補助金ガイド

ものづくり補助金にサービス業で申請する際の要件と採択事例を解説

2024/04/26

2022/5/19

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

ものづくり補助金とは、事業者が革新性のある製品・サービス等のために試作品を作る際、および、生産性向上に役立つ生産プロセスの改善をする際に、そのかかる費用の一部を支援してくれる補助金です。 

ことばのイメージから、ものづくり補助金は製造業や建設業のための補助金というイメージがあるかもしませんが、ものづくり補助金ではサービス事業者も応募できます。 

今回の記事では、サービス業としてものづくり補助金を検討している事業者に向け、基本的な要件と、どのような事業が過去に採択されたのかを説明します。

ものづくり補助金はサービス業も応募可能

ものづくり補助金は、サービス業でも応募できます。ものづくり補助金の正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」と言い、製造業だけでなく、宿泊業や情報サービス業などのサービス業も補助の対象です。 

対象となるサービス業の種類

ものづくり補助金でサービス業は対象となりますが、すべてのサービス業が対象なわけではありません。ものづくり補助金で対象となる事業者は、資本金と常勤する従業員数に制限があります。

たとえば、以下のサービス業の場合、資本金と常時従業員数は以下のような規定があります。

【ものづくり補助金で対象となる事業者の資本金と常勤する従業員数】

資本金

常時従業員数

運輸業、旅行業

3億円以下

300人以下

サービス業※

5,000万円以下

100人以下

小売業

5,000万円

50人

ソフトウェア業又は情報処理サービス業

3億円

300人

旅館業

5,000万円

200人

※ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く

サービス業にはさまざまな分野がありますが、総務省の公式サイト「日本標準産業分類の大分類体系」では以下のようにサービス業を分類しています。

大分類

中分類

小分類

A農業,林業

013農業サービス業

(園芸サービス業を除く)

0131穀作サービス業0132野菜作・果樹作サービス業

0133穀作,野菜作・果樹作以外の耕種サービス業

0134畜産サービス業(獣医業を除く)

A農業,林業

014園芸サービス業

0141園芸サービス業

A農業,林業

024林業サービス業

0241育林サービス業

0242素材生産サービス業

0243山林種苗生産サービス業

0249その他の林業サービス業

E製造業

15印刷・同関連業

1591印刷関連サービス業

G情報通信業

37通信業

373電気通信に附帯するサービス業

3731電気通信に附帯するサービス業

G情報通信業

39情報サービス業

392情報処理・提供サービス業

3921情報処理サービス業

3922情報提供サービス業

3929その他の情報処理・

提供サービス業

G情報通信業

40インターネット

附随サービス業

4011ポータルサイト・サーバ運営業

4012アプリケーション・サービス・

コンテンツ・プロバイダ

4013インターネット利用サポート業

G情報通信業

41映像・音声・

文字情報制作業

416映像・音声・文字情報制作に附帯する

サービス業

4161ニュース供給業

4169その他の映像・音声・

文字情報制作に附帯する

サービス業

H運輸業,郵便業  

489その他の運輸に

附帯するサービス業

4899他に分類されない運輸に附帯するサービス業

J金融業,保険業

67保険業

(保険媒介代理業,

保険サービス業を含む)

6751保険料率算出団体

6752損害査定業

6759  その他の保険サービス業

L学術研究,専門・技術サービス業

72専門サービス業

(他に分類されない

もの)

7231  行政書士事務所

7241  公認会計士事務所

7242  税理士事務所

7251  社会保険労務士事務所

7261  デザイン業

729  その他の専門サービス業 

L学術研究,専門・技術サービス業

74技術サービス業

(他に分類されない

もの)

7421  建築設計業

7422  測量業

7429  その他の土木建築サービス業

7499その他の技術サービス業

M宿泊業,飲食サービス業

77持ち帰り・配達

飲食サービス業

7711  持ち帰り飲食サービス業

7721  配達飲食サービス業

N生活関連サービス業,娯楽業

78洗濯・理容・

美容・浴場業

7894ネイルサービス業

N生活関連サービス業,

娯楽業

79その他の生活関連サービス業

7921家事サービス業(住込みのもの)

7922家事サービス業(住込みでないもの)

7999  他に分類されないその他の生活関連サービス業

8096  娯楽に附帯するサービス業

P医療,福祉

83医療業

8369その他の医療に附帯するサービス業

Rサービス業

(他に分類

されないもの)

88  廃棄物処理業

89  自動車整備業

90  機械等修理業

91職業紹介・労働者派遣業

92その他の事業サービス業

95その他のサービス業

8815ごみ収集運搬業

891  自動車整備業

9012建設・鉱山機械整備業

9111職業紹介業

9211速記・ワープロ入力業

9221ビルメンテナンス業

9294コールセンター業

など

上記を見ると、サービス業は農業や製造業、印刷業までと幅広い業種に浸透していることがわかります。

ものづくり補助金の要件

サービス業を営む事業者がものづくり補助金に応募する場合、事業者は以下3つの基本要件をすべて満たす事業計画を立てる必要があります。 

【ものづくり補助金の要件】

  • 付加価値額(※1)の年平均成長率+3%以上/年
  • 給与支給総額(※2) の年平均成長率+1.5%以上/年
  • 事業場内最低賃金(※3)地域別最低賃金+30円 

    ※1 「営業利益 + 人件費 + 減価償却費」で求められる数値

    ※2 事業者から従業員に支払う給与に残業代と休日出勤手当を加えたもの

    ※3 法で定められている従業員に支払う最低基準の賃金(交通費含む)

    従業員をもたない一人社長や個人事業主も対象ですが、その場合は従業員がいない事業者向けの提出用書類(ものづくり補助金 賃金引上げ計画の表明書/様式1-2)を使用することで、申請できます。

    ただし、ものづくり補助金に採択された場合で賃上げを実行しない事業者は、支給された補助金の一部返還が求められます。 

    ものづくり補助金の補助額と補助率

    ものづくり補助金の補助額とは、事業者が補助事業で支払う経費が補助される上限の金額で、補助率とは、事業者が補助事業で支払う経費のうち補助される割合です。補助金額や補助率を超える経費は、事業者の自己負担になります。

    たとえば、ものづくり補助金の製品・サービス高付加価値化枠(通常類型)から申請する人がいるとします。通常枠では従業員ごとに補助金額の上限が決まっており、従業員21人以上の場合は補助金額の上限は1,250万円です。

    【ものづくり補助金の補助金額の計算例】

    例)補助金額1,250万円、補助率2/3、で3,000万円の金属プレス機器を購入する場合

    <補助金額の計算>

    金属プレス機器の代金(補助対象経費)3,000万円×補助率2/3=2,000万円

    2,000万円>1,250万円なので、1,250万円が適用

    <自己負担額の計算>

    3,000万円―1,250万円=1,750万円

    計、補助金額1,250万円、自己負担1,750万円

    まずは、補助率から補助対象経費を計算します。補助対象経費に補助率2/3をかけると、2,000万円となりました。しかし、この事業者には2,000万円より低い補助金額の補助上限額は1,250万円のため、補助される金額は1,250万円になります。

    ものづくり補助金の各公募回では、どの申請枠を選ぶかにより補助金額や補助率が異なることがあります。申請する際は、申請する枠や型ごとの補助率や補助上限額を確認してみましょう。

    申請枠ごとの補助金額と補助率

    ものづくり補助金は2024年の現在、3つの申請枠があります。3つの申請枠はそれぞれ特徴が異なります。

    【ものづくり補助金の申請枠の種類】
    1. 省力化(オーダーメイド)枠

    2. 製品・サービス高付加価値化枠(通常類型/成長分野進出類型(DX・GX))

    3. グローバル枠

      ものづくり補助金は枠や類型によって補助金額と補助率は異なるため、申請する前に確認しておきましょう。

      申請枠

      概要

      1.省力化(オーダーメイド)枠

      (補助金額上限)

      従業員数5人以下 :100万円~750万円 

      6~20人 :100万円~1,500万円

       21~50人 :100万円~3,000万円

       51~99人 :100万円~5,000万円 

      100人以上:100万円~8,000万円

      (補助率)

      補助金額が1,500万円まで:

      1/2

      ※小規模企業者・小規模事業者、再生事業者は2/3

      補助金額が1,500万円を超える部分:

      1/3

      2.製品・サービス高付加価値化枠

      (補助金額上限)

      通常類型:

      従業員数 5 人以下 :100万円~750万円

      6人~20人:100万円~1,000万円

       21人以上 :100万円~1,250万円

      (補助率)

      1/2

      ※小規模企業者・小規模事業者、再生事業者は2/3

      ※新型コロナ回復加速化特例は2/3

      成長分野進出類型(DX・GX):

      2/3 

      3. グローバル枠

      (補助金額上限)

      100万円~3,000万円

      (補助率)

      1/2

      ※小規模企業者・小規模事業者は2/3

      サービス業ではいずれの補助枠でも応募可能ですが、グローバル枠海外やインバウンドに向けて製品やサービスを販売する事業以外は申請できませんサービス業で革新的な製品・サービスや生産性向上目指すには、製品・サービス高付加価値化枠の通常枠か、省力化(オーダーメイド)枠の利用を検討してみてください。

      ものづくり補助金の補助対象経費

      ものづくり補助金の補助対象経費とは、事業者が補助事業のために支払う経費で国からキャッシュバックされる対象の経費です。ものづくり補助金に申請するは、補助対象経費の中でどの項目にいくら使う予定なのか事業計画書に記載します。

      【ものづくり補助金の補助対象経費

      • 機械装置・システム構築費
      • 技術導入費、専門家経費
      • 運搬費
      • クラウドサービス利用費
      • 原材料費
      • 外注費
      • 知的財産権等関連経費

      グローバルうち海外市場開拓(輸出)に 関する事業の対象経費

      海外旅費

      通訳・翻訳費

      広告宣伝・販売促進費

      たとえば、レストランで1台200万円の配膳ロボットを導入する場合、申請時には補助対象経費の機械装置・システム構築費として200万円を申告します。その際、配膳ロボットがクラウドで機能更新するものであれば、合わせてクラウドサービス利用費も申告できます。

      サービス業としてどのような補助対象経費を使うのかは、各事業者の事業内容によりさまざまです。例として、過去には以下のような補助対象経費で採択されたケースをご紹介します。

      【補助対象経費の種類と利用例】

      補助対象経費の種類

      利用例

      機械装置・システム構築費

      • ロールケーキの小分け需要に応える、洋菓子スライサーの導入費用
      • 小ロットで印字する素材を選ばない、レーザー印字機器の導入費用

      技術導入費

      • 女性の就労を援助するためのマッチングアプリの開発費用
      • 有機EL 照明の長期安定化を実現する真空蒸着技術の開発費用

      専門家経費

      • 黒にんにくのブランディング事業を行うための専門家経費
      • Dスキャナー及びマルチコプター導入による取引先拡大のためのコンサルティング費用

      クラウドサービス利用費

      • 教育界での自学学習ツールの導入費用
      • レジャー産業施設のe-チケット事業のためのクラウドサービス導入費用

      原材料費

      • 味付き豆腐の試作品開発のための費用
      • ホタテの未利用部分を使用した新製品開発にかかる費用

      知的財産権等関連経費

      • 地方小売業マーケティングのビッグデータ活用法の国内向け特許申請費用
      • 世界に1着しかないロンパースベア(ぬいぐるみ)の海外特許取得費用

      参考:採択結果|ものづくり補助金

      なお、機械装置・システム構築費については単価50万円以上(税抜き)である必要があります

      たとえば、単価49万円の3Dプリンターをサービス業の事業主が購入する場合は、ものづくり補助金の対象外となるため、設備金額に注意しましょう。 

      サービス業の採択事例

      サービス業がものづくり補助金に申請して採択されたのには、以下のような事例があります。

      【サービス業の採択事例】
      • 医療サービスにおけるデータレンジングツール(ETLツール)の開発
      • 情報サービスにおける病院の待ち時間を短縮のためのLINEを使ったシステム開発
      • 衛生サービス分野におけるクリーニング店への紫外線照射(UV Clean)と高温殺菌技術の提供
      • その他サービスにおける灯油の受注ロスを防ぐ灯油買い忘れ防止サービスの実施
      • 測量サービスにおけるドローン空撮画像と3Dプリンター画像での受注率アップ

        他の事例を知りたい人は、ものづくり補助金公式サイトの「採択結果」から確認できます。

        これらの採択事例の共通点は、自社の課題(時間短縮や効率性、売上改善など)をデジタル技術や高度技術で改善する流れがわかりやすい事業計画になっていることです。

        ものづくり補助金に応募するサービス業の事業者は、自社の課題を設備投資やシステム構築などで解決するためのプロセスがわかる事業計画書を用意しましょう。

        この記事のまとめ

        ものづくり補助金ではサービス業も対象です。サービス業はを総務省「日本標準産業分類」の中分類で細かく分けると全17種類あり、園芸業や印刷業もサービス業に含まれます。応募するには、従業員の賃上げを行うという要件を満たす必要があります。

        ものづくり補助金の対象者には資本金と常時雇用する従業員数の決まりがあります。情報サービスと旅館業の場合は資本金が3億円以下で常時雇用の従業員数は300人以下、それ以外のサービス業では資本金が5,000万円以下で100人以下の事業者が対象です。

        サービス業としてものづくり補助金に採択された事例は、情報サービス分野や測量サービス分野など、さまざまな分野があります。

        ものづくり補助金の申請をご検討中の事業者様

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