補助金ガイド

ものづくり補助金で対象となるシステム開発と採択事例を解説

2024/04/19

2024/1/19

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

ものづくり補助金に関心がある人の中には、ものづくり補助金でシステム開発ができるか知りたい人もいますよね。その際、自社開発のシステムは対象なのか、人件費は補助されるのかなどを詳しく知りたい人もいるでしょう。

当記事では、ものづくり補助金で対象となるシステム開発の可否を、ソフトのみの場合や自社開発の場合を含めて解説します。システム開発での採択事例も紹介するので、ものづくり補助金を利用してシステム開発を検討している方は当記事を参考にしてみてください。

ものづくり補助金で対象となるシステム開発

ものづくり補助金でシステム開発をしてみたい人は、対象となるシステム開発を確認してみましょう。ソフトのみの開発や商品化をしないシステム開発が補助の対象ですが、自社の社員のみで完結するシステム開発は補助の対象外です。

【ものづくり補助金で対象となるシステム開発の対象可否】
システム開発の手法 ソフトのみ ハード+ソフト
商品化の有無 商品化を前提としたシステム 自社の社内向けシステム
システムインテグレーター
(Sler)の依頼有無
依頼する 依頼しない
×

たとえば、システム構築を他社へ依頼する場合、システムを動かすために必要な機械設備(ハード)の購入費と他社に支払うシステム構築(ソフト)の費用の両方が補助の対象です。

一方、自社の社員を使ってシステム構築をする場合は、システムを動かすために必要な機械設備や部品(ハード)の購入費用が補助の対象になります。ただし、システム構築(ソフト)のために支払う自社の社員の人件費は、補助の対象外です。

自社でシステム構築をする際、テストやコーディングを外注先に依頼する場合は、交付申請時に外注先との契約書が必要になります。外注費を申請する際は、採択後に契約書を提出するのを忘れないようにしましょう。

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賃上げにつながるシステム開発が対象

ものづくり補助金で対象となるシステム開発は、賃上げにつながることが対象とされています。ものづくり補助金の基本要件は3つあり、基本要件のうち2つは賃上げに関する要件です。そのため、申請する事業者はシステム開発による作業時間の短縮や作業効率のアップが求められます。

【ものづくり補助金の賃上げ要件(基本要件)】

種類 概要
①給与支給総額の増加

事業計画期間において、給与支給総額を年平均成長率1.5%以上増加させること。

②最低賃金の引き上げ

事業計画期間において、事業場内最低賃金(補助事業を実施する事業場内で最も低い賃金)を、毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準とすること。

③付加価値額の増加

事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年平均成長率 3%以上増加させること。

基本要件を満たすには、事業者の生産性を向上するシステム開発を行い、事業の収益を上げ、従業員や役員の給与を上げる事業計画を作ることです。ものづくり補助金でシステム開発をする場合は、システム開発で賃上げができる根拠となる数値やデータを事業計画に盛り込みましょう。

なお、ものづくり補助金の採択を判断する審査では、事業者が提出する事業計画の内容が重要です。事業計画書の書き方について知りたい人は「ものづくり補助金で採択される事業計画書の書き方」を参考にしてみてください。

採択後に開発を開始するシステムが対象

ものづくり補助金で補助されるシステム開発は、事業者が採択された後に開発するシステムです。申請の時点でシステム開発を開始していると、補助の対象外となるので注意してください。

【ものづくり補助金で対象となるシステム開発の開始タイミング】
ものづくり補助金(事務局)の動き 事業者の動き
①公式サイトで公募要領の発表 ①公募要領を確認する
②申請受付を開始

②ものづくり補助金に電子申請でシステム開発を含む事業計画を提出する

③公式サイトで採択結果を発表 ③ものづくり補助金に採択される
④交付申請の受付

④交付申請でシステム開発の機械購入やシステム構築費の見積書を提出する

⑤交付決定の連絡 ⑤補助事業としてシステム開発を開始する

ものづくり補助金でシステム開発を始めてよいタイミングは、交付申請書が承認されたあとです。既に自社にあるシステムの開発費用や、申請時点でシステムインテグレーター(Sler)と契約を結んだ場合は補助の対象外なので、留意しましょう。

なお、令和6年のものづくり補助金の17次公募と18次公募では、補助事業を令和6年12月10日までに終える必要があります。これまでは補助事業期間が最大10か月ありましたが、17次公募では最大6か月程度しかありません。17次公募または18次公募に採択された人は、令和6年12月10日までに終えられるようにしましょう。

補助対象経費は機械装置システム構築費で申請する

ものづくり補助金でシステム開発をする場合、補助対象経費は「機械装置システム構築費」や「外注費」で申請します。補助対象経費とは補助金が補助対象とする経費のことで、ものづくり補助金の場合、グローバル枠では全11種類、その他の申請枠では全8種類の補助対象経費があります。

システム開発の場合、どのようにシステム開発をするかの手法により、申請する補助対象経費の種類が異なります。

【システム開発の形態による補助対象経費の種類】

システム開発の手法形態 対象となる補助対象経費の種類

ソフトウェア、

アプリケーションを

単独で開発する

 

 

 

原材料費

コンテンツ配信システムの試作品制作で購入する部品やサーバーの費用

運搬費

コンテンツ配信システム開発で取り寄せる部品やサーバーなどの宅配費用

技術導入費

開発したコンテンツ配信システムの特許取得、商標登録等にかかる費用

知的財産権等の関連経費

コンテンツ配信システムの特許取得、商標登録の申請代行を弁護士に依頼する際の費用

外注費

システムの検収やテスト作業を他社へ外注する際の費用

専門家経費

コンテンツ配信システムのリリース前に、製品・システムセキュリティ設計支援を依頼する費用

クラウドサービス利用費

制作したコンテンツを既存のコンテンツ配信サービスを利用して配信する際の月額費用

海外旅費

国内で制作したシステムを販売するための商談に行く費用

通訳・翻訳費

海外での商談や展示会で必要な通訳や翻訳の費用

広告宣伝・販売促進費

海外でシステムを宣伝するためのWEB広告費や媒体掲載費

ハードウェアも

開発する

機械装置・システム構築費

Wi-Fi接続で視聴できる独自コンテンツ配信システムの開発費(要件定義、設計、開発・実装、テストに関わる人件費)

他社の開発した

システムを契約して

導入する

自社で企画したシステム

開発を他社に外注する

たとえば、システムに必要な機械や部品を購入する場合は、機械や部品の購入費用を「機械設備・システム構築費」として申請することになります。

一方、システムのプログラムや実装は自社で行い、他社にシステムのテスト作業のみを外注する場合は「外注費」として申請します。

ものづくり補助金の主な補助対象経費は「機械設備・システム構築費」となり、機械設備・システム構築費は単価50万円以上である必要があります。申請の際は補助対象経費の要件を意識してみてください。

なお、システム開発の依頼先は、申請者と 同一の代表者・役員が含まれる事業者の場合は対象外です。グループ企業や関連会社内で受発注をする場合は、ものづくり補助金で不採択となる可能性があるので、別の事業者を選択するようにしましょう。

当サイトを運営する株式会社SoLaboはシステム開発部門があるため、ものづくり補助金を活用したシステム開発について専門性の高いアドバイスが可能です。申請の方法や流れ、開発するシステムが対象となるかなどを知りたい人は無料診断よりお問い合わせください。

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パソコンや販促費は対象外

ものづくり補助金では、パソコンやシステムの販促費は補助の対象外です。ものづくり補助金ではパソコンのような汎用性のある機械設備は補助されません。また、開発するシステムを商品化する際の各種マーケティング費用も対象外となります。

【ものづくり補助金で補助されない経費と例】
項目 システム開発時の例
汎用性のある端末の購入費用

システム開発時のプログラムを作成するため、Macを購入する費用

商品化する際のマーケティング費用

システムを販売するため、リスティング広告やYouTube広告を出す際の費用

通信費 システム開発時に使用した事務所の光熱費
人件費

システム開発をする際の自社のエンジニア、プログラマー等に支払う給料

書籍・雑誌代 システム開発の参考にするための書籍やIT雑誌の購読費用

※ものづくり補助金17次公募・18次公募 省力化(オーダーメイド)枠の場合
参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業 公募要領(18次締切分)1.1版|ものづくり補助金

ものづくり補助金で対象外となる経費は、公募要領の「補助対象外経費」に記載されています。申請時に対象外の経費を記載すると、事務所から差し戻される場合や不採択となる場合があるので、申請の際は補助対象外の経費に注意しましょう。

システム開発の採択事例

ソフトウェアのシステム開発の事例には、機器専用の組み込みソフトウェアの開発やWEBアプリの開発が複数あります。また、ハードウェアのシステム開発では、専門的な装置とソフトウェアを連携させるシステム開発が採択された事例が複数あります。

【システム開発の採択事例】

ソフトウェア・アプリ開発

スマートフォンアプリを利用した外出中の認知症高齢者お声がけシステムの開発

ハードウェアを含むシステム開発

三次元画像センサーを用いた効果的エクササイズ支援システム開発

他社のシステムの導入

自社工場内でさまざまなハンドリングテストを行える実証用ロボットシステム導入

商品化を含むシステム開発

小型掌紋認証システム端末の試作製品開発およびテスト販売

参考:成果事例のご紹介|ものづくり補助金

たとえば、WEBアプリ開発の場合、印刷業を営む事業者がスマートフォンアプリを開発し、Beaconセンサーと連携した採択事例があります。電波圏内で反応するBeaconセンサーとスマートフォンアプリを連携させることで、認知症高齢者が近づくと関係者に通知されるシステムが構築されました。

また、商品化を含むシステム開発の場合、電子製造業を営む事業者による「小型掌紋認証システム端末」の試作品開発とテスト販売の採択事例があります。同社はもともと販売していた「回析格子レーザーを用いた画像処理システム」を小型化することで、より低価格な掌紋認証システムを実現しました。

ものづくり補助金で採択されたシステム開発は、事業者の技術や環境を活かし、革新的な製品やサービス、生産工程の改善につなげる事業計画です。過去の採択事例の詳細を確認したい人は、公式サイトにある「成果事例のご紹介」の空欄に「システム開発」と入力して検索してみましょう。

この記事のまとめ

ものづくり補助金では、ソフトのみの開発や商品化をしないシステム開発も補助の対象です。一方、自社の社員のみで開発するシステムは、人件費が補助の対象外となるため、申請できる補助対象経費は削減されます。

ものづくり補助金の基本要件は賃上げに関連するため、対象のシステム開発も賃上げにつながることが前提です。システム開発でものづくり補助金に申請する場合、システム開発で生産性が上がり、最終的に賃上げが可能となる事業計画を立てる必要があります。

ものづくり補助金のソフトウェアのシステム開発の事例には、機器専用の組み込みソフトウェアの開発やWEBアプリ開発があります。システム開発を予定の人は、ものづくり補助金の採択事例を参考に、自社のシステム開発が申請できるか検討してみてください。

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