飲食店はものづくり補助金をどう使う?採択事例と採択のコツを解説
2024/05/07
2022/6/21
飲食店が使える補助金を探している人の中には、ものづくり補助金に関心がある人もいますよね。その中には「ものづくり補助金は飲食店も使えるみたいだけど、どういう飲食店が採択されるのか?」と確認したい人もいるでしょう。
当記事では、飲食店の採択事例と採択のコツを解説します。飲食店がものづくり補助金を利用する際の対象の機械設備や満たすべき要件も紹介するので、ものづくり補助金を検討中の飲食店を経営する人は当記事を参考にしてみてください。
Contents
飲食店も使えるものづくり補助金の概要
飲食店も使えるものづくり補助金は、国が実施する事業者向けの補助金です。飲食店がものづくり補助金を利用すると、機械設備やシステムを導入する際に、最大8,000万円までが国から補助されます。
飲食店が補助金を実際にいくら受け取れるのかは、飲食店が導入する機械設備やシステムにかかる費用と従業員数で異なります。
【ものづくり補助金の概要】
共通 | ||||
補助対象経費 | ||||
機械装置・ システム構築費/専門家経費/運搬費/クラウドサービス利用費/原材料費 外注費/知的財産権等関連経費 <グローバル枠のみ>
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省力化(オーダーメイド)枠 |
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補助額 |
補助率 |
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従業員数5人以下 :100万円~750万円 6~20人 :100万円~1,500万円 21~50人 :100万円~3,000万円 51~99人 :100万円~5,000万円 100人以上:100万円~8,000万円
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補助金額が1,500万円まで |
1,500万円を超える部分 |
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製品・サービス高付加価値化枠(通常類型) |
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補助額 |
補助率 |
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従業員数5人以下 :100万円~750万円 6~20人 :100万円~1,000万円 21人以上 :100万円~1,250万円 |
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製品・サービス高付加価値化枠(成長分野進出類型(DX・GX) |
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補助額 |
補助率 | |||
従業員数5人以下 :100万円~1,000万円 6~20人 :100万円~1,500万円 |
2/3 | |||
グローバル枠 |
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補助額 |
補助率 | |||
100万円~3,000万円
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参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金
たとえば、従業員数が5人のカフェの場合、補助金額の範囲は100万円~750万円です。仮に100万円の包装機を導入すると「100万円×2/3=約66.6万円」と計算できるので、受け取れる補助金額はおよそ66万6千円となります。
ものづくり補助金を利用すると、飲食店は設備投資をする際の経費を大幅に抑えられます。ただし、ものづくり補助金には厳正な審査があるため、ものづくり補助金を利用する際はさまざまな準備や書類作成が伴う点も留意しておきましょう。
高性能で専門的な機械設備やシステム導入に使える
ものづくり補助金は、飲食店の高性能で専門的な機械設備やシステム導入に使えます。ものづくり補助金は中小企業者等の生産性や付加価値を高めることが目的の補助金なので、補助対象の設備も目的に伴う事が求められるためです。
飲食店にはカフェやレストランなど様々な業態がありますが、ものづくり補助金でも様々な業態の飲食店が機械設備やシステムを導入しています。いずれも、特殊な機能をもつ機械設備や人材不足を補うシステムが採択されている傾向にあります。
機械設備 | |
業態(売り方) | 例 |
カフェ | 大型と小型のコーヒー焙煎機 |
カフェ | 焼き菓子製造機 |
カフェ | 急速冷凍機 |
蕎麦店 | 製麺設備、真空包装機 |
手打ち蕎麦店 | そば殻燃料「バイオコークス」製造機 |
手打ち蕎麦店 | そば茶専用の焙煎機 |
レストラン | 多彩な菓子を作れるデポジッター |
ジビエレストラン | サイレントカッター |
ガソリンスタンド兼アイスクリームスタンド | アイスクリームのメニュー数を増加できる機械設備 |
システム | |
業態(売り方) | 例 |
回転寿司 | 特急レーンとセルフレジ |
コーヒーサブスク | QCD向上システム |
ベトナム飲食店 | ベトナム飲食店向けセルフオーダーシステム |
焼肉屋 | サムゲタンの自動販売システム |
参考:採択結果|ものづくり補助金
たとえば、カフェの場合、ものづくり補助金を使ってコーヒー焙煎機や焼き菓子製造機を導入できた実績があります。カフェがこれらの機械設備を導入すると本格的な商品・メニューを作成できるので、新たな顧客の増加や単価アップが期待できます。
ものづくり補助金を利用すると、飲食店は「メニュー開発に使える高性能な機械設備や人材不足を補うシステムなどを導入できます。事業者が提供するメニューに特化した機械設備やシステムを導入する際は、ものづくり補助金の利用を検討してみましょう。
なお、POSレジやセルフレジを導入したい場合は、IT導入補助金を利用できます。POSレジやセルフレジを導入したい飲食店の事業者は、「IT導入補助金でレジの購入はできる?対象レジや補助額を解説」を参考にしてみてください。
下記無料診断ではものづくり補助金の対象事業者となるか、いくら受け取れそうか、どのような経費が対象となるかがわかります。補助金の申請を検討している人や、使えるか知りたい人は診断してみてください。
無料診断開業資金には使えない
ものづくり補助金は開業資金には使えません。なぜなら、ものづくり補助金に申請する際に提出する書類には、開業後の売上や経費を記載する決算書があるためです。
事業者向けの補助金は、事業者の事業実績についての書類が必要書類となっているため、飲食店が開業に使える補助金は現時点ではありません。その代わり、東京都が実施する「創業助成金」や補助金以外の融資、クラウドファンディングは利用可能です。
基本的に、補助金は開業後に使える制度がほとんどです。国の創業融資は飲食店の開業資金として使えるので、開業資金を調達したい人は関連記事「そもそも創業融資はどんな方法があるのか?」を参考に検討してみましょう。
ものづくり補助金における飲食店での採択事例
ものづくり補助金で飲食店または飲食業として採択された事例を紹介します。2024年1月19日(金)に発表された16次公募の採択結果では、飲食店が採択された事例と、飲食店を取引先とする事業者が採択された事例がありました。
飲食店の採択事例 |
デジタル技術を活用し、お客様に「新しい飲食店予約体験」を提供 |
独自技術で焼き芋を差別化し、飲食事業の売上を拡大する |
パイナップルケーキの生産設備導入による生産力向上と事業拡大 |
行列必至のラーメン・つけ麺店が製麺機・スチーム調理機を導入し店舗回転率を劇的に向上 |
飲食関連事業の採択事例 |
商品開発力と創作料理のノウハウを活かした飲食店向けの料理提供事業 |
飲食・宿泊・観光業界と経験者を繋ぐ人材マッチングアプリの開発 |
小規模飲食店をターゲットとした仕込み代行事業の開発 |
飲食店に特化した「外国人人材向けの就職支援サイトの運営」による 売上向上 |
参考:16次採択結果|ものづくり補助金
飲食店の場合、主にメニュー開発やメニュー提供時間の時短に関する事業計画が採択されました。飲食関連事業の場合は、主に飲食店に販売するためのサービスや飲食店向けのアプリに関する事業計画が採択されていました。
過去のものづくり補助金では、飲食店が行う新たなメニュー開発や飲食店向けのサービス開発が採択されました。飲食店が採択された割合は他の業種と比べ多くはありませんが、生産性の向上や地域で初めての試みなどの場合に採択されることもあるので、自社のPRポイントを積極的にアピールしましょう。
台湾カステラ専門店の事例
台湾カステラ専門店の事例では、事業拡大で新たなスイーツを開発するという内容で採択されました。単なるメニューの追加でなく、地元の特産品を扱う農家と提携し、事業を拡大するという点が評価された可能性があります。
台湾カステラ専門店は既に台湾カステラという看板メニューがありましたが、リピーターを増やし収益を安定させるため、新たなスイーツ開発が必要でした。そこで、地域の名産「パイナップル」を使ったパイナップルケーキ開発を検討し、ものづくり補助金に応募申請することにしました。
パイナップルケーキの製造には、材料を練り合わせる、撹拌(かくはん)するといった工程が必要です。店舗にいる従業員のみでは新メニューの製造ができないため、ミキサーや成型機を導入する事業計画を立てたところ、採択されました。
飲食コンサルティング事業を行う会社の事例
飲食コンサルティング事業を行う会社の事例では、商品開発を行う時間が取れない飲食店に向けた、調理委託請負事業計画で採択されました。本業のコンサルティングで培ったノウハウを活かす事業内容が評価された可能性があります。
同社は、飲食コンサルティングとして新規開店支援や新メニュー開発を行ってきました。特に新メニュー開発には定評がありましたが、飲食店が新メニューを導入する際に同じ味を再現するのが困難な場合があったので、ものづくり補助金で新メニューの調理委託として応募申請することにしました。
新メニューの調理委託では、コンサル業で培った人脈を使い創作料理のシェフやパティシエと連携しました。これまでは調理器具は自社で保有していなかったため、調理委託業に必要な機械設備を導入する事業計画を立てたところ、採択されました。
申請するには3つの申請要件を満たす必要がある
申請するには3つの「申請要件」を満たす必要があります。申請要件とは、補助金に申請する事業者が満たすべき条件のことで、事業者は「付加価値額」や「給与支給総額」等の指標において、決まった数値を超える事業計画を立てなければなりません。
申請要件の種類 | 備考 |
①付加価値額が3~5年の事業計画の中で+3%以上/年 |
付加価値額は、営業利益と人件費、減価償却費の合算を指す |
②給与支給総額が3~5年の事業計画の中で+1.5%以上/年 |
給与支給総額は、給料(賃金)と各種手当、賞与の合算を指す |
③事業場内最低賃金が3~5年の事業計画の中で地域別最低賃金+30円 |
例)東京都の場合 |
1つ目の付加価値額の場合、機械設備やシステムを減価償却費として計上する事業計画を立てれば、申請要件の+3%以上/年を満たせる可能性があります。なぜなら、付加価値額の内訳には減価償却費が含まれており、導入する設備を減価償却すれば、付加価値額も増加するからです。
2つ目の給与支給総額の場合、従業員の給与や手当などを増額する賃上げの計画を立てれば、申請要件の+1.5%以上/年を満たせる可能性があります。ものづくり補助金の必要書類には「賃金引上げ計画の誓約書」が含まれており、いずれの申請者も必ず賃上げ計画を立てる必要があります。
3つ目の「事業場内最低賃金」の場合は、仮に補助事業の実施場所が東京都だとすると「最低賃金」は1,113円(令和6年4月22日時点)です。時給を1,143円以上とする事業計画を立てれば、申請要件の「+30円」を満たすことができます。
補助金の要件は、申請者が必ず満たさなければならないものです。ものづくり補助金に応募する飲食店の人は、要件の詳細を公募要領から確認して準備を進めましょう。
飲食店が採択されるためのコツ
ものづくり補助金の利用を検討している飲食店は、採択されるためのコツポイントを抑えましょう。ものづくり補助金は審査によって採択が決まる補助金なので、ポイントを押さえた内容で申請する方が採択される可能性が高まるためです。
コツ | 具体例 |
飲食店がものづくり補助金に応募申請する理由を明確にする |
飲食店が抱える課題を写真や表を交えて示す |
革新的な製品・サービス開発または生産 プロセスの省力化を目指す事業計画にする |
飲食店の採択事例を参考にしつつ、よろず支援拠点や認定支援機関のような公的機関にアドバイスをもらう |
単に機械設備・システムを導入するための事業計画は避ける |
課題を解決するために必要な機械設備・システム導入であるとアピールする |
自社の強みを活かす事業計画をたてる |
自社のこれまで培った技術や経験、地域性を活かす事業計画を立てる |
ものづくり補助金の公式サイトにある「公募要領」には、審査で重視する「審査項目」の記載があります。審査項目には「事業者の課題と解決方法が明確か」「製品やサービスが革新的か」といった点が含まれるので、事業計画には応募申請する理由や技術的なことも書くと良いでしょう。
また、具体的な対策としては、「写真や表を交える」「ものづくり補助金に精通する公的機関に相談」などがあります。事業計画には数値的な根拠も求められているので、「収益が伸び悩んでいる」と書く場合は「テイクアウト事業の収益が2024年から20%減少した」と具体的に書くと良いでしょう。
ものづくり補助金に採択されるには「なぜ応募申請するのか」「自社の強みである技術やこだわりは何か」といった点を事業計画でアピールすることです。審査員が見て理解しやすい事も重要なので、商工会や認定支援機関などの公的機関にチェックしてもらうことも検討してみてください。
当サイトを運営する株式会社SoLaboも認定支援機関としてものづくり補助金の申請サポートをしています。審査のポイントを盛り込んだ申請支援にご興味のある人は下記よりお問い合わせください。
無料診断飲食店が使えるその他の補助金と助成金
飲食店が使えるその他の補助金と助成金には、「小規模事業者持続化補助金」や「IT導入補助金」があります。補助金や助成金により要件や補助対象経費は異なるので、補助金を使って飲食店を発展させたい事業者は、ものづくり補助金以外の補助金についても内容を確認してみましょう。
補助金 | ||
補助金名 | 補助上限額/補助率 | 補助対象経費の例 |
<一般型> |
第15回公募の場合 <通常枠> <賃金引上げ枠> <卒業枠・後継者支援枠・創業枠> |
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IT導入補助金 |
IT導入補助金2024の場合 <通常枠> <インボイス枠・電子取引類型> |
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事業再構築補助金 |
第11回の場合 <成長枠> <グリーン成長枠(エントリー) > <グリーン成長枠(スタンダード) > ※この他、 |
必要な研修 |
助成金 | ||
助成金名 | 助成上限額/助成率 | 補助対象経費の例 |
雇用調整助成金 |
事業者が対象労働者を休業させた際: ※最大3年間で150日間までの上限あり |
経済上の理由で、飲食店の事業者が労働者を休業させる際の給与 |
キャリアアップ助成金 |
※社会保険適用時処遇改善コースの場合 事業主が労働者に社会保険を6か月間 適用させる際: |
賃金の15%以上分を労働者に追加する際の費用 |
※各補助金・助成金とも、2024年3月1日時点の最新の公募要領および公式サイトをもとに、株式会社ソラボが作成
たとえば、「小規模事業者持続化補助金」は商店街に店を構える個人店にも適した補助金です。「小規模事業者等の生産性向上と 持続的発展」を目的とするため、ものづくり補助金のように革新性を求められず、店舗内の什器やチラシ制作の費用も補助の対象です。
また「キャリアアップ助成金」は社会保険に加入していないアルバイトやパートを雇う飲食店に適した助成金です。労働者が新たに社会保険に加入する際、飲食店がアルバイト・パートへ追加費用を6か月以上負担すると、6か月ごとに10万円が合計2回支給される仕組みです。
ものづくり補助金以外に、飲食店が使える公的制度は複数あります。飲食店の経営にはさまざまな経費がかかるので、小規模事業者持続化補助金やIT導入補助金などの活用も検討してみてください。
この記事のまとめ
飲食店が使えるものづくり補助金は、国が実施する事業者向けの補助金です。飲食店がものづくり補助金を利用すると、機械設備やシステムを導入する際に、最大8,000万円までが国から補助されます。
飲食店はものづくり補助金で「メニュー開発に使える高性能な機械設備」や「人材不足を補うシステム」を導入できます。POSレジの導入実績はあまりなかったので、飲食店がものづくり補助金を利用する際は「事業者が提供するメニューに特化した」機械設備・システムなのかを意識してください。
ものづくり補助金に採択されるには「なぜ応募申請するのか」「自社の強みである技術やこだわりは何か」といった点を事業計画でアピールすることです。審査員が見て理解しやすい事も重要なので、商工会や認定支援機関などの公的機関にチェックしてもらうことも検討してみてください。