補助金ガイド

ものづくり補助金はスタートアップも対象!採択事例と注意点を解説

2024/02/29

2024/2/29

この記事の監修

株式会社SoLabo 代表取締役/税理士有資格者田原広一(たはら こういち)

融資支援実績6,000件超、補助金申請支援実績1,300件超、事業再構築補助金採択支援件数は第4回~第8回まで5回連続で日本一を獲得。 『小規模事業者持続化補助金』、『事業再構築補助金』、『IT導入補助金』は自社での申請・採択も経験。「補助金ガイド」LINE公式アカウントでは約4万人の登録者に情報発信を実施。

新たなビジネスモデルを立ち上げるスタートアップの中には、資金調達の選択肢として「ものづくり補助金」を検討する人もいますよね。その中には、「スタートアップも申請できる?」「スタートアップで採択された事例はどんな事例?」など、様々な点が気になる人もいるでしょう。

当記事では、ものづくり補助金の対象となるスタートアップの条件と、スタートアップの採択事例を解説します。スタートアップが注意すべき事項も紹介するので、ものづくり補助金を検討中の場合は当記事を参考にしてみてください。    

ものづくり補助金はスタートアップも対象となる

ものづくり補助金はスタートアップも対象となります。国がものづくり補助金を実施する目的は中小企業等の「革新的な製品・サービスの開発」や「生産プロセスの改善」なので、革新的なビジネスモデルをもつスタートアップは採択される可能性があります。

【スタートアップの定義とものづくり補助金の目的】
スタートアップの定義
  • 革新的なアイデアと新しいビジネスモデルを元に、社会的な課題を

解決する企業

  • 創業から5年以内であり、急成長をとげる企業を指す
  • 大企業と異なり、少数精鋭で運営されている
ものづくり補助金の目的
  • 革新的な製品・サービスの開発、 生産プロセス等の省力化を行い、

生産性を向上させる中小企業・小規模事業者等を、設備投資の費用の

補助で支援する

  • 創業後1期以内の事業者も対象。従業員数は5人以下でも可
  • 対象事業者が常時使用する従業員数と資本金(出資金)の規定は、

業種により異なる

例)情報処理サービスの場合

-常時使用する従業員数:300人まで
-資本金(出資金):3億円まで

  • 「ものづくり」という言葉が使われているが、もの以外をつくる
    飲食業や旅行業等も対象とする

平成24年(2012年)から毎年実施されている「ものづくり補助金」は、中小企業等の設備投資が支援される補助金です。事業歴の浅い企業や個人事業主も補助の対象なので、スタートアップとして革新的な製品やサービスをリリースしたい人は、申請を検討してみましょう。

なお、スタートアップという言葉は「ベンチャー」や「起業」と似た意味で使われることもあります。スタートアップもベンチャーも若い企業という共通点がありますが、スタートアップは「社会貢献を目指す起業」「革新的なビジネスモデル」という違いもあるので留意しましょう。

開業5年以内は加点の対象

ものづくり補助金では、開業5年以内の事業者は加点の対象になります。加点とは「申請要件と別に設定されている条件」のことで、加点を取得する申請者はものづくり補助金の審査での評価が高まります。

【ものづくり補助金の開業に関する加点
(政策加点)】

会社成立や開業日、または代表取締役の就任日が、

ものづくり補助金の公募開始日から5年以内であること

たとえば、2023年12月27に公募が開始された17次公募の場合、スタートアップの設立日が2018年12月27日までなら、政策加点を1つ取得できます。また、スタートアップが新たな経営者を就任させ、別の事業に着手する「第二創業」の場合も、開業と同じように政策加点を1つ取得できます。

17次公募の場合、ものづくり補助金の加点は全部で18種類あり、1つの申請につき最大6つまで取得できます。加点の取得は審査に影響するので、ものづくり補助金での採択を目指す人は「ものづくり補助金の加点の取得方法を解説」を参考にしてみてください。

なお、ものづくり補助金の公式サイトにある「データポータル」では、「加点項目の数」と「最新回の採択率」を表すグラフを閲覧できます。過去に採択された事業者が平均でいくつの加点を取得しているのかも確認できるので、興味のある人はデータポータルでグラフを確認してみましょう。

申請時点で開業していない場合は対象外となる

申請時点で開業していない場合は対象外となります。開業してない事業者は、ものづくり補助金の必要書類の一部である「事業計画書」や「決算書」を提出できないためです。

【申請に必要な書類の種類】※17次公募で全員必須の書類のみ
内容
事業計画書
  • ものづくり補助金を使って実行したい設備投資を記載
  • 3~5年の期間の計画とし、基本要件を満たす
事業計画書算出根拠

事業計画書に記載の「営業利益」「人件費」「減価償却費」

それぞれの数値を分解した数値を記載

決算書等 直近2年間の貸借対照表、損益計算書
従業員数の確認書類

・法人の場合:
法人事業概況説明書の写し

・個人事業主の場合:
所得税青色申告決算書または所得税白色申告収支内訳書の写し

労働者名簿

「事業者名」「従業員数」「従業員氏 名」「生年月日(西暦)」

「雇入れ年月日(西暦)」「従事する業務の 種類」を記載

※応募申請時の従業員数が21名以上で、交付決定後に従業員数が20名以下になった場合のみ

ものづくり補助金の電子申請では、現在の事業内容や「補助事業」と呼ばれる「ものづくり補助金を使って行いたい事業」などの内容を入力します。その際、事業者は事業計画書や決算書などの書類も添付します。

まだ開業していない事業者の場合、事業計画書に記載すべき「今までの自社での取り組み」を記載できません。また、直近2年間の決算書を2期分提出できない場合は1期分でも可能と「よくあるご質問」にはありますが、開業していないと、1期分の決算書も提出できず、必要書類が不十分とみなされます。

ものづくり補助金の対象者は、最低1期(1年)の事業経験をもつ事業者です。事業経験が1年に満たない場合は、申請時期をずらすか、6か月分の事業実績を2倍にして後半を見込み値として1期分にするといった工夫で決算書を作成するように留意しましょう。

なお、ものづくり補助金の公式サイトにある「よくあるご質問」では、事業活動が1期に満たない場合の決算書の記入方法について言及されています。事業期間が短いけれどものづくり補助金に申請したい人は、「よくあるご質問」にある「Q-6」の回答を確認してみてください。

3億円を越える出資を受けた場合も対象外となる

3億円を超える出資を受けた場合も、ものづくり補助金の対象外になることがあります。ものづくり補助金の対象事業者は資本金(出資金)の要件があるためです。

スタートアップは、事業を拡大する上で「エンジェル投資家」や「ベンチャーキャピタル」等から出資金を得ることがあります。ものづくり補助金の対象者には資本金や出資金の要件があるので、多額の出資金を得たスタートアップは対象事業者の要件から外れます。

【ものづくり補助金の対象事業者の要件】
資本金(出資金)

5,000万円~3億円以下

※下限は決められていない
※業種による

例)情報処理サービス業の場合、3億円以下

常時使用する従業員数

50人~900人以下

※下限は決められていないため、従業員なしの事業者も対象
※従業員数は業種による

例)情報処理サービス業の場合、300人以下

この他、過去3年間にものづくり補助金での採択実績が2回以上ある場合も対象外となり、1回の場合は減点となります。過去にものづくり補助金の採択を受けたことのあるスタートアップは、2度目に申請するタイミングが採択から3年以上経過しているか確認しましょう。

スタートアップが採択された事例

スタートアップが採択された事例には、自動車をリモート操作できるプラットフォーム事業で採択された事例があります。また、2022年10月に設立された「モビリティ」事業を行うスタートアップは、開業から2年未満の2024年1月に採択されました。

【16次公募ものづくり補助金でスタートアップが採択された事例】
設立年月 業種 採択された事業内容
2022年4月 コミュニティ運営 プロダクト開発人材の流動性を高めるPM Career 構想
2022年4月 エンタメ OIKOS二次流通取引プラットフォームの開発
2022年6月 コンサルタント LED光源で発電する商品棚の開発
2022年8月 サービス開発 Generative AIを用いた業務特化型クラウドサービスの開発
2022年10月 モビリティ

自動車をリモート操作できるコネクテッドサービス

プラットフォーム提供事業

2023年6月 アプリ開発 AIを活用したパーソナライズ言語アプリの開発

事業分野や市場にもよりますが、一般的にスタートアップは画期的なビジネスモデルをもち、設立から1年〜5年の企業と言われています。ものづくり補助金の16次公募の採択事例をみると、画期的なビジネスモデルを持つ若い事業が複数採択されていたことが確認できました。

ものづくり補助金の公式サイトにある「成果事例のご紹介」を検索すると、複数のスタートアップが採択されている事が分かります。過去にスタートアップが採択された事例を確認したい人は、「成果事例のご紹介」の検索窓から「スタートアップ」で絞り込んでみてください。

受け取れる補助額を知りたい人は補助金額や補助率を確認する

受け取れる補助額を知りたい人は、補助金額や補助率を確認しましょう。ものづくり補助金では、事業者の革新的な製品やサービスを開発や生産工程の改善のための費用が、最大8,000万円まで補助されます。

【ものづくり補助金の概要】
補助金額の範囲 従業員数
5人以下 :100万円~750万円
6~20人 :100万円~1,500万円
21~50人 :100万円~3,000万円
51~99人 :100万円~5,000万円
100人以上:100万円~8,000万円
補助率 補助金額が1,500万円まで 1,500万円を超える部分
中小企業:1/2
小規模企業者・小規模事業者・再生事業者※:2/3
1/3
補助対象経費
  • 機械装置・システム構築費
  • 運搬費
  • 技術導入費
  • 知的財産権等関連経費
  • 外注費
  • 専門家経費
  • クラウドサービス利用費
  • 原材料費

※中小企業再生支援協議会等から支援を受け、応募申請時において再生計画等を「策定中」または「策定済」である者
ものづくり補助金の公式サイトにある「公募要領(17次締切分)」をもとに、株式会社ソラボが作成

従業員数が5人以下のスタートアップの場合、補助金額は100万円〜750万円の範囲で受け取れます。その際、補助率は2/3となるので、たとえば300万円のドローンを購入する場合は、受け取れる補助金の予定額は200万円となります。

ものづくり補助金で補助される金額は、事業者が支払う機械装置やシステム費に補助率をかけた金額かつ補助上限額以内の金額です。事業者の支払う補助対象経費や従業員数が多いほど受け取る金額も増える補助金なので、申請する際は支払う予定の補助対象経費や従業員数に留意しましょう。

利用を検討している人は申請の流れを確認しておく

ものづくり補助金の利用を検討している人は、申請の流れを確認しておきましょう。ものづくり補助金は公募開始後から申請締め切りまでの期間が短いこともあるので、事前に準備をしておくとスムーズに申請できます。

ものづくり補助金の申請プロセスは、まず基本要件とスケジュールの確認から始まり、問題がなければ必要書類の準備が続きます。ものづくり補助金の申請は、必要書類の作成だけでなく、要件の確認も大切です。

【ものづくり補助金の申請の流れ】
①基本要件とスケジュールの確認をする
基本要件 スケジュール

①給与支給総額の増加

事業計画期間において、給与支給総額を

年平均成長率1.5%以上増加させること

②最低賃金の引き上げ

事業計画期間において、事業場内最低賃金を、

毎年、地域別最低 賃金+30円以上の水準とすること。

③付加価値額の増加

事業計画期間において、事業者全体の付加価値額

を年平均成長率 3%以上増加させること

<18次公募の場合>
公募開始日:
2024年 1月 31日(水)17:00

申請開始日:
2024年 3月 11日(月)17:00

申請締切日:
2024年 3月 27日(水)17:00

②必要書類を用意する
  • 事業計画書
  • 賃金引上げ計画の誓約書
  • 決算書等
  • 従業員数の確認資料
  • 労働者名簿
③電子申請をする
  • GビズプライムIDを作成する
  • 電子申請マニュアルを読み、入力事項の確認をする
  • 必要書類をPDF化する
  • GビズIDプライムでログインして、必要事項の入力と添付を行い、送信する

ものづくり補助金に申請するには、複数のプロセスが必要です。申請から補助金を受け取るまでに1年以上かかる場合もあるので、ものづくり補助金を検討する際はすぐに資金を受け取れる支援策ではないことを留意しておきましょう。

なお、ものづくり補助金の18次公募以降のスケジュールは、2024年2月27日現在、公表されていません。未定です。先のスケジュールを知りたい人は、ものづくり補助金の公式サイトをこまめに確認してみてください。

18次へ申請する場合は3つの申請枠から選ぶ

18次ものづくり補助へ申請する場合は、3つの申請枠から選びます。申請枠とは「テーマが異なるグループ」のような区分のことで、18次公募では「省力化(オーダーメイド)枠」「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」の3つの申請枠があります。

各申請枠の名称には、各申請枠のテーマが反映されています。

【18次申請枠とテーマ】
申請枠 テーマ

省力化(オーダーメイド)

今より少ない人材や時間で事業を進めること

製品・サービス

高付加価値化枠

通常枠 成長分野進出類型(DX・GX)

革新的な製品・サービス開発へ

取り組むこと

DXやGXなどの今後成長が

見込まれる分野において、

革新的な製品・サービス

開発に取り組むこと

グローバル枠

海外事業と国内事業を実施しており、国内の生産性を高める

取り組みをすること

たとえば、省力化(オーダーメイド)枠の場合、これまで人が手作業で送っていたメールを自動配信に切り替えるといった事業がテーマに該当します。

また、製品・サービス高付加価値化枠の成長分野進出類型(DX・GX)の場合は、農業で発生していた廃棄物をバイオマス燃料にするといった事業がテーマに該当します。

ものづくり補助金にはテーマの異なる申請枠があるので、テーマに沿った内容の事業計画を提出することが重要です。申請枠は公募回ごとに変わることもあるので、スタートアップがものづくり補助金に申請する際は、公式サイトから最新の公募要領を利用するように留意しておきましょう。


スタートアップが対象のその他の補助金

スタートアップが対象のその他の補助金には、創業助成金や小規模事業者持続化補助金があります。スタートアップにはシード期、アーリー期、ミドル期など成長段階の区分があり、公的な補助金ではその区分に合った補助金が用意されています。

【スタートアップが対象の補助金と助成金】
成長段階の時期
(備考)
補助金または助成金名
(管轄)

シード期
(アイデア段階から資金調達をして

製品・サービスを開発するまで)

創業助成金
(東京都中小企業振興公社)
起業支援金
(内閣府)
福島創業補助金
(福島県)
地域復興実用化開発等促進事業費補助金
(福島県)
出向起業補助金
(経済産業省)

アーリー期
(製品・サービスを磨き上げ、

顧客を獲得して成長するまで)

小規模事業者持続化補助金
(商工会・商工会議所)
IT導入補助金
(経済産業省)

ミドル期
(ビジネスを最適化し、市場拡大に

取り組むまで)

事業再構築補助金
(経済産業省)

レイター期(市場シェアを獲得し、

2度目のの資金調達の実施まで)

事業承継:引継ぎ補助金
(中小企業庁)

たとえば、創業時から1〜2年ほど経つアーリー期の場合、広告や宣伝でユーザーへ認知させる事が大切です。小規模事業者持続化補助金は販売促進のためのホームページ制作やチラシ政策に使える補助金なので、ア―リー期のスタートアップにも適しています。

また、創業から3〜4年ほど経つミドル期の場合は、スタートアップが企業として組織を整え、市場での競争力を高めることが大切です。事業再構築補助金は建物の改修工事や機械装置・システム導入に使える補助金なので、新たな方向へ向かうミドル期のスタートアップに適しています。

国によるスタートアップへの支援制度は、この他にも融資や税制優遇があります。スタートアップが利用できる支援措置を一覧で知りたい人は「経済産業省スタートアップ支援策一覧」を参考にしてみてください。

この記事のまとめ

ものづくり補助金はスタートアップも対象となります。国がものづくり補助金を実施する目的は中小企業等の「革新的な製品・サービスの開発」や「生産プロセスの改善」なので、革新的なビジネスモデルをもつスタートアップは採択される可能性があります。

スタートアップが採択された事例には、16次公募で自動車をリモート操作できるプラットフォーム事業で採択された事例があります。また、2022年10月に設立された「モビリティ」事業を行うスタートアップは、2024年1月に採択されました。

スタートアップが対象のその他の補助金には、創業助成金や小規模事業者持続化補助金があります。スタートアップにはシード期、アーリー期、ミドル期など成長段階の区分があり、公的な補助金ではその区分に合った補助金が用意されています。

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