事業再構築補助金のGX進出類型を解説
2024/05/09
2022/3/15
事業再構築補助金の第12回公募では、グリーン成長枠が廃止され新たに「成長分野進出枠(GX 進出類型)」(以下、GX進出類型)が新設されました。第11回公募まで募集していたグリーン成長枠と要件は似ていますが、補助額や要件に一部変更点があります。
当記事では、新たな申請枠であるGX 進出類型を解説します。GX進出類型への申請を検討している人は参考にしてみてください。
なお、当記事は事業再構築補助金の第12回公募要領をもとに作成しています
目次
GX進出類型はグリーン成長戦略に取り組む事業者が対象の申請枠
GX進出類型は、ポストコロナに対応したグリーン成長戦略「実行計画」14 分野の課題の解決につながる事業再構築を支援する枠です。グリーン成長戦略とは、経済産業省が中心となり策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を示します。
【GX進出類型の概要】
対象 |
ポストコロナに対応した、グリーン成長戦略「実行計画」14分野の課題の解決に資する取組みを行う事業者 |
補助金額 |
100万円~1.5億円 |
補助率 |
中小企業:1/2(2/3) 中堅企業:1/3(1/2) ※()は大幅な賃上げを行う場合 |
参考:第12回公募要領|事業再構築補助金
GX進出類型に申請する事業者は、グリーン成長戦略の14分野の中から自社が取り組む分野における課題の解決に寄与する取り組みが求められます。GX進出類型に申請したい人は、まずグリーン成長戦略「実行計画」の14分野を確認してみましょう。
グリーン成長戦略14分野に資する取組みが求められる
GX進出類型の申請には、グリーン成長戦略14分野に資する取り組みが要件として求められます。単に環境に配慮した取り組みが認められるものではないため、経済産業省が策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を確認しておきましょう。
【2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略】
エネルギー関連産業 |
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輸送・製造関連産業 |
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家庭・オフィス関連産業 |
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グリーン成長戦略には、それぞれの分野において「主な今後の取組」と「2050年における国民生活のメリット」が掲げられています。GX進出類型への申請者は、それらの内容に寄与する事業再構築を行っていく必要があります。
輸送・製造関連産業の場合、自動車・蓄電池産業における戦略として自動車の電動化や蓄電池の普及を掲げています。ガソリン車からEV車向けの事業へ転換させる取り組みや、電動車向けの蓄電池の開発に新たに取り組む事業が補助対象となる可能性があります。
事業再構築補助金のGX進出類型に申請する場合、グリーン成長戦略14分野に資する取組みが求められます。申請を検討する際はまず「自社はどの分野の中で、どのような事業を目指し取組むのか」を、具体的な事業計画として設定しましょう。
GX進出類型に申請するには要件を満たす必要がある
事業再構築補助金を申請する際には、申請者が満たさなければならない「要件」が設定されています。その際、すべての申請者に求められる要件に加え、申請枠によって求められる要件が設定されています。
【GX進出類型における申請要件】
申請要件 |
概要 |
事業再構築要件 |
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金融機関要件 |
(金融機関等から資金提供を受ける場合は、資金提供元の金融機関等から事業計画の確認が必要) |
付加価値額要件 |
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GX 進出要件 |
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給与総額増加要件 |
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別事業要件 ※2回目の申請の場合 |
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能力評価要件 ※2回目の申請の場合 |
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補助率等引上要件 ※補助率引き上げを申請する場合 |
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参考:第12回公募要領|事業再構築補助金
認定支援機関要件や金融機関要件はすべての申請者が対象の要件であるのに対し、GX進出要件や能力評価要件は選択した申請枠や事業者の状況によって異なる要件です。GX進出類型へ申請する人は設定されている要件をすべて満たすことが必要です。
なお、付加価値額要件は全ての枠に定められている要件ですが、年平均成長率の数値は申請枠によって異なります。年平均成長率の要件を満たせないと補助金を受給できないため、自社が申請する枠の数値を確認し事業計画に不備がないよう注意しましょう。
GX進出類型の補助上限額や補助率は企業の規模によって異なる
GX進出類型の補助上限額や補助率は、企業の規模や従業員数によって異なります。事業再構築補助金では、類型や企業規模ごとに補助率や補助金額が設定されているからです。
【GX進出類型の補助上限額と補助率】
企業規模 |
従業員規模/補助上限額 |
補助率 |
中小企業 |
20人以下/3,000万円(4,000万円) 21人~50人/5,000万円(6,000万円)) 51人~100人/7,000万円(8,000万円) 101人以上/8,000万円(1億円) |
1/2(2/3) |
中堅企業 |
1億円(1.5億円) |
1/3(1/2) |
※()の数値は短期に大規模な賃上げを行う場合 |
参考:「事業再構築補助金の概要」|経済産業省
たとえば、従業員数80人の中小企業が1億円の経費を申請した場合、受けられる補助金額は最大5,000万円です。補助上限額は7,000万円であっても、中小企業の補助率が1/2であるため、1億円の申請額に1/2の補助率を掛けた5,000万円が補助金額となります。
なお、補助金に申請する事業者が大規模な賃上げを行う場合は、補助率をさらに引き上げることが可能です。GX進出類型の申請者が補助率の引き上げを申請する際の要件を確認してみましょう。
事業者が大幅な賃上げを行うことで補助率を引き上げられる
GX進出類型に申請する事業者は、大幅な賃上げを行うことで「補助率引き上げ」を申請することができます。事業再構築補助金では、事業者が大規模な賃上げを行う場合に補助率の引上げを行う要件を設定しているためです。
【補助率等引上要件の概要】
1. 補助事業期間内に給与総額を年平均6%以上上昇させること 2. 補助事業期間内に事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引上げること |
補助事業期間内に補助率引き上げの要件をいずれも達成した場合、中小企業は1/2の補助率が2/3に引き上げられ、中堅企業は1/3の補助率が2/3に引き上げられます。また、補助上限額も従業員数に応じて引き上げられます。
GX進出類型に申請する事業者は、一定以上の賃上げを行うことで補助率を引き上げることが可能です。ただし、事業終了後の3~5年で給与総額を年率平均2%以上増加できなかった場合は補助金額・補助率引き上げ分の金額の返還が求められることを留意しておきましょう。
<h3>事業者が促進枠の対象になると補助金額の上乗せを受けられる
事業再構築補助金では2つの「上乗せ措置」が設けられており、対象になる事業者は補助金額の上乗せを受けられます。上乗せ措置には「卒業促進上乗せ措置」と「中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置」があり、どちらか1つの枠を申請できます。
【上乗せ措置の概要】
卒業促進上乗せ措置 |
従業員規模・補助金額 |
補助率 |
GX進出類型に準じる |
中小:1/2 中堅:1/3 |
|
要件 |
補助事業の終了後3~5年で中小企業・特定事業者・中堅企業の規模から卒業すること 【例】 応募時点で中小企業 → 特定事業者、中堅企業又は大企業に成長 ・応募時点で特定事業者 → 中堅企業又は大企業に成長 ・応募時点で中堅企業 → 大企業に成長 |
|
中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置 |
従業員規模・補助金額 |
補助率 |
100万円~3,000万円 |
中小:1/2 中堅:1/3 |
|
要件 |
・補助事業終了後3~5年の間、事業場内最低賃 金を年額 45 円以上の水準で引上げること【賃金引上要件】 ・補助事業終了後3~5年の間、従業員数を年平 均成長率 1.5%以上増員させること【従業員増員要件】 |
参考:「事業再構築補助金の概要」|経済産業省
卒業促進上乗せ措置や中長期大規模賃金引上促進上乗せ措置の補助対象経費は、GX進出類型の補助対象経費と明確に分ける必要があります。同一の建物や設備等を卒業促進上乗せ措置とGX進出類型との両方で対象経費とすることはできません。
また、上乗せされる補助金額は要件達成後に補助金事務局へ実績報告を提出し、確認されたのちに支払われます。そのため、事業再構築補助金の交付とは別時期に入金されることを留意しておきましょう。
GX進出類型の補助対象経費は全部で10種類用意されている
GX進出類型に申請する事業者が活用できる補助対象経費は、全部で10種類用意されています。事業再構築補助金に申請する場合、申請者には事業計画書の提出が求められます。その際、事業計画の中で利用する経費は、設定されている項目に該当する経費を選んで申請します。
【GX進出類型の補助対象経費】
経費項目 |
詳細 |
①建物費 |
建物の建築・改修、建物の撤去など 例:生産施設、検査施設、販売施設、共同作業場、倉庫など 補助事業実施のための建物建設、改修 |
②機械装置・システム構築費 (リース料を含む) |
機械装置、情報システムの購入など 例:機械装置、工具・器具(測定や検査用)の購入、制作、借用 専用ソフトウェア・情報システムなどの購入、構築、借用 |
③技術導入費 |
特許権や商標権のライセンスなど 例:事業遂行のために必要な知的財産権の導入 |
④専門家経費 |
コンサル料や専門家への謝金など 例:大学教授、弁護士、会計士、ITコーディネーターへの謝金、旅費 |
⑤運搬費 |
運搬料、宅配・郵送料など |
⑥クラウドサービス利用費 |
Webツールなどのクラウドサービス利用費 例:クラウドサービスやWEBプラットフォーム利用費 ※パソコンやタブレット端末は対象外 |
⑦外注費 |
製品開発に要する加工、設計などの費用 例:事業遂行に要する加工や設計(デザイン)・検査の一部を外注(請負、委託) |
⑧知的財産権等関連経費 |
特許権に関する士業の手続代行費用など 例:知的財産権の取得に要する弁理士の手続き代行費用 外国特許出願のための翻訳料など知的財産権取得に関する 経費 |
⑨広告宣伝・販売促進費 |
広告作成、媒体掲載、展示会出展など 例:広告(パンフレット、動画、写真など)の作成、展示会出展、 セミナー開催、市場調査、営業代行利用、マーケティングツール活用費 |
⑩研修費 |
教育訓練費、講座受講 などの費用 |
参考:第12回公募要領|事業再構築補助金
たとえば、自動車板金業から蓄電池市場向け「リチウムイオンバッテリー部材」の製造業へ新分野展開する事業の対象経費を想定してみます。
電池用部材に求められる高精度な加工を可能とする加工機の導入は「機械装置費・システム構築費」として申請します。また、加工技術習得のために研修の受講や人材育成を行う経費は「研修費」を活用できます。
GX進出類型に申請する人は、事業再構築補助金の10種類の補助対象経費を活用できます。建物費や機械装置・システム構築費はほぼすべての事業者が申請することになる経費項目であるため、対象になるもの、ならないものを公募要領で確認しておきましょう。
GX進出類型の申請で必要になる書類をすべて確認する
事業者持続化補助金に申請する場合の提出書類を確認しておきましょう。GX進出類型の申請者は、事業再構築補助金の全ての申請者が提出する書類に加え、GX進出類型への申請に必要な書類も合わせて提出が必要です。
【GX進出類型に申請する場合の必要書類】
対象者 |
書類 |
全ての申請者が提出 |
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GX進出類型の申請者が提出 |
|
上乗せ措置に申請する場合に提出 |
|
過去の採択者がGX進出類型に申請する場合に提出 |
|
たとえば、労働基準法に基づく「労働者名簿の写し」は、従業員数を示す書類としてすべての申請者が提出する書類です。また「賃金引上げ計画の誓約書」は、給与総額増加要件を満たすことを説明する書類としてGX進出類型の申請者が提出する書類です。
なお、補助率の引上げや上乗せ措置の申請を希望する場合も、対象の提出書類を用意する必要があります。公募回によって必要書類が異なる可能性があるため、過去に申請したことがある人も申請する公募回の必要書類を確認してください。
過去の採択事例は事業再構築補助金の公式サイトで確認できる
過去の採択事例を知りたい場合は、公式サイトの事例集や採択者事例の内容を確認してみましょう。GX進出類型は12回公募において新設された枠ですが、「グリーン成長枠」として14分野の項目に沿った事例が紹介されているため、事業計画を作成する際のイメージがつきやすくなります。
【グリーン成長枠における採択事例】
事業者 |
事業内容 |
印刷業、ラミネート加工などを行う事業者 |
パッケージのカーボンニュートラルに貢献し、プラスチック容器から代替可能な⾧期保存のための紙製容器を開発 |
ニュースアプリの運営を行っている事業者 |
集めた個人情報をもとにヒトの動きや生活習慣を分析し、どうすればCO2を削減できるか提案するアプリを開発 |
現在、農業の生産者として営業中の事業者 |
高速加温型ヒートポンプを開発し、CO2を削減できる園芸事業プログラムを開発 |
グリーン成長枠の事例を探す方法のひとつとして、公式サイト内に掲載されている「補助金交付候補者の採択結果」も利用できます。実際に採択審査に通過した全国の事業者名と「グリーン成長」「カーボンニュートラル」などのキーワードを含んだ事業計画名を複数確認できます。
グリーン成長枠の事例は、公式サイトの採択事例紹介や事業再構築補助金「グリーン成長枠」想定事例集で確認できます。事業計画をたてる際には、事例に目を通し自社が目指す事業再構築の取組みの参考にしてみましょう。
この記事のまとめ
事業再構築補助金の成長枠(GX進出類型)は、経済産業省の掲げるグリーン成長戦略の「実行計画」14分野に資する事業に取り組む事業者が対象の申請枠です。GX進出類型に申請する事業者は、14分野のフェーズに沿った補助事業の実施が求められます。
GX進出類型の補助金額は最大1億円であり、補助率は中小企業が1/2、中堅企業は1/3と設定されています。また、事業者が大規模な賃上げを行う場合は補助率の引上げが可能であり、促進枠に申請する場合はさらに補助金額を上乗せできる可能性があります。