小規模事業者持続化補助金はフランチャイズでも利用できるのか?
2024/04/08
2023/5/19
フランチャイズ経営を行うオーナーの中には、ポストコロナや物価高騰の環境変化に対応するための対策や、新しい取り組みを考える人もいますよね。その際、計画する取り組みには小規模事業者持続化補助金を利用できるかと調べている人もいるでしょう。
当記事では、小規模事業者持続化補助金はフランチャイズ経営でも利用できるかを解説します。補助金の活用例や概要も紹介していくので、小規模事業者持続化補助金を調べているフランチャイズオーナーは参考にしてみてください。
なお、当記事は小規模事業者持続化補助金の第15回公募要領をもとに作成しています。
小規模事業者持続化補助金はフランチャイズも対象になる
小規模事業者持続化補助金は、フランチャイズも対象のため、フランチャイズ事業を営むオーナーも申請が可能です。小規模事業者持続化補助金は、販路開拓や生産性向上につながる事業計画をたて、申請要件を満たす小規模事業者は誰でも申請が可能だからです。
たとえば、小規模事業者であれば、飲食店やコンビニ、中古品の買取り・販売店など、さまざまなフランチャイズ加盟店が補助金の対象です。また、ハウスクリーニングやリペアサービス、リフォームなどの無店舗のフランチャイズ運営でも対象になります。
小規模事業者持続化補助金は、フランチャイズも対象の補助金であり、事業者の販路開拓や生産性向上に繋がる取り組みにかかる経費の一部が補助されます。フランチャイズオーナーは、採択事例を参考に、補助金の活用方法を考えてみましょう。
鍼灸整骨院の採択事例
鍼灸整骨院とマッサージ院を営む事業者が、子育て世代の多い市場環境を考慮し、子育て中の女性をターゲットにした販路開拓を行いました。女性向け自費治療サービスを重視した産後の骨盤矯正、美容鍼などの施術メニューと料金もわかりやすく紹介されています。
事業の内容 |
活用した経費 |
事業後の効果 |
自社の強みである産後マッサージ、骨盤矯正などの女性向けサービスの積極的な販促 |
広報費 ・パンフレット作成・配布 ・育児誌への掲載 ウェブサイト関連費 ・HP改修 |
・HP月間アクセス数400件から800件へ増加 ・新患予約月平均17件獲得
|
参考:ミラサポplus|経済産業省
鍼灸整骨院の販路開拓を行うための事例では、広報費とウェブサイト関連費が活用されました。その結果、HPの月間アクセス数は400件から1,800件へ増加、新患予約数は月平均で17件獲得と、新規顧客の開拓に繋がりました。
また、保育士資格保有のスタッフの採用やキッズスペース、おむつ台・授乳室などの設置により、親子で安心して治療に通える環境を整えました。その結果、子育て世代の女性患者からの好評の口コミや、定期的な来院にもつながりました。
カフェの採択事例
フランチャイズチェーンのカフェを開業したオーナーが、コロナ禍の2021年に自社の1号店となる店舗をオープンした事例があります。地域のコロナウィルス感染者数の増減を見ながら補助事業を実施した結果、当初の予測を大きく上回る売り上げへと繋がりました。
事業の内容 |
活用した経費 |
事業後の効果 |
1店舗目は開業前の認知度向上と感染症対策をアピールした事業を実施 2店舗目は利便性の良さをアピールした事業を実施中 |
機材装置費 ・レジ前ロールスクリーンや体温計測カメラの導入 広報費 ・ポップ作成や看板の設置 ウェブサイト関連費 ・Google広告の掲載 |
・機材や看板の設置でお客様からのクレームが減少 ・お客様と従業員の安全確保 ・新規顧客、リピーターの獲得 コロナ禍の中でも当初の予測月商を大きく上回り、ポストコロナの中では安定した経営を継続 |
たとえば、経費の活用方法として、ピクトグラム看板の導入があります。視認性に優れた看板は、幅広い層の集客や近隣飲食店との差別化に役立ちました。
また、事例のピクトグラム看板導入のアイデアはフランチャイズ本部からも賛同され、以後全国の新店舗でも導入されるようになりました。
対象経費の活用例を参考に販路開拓の事業計画を立てる
小規模事業者持続化補助金の補助対象経費には、10種類の経費項目がります。項目ごとの活用例を参考に、フランチャイズ経営の事業計画の中でどのように活用できるかを考えましょう。
補助対象経費科目 |
活用事例 |
①機械装置等費 |
補助事業の遂行に必要な製造装置の購入などの経費 ※学習塾の駐輪スペース設置費や飲食店の順番待ち整理券配布システムなどの機材導入にも利用可 |
②広報費 |
新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置などの経費 ※ハウスクリーニングやリペア業のポスティング用広告チラシの作成や、商用車のカーラッピング広告、視認性やデザイン性に優れた看板製作・設置費用などにも利用可 |
③ウェブサイト関連費 |
ウェブサイトやECサイトなどの構築、更新、改修、開発、運用に係る経費 ※集客から受注に繋がる自社サイト制作や、ターゲットを絞ったGoogle広告にも利用可 |
④展示会等出展費 |
展示会・商談会の出展料に係る経費 |
⑤旅費 |
販路開拓(展示会などの会場との往復を含む)を行うための旅費 |
⑥開発費 |
新商品の試作品開発に伴う経費 |
⑦資料購入費 |
補助事業に関連する資料・図書にかかる経費 |
⑧借料 |
機器・設備のリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの) |
⑨設備処分費 |
新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備処分に係る経費 ※コンビニにイートインスペースを設置するため、一部の陳列棚や古い機材などの撤去費用にも利用可 |
⑩委託・外注費 |
店舗改装など自社では実施困難な業務を第3者に依頼(契約必須) |
参考:小規模事業者持続化補助金のガイドブック|小規模事業者持続化補助金事務局
たとえば、学習塾の出入り口の整備と安全性を考え自転車の駐輪スペースを設置することや、飲食店や販売店の待ち時間解消に役立つ整理券配布システムの導入などは、機材装置費を活用できます。
また、ハウスクリーニングや中古品買売の店が、周辺住民への告知や認知度を向上させるため、ポスティングや配布用の広告チラシを作製する際には広報費を活用できます。
小規模事業者持続化補助金には、フランチャイズの補助事業を行う際に使用できる経費が全部で10種類あります。補助金の対象経費は、事業計画によってさまざまな組み合わせ方や活用方法が考えられるため、自社の取り組みに合った経費の活用を検討しましょう。
なお、フランチャイズ経営の場合、ロゴの使用や事業計画の内容に「本部の許可」が必要な可能性もあります。申請する際には本部から確認を得ながら進めていきましょう。
加盟料やロイヤリティなどの経費は対象外になる
小規模事業者持続化補助金を活用した事業計画を立てる際、フランチャイズ本部に支払う加盟料やロイヤリティ、フランチャイズ本部の製作する広告物は補助金の対象外です。本部との取引による経費はすべて対象外になるからです。
たとえば、清掃業を営むフランチャイズオーナーが、本部から購入する道具類一式や加盟料などの初期費用が必要でも補助金の対象になりません。同様に、クリーニング店が使用する本部制作の販促用ポップやポスター、月々に支払うロイヤリティも補助対象外です。
フランチャイズオーナーが小規模事業者持続化補助金を利用する際、本部から購入するものや本部側が製作に関わったものなどは補助金の対象外です。そのため、あくまでも自社が立案や製作を行う内容の事業計画が必須であることを留意しておきましょう。
いくら補助されるのかを上限額や補助率から把握する
小規模事業者持続化補助金を申請した場合、自分がいくら補助されるのかを上限額や補助率から把握しましょう。申請内容によって異なるものの、小規模事業者持続化補助金の補助上限額は、最大で250万円です。
一般型 |
通常枠 |
特別枠 |
|
申請枠 |
通常枠 |
賃金引上げ枠 |
卒業枠 後継者支援枠 創業枠 |
補助率 |
2/3 |
2/3 赤字事業者は3/4 |
2/3 |
補助上限額 |
50万円 |
200万円 |
|
インボイス特例を適用した場合の補助上限額 |
100万円 |
250万円 |
※インボイス特例は、免税事業者であった事業者が、適格請求書(インボイス)発行事業者へ転換した際に受けられる特例であり、適用された場合は50万円が上乗せされる。
参考:小規模事業者持続化補助金第15回公募要領|小規模事業者持続化補助金事務局
たとえば、通常枠にインボイス特例が適用された場合の補助上限額は100万円です。申請者が200万円の補助事業を行った際の補助金額は、200万円に補助率2/3を掛けた150万円と算出されますが、補助上限額は100万円であるため、補助額は100万円となります。
また、経費にウェブサイト関連費を使用した事業計画の場合、ウェブサイト関連費の補助率は申請額の1/4までと決まっているため、たとえば申請する金額が50万円の場合は、12.5万円までがウェブサイト関連費として補助されることになります。
小規模事業者持続化補助金の補助上限額は、通常枠の場合50万円、特別枠の場合は200万円です。しかし、実際に受けられる補助金額は申請者の条件によって違うため、申請する際は自分がいくら補助されるのかを、上限額や補助率を見ながら把握しておきましょう。
ウェブサイト関連費を含んだ計算方法については「いくら受け取れる?小規模事業者持続化補助金の補助率と補助金額の関係性を解説」も参考にしてみてください。
5種類の申請枠から要件を満たす枠を選ぶことになる
小規模事業者持続化補助金の申請枠は、「通常枠」と4種類の「特別枠」を合わせて全部で5種類の申請枠があります。申請する際は、申請枠ごとの要件を把握し、自分はどの枠の要件を満たしているのかを確認してみましょう。
|
申請枠 |
要件・概要 |
通常枠 |
通常枠 |
小規模事業者自らが作成した経営計画に基づき、商工会や商工会議所の支援を受けながら行う販路開拓などの取り組みを支援 |
特別枠 |
賃金引上げ枠 |
販路開拓の取り組みに加え、事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上である小規模事業者 ※赤字事業者は補助率3/4に引き上げ加点を実施 |
卒業枠 |
販路開拓の取り組みに加え、雇用を増やし小規模事業者の従業 員数を超えて事業規模を拡大する小規模事業者 |
|
後継者支援枠 |
販路開拓の取り組みに加え、アトツギ甲子園においてファイナリ ストに選ばれた小規模事業者 |
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創業枠 |
産業競争力強化法に基づく「特定創業支援等事業の支援」を受け、販路開拓に取り組む創業した小規模事業者 |
参考:小規模事業者持続化補助金第15回公募要領|小規模事業者持続化補助金事務局
特別枠に申請する場合は、通常枠の要件に加えてそれぞれの申請枠ごとの要件を満たす必要があります。たとえば、賃金引上げ枠では、通常枠の要件に加えて事業場内の最低賃金が地域の最低賃金より+30円以上である事業者が対象です。
また、卒業枠で申請する場合は、雇用を増やし、公募要領で定められている小規模事業者の定義に基づいた従業員数を超えて事業を拡大する事業者が対象です。
小規模事業者持続化補助金を申請する際は、5つの申請枠の中から要件を満たす枠を1つ選んで申請を進めることになります。各申請枠の詳細は公募要領で確認し、追加の提出書類や注意点がある場合には事前に把握しておきましょう。
対象者の条件は小規模事業者であること
小規模事業者持続化補助金の対象者の要件の1つとして、まず小規模事業者である必要があります。また、小規模事業者の定義は、「業種別」に「従業員の数」で決められています。
業種 |
従業員数 |
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) |
常時使用する従業員の数 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 |
常時使用する従業員の数 20人以下 |
製造業その他 |
常時使用する従業員の数 20人以下 |
参考:小規模事業者持続化補助金第15回公募要領|小規模事業者持続化補助金事務局
たとえば、業種を判断する際の一例として、調理した料理を提供する飲食店の場合は「商業・サービス業」に該当し、調理した総菜や弁当を販売する事業の場合は「製造業」に該当します。また、運送業や建設業は「その他」として「製造業その他」の従業員基準を用います。
また、営業の正社員3名、整備の正社員2名、経理事務のパート従業員2名の場合、常時使用する従業員の数は5名のため、補助金の対象です。
補助対象者の要件の1つである「小規模事業者」の定義は、業種ごとに定められた従業員の数によって判断されます。自社の事業はどの業種に該当し、常時使用する従業員の数は規定に沿っているかを確認しましょう。
申請者の要件に関する詳しい情報は、「小規模事業者持続化補助金の対象になる事業者とは?」も参考にしてみてください。
無料診断では事業内容や規模から小規模事業者持続化補助金の対象となるかを診断できるため、申請を検討している人は診断してみてください。
無料診断開業している事業者でなければ補助金に申請できない
小規模事業者持続化補助金は、開業している事業者でなければ補助金に申請できません。
補助金の申請要件として「申請時点で税務署に開業届が出されていること」が定められているからです。そのため、申請を考えている人は、必ず申請前に開業届を出しておきましょう。
また、小規模事業者持続化補助金公募要領の中では、「すでに税務署に開業届を提出していても、申請時点までに事業を開始していない場合は補助対象外となる」との旨が明記されています。そのため、事業を実際に始めている人が小規模事業者補助金の対象になります。
小規模事業者持続化補助金は、開業している事業者が対象の補助金であり、申請日時点で開業していない場合は補助対象外です。創業予定で補助金の申請を検討している人は、申請日までに開業届を提出し、事業を開始しておく必要があることを留意しておきましょう。
小規模事業者持続化補助金は商工会や商工会議所の支援を受けて申請する
小規模事業者持続化補助金を申請する際は、管轄の商工会や商工会議所の支援を受けながら進めましょう。小規模事業者持続化補助金の申請書類は、商工会または商工会議所を通して準備する必要があるからです。
① 申請方法を電子申請にする場合は、GビズIDプライムアカウントの申請・取得 ② 「経営計画書兼補助事業計画書」と「補助事業計画書」を作成 ③ 作成した書類の写しを商工会または商工会議所に提出し、「事業支援計画書」の作成を依頼する ④ その他の書類(小規模持続化補助金事業にかかる申請書、補助金交付申請書、宣誓・同意書、その他申請枠や申請条件によって必要な書類)を記入 ⑤ 後日作成の終わった事業支援計画書を受け取り、②④の必要書類と共に事務局へ提出する |
たとえば、提出書類の1つである「事業支援計画書」は、申請者が商工会や商工会議所に作成を依頼する必要書類です。申請の流れとしては、申請者が最初に経営計画書や補助事業計画書を作成し、商工会に提出する際に事業支援計画書の作成を依頼することになります。
また、経営計画書や補助事業計画書は、補助金の採択審査において観点となる書類であり、根拠と説得力のある内容を作成する必要があります。商工会や商工会議所の担当者は、書類の作成におけるアドバイスも行っているため、支援を受けると良いでしょう。
なお、補助金の申請を郵送で行うことは可能ですが、審査の減点対象となるため、できる限り電子申請で行いましょう。電子申請の際には、GビズIDプライムアカウントを取得しておく必要があります。GビズIDの詳しい情報は、デジタル庁のgBizIDで確認できます。
この記事のまとめ
小規模事業者持続化補助金は、フランチャイズ経営を行うオーナーも利用できる補助金です。補助金を申請する際は、管轄の商工会や商工会議所の支援を受けながら、販路開拓や生産性向上を目的とした事業計画を立て、必要書類の準備を進めます。
小規模事業者持続化補助金の対象経費には、10種類のさまざまな経費項目が用意されています。活用事例も参考にしながら、事業計画を立てましょう。その際、フランチャイズ本部が製作に関わっているものや、本部との取引による費用は対象外のため注意しましょう。
小規模事業者持続化補助金の補助上限額は最高で250万円です。しかし、実際に受け取れる補助金額は申請者の条件によって変わります。申請する際は、補助金の上限額や補助率を確認し、自社の行う補助事業はいくら補助されるのかを把握しておきましょう。