ものづくり補助金の省力化枠(オーダーメイド枠)を申請するときのポイントを解説
2024/06/13
2024/6/7
ものづくり補助金の省力化枠(オーダーメイド枠)は、設備投資を検討している事業者が対象となる可能性があります。省力化枠(オーダーメイド枠)は中小企業の賃上げや人手不足解消のための省力化・省人化にかかる設備投資を支援する目的の申請枠となっているからです。
省力化枠(オーダーメイド枠)の申請には、いくつかのポイントがあります。「省力化枠の要点」「補助の内容」「申請要件」など、ポイントを押さえることにより、省力化枠の全体像が把握できるため、省力化枠(オーダーメイド枠)の申請を検討している人は申請するときのポイントを押さえてみましょう。
なお、当記事はものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業公募要領(18次締切分)を参考に作成しています。
Contents
ポイントは省力化枠(オーダーメイド枠)の要点を押さえること
ものづくり補助金の省力化枠(オーダーメイド枠)を申請するときのポイントは、省力化枠(オーダーメイド枠)の要点を押さえることです。要点を押さえることにより、省力化枠全体に通じる考え方が把握できるため、省力化枠(オーダーメイド枠)の要点を確認してみましょう。
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省力化枠(オーダーメイド枠)の要点は「オーダーメイド設備を導入すること」「設備の導入により自動化や高度化が見込めること」です。ものづくり補助金の省力化枠(オーダーメイド枠)を検討している人は、これらの要点を確認することから始めてみましょう。
オーダーメイド設備を導入すること
省力化枠(オーダーメイド枠)の要点のひとつは「オーダーメイド設備を導入すること」です。省力化枠は省力化・省人化を促進する設備投資を支援する考え方のもと、デジタル技術を活用し、自社の課題を解決するオーダーメイド設備を導入する事業計画が補助対象となります。
オーダーメイド設備 |
導入イメージ例 |
多関節ロボット |
【製造業】
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自動荷役・積替ロボット |
【物流サービス業】
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参考:公募要領概要版 18次締切分(p.13)|ものづくり補助金
たとえば、製造業がオーダーメイドの多関節ロボット設備を導入する場合が挙げられます。自社商品の製造に必要な部品を識別できる多関節ロボットを設計し、導入する場合は、省力化枠(オーダーメイド枠)が活用できる可能性があります。
また、物流サービス業がオーダーメイドの自動荷役・積替ロボットを導入する場合が挙げられます。出荷指示データに従って無人での荷役作業を行う自動荷役・積替ロボットを設計し、導入する場合は、省力化枠(オーダーメイド枠)が活用できる可能性があります。
なお、単なる機械設備の導入は省力化枠(オーダーメイド枠)の対象外となります。「デジタル技術を活用しない」「オーダーメイド設備ではない」などの機械設備やシステム設備の導入を行う場合は、省力化枠(オーダーメイド枠)の対象とならない点を留意しておきましょう。
設備の導入により自動化や高度化が見込めること
省力化枠(オーダーメイド枠)の要点のひとつは「設備の導入により自動化や高度化が見込めること」です。省力化枠は省力化・省人化を促進する設備投資を支援する考え方のもと、生産プロセスやサービス提供方法の自動化や高度化が見込める事業計画が補助対象となります。
項目 |
導入効果が期待できるイメージ例 |
自動化 |
【小売サービス業】
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高度化 |
【食品製造業】
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参考:公募要領概要版 18次締切分(p.13)|ものづくり補助金
たとえば、小売サービス業の陳列と品出し業務を自動化する場合が挙げられます。従業員が遠隔操作可能な陳列と搬送を行うロボットを導入する場合は、陳列業務や搬送業務の自動化が見込めるため、省力化枠(オーダーメイド枠)を活用できる可能性があります。
また、食品製造業の商品へのラベル貼付作業を高度化する場合が挙げられます。手動で行っていた貼付作業を一部自動化できるロボットを導入する場合は、ミスの防止や作業のライン化などの生産工程の高度化が見込めるため、省力化枠(オーダーメイド枠)を活用できる可能性があります。
なお、業務プロセスの自動化や高度化には「革新性」が求められています。すでに広く普及した自動化の方法や高度化の方法を図る設備投資の場合は、革新性が認められない可能性がある点を留意しておきましょう。
ポイントは省力化枠(オーダーメイド枠)の補助内容を押さえること
ものづくり補助金の省力化枠(オーダーメイド枠)を申請するときのポイントは、省力化枠の補助内容を押さえることです。補助内容を押さえることにより、事業の資金計画が明確になるため、省力化枠(オーダーメイド枠)の補助内容を確認してみましょう。
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省力化枠(オーダーメイド枠)の補助内容を押さえるときは「補助金額」「補助率」「対象経費」を確認します。それぞれの項目を確認することにより、「補助金の受給額」「自己負担額」などの資金計画が具体化されるため、各補助内容を確認していきましょう。
補助金額
省力化枠(オーダーメイド枠)の補助内容における確認項目のひとつは「補助金額」です。ものづくり補助金の補助金額は申請枠ごとに異なるため、省力化枠(オーダーメイド枠)を申請する場合は省力化枠(オーダーメイド枠)の補助金額を確認することになります。
申請枠 |
従業員数ごとの補助金額 |
省力化枠(オーダーメイド枠) |
5人以下 :100万円~750万円 6~20人 :100万円~1,500万円 21~50人 :100万円~3,000万円 51~99人 :100万円~5,000万円 100人以上:100万円~8,000万円 |
参考:公募要領 18次締切分(p.16)|ものづくり補助金
省力化枠(オーダーメイド枠)の補助金額は従業員数ごとに異なります。「5人以下の場合は750万円まで」「100人以上の場合は8,000万円まで」など、従業員数によって補助上限額が異なるため、従業員数を正確に申告する必要があります。
また、従業員の定義は「中小企業基本法上の常時使用する従業員」に則って定められています。「アルバイト」「契約社員」なども含まれる場合があるため、省力化枠(オーダーメイド枠)を申請するときは常時使用する従業員の定義を確認しておく必要があります。
なお、大幅賃上げによる特例要件を満たした場合は、補助上限額が引き上げられます。従業員数によっては補助上限額を最大1億円まで引き上げられる可能性があるため、高額な設備投資を検討している場合は特例要件も押さえておくようにしましょう。
補助率
省力化枠(オーダーメイド枠)の補助内容における確認項目のひとつは「補助率」です。ものづくり補助金の補助率は申請枠ごとに異なるため、省力化枠(オーダーメイド枠)を申請する場合は省力化枠(オーダーメイド枠)の補助率を確認することになります。
申請者 |
補助率 |
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【受給額が1,500万円までの部分】補助率1/2 【受給額が1,500万円を超える部分】補助率1/3 |
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【受給額が1,500万円までの部分】補助率2/3 【受給額が1,500万円を超える部分】補助率1/3 |
参考:公募要領 18次締切分(p.16)|ものづくり補助金
たとえば、従業員数21人以上の中小企業者が6,000万円の設備投資を行う場合、受給額が1,500万円までの部分とは、3,000万円分を指します。3,000万円分には補助率1/2が適用されるため、受給額が1,500万円までの部分は「3,000万円×1/2=1,500万円」を受給できます。
従業員数21人以上の中小企業者が6,000万円の設備投資を行う場合、受給額が1,500万円を超える部分とは、3,000万円分を指します。3,000万円分には補助率1/3が適用されるため、受給額が1,500万円分を超える部分は「3,000万円×1/3=1,000万円」を受給できます。
なお、補助率は申請者の属性によっても異なります。「補助金の受給額」「自己負担額」など、補助率を理解しなければ算出することができないため、省力化枠(オーダーメイド枠)の申請を検討している人は補助率の計算方法も確認しておきましょう。
対象経費
省力化枠(オーダーメイド枠)の補助内容における確認項目のひとつは「対象経費」です。ものづくり補助金の対象経費はどの申請枠でも共通しているため、省力化枠(オーダーメイド枠)を申請する場合は共通の対象経費項目を確認することになります。
対象経費項目 |
具体例 |
機械装置・システム構築費 |
「AIロボットの製作費」 「管理システムの構築費」など |
技術導入費 |
「商標権や著作権の取得費」 「最先端技術に関する実用新案権の取得費」など |
専門家経費 |
「大学教授への謝金」 「ITコーディネーターへのコンサルティング費」など |
運搬費 |
「既存設備の移動費」 「契約書の郵送代」など |
クラウドサービス利用費 |
「サーバーやプロバイダ契約料」 「WEBプラットフォーム利用料」など |
原材料費 |
「試作品開発用の原材料費」 「試作品開発用の副資材購入費」など |
外注費 |
「新製品のデザイン設計委託料」 「品質検査の請負料」など |
知的財産権等関連経費 |
「特許出願のための手続き費」 「外国特許出願のための翻訳料」など |
参考:公募要領 18次締切分(p.22)|ものづくり補助金
対象経費のひとつは「機械装置・システム構築費」です。全申請枠の共通条件として、単価が50万円以上(税抜き)の設備を導入しなければならないため、省力化枠(オーダーメイド枠)を申請する人は単価が50万円以上のオーダーメイド設備を導入することになります。
対象経費のひとつは「原材料費」です。「試作品開発用の原材料費」「試作品開発用の副資材購入費」などは原材料費に含まれるため、オーダーメイド設備の製作過程において試作品を開発した場合は、原材料費として補助対象経費に計上できます。
なお、補助対象経費には留意事項があります。「機械装置・システム構築費以外の費用の場合、補助上限額は総額500万円まで」「補助対象経費は事業計画全体の経費の3分の2以上であること」などの留意事項があるため、資金計画を立てるときは念頭に置いておきましょう。
ポイントは省力化枠(オーダーメイド枠)の申請要件を押さえること
ものづくり補助金の省力化枠(オーダーメイド枠)を申請するときのポイントは、省力化枠(オーダーメイド枠)の申請要件を押さえることです。申請要件を押さえることにより、
申請に必要な条件が明確になるため、省力化枠(オーダーメイド枠)の申請要件を確認してみましょう。
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省力化枠(オーダーメイド枠)を申請するときは「基本要件」「追加要件」を押さえる必要があります。どちらの要件も満たさなければ申請できないため、省力化枠(オーダーメイド枠)を検討している人は、それぞれの要件を確認してみましょう。
基本要件
省力化枠(オーダーメイド枠)の申請要件のひとつは「基本要件」です。基本要件はどの申請枠にも共通する要件のため、省力化枠(オーダーメイド枠)の申請を検討している人は、ものづくり補助金の基本要件を確認してみましょう。
以下の条件をすべて満たす3年から5年の事業計画書を策定し、実行すること。
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参考:公募要領 18次締切分(p.14)|ものづくり補助金
ものづくり補助金の基本要件は3年から5年の事業計画書を策定することです。事業計画書には「付加価値額」「給与支給総額」「事業場内最低賃金」の3項目において、定められた水準まで引き上げる計画内容を策定しなければなりません。
ものづくり補助金の基本要件は3年から5年の事業計画を実行することです。「3%以上増加」「1.5%以上増加」「30円以上増加」など、定められた水準を達成するために、策定した事業計画を実行しなければなりません。
なお、基本要件を達成できなかった場合は、補助金の返還が求められる可能性があります。増加目標が達成できなかった場合は、補助金の一部返還が求められる可能性があるため、省力化枠(オーダーメイド枠)に申請するときは基本要件を達成できるかどうかも含めて検討するようにしましょう。
追加要件
省力化枠(オーダーメイド枠)の申請要件のひとつは「追加要件」です。基本要件に加え、追加要件も満たさなければ申請できないため、省力化枠(オーダーメイド枠)の申請を検討している人は追加要件も確認してみましょう。
項目 |
概要 |
労働生産性 |
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投資回収年数 |
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外部SIerを活用する場合 |
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金融機関から資金調達する場合 |
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参考:公募要領 18次締切分(p.16)|ものづくり補助金
追加要件のひとつは「労働生産性を2倍以上にすること」です。労働生産性は「付加価値額(もしくは生産量)/(労働人数× 労働時間)」により算出し、設備投資前と比較して労働生産性が2倍以上の成果をあげる事業計画を策定しなければなりません。
追加要件のもうひとつは「事業計画期間内に投資回収可能であること」です。投資回収年数は「投資額/(削減工数×人件費単価)」により算出し、3年から5年の事業計画期間内に投資額が回収可能な事業計画を策定しなければなりません。
なお、状況によっては他の追加要件も満たさなければなりません。「外部SIerを活用する」「金融機関から資金調達する」場合は、それぞれ契約書や確認書などの追加書類の提出が求められる可能性があることを留意しておきましょう。
ポイントを押さえた人は補助金申請の相談先も確認しておく
省力化枠(オーダーメイド枠)を申請するときのポイントを押さえた人は、申請するときの相談先も確認しておきましょう。相談先は相談内容によって異なる場合があるため、相談内容に応じて使い分けることを検討してみましょう。
相談内容 |
相談先 |
申請手続きや公募要領に関する質問など、公的な回答が知りたい場合 |
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事業計画書の作り方や採択率を上げる方法など、アドバイスが知りたい場合 |
<補助金の申請支援を行っている相談先候補>
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公的な回答が知りたい場合は「ものづくり補助金事務局サポートセンター」に問い合わせることになります。「申請手続きに関する質問」「公募要領に関する質問」などの公的な回答が知りたい場合は、ものづくり補助金事務局の問い合わせ先を確認することになります。
アドバイスが知りたい場合は「補助金の申請支援を行っている相談先候補」に問い合わせることになります。「事業計画書の作成支援」「採択率を上げる助言」などのアドバイスが知りたい場合は、補助金の申請支援を行っている相談先を確認することになります。
なお、相談には費用がかかる場合もあります。無料の相談窓口を設けている相談先もありますが、民間業者に申請支援を依頼する場合は費用が発生する傾向があるため、相談先を探すときは費用の面からも検討するようにしましょう。
ものづくり補助金の相談先に関する情報を知りたい人は「ものづくり補助金における相談先を解説」を参考にしてみてください。
この記事のまとめ
ものづくり補助金の省力化枠(オーダーメイド枠)を申請するときのポイントは、省力化枠の要点を押さえることです。「オーダーメイド設備を導入すること」「設備の導入により自動化や高度化が見込めること」が要点として挙げられるため、それぞれの要点を確認してみましょう。
省力化枠(オーダーメイド枠)を申請するときのポイントは、省力化枠の補助内容を押さえることです。「補助金額」「補助率」「対象経費」を押さえることにより、事業の資金計画が具体化されるため、それぞれの補助内容を確認してみましょう。
省力化枠(オーダーメイド枠)を申請するときのポイントは、省力化枠(オーダーメイド枠)の申請要件を押さえることです。「基本要件」「追加要件」のどちらも押さえることにより、申請に必要な条件が明確になるため、それぞれの申請要件を確認してみましょう。