効率化や安全性の向上を目標とする事業計画で採択されました。総合工事業の技術分野は「機械制御」や「測定計測」などで、システムの開発や構築での採択がありました。
【建設業の総合工事業で過去に採択された事例】
技術分野 | 採択事例 |
立体造形 |
方向制御ノズルを用いた地中埋設管内閉塞の迅速解消システムの開発 |
機械制御 |
低コスト・高効率を実現する重機駆動システムの開発 |
機械制御,情報処理,測定計測 |
IT技術導入による「i-Construction」システムの構築 |
- |
i-con導入による施工管理の効率化と生産プロセスの改革 |
機械制御 |
鉄筋挿入工の施工を効率化し、作業員の安全性向上を図る施工機械の開発 |
参考:成果事例のご紹介|ものづくり補助金
平成25年に採択された建設設計会社の場合、申請者は地下水路の詰まりがある際の建築設計で苦労していました。そこで、胃カメラのような発想でノズルの先端にLEDライトとCCDカメラで地下を可視化するシステムを開発しました。
また、平成元年に採択された土木工事会社の場合、申請者はドローンを活用して事業をしていました。しかし、ドローンでの測量はデータ処理時の画像処理業務が多く時間がかかったため、遠隔情報共有システム「Hec-Eye(ヘックアイ)」を導入しました。
総合工事業では主に、システム導入や生産プロセスの改善が採択されました。また、国土交通省の「i-Construction(ICTを活用した生産性向上への取り組み)」も、過去6年間の採択36件中に8件見受けられました。これから申請する人はICTの活用にも注目してみましょう。
金属製品製造業の採択事例
ものづくり補助金において、金属製品製造業は効率化や品質改善、環境意識の強化により採択されました。金属製品製造業の技術分野は「精密加工」や「鉄筋工事業」などで、需要に合ったネジの開発や多品種生産の実現などが見受けられました。
【金属製品製造業で過去に採択された事例】
技術分野 | 採択事例 |
精密加工,製造環境 |
大口径特殊ネジ加工製品の受注拡大を目指した旋盤工程の高度化 |
鉄筋工事業 |
IoTを用いたベンディングマシンの活用による高度生産性向上の実現 |
情報処理、機械制御 |
双頭開先機を導入し生産性向上・コスト削減で増産体制を構築する |
デザイン、精密加工、接合・実装、表面処理、立体造形 | 伸縮アームを用いた立体構造物の開発研究 |
精密加工 |
最新鋭バリ取り機導入による飛躍的品質改善と生産性向上 |
たとえば、平成26年に採択された土木工事会社の場合、ネジを「あと1ミリ削る」といった個別の依頼は自社に設備がなく外注していました。そこで、CNC普通旋盤の導入で外注費がなくなり経常利益がアップする事業計画を策定し、ものづくり補助金に採択されました。
また、平成27年に採択された建材販売と施工会社の場合は、1台の金属曲げ機で一人につき月80時間~100時間ほどの残業があり残業費が負担でした。そこで、「lotを用いたべンディングマシーン」の導入で残業費が減り、経常利益がアップする」事業計画を策定し、ものづくり補助金に採択されました。
金属製品製造業では主に、生産工程の見直しによる効率化や品質向上を行う取り組みが採択されました。また、建設用ガスバーナーの代わりに灯油を使用するといった環境配慮の事業も採択されたので、金属製品製造業をしている人は参考にしてみましょう。
職別工事業の採択事例
ものづくり補助金において、職別工事業は生産性の向上や工程の最適化により採択されました。職別工事業の技術分野は「精密加工」や「接合・実装」などで、加工時間の短縮や作業工程の簡略化などの取り組みが見受けられました。
技術分野 | 採択事例 |
― |
足場工事における作業効率向上による工期の短縮・人的資源の有効活用事業 |
― |
高度分析機器導入に伴う、地域初の新しい水分析サービスの提供 |
精密加工 |
構造用鉄骨の加工精度の向上及び工程上の段取り改善による生産性の向上 |
材料製造プロセス,製造環境 |
顧客ニーズに対応した板金資材提供から取付工事までの板金工事一貫受注体制構築 |
接合・実装 |
飛躍的な生産性向上を可能にしたユニット先組工法による鉄筋組み立て溶接作業の工場化 |
たとえば、平成28年度に採択された鉄骨事業の会社の場合、H鉄鋼の加工を手作業で行っており、ロット毎に切削誤差が生じていました。切削誤差が受注減につながっていたため、手作業から新型加工機へ移行し受注数を増やす事業計画を立て、採択されました。
また、平成26年度に採択された瓦卸業の会社の場合も、切断機に手動で瓦を挿入していたため、切断時にミリ単位の誤差やゆがみが生じていました。そこで、高性能の動力切断機(油圧ギャップシャー)の導入で高品質な資材加工を自社の強みとする事業計画を立て、採択されました。
職別工事業では主に、手作業で行っていた作業を設備導入に切り替える取り組みで採択されました。設備導入で労働者の作業時間が60%削減された例もあるので、職別工事業をしている人は手作業の工程を機械設備に移行できないか検討してみましょう。
技術サービス業の採択事例
ものづくり補助金において、技術サービス業はサービスの質の向上や設計・分析サービス開発により採択されました。技術サービス業の技術分野は「測定計測」があり、具体的には無人航空機およびドローンを使った事業での採択が複数ありました。
技術分野 | 採択事例 |
― |
UAV-LiDARシステム(無人航空機測量計測レーザー)を用いた三次元航空測量の精度向上と作業効率の改善 |
― | 飲食店・保育園向けオリジナルデザインの抗菌性壁面装飾の提供 |
測定計測 |
建築物飲料水水質検査のワンストップ化による短納期化及び 測定精度向上計画 |
― | レーザースキャナシステムUAV導入による革新的測量事業の確立 |
― |
3Dレーザースキャナー導入による測量業の生産性の向上と 短納期化の実現 |
たとえば、平成28年度に採択された建築事務所の場合、業務用ドローンで撮影した際のデータ容量や後処理が負担を感じていました。そこで、最新の測量継続用レーザーを搭載するネットワーク型RTKー-GNSS(リアルタイム補正測位システム)を導入しました。
また、建築物やシステムを調べる「非破壊検査」を行う会社の場合は、自社が保有するハンディタイプの地中探査レーダーが課題でした。ハンディタイプでは広範囲の調査において作業効率が悪いため、車両型のレーダー探査機を自社で開発・製作しました。
技術サービス業では、無人航空機「UAV」を用いた測量事業での採択が複数ありました。この業種では、3Dレーザースキャナーや3次元データなど3Dを使った技術・分析サービスでの採択も複数あります。測量で補助金を使いたい人は3D化の検討をしてみましょう。
無料診断では、貴社の事業内容や導入したい機械等からものづくり補助金に申請できるかがわかります。ものづくり補助金に申請できるか、どのような設備に使えるかを知りたい人はお試しください。
無料診断新技術の導入と効率化と環境配慮の採択が半数を超える
建設業が採択された事例をみると、効率化と新技術の導入と環境配慮の採択が半数を超えています。公式サイトにある「成功事例のご紹介」で平成25年から令和元年に建設業の採択事例全163件を分析すると、「新技術の導入」や「効率化・生産性」「デジタル化」などに関わる事業計画が見受けられました。
【建設業の採択事例にみられる3つのテーマ】
例 | |
効率化 | (①もともとの事業) 鉄骨組立業者に早く納品できなかった (②導入した機械設備) 平板自動開先加工機と鋼板用ショットブラストマシンを導入 (③導入後) 鉄骨組立業者に早く納品できるようになった |
新技術の導入 |
(①もともとの事業) |
デジタル化 |
(①もともとの事業) 建設業における測量事業を、熟練した団塊世代の作業者や機械オペレーターが実施していたが、定年退職を迎えることになった (②開発した機械設備) (③導入後) |
この他、ものづくり補助金において建設業は「工程の最適化」や「品質向上に関連するプロジェクト」「競争力の強化」などで採択されました。ものづくり補助金ではいまの事業を改善するための取り組みが評価されるので、建設業として申請する際は事業の改善を念頭に事業計画を作成しましょう。
ものづくり補助金の概要
ものづくり補助金は主に中小企業者が設備投資に使える補助金で、建設業も利用できます。ものづくり補助金で受け取れる補助金額は、応募する申請枠と従業員数により異なります。
【ものづくり補助金の概要】
どんな補助金? | |
〈対象〉 〈目的〉 〈申請方法〉 |
|
申請枠の種類 | |
|
|
補助金額 ※省力化(オーダーメイド)枠の場合 | 補助率 ※一般型の場合 |
従業員数 • 5人以下 :100万円~750万円円 •6人~20人:100万円~1,000万円 •21人以上 :100万円~1,250万円 |
1/2 ※小規模企業者・小規模事業者、再生事業者は2/3 |
基本要件 | |
①基本要件 以下を満たす3~5年の事業計画の策定及び実行
例)デジタル枠に申請する場合は、デジタル枠の要件を満たす |
参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金
ものづくり補助金は「革新的サービスや試作品の開発」や「生産体制の改善」に必要な設備導入を支援してくれる補助金です。建設業の場合もこれまで様々な経費が補助されてきました。設備投資に関心がある人は、ものづくり補助金の利用を検討してみましょう。
ものづくり補助金で申請できる補助対象経費
ものづくり補助金で申請できる補助対象経費は、具体的には3DレーザースキャナーやICTシステムのコンサルティング費用などがあります。補助対象経費にはコンサルティング費も含まれているので、導入時に専門家に相談する際の謝礼も補助の対象です。
【建設業の主なものづくり補助金の補助対象経費】
補助対象経費の種類 | 建設業者が申請する補助対象経費の例 |
機械装置 |
|
システム構築費 |
|
技術導入費 ※上限額 3分の1 |
データ活用型5Gスマートシティへのエコシステム導入の特許出願費用 |
専門家経費 2分の1 |
EDIの導入のためのコンサルタント費用 |
クラウドサービス利用費 実施期間(採択~1年ほど)のみ |
クラウド3DCADなどのサービスの導入費用 |
外注費 2分の1 |
道路のひび割れを防ぐ新製品を開発するための外注費用 |
知的財産権等関連経費 3分の1 |
建設分野の特許出願でかかる弁護士費用 |
たとえば、建設現場での高齢化を解決したい事業者の場合、自動制御ができるICT重機の導入は補助の対象です。通常、ベテランの現場経験者しか操作できない重機でも、自動制御ができるICT重機を導入すれば、経験の少ないオペレーターでも重機の操作が可能です。
その際、ICT重機の導入に関して専門家経費や外注費を支払うのであれば、専門家経費と外注費も補助の対象となります。
ものづくり補助金の補助対象経費は、税抜き単価50万円以上の機械設備、システム導入費とその関連費用です。また、工具やパソコン、クレーン車などの汎用性がある設備は対象外なので留意しましょう。
建設業は補助事業の実施場所に注意する
建設業は補助事業が移動する可能性がある業種なので、申請時は補助事業の実施場所に注意しましょう。なぜなら、ものづくり補助金では原則、採択後に補助事業を変更することはできないからです。
【補助事業の実施場所に関する公募要領の記述】
|
引用元:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金
たとえば、補助事業の実施場所を埼玉県で申請した場合、埼玉県以外の場所で補助事業を行うことはできません。埼玉県の建設業許可が失効しほかの地域で補助事業をすることになれば、採択が取り消しとなる可能性があります。
ものづくり補助金に一度申請した内容は、法人名や担当のメールアドレスなどを除き、変更できない場合があります。建設業は補助事業場所がぎりぎりまで確定しないこともあるので、ものづくり補助金に申請する際は留意しましょう。
なお、事業実施の上で補助事業場所の変更がやむを得ない場合は、ものづくり補助金の事務局に相談することが可能です。その際は、Jグランツという電子システムより「補助事業計画変更承認申請書」を提出することになるので留意しましょう。
ものづくり補助金に申請する際の流れ
ものづくり補助金に申請する際の流れを紹介します。ものづくり補助金に申請してから補助金を受け取るまでは、約1年かかります。
事務手続き | スケジュール |
補助金交付候補者(採択)の発表 | 申請締切日から約2か月後 |
交付申請・交付決定 |
原則、交付決定通知書を受取ってから30日以内 ※交付申請から交付決定までの目安は約1か月間 |
補助事業の実施 |
交付決定後、約10か月以内に実施する ※2024年17次公募、18次公募では2024年12月10日まで |
実績報告書の提出 | 補助事業完了後、30日以内を目安に提出する |
確定検査 | 実績報告書の提出後、速やかに実施される |
ものづくり補助金では補助金を受け取る前に事業者が経費の支払いをする必要があります。ものづくり補助金の申請スケジュールに関心がある人は、「ものづくり補助金のスケジュールと締め切りに合わせた段取りを解説」を参考にしてみてください。
この記事のまとめ
ものづくり補助金で建設業は過去6年間、「総合工事業」での採択事例が多く見受けられます。公式サイトで平成25年から令和元年度の採択事例のデータをみると、建設業の採択事例149件のうち36件が総合工事業での採択だったためです。
建設業が採択された事例をみると、効率化と新技術の導入と環境配慮の採択が半数を超えています。平成25年から令和元年に建設業の採択事例全163件を分析すると、新技術の導入や効率化・生産性、デジタル化など野事業計画がありました。
建設業は補助事業が移動する可能性がある業種なので、申請時は補助授業の実施場所に注意しましょう。なぜなら、ものづくり補助金に採択された場合、補助事業の実施場所が変わる場合は、変更手続きをする必要があるためです。